日本株と投資信託のお役立ちノート

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(主に日経,ロイター,WSJから引用。賞味期限の短い記事は今後省きます)

クリミア編入1年(上)ロシアが選んだ「新冷戦」 経済悪化、保守化の代償

2015年03月18日 | ロシア&CIS
〔15.3.18.日経新聞:国際1面〕
 
16日から18日にかけてクリミアでは編入を祝う式典が行われる(16日、シンフェロポリ)=ロイター

 ロシアのプーチン大統領がウクライナ南部クリミア半島の編入を一方的に表明してから18日で1年がたった。国家の主権と領土の保全という冷戦後の国際秩序の根幹を侵害し、世界を震かんさせた。ソ連の継承国ロシアは自ら欧米諸国との間に再び分断線を引き、欧州の安全保障と世界の米一極体制を揺さぶる。

 クリミア半島北端の町ジャンコイの郊外。重機がうなりを上げ、検問所の建設を急ぐ。これは半島をウクライナ本土から隔離する新しい壁だ。仮設の検問所までは車列が500メートル続き、厳しい通行検査を5時間も待っていた。

 ロシアと西欧が対峙する新たな最前線。親ロシア派武装勢力は2014年3月16日にクリミア半島で編入の是非を問う住民投票をロシア軍と「警護」した後、この境界線を越え、ウクライナ東部に向かった。10カ月に及ぶ同国政府軍との戦闘の末、東部の約3分の1を奪い取った。

企業250社を接収
 クリミアでは「ロシア化」が急速に進む。パスポートが配布され、通貨ルーブルが流通する。あらゆる分野でロシア法が適用され、主な企業250社が接収された。物価上昇など弊害にもかかわらず、中心都市シンフェロポリで洋服店を営むワシリーさん(26)は「ロシア系が多い市民の9割は今も編入を支持する」と話す。

 斧(おの)の刃のように黒海に突き出たクリミア半島の編入を契機に、ロシアはユーラシアの中西部に分断線を引いた。北は15年1月発足の経済統合「ユーラシア経済同盟」に取り込んだベラルーシの西部国境で、ウクライナ東部の親ロ派地域も囲い込んだ。

 3月18日にはグルジア領で独立状態にある南オセチアと同盟条約に署名する。昨秋には同じくアブハジアとも条約を結び、分断線を南へ延ばした。冷戦後、欧米の攻勢に後退を続けたロシアが初めて反撃して勢力を拡大、隣国の領土を侵した。

 プーチン氏がクリミア編入を表明した1年前の演説が欧米への挑戦状となった。北大西洋条約機構(NATO)の東方拡大に加え、「兄弟国」ウクライナを自陣営に引き込んだと猛反発。「(欧米は)世界の運命を決められると信じ切っている」と憤りをあらわにした。

 「(核戦力に)戦闘態勢を取らせる用意があった」。プーチン大統領は15日に国営テレビで放映したクリミア編入のドキュメンタリー番組で、核対立も辞さない決意だったことを明かした。ソ連時代のようなイデオロギー対立とは異なるが、ロシアは欧州を舞台とした「新冷戦」とも呼ばれる地政学上の激しい争いの道を選んだ。

 東西分断は12年に大統領に復帰したプーチン氏が推し進めた「保守化」と「対外強硬路線」の帰結でもあった。マスコミや非政府組織(NGO)の統制、インターネットの監視、反体制野党の締め付け……。冷戦期の「鉄のカーテン」ほど堅固ではないが、欧米の影響力排除へ幾重にも防壁を張り巡らせていた。

勢いづく強硬派
 「国際法が国内法に優先するという憲法の条項が西側の反対者にうまく利用されている」。バストルイキン捜査委員会委員長は2月26日、欧米の内政干渉を阻む名目で憲法改正まで提唱した。治安機関や軍出身者ら政権内の強硬派も勢いづく。

 プーチン大統領はロシアを守る「救国者」のイメージを作り上げ、80%を超す支持率を誇る。だが、代償は小さくない。

 欧米の対ロ制裁と原油安で、15年の経済成長率は3%超のマイナスが確実だ。歳入不足は石油収入を積み立てた約5兆ルーブル(約10兆円)の基金で補填するが、「1年半か2年で枯渇する」(シルアノフ財務相)。資源マネーを広く配分する統治システムが限界となる中、18年に次期大統領選を控える。

 2月27日、反体制派野党の指導者、ネムツォフ元第1副首相がモスクワで何者かに暗殺され、内外に衝撃が走った。クレムリンを間近に臨む現場には多くの献花が絶えない。

 「プーチン体制が殺した」――。3月1日の追悼デモには改革派の市民ら数万人が参加し、こう訴えた。東西分断を招いたプーチン路線は社会の亀裂も広げている。 (シンフェロポリ〈クリミア半島〉で、石川陽平) 

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