クニの部屋 -北武蔵の風土記-

郷土作家の歴史ハックツ部屋。

『羽生・行田・加須 歴史周訪ヒストリア』のウラ話(3) ―文章―

2016年02月29日 | クニ部屋の本棚
文章を書いていて心がけていることと言えば、
ぼくの場合おおよそ3つのことが挙げられます。

(1)わかりやすい文章を書く
(2)文章の行き着く先をおおよそ把握する(見切り発車しない)
(3)自分の書きたいものを書く(小手先で書かない)

(2)については、見切り発車してもよい場合もあります。
ただ、途中で迷子になることが多く、
未完成に終わったものはだいたい見切り発車です。

上記以外に、「避けているもの」が2つあります。
それは、執筆中に好きな作家の本を読まないこと、です。
文体やリズムなど、かなり影響を受けてしまいます。

もう1つは、書店に行ったとき、関連するコーナーに足を運ばないこと。
こちらも、題材やテーマ、切り口や魅せ方など、
少なからずの影響を受けてしまいます。
「~をどう書かなければいけない」と思った瞬間、それは呪縛ですね。
発想の広がりがなくなります。

逆に、すすんでやっていることもあります。
それは“朗読”を聴くこと。
世の中には朗読CDという素晴らしいものが存在していて、
とても愛用しています。

浪曲、落語、講演、詩歌、古典文学とジャンルはさまざまで、
ぼくが愛聴しているのは文芸作品です。
拙著を書いているときもずっと聴いていました。

読むと聴くのでは、刺激を受ける脳の部分が違うのでしょうか。
不思議と文章に影響を受けません。
むしろ、聴いているときの方が、いざ自分が文章を書く段になると、
すんなりとペンが運ぶことが多いのです。

文章としてのリズムが、余韻として体内に残っているのでしょう。
そのリズムの延長として、スムーズに文章が書ける気がします。

「いや、むしろ影響を受けるよ」、と言う方もいるかもしれません。
でも、文章に慣れるという意味では、
朗読CDはお勧めしたい一品です。
特に、文芸作品に少しでも関心のある若い方には、
感受性が豊かなときに一度は触れていただきたいものです。

さて、朗読CDをどのタイミングで聴いているかというと、
車の移動時間です。
これまで色々な場所で試してきました。
電車の中、病院の待合室、ウォーキング、買い物、
料理、洗濯物干し、就寝前などなど……。
機会は無数にあります。
が、車の移動中が一番適しているというのがぼくの結論です。

運転に差し支えはありません。
聴き入って集中できなくなったことは一度もなく、
車の運転がさらに好きになったくらいです。

では、どんな文芸作品が朗読CDになっているのか。
いわゆる純文学と言われるものが多い傾向にあります。
「純文学は退屈」と思われている方も多いかもしれません。
ぼくも、読んでいて眠くなったことは一度や二度ではなく、
挫折に終わった作品もどれほど多いことか……。

ところが、朗読で聴いてみるとびっくりします。
時間が経つのを忘れるくらい面白いのです。
面白すぎて、遠回りして車の移動時間を伸ばしたくなるほどです。

ラインナップは、例えば「和解」(志賀直哉)、「夫婦善哉」(織田作之助)、
「蟹工船」(小林多喜二)、「ひかりごけ」(武田泰淳)、「恩讐の彼方に」(菊池寛)、
「人斬り以蔵」(司馬遼太郎)、「富嶽百景」(太宰治)、「山月記」(中島敦)、
「魔術」(芥川龍之介)、「真夏の死」(三島由紀夫)などなど、
短編~中編の作品が朗読化されています。

読書で駄目だった作品が、朗読ならばすんなりと頭に入ってくるのです。
眠くもなりません。
こんなに面白い作品だったのかと、目からウロコが落ちる思いです。
朗読者のテクニックも素晴らしいのでしょう。

さすがは名作と言われるだけのことはあります。
その魅力は、時を経ても色褪せる気配を見せません。
朗読を聴いて、改めて魅力を再発見することも多いと思います。
今後も、たくさんの作品が朗読化されることを希望します。
(朗読サービスを提供しているwebも有り)

ところで、ぼくは落語が大好きで、
落語CDも愛聴しています。
朗読CDに手を出す前は、落語ばかり聴いていました。

ところが、落語は落語の独特のリズムがあります。
小説とは違います。
落語は話芸、小説は文芸。
通じるものはありますが、
明確に一線を画すものがあると思います。

そのせいか、落語CDを聴いてもあまりペンが進みません。
大好きで、同じネタを何度も聴いてしまうのに、
ぼくの場合は文章に積極的に働かないようです。

執筆直前に落語を聴くことは避けていました。
片一方の想い。
ややストレスです。
そのため、過日落語家の柳家花緑さんが羽生で独演会を開催したときは、
生落語をたっぷりと満喫しました。



拙著

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 真名板で“嫁子呼び”の風習が... | トップ | 2月29日付の「朝日新聞」... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

クニ部屋の本棚」カテゴリの最新記事