クニの部屋 -北武蔵の風土記-

郷土作家の歴史ハックツ部屋。

羽生の歯科医院で想う春は?

2017年03月18日 | はにゅう萌え
20年以上通っている羽生の歯科医院がある。
「通っている」と言っても、
虫歯が見付かり次第の通院だ。

30歳を過ぎた頃から虫歯に悩まされている。
痛みがなくても、実は大きな虫歯でしたということがあって凹む。

歯科医院の待合室では本を読んでいる。
活字を追いながら、記憶が呼び起こされることがある。

太宰治の『津軽』を読みながら順番を待っていた10代。
友人のおじいちゃんとばったり会ったことや、
歯科医院の帰りに長渕剛のCDを買ったこと。
歯科医院から直接参加した飲み会や、
「歯医者さんの匂いがする」と言われことなどなど……

待合室は何も変わっていないように見える。
細部は変わっているのだろうが、西向きに設けられたベンチや、
すぐそばのトイレや受付の向こうから聞こえてくる治療の音など、
記憶の中とさほど変わらない。

では、歯科医院の周辺はどうだろか。
「変化なし」というわけにはいかない。
隣接する家の屋敷林はなくなった。
近くのお店も少しの距離を移転。
団地のそばにあった公衆電話も撤去された。

その公衆電話は、高校生のときにポケベルで使ったのが最後だった。
どんなメッセージを送ったのかも覚えている。
実はその日にちも。
とても悲しい放課後だったから。

その後、公衆電話は20年以上も建ち続けた。
が、ついに撤去されてしまったらしい。
横を通り過ぎたとき跡形もなくなっていた。

そばの団地には、かつて同級生の姉夫婦が住んでいた。
姉夫婦と子どもたちはもういない。
あのとき同級生が抱いていた赤ん坊は20歳になっているはずだ。

公衆電話があった場所のそばには川が流れている。
春になると川沿いの桜並木は満開の花に彩られる。

歯が削られ、公衆電話が消えてなくなる春。
20年前と変わらないもの。
今年も満開の桜が咲き、
春の到来を告げるのだろう。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 饒舌なピアノの曲に思い浮か... | トップ | 羽生の“さくらまつり”へ行き... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

はにゅう萌え」カテゴリの最新記事