日本株と投資信託のお役立ちノート

株や投信の運用に役立つ記事を探します。
(主に日経,ロイター,WSJから引用。賞味期限の短い記事は今後省きます)

農家に打撃、強い経営必要/新時代の経済圏 TPPがひらく 関税・規制なくし商機拡大

2015年10月10日 | 国内:制度ほか
(日経10/10:TPP特集面)
 政府はTPP交渉で、輸入関税をかけている834品目のうち、約半数で関税をなくす。ただ、特に農家への影響が大きいコメや麦、牛・豚肉など重要5項目は「聖域」として扱い、関税撤廃を免れた。関税ゼロでの最低輸入枠の設定や関税引き下げで折り合った。

コメに輸入枠
 最大の焦点となったコメは米国に発効時に年5万トン、オーストラリアに年6000トンの関税のかからない輸入枠をそれぞれ設ける。4年目から段階的に広げ、13年目からはそれぞれ7万トン、8400トンに増やす。1993年のガット・ウルグアイ・ラウンド合意で設けられた輸入枠は77万トンなので、国内に入る外国産のコメが1割程度増える。

 1割は小さい数字にみえるが、食の多様化などを背景にコメの需要量は2014年度で778万トンと20年前に比べて約2割減少している。毎年8万トンずつ減っている計算だ。価格も下落傾向にあり、14年産は60キログラム当たり過去最低の1万2千円程度。農協関係者は、対策を講じなければ「農家に打撃を与える可能性が極めて高い」と警戒する。

 肉類の関税も大幅に引き下げられる。牛肉は現在の38.5%から段階的に削減され、16年目以降は9%になる。豚肉も安い肉では1キログラムあたり482円から1年目には125円、10年目からは50円と、現在の1割程度に下がる。すでに現在、米国や豪州などの牛肉の価格は国産和牛に比べて8割、豚肉も3割強安い。

 牛・豚肉は国産と外国産のすみ分けがある程度進んでいるが、日本養豚協会はTPPで低価格のモモなどの部位がさらに4割安く輸入されると試算、このままでは「壊滅的な打撃を受ける」と懸念している。

 パンや麺の材料となる小麦でも、事実上の関税である「輸入差益」を45%削減。加えて、米国やカナダ、豪州に対して計25万3千トンの輸入枠を設定する。国産品は1キログラムあたり47円と、米国などより25%ほど高い。TPPによってさらに価格差は拡大するため、製パン業者の間では海外産の小麦に乗り換える動きも出てくるとみられる。

 酪農家にも影響が及びそうだ。TPPではバターの無関税の輸入枠として3188トンを新設。6年目からは3719トンに増やす。

 バターの原料である生乳は生産量が不安定で、バターは「需給の調整弁」として働いている。酪農家は生乳をまず鮮度が大事で利益も出やすい飲料用の牛乳に充てるためで、保存しやすく取引価格の低いバターは後回しになる。現在はバター不足が続いているが、需給が安定し、輸入が増えて調整弁としての役割が失われると赤字に陥る酪農家が増える懸念がある。

保護には限界
 今後の焦点は国内農家対策だ。政府は9日、全閣僚で構成するTPP総合対策本部を立ち上げた。

 コメについては輸入枠と同じ7万8400トンと同量の国産米を農家から買い上げる。買い上げたコメは備蓄する。需給を引き締め、価格を維持する狙いだ。

 牛肉や豚肉でも、収益が生産コストを下回った場合、その差額の8割を国と生産者の積立金で補填する経営安定対策を拡充することを検討。麦や乳製品でも対策を打っていく方針だ。

 国家財政の逼迫で税金頼みの農家保護策には限界がある。多くの品目で関税が撤廃されるまでには10年程度かかり、輸入枠も段階的に拡大される。その時間的な猶予を生かしていかに生産性を高め「もうかる農業」に生まれ変われるかが農業の将来を握っている。

▼新時代の経済圏 TPPがひらく 関税・規制なくし商機拡大
 日米など12カ国が参加した環太平洋経済連携協定(TPP)交渉が大筋合意した。日本にとっては1993年にコメ市場開放で合意した関税及び貿易に関する一般協定(ガット)ウルグアイ・ラウンド以来の大きな通商協定になる。TPPでビジネスや暮らしはどう変わるのか検証する。



「米韓」上回る
 「米韓自由貿易協定(FTA)に負けるな」

 これが日本政府の交渉団の合言葉だった。焦点は米国が日本産の自動車部品にかける2.5%の関税。韓国と米国のFTAは2012年に発効し、金額ベースで77%の部品の関税を即時撤廃した。今回のTPPの結果は81%と米韓FTAをわずかながら上回った。

 自動車部品の米国向け輸出額は約2兆円。デロイトトーマツコンサルティングの羽生田慶介執行役員は「単純計算で約500億円分の関税負担がなくなるなどインパクトは大きい」と指摘する。

 見逃せないのは「TPP域内産の製品」とみなして関税ゼロを適用する条件を緩やかにしたことだ。「例えばベトナムとマレーシアで部品を調達し、メキシコに持って行って組み立て、完成車を米国に輸出する。それらがすべて無税になる」(みずほ総合研究所の菅原淳一上席主任研究員)

 自動車メーカーはどこで生産、調達すれば最も効率的か選択の幅が広がる。エンジン部品のケーヒンはベトナム向け二輪車用部品の生産を、TPP不参加のインドネシアから日本に切り替えることを検討する。

 完成車では米国向けの関税(2.5%)は撤廃まで25年かかるが、カナダ(6.1%)は5年目に撤廃する。ベトナムは大型車にかける70%弱の高関税を10年目になくすため、新興国開拓の拠点になりそうだ。

 自動車以外では米国向けプラスチック製品(2.1~6.5%)やビデオカメラ(2.1%)の関税を即時撤廃する。一部の日本企業は韓国に工場をつくり、米韓FTAを活用して米国に関税ゼロで輸出していたが、こうした工場流出にも歯止めがかかりそうだ。

製造業以外も
 製造業以外にも恩恵は広く及びそうだ。


記念写真に納まる各国の閣僚(1日、米アトランタ)=米通商代表部提供・共同

 日本のアニメや映画はアジアでも人気だが、海賊版が出回ることで日本企業の収益にならないことも多い。TPPは海賊版対策を大幅に強化、税関の水際で差し止める権限を与える。さらに、衛星放送やケーブルテレビの視聴を制限する暗号を不正に外す機器の製造・販売への刑事罰、被害の救済措置も盛り込んだ。

 小売りや金融はマレーシア、ベトナムの規制緩和に期待する。マレーシアはコンビニエンスストアへの外資出資を解禁し、ベトナムもTPP発効後5年の猶予を経て、出店への事前審査をなくす。「規制が弱まれば新規出店しやすくなる」(ファミリーマート)。

 金融でもマレーシアは外資銀行の支店数の制限を8から16に緩めるほか、ベトナムは地場銀行への外資出資比率の上限を15%から20%に上げる。マレーシアとベトナムにはそれぞれ三菱東京UFJ銀行など三大銀行が進出している。

 TPPは中小企業にも利点がある。柔らかい肌触りで海外でも人気の今治タオル。米国(9.1%)は5年目に、カナダ(17%)は発効後すぐに関税を撤廃する。四国タオル工業組合(愛媛県今治市)の近藤聖司代表理事は「米国などへの輸出に追い風」と歓迎している。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。