日本株と投資信託のお役立ちノート

株や投信の運用に役立つ記事を探します。
(主に日経,ロイター,WSJから引用。賞味期限の短い記事は今後省きます)

中国「新常態」の波風(下) 訪日客「爆買い」の裏で 経済交流、冷める日本側

2015年03月19日 | 外資:中国・韓国
〔15.3.19.日経新聞:国際1面〕
 
東京・秋葉原では電化製品を購入する中国人訪日客が目立つ

 「二八(にっぱち)を補うにはあまりある」。日本の流通業界は中国人観光客の「爆買い」をこう評する。クリスマスや忘年会、新年会などで出費がかさんだ直後の2月と、猛暑で買い物の意欲がなえる8月。「鬼門」ともいえる2カ月の落ち込みを中国人客が穴埋めしているからだ。

春節1200億円消費
 中国メディアは2月の春節(旧正月)連休を利用して日本を訪れた中国人観光客は45万人、使ったお金は60億元(約1200億円)と推定する。北京市の32歳の男性会社員は「今年の夏は北海道を満喫したい」と再来日に思いをはせる。「訪日客は今後も増え続ける」と中国の民営航空会社、吉祥航空(上海市)の王均金董事長は日本路線の拡充に意欲を示す。

 日中両国は2012年夏に尖閣諸島を巡り鋭く対立した。訪日客は激減し、中国で日本商品の不買運動も起きた。だが、昨年11月に安倍晋三首相と習近平国家主席の会談が実現すると円安も伴い風向きは一変した。

 中国からみれば「経熱」に映る交流も、日本側のパイプは目詰まりを起こしたままだ。対中投資は14年に前年から4割近く減り、訪中客も14年まで4年連続で落ち込んだ。日中の貿易総額も伸び悩み、日本貿易振興機構(ジェトロ)によると14年は尖閣問題前の11年をなお下回る水準だ。

 民営複合企業で不動産投資を手掛ける復星集団(上海市)は傘下企業を通じて昨年、東京のオフィスビルを2件買い取った。家電最大手の海爾集団(ハイアール、山東省)や通信機器大手の華為技術(広東省)は京都、横浜で研究拠点を拡充する。しかし、これらの大型の投資案件はいずれも大都市部に限られる。

 「日本人の対中感情は改善しておらず、『チャイナマネー』に対する警戒感も根強い」。最近、上海に拠点を持つ日本の地方銀行や自治体事務所を対象に調査を実施した駒沢大の長山宗広教授は指摘する。中国企業を誘致する際の懸念や課題として32%が「中国への技術流出の恐れ」を挙げ、25%が「治安や地域イメージの悪化」と答えた。

 上海駐在の地銀関係者も「中国企業の対日投資案件は、本店では海のものとも山のものともつかないと見られがちだ」とぼやく。

70年談話けん制
 中国では8月に予定する安倍首相の戦後70年談話に関心が高まる。15日、李克強首相は「先人の犯罪行為がもたらした歴史責任も負うべきだ」とけん制した。

 「新常態」とは経済成長がかつてのような輝きを失う状況の裏返しだ。国民の不満が膨らめば、はけ口が日本に向かう可能性は十分にある。レナウンを買収した中国繊維大手の山東如意科技集団(山東省)の邸亜夫董事長は「日本企業の投資や与信の管理手法は先進的だ。一緒になって世界に打って出ていけば、限りない可能性が生まれる」と語る。今はまだ期待のほうが大きい。

 12年に尖閣問題が起きた直後、日本総研は日本の実質成長率を0.4%押し下げると試算した。金額にして約2兆円だ。再び中国から観光客が途絶えるリスクがくすぶる一方で12年と比べ中国の経済力は増し、日本経済の中国依存は深まる。そんな現実を見据えた対中観の醸成が欠かせない。

 菅原透、中村裕、阿部哲也が担当しました。

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