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(主に日経,ロイター,WSJから引用。賞味期限の短い記事は今後省きます)

福島第1原発、廃炉へ来年が正念場 溶けた燃料研究急ぐ 東芝が再現

2014年12月30日 | 20.電気・ガス業
〔14.12.30.日経新聞:科学技術面〕

 

 東京電力福島第1原子力発電所の廃炉作業は、2015年に重要な一歩を踏み出す。中長期的な対策として溶けた燃料(デブリ)の取り出しに向けた研究が本格化する一方、懸案の汚染水問題は解決の道筋をつけられるのか正念場を迎える。今後30~40年に及ぶ廃炉工程を左右する1年になる。

 福島第1原発では11年3月の事故によって1~3号機で炉心溶融(メルトダウン)が起き、デブリの取り出しは廃炉工程のなかで最も難しい作業になる。東電などは20年度にもデブリの回収を始める計画だ。

 東芝は回収技術の開発に向け、核燃料の材料を人為的に高温で溶かしてデブリを作る再現実験を実施した。カザフスタンにある国立原子力センターと協力し核燃料に使う二酸化ウランやジルコニウムをセ氏約2500度の高温で溶かして約60キログラムのデブリを作製した。

 作製したデブリは福島第1原発のように核分裂した後の核燃料ではないため強い放射線は出さないが、デブリの硬さや成分など回収作業に向けた手がかりが得られる。これまでも国内で試験的につくる試みはあったが、重さは10グラム未満とわずかだった。旧ソ連時代から原子力研究の蓄積があるカザフの施設を利用した。

 デブリの再現は電力各社や東芝などの原発メーカー、日本原子力研究開発機構などで構成する国際廃炉研究開発機構(IRID)が取り組む。「デブリの状態の把握は取り出しやその後の安全な保管に不可欠だ」(原子力機構)。福島第1原発のデブリは原子炉の中心部だけでなく、外側の格納容器まで拡散した。金属や酸化物が混じり、複雑な状態にある。15年度中に特性を調べ、回収技術の開発に必要な知見を蓄える。

 デブリを外側から詳しく調べる試験も来年2月から始まる。IRIDは宇宙から地球に降り注ぐ素粒子「ミュー粒子」を使い、レントゲンのように原子炉内部を透視。原子炉建屋の近くに検出器を設置し、1号機から調べる。ロボットを使った炉内の探査も動き出す。

 同原発では原子炉にあるデブリだけでなく、プールにも大量の使用済み核燃料などが残る。12月に4号機からの搬出は完了したが、1~3号機は放射線量が高く手つかず。いずれも溶け落ちたデブリではないものの取り出しに手間取れば、廃炉工程に遅れが生じる懸念がある。


東電、汚染水浄化「3月に完了」 装置の安定稼働カギ

 汚染水対策は来年3月にヤマ場を迎える。東京電力はタンク内の汚染水の浄化を完了する計画だが、浄化装置のトラブルなどで思うように作業が進んでいない。目標達成は予断を持てない状況で、遅れれば廃炉工程全体にも影響しかねない。

 11年3月の事故後、増え続けてきた高濃度汚染水の量は減少傾向にある。タンク内の貯蔵量は12月25日時点で約31万トン。9月のピーク時からは約15%減った。浄化装置「ALPS」を1基から3基に増やした効果が表れつつある。

 東電はALPSに加え放射線の強い放射性ストロンチウムを処理する設備の導入も進める。年明け以降に浄化を加速し、来年3月までに約38万トンを処理できると東電は説明する。目標を達成できるかカギを握るのがALPSだが、トラブルによる停止を繰り返している。

 年内を見込んでいたフル稼働にまだ達していない。今後も設備が安定して稼働する保証はなく、浄化の工程に遅れが生じる恐れがある。

 汚染水対策のもう一つの柱である地下水の流入抑制も15年の大きな焦点だ。地下水は山側から原発建屋に流れ込み、汚染水を増やす原因になってきた。

 東電は汚染前の地下水を井戸でくみ上げて海に流す「地下水バイパス」を5月から始め、1日約400トンだった流入量は300トン程度に減った。これをさらに減らすため、1~4号機の建屋周辺の土壌を凍らせて「氷の壁」をつくる凍土壁の建設が進む。順調なら15年夏ごろに完成する予定だ。

 ただ、凍土壁と一部で交差する地下道(トレンチ)には高濃度の汚染水が残る。この汚染水を除去しない限り、凍土壁の工事は前に進まない。今春から始まった除去作業は大幅に遅れ、凍土壁への影響が懸念される。


東電廃炉推進カンパニー・増田氏「4号機燃料回収で自信」 1~3号機リスク減に反映

 東京電力福島第一廃炉推進カンパニーの増田尚宏最高責任者は2014年度末に終えるとした汚染水処理の目標について「(処理装置の)稼働見通しなど不確定要素もあるが全力を挙げる」としている。このほど開いた記者会見で語った。

 ALPSの処理能力は1日に2000トン。ALPSだけでは汚染水の全量を年度内に処理するのは難しい情勢だ。増田氏は、ストロンチウムなどを取り除く別の浄化装置を来年1月から総動員し、「まずは持っているものをすべて使い3月末までに(汚染水の)リスクを下げる」と強調した。

 4月に発足した廃炉推進カンパニーについては「廃炉という目的を明確にできた」と評価。「野戦病院のようだった福島第1原発の現場が改善し、前を見て仕事ができるようになった」とした。

 今後の作業については「(年内に)4号機使用済み燃料プールからの燃料取り出しが無事故に終わり、大きな自信をもらった。1~3号機の作業に反映させ、リスク低減につとめたい」などと語った。

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