日本株と投資信託のお役立ちノート

株や投信の運用に役立つ記事を探します。
(主に日経,ロイター,WSJから引用。賞味期限の短い記事は今後省きます)

カルビー株が描く軌跡 成長企業、市場「復興」けん引

2015年03月11日 | 株式全般
〔15.3.11.日経新聞:マーケット総合1面〕
 

 東日本大震災から4年。2011年3月11日に1万0254円だった日経平均株価はいま1万8000円台で推移し、株式市場は着実に「復興」してきた。金融緩和や円安など環境の違いは大きいが、株高の最大の原動力は成長に向けて取り組み続ける企業の変化だ。

 10日の日経平均株価は高値を目前に足踏みが続いたが、東証1部の176銘柄が昨年来高値を更新するなど選別機能は健在だった。カルビー株もその一つで、朝方に前日比2%高まで買われる場面があった。今月だけで6%、年初来で15%上昇している。

 カルビーが東証1部に上場したのは震災当日の11年3月11日だ。その日に国内17工場のうち4カ所が被災して生産が一部停止し、商品のラインアップをそろえられない状態になるなど波乱の船出だった。嗜好品である菓子類の販売は消費心理に左右されやすく、収益面でも「厳しい時期が続いた」という。

 「震災を理由に株式市場との約束を破るわけにはいかない」。経営陣は社内でこう繰り返し、生産復旧を進める一方で、上場で調達した資金を元手に、売り上げが伸び始めていたシリアル食品の生産拡大などに投資を続けた。北米など海外投資も積極化し、11年3月期に3%だった海外売上高比率は足元で10.3%に高まった。

 カルビー株に投資する運用担当者は「迅速な意思決定で危機を乗り越え、企業価値を磨いた好例」と話す。株価は4年で9倍近くになり、時価総額は6400億円まで増えた。

 市場の隅々まで見渡すと、震災後の4年間で成長した企業はほかにもゴロゴロしている。例えば物流機器のダイフク。それまで受注の半分強が自動車や液晶向けの搬送機器で、顧客の設備投資が鈍ると収益も落ち込んだが、電子商取引(EC)市場の拡大に目をつけた。商品仕分け装置や自動倉庫の需要増をにらみ、13年に流通業に顧客を持つ米企業を買収した。

 現在は流通や小売業向け受注が全体の2割。12年3月期に2%弱だった自己資本利益率(ROE)は今期9%強の見通しだ。仏運用会社コムジェストのリチャード・ケイ氏は「収益の波を安定させて成長できる構造になった」とみて最近ダイフク株を組み入れた。

 クスリのアオキは食品などを取り扱う店を展開するなど業態開発を工夫して収益力を高めた。海外強化やM&A(合併・買収)など手段はそれぞれ異なるが、「事業の選択と集中に本気で取り組み、強くなった企業は多い」(東京海上アセットマネジメントの久保健一氏)。この4年間で、時価総額を2倍以上に増やした東証1部企業は600を超える。

 米国の利上げが近づき、世界の株式相場が再び不安定な動きになるとの警戒感はくすぶる。だが、そうした中でも、リスクを取って成長を志向し、実現させている企業には投資マネーが流れ込む。企業の姿勢は変わり、株式市場の足腰は強くなったといえる。自力で危機を克服してきた多くの「カルビー」は、日本株復活を考えるうえで格好の教材になる。 (富田美緒) 

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