日本株と投資信託のお役立ちノート

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(主に日経,ロイター,WSJから引用。賞味期限の短い記事は今後省きます)

7267 ホンダ、軽スポーツで出直し 「縦割り」打破 アイデア走る 開発リーダーは26歳

2015年03月31日 | 17.輸送用機器
〔15.3.31.日経新聞:企業1面〕

「S660」の開発責任者の椋本氏(30日、東京都港区)

 ホンダは30日、新型車「S660」を発表した。19年ぶりの「軽」規格スポーツカーとして注目を集めるが、真の特徴は開発手法にある。責任者は入社8年目の26歳で、開発担当者は公募で集めた。重視したのは徹底して議論を交わすこと。最近のホンダは規模拡大や車種増加を受けて開発の「縦割り」が強まっているとの指摘がある。「ホンダらしさ」復活を戦略車に託す。

 「クルマ離れと呼ばれる層がつくり、『走る楽しさ』を伝えたかった」。最年少の開発責任者を務めた椋本陵氏(26)は同日、ホンダ技術者の正装である白の上着姿で記者会見に登場した。

 2人乗りオープンのS660は国内で4月2日に発売する。価格は198万~218万円。「ミッドシップ」と呼ばれる車体レイアウトを採用した。軽のエンジンながら新設計の過給器(ターボチャージャー)を組み込み加速力も高めた。自動車専門家からは「走りのホンダが戻ってきたようだ」との声が相次ぐ。

 月間の販売目標は800台と規模は小さいが消費者の関心は高く、すでに約3千台を先行受注した。国内スポーツカーの新車販売は年間3万台程度。市場全体の1%にも満たないが、ブランドの屋台骨となる。

「ワイガヤ」重視
 S660の開発は異例づくしだ。発端は開発子会社、本田技術研究所の創立50周年記念で2010年に開かれた社内コンペだ。集まった約400の提案から椋本氏のアイデアが最優秀賞に選ばれた。この時点で製品化の予定はなかった。

 ところが11年、ホンダの伊東孝紳社長が「俺も乗ってみたい」と試乗し、一転して開発が決まった。椋本氏は当時、入社4年目。アイデアの新鮮さを保つために「発案者に任せる」(本田技術研究所の山本芳春社長)との考えからの抜てきだった。開発担当者も自ら志願した150人から15人を選抜した。

 メンバーが追求したのは「ホンダにしかできないスポーツカーの姿」。当初は「15人15様」で価値観はばらばら。朝から晩まで開発部屋に集まって膝詰めで意見を戦わせた。楽しさの原点を知ろうと全員でゴーカートに乗りに行ったことも。「自分たちがほしい車、買える車」を大前提に方向性をそろえていった。

 壁となったのが軽自動車という小ささだ。「全員の協力なしにはできなかった」と内装設計を担当した森下勇毅氏(28)は振り返る。すっきりしたデザインに仕上げるために全体の幅は縮める一方、快適性に関わるシートの部分は幅を保った。

 徹底的に議論を進める「ワイガヤ」はホンダの伝統だ。3代目社長の久米是志氏の頃から、クルマのコンセプトだけでなく企業の方向性についてまで、上下関係なく自由に議論することを受け継いできた。フラットな雰囲気が斬新なアイデアや技術の源泉だった。

リコールの教訓
 ただ最近のホンダは縦割りの弊害が目立ってきている。「開発の担当割りも効率重視になりがちだった」(ホンダの技術者)。個々の技術や機能に目が向き車をつくっているという感覚を得にくかったという。「開発での顧客視点が乏しくなり」(ホンダ幹部)、主力車での複数回のリコール(回収・無償修理)につながった側面もある。

 大企業ホンダがかつてと同じ「ワイガヤ」を全てのクルマに取り入れるのは難しい。ただS660の開発に携わったエンジニアらの多くは今後、別の車種の開発を担当する。シャシー開発を担当した岡義友氏(42)は「今回の経験を社内で広めたい。それが宿題」と話す。「これからのホンダの象徴」(伊東社長)と位置づけるS660がホンダ反攻という重責も担う。 (香月夏子)

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