〔15.1.29.日経新聞:マーケット商品面〕
天然ゴムが安値で横ばいとなっている。国際指標となる東京商品取引所でのシート状ゴムの先物価格は、この年末年始に一時上昇する場面もあったが、昨年秋以降は1キロ200円前後と同値圏の推移が続く。昨秋に主産地である東南アジア各国が市況対策を打ち出したことが価格を支えている。ただ、供給過剰感が強いうえ、原油安も響き、上昇力に欠けている。
「1キロ150セント以下では輸出しない」。2014年10月、天然ゴムを生産するタイ、インドネシア、マレーシア、ベトナム、カンボジアの5カ国が価格維持の協定づくりで合意した。150セント(約180円)は生産国でゴムの樹液を採取する農民が利益を得られる最低ラインとされる。
同年11月下旬にもタイとインドネシア、マレーシアの3カ国が集い、(1)供給過剰を回避するため天然ゴム輸出を管理する(2)これまで設定していた目標面積を上回るゴム農園の開発を制限(3)内需を年間10%増やす――の3点で合意している。
14年秋に相次いで打ち出された市況対策に市場は反応した。同年7月には210円程度だった相場は、同9月には180円程度まで下がった。市況対策が打ち出された10月以降は、200円台を回復した。
14年末から15年1月上旬にかけ、マレーシアを中心とした洪水で供給不安が高まり、210円程度に値上がりする場面もあった。供給減の懸念が薄れた今は、200円台の推移が続いている。前年同期比1割強安い。円と現地通貨の為替動向も影響し、タイではまだ採算がとれない状況が続いているという。
国内の取引業者からは「以前のように産地から品物が出てこない。ある程度は出荷が抑制されているようだ」(専門商社の三富商店=神戸市)という指摘も聞かれる。
ただ、東商取での取引価格が大きく上向く気配は感じにくい。天然ゴムの最大の消費国は中国。生産国は中国の調達増を見込み農園を開発したが、景気減速で需要があまり増えなかった。10~11年には300~400円で推移した価格が低迷する結果を招いた。
天然ゴムの供給過剰は11年から続いている。14年の世界の生産量は1213万トンなのに対し、消費量は1189万トンとみられる。約24万トンの生産過剰となり、15年も生産量が消費量を上回る見込みだ。需要家からは「需給が緩いマーケットの状況には勝てない」(横浜ゴム原料調達部)という声も聞こえてくる。
原油から生産する合成ゴムの価格の下落観測が強まり、競合する天然ゴムの上値が抑えられている。合成ゴム原料のブタジエンは1トン700ドル前後で昨夏の半値以下だ。
「今年は中国の調達が増える見通しが立たない。当分の間、価格は現在の水準で横ばいではないか」(ゴム商社の加藤事務所=東京・中央=の加藤進一社長)との観測も出ている。
生産国のうち12年にタイがインドネシア、マレーシアと輸出制限に合意した。価格は一時3割上がったが、翌年には打ち切られ上昇は続かなかった。今回、生産国の足並みがどこまでそろえられるかが、価格動向にも影響を与えそうだ。
天然ゴムが安値で横ばいとなっている。国際指標となる東京商品取引所でのシート状ゴムの先物価格は、この年末年始に一時上昇する場面もあったが、昨年秋以降は1キロ200円前後と同値圏の推移が続く。昨秋に主産地である東南アジア各国が市況対策を打ち出したことが価格を支えている。ただ、供給過剰感が強いうえ、原油安も響き、上昇力に欠けている。
「1キロ150セント以下では輸出しない」。2014年10月、天然ゴムを生産するタイ、インドネシア、マレーシア、ベトナム、カンボジアの5カ国が価格維持の協定づくりで合意した。150セント(約180円)は生産国でゴムの樹液を採取する農民が利益を得られる最低ラインとされる。
同年11月下旬にもタイとインドネシア、マレーシアの3カ国が集い、(1)供給過剰を回避するため天然ゴム輸出を管理する(2)これまで設定していた目標面積を上回るゴム農園の開発を制限(3)内需を年間10%増やす――の3点で合意している。
14年秋に相次いで打ち出された市況対策に市場は反応した。同年7月には210円程度だった相場は、同9月には180円程度まで下がった。市況対策が打ち出された10月以降は、200円台を回復した。
14年末から15年1月上旬にかけ、マレーシアを中心とした洪水で供給不安が高まり、210円程度に値上がりする場面もあった。供給減の懸念が薄れた今は、200円台の推移が続いている。前年同期比1割強安い。円と現地通貨の為替動向も影響し、タイではまだ採算がとれない状況が続いているという。
国内の取引業者からは「以前のように産地から品物が出てこない。ある程度は出荷が抑制されているようだ」(専門商社の三富商店=神戸市)という指摘も聞かれる。
ただ、東商取での取引価格が大きく上向く気配は感じにくい。天然ゴムの最大の消費国は中国。生産国は中国の調達増を見込み農園を開発したが、景気減速で需要があまり増えなかった。10~11年には300~400円で推移した価格が低迷する結果を招いた。
天然ゴムの供給過剰は11年から続いている。14年の世界の生産量は1213万トンなのに対し、消費量は1189万トンとみられる。約24万トンの生産過剰となり、15年も生産量が消費量を上回る見込みだ。需要家からは「需給が緩いマーケットの状況には勝てない」(横浜ゴム原料調達部)という声も聞こえてくる。
原油から生産する合成ゴムの価格の下落観測が強まり、競合する天然ゴムの上値が抑えられている。合成ゴム原料のブタジエンは1トン700ドル前後で昨夏の半値以下だ。
「今年は中国の調達が増える見通しが立たない。当分の間、価格は現在の水準で横ばいではないか」(ゴム商社の加藤事務所=東京・中央=の加藤進一社長)との観測も出ている。
生産国のうち12年にタイがインドネシア、マレーシアと輸出制限に合意した。価格は一時3割上がったが、翌年には打ち切られ上昇は続かなかった。今回、生産国の足並みがどこまでそろえられるかが、価格動向にも影響を与えそうだ。