〔15.1.7.日経新聞:マーケット総合1面〕
2015年の株式相場は軟調なスタートを切った。ギリシャ不安や原油安による市場の混乱が収まれば、相場は再び上昇に転じるのか。鍵を握るのは、上値を買い進む傾向のある外国人投資家の動向だ。ただマネーの米国回帰もあり、視界は良好とはいえない。
「最近、米国投資家の問い合わせが減っている」。アムンディ・ジャパンの吉野晶雄氏は証言する。日経平均株価が500円超下げた6日。前日に続き日銀が上場投資信託(ETF)買いに動いたがそれでも株安を止められなかった。海外勢が売りに回ったからだ。
強気になれない海外勢の材料には事欠かない。米運用大手ウィリアム・ブレアの運用担当者は最近、米メディアにこう語った。「割安感が薄れた日本株の保有比率をゼロ近くまで引き下げた」
□ □
ウォール街のご意見番で、年頭恒例の「びっくり十大予想」で知られるバイロン・ウィーン氏。5日に公表した15年版では、日本が欧州とともに景気後退に陥り、日本株も横ばいにとどまると予測した。日経平均が1万8000円まで上昇するとの強気予想をほぼ的中させた昨年とは様相が違う。
海外投資家の視点をたどると、今の日本株には2つの逆風が吹く。米国では持続的な景気回復と、ドル独歩高によるドル建て運用の改善期待を支えに投資マネーの本国回帰が進む。一方、円安の影響でドル建て日経平均株価は昨年後半から低調な値動きが続く。
もう一つは、相対的な日本株の魅力の低下だ。ギリシャ不安に揺れる欧州だが、市場では欧州中央銀行(ECB)が大胆な量的緩和に乗り出すとの期待が強い。グローバルに資金を運用するタイプのヘッジファンドには、ユーロ安と株高が同時に進むシナリオに賭けようとする動きがある。
アジアで注目を集めるのは一本調子の株高が続く中国だ。原油安がもたらす経済のプラス効果も「中国やインドの方が大きく、原油安だからすぐ日本株買いとはならない」。海外の投資家動向に詳しいみずほ証券の菊地正俊氏は話す。
海外勢の視線を日本に引き戻すにはどうすべきか。ゴールドマン・サックス証券の宇根尚秀氏は「アベノミクスがもたらす具体的な果実以外にはない」と話す。まず今春の賃上げで日本景気の再浮揚にメドをつける。同時に海外勢に関心の高い雇用規制の改革や環太平洋経済連携協定(TPP)交渉を前進させることが欠かせないという。
□ □
国内勢も危機感は共有している。「企業は内部留保をもっと投資にまわすべきだ」(麻生太郎副総理・財務・金融相)、「今年はアベノミクスの内容と実績が厳しく評価される一年になる」(日本取引所グループの斉藤惇グループ最高経営責任者)。年始の証券業界の集まりで関係者の表情には緩みがなかった。
14年の海外勢の日本株買越額は13年から急減した。改革が実を結べば証券各社は今年、再び2兆~5兆円程度の買い越しはあり得ると読む。待ったなしで成否が問われる15年は日本株にとっての正念場となる。 (川上穣)
2015年の株式相場は軟調なスタートを切った。ギリシャ不安や原油安による市場の混乱が収まれば、相場は再び上昇に転じるのか。鍵を握るのは、上値を買い進む傾向のある外国人投資家の動向だ。ただマネーの米国回帰もあり、視界は良好とはいえない。
「最近、米国投資家の問い合わせが減っている」。アムンディ・ジャパンの吉野晶雄氏は証言する。日経平均株価が500円超下げた6日。前日に続き日銀が上場投資信託(ETF)買いに動いたがそれでも株安を止められなかった。海外勢が売りに回ったからだ。
強気になれない海外勢の材料には事欠かない。米運用大手ウィリアム・ブレアの運用担当者は最近、米メディアにこう語った。「割安感が薄れた日本株の保有比率をゼロ近くまで引き下げた」
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ウォール街のご意見番で、年頭恒例の「びっくり十大予想」で知られるバイロン・ウィーン氏。5日に公表した15年版では、日本が欧州とともに景気後退に陥り、日本株も横ばいにとどまると予測した。日経平均が1万8000円まで上昇するとの強気予想をほぼ的中させた昨年とは様相が違う。
海外投資家の視点をたどると、今の日本株には2つの逆風が吹く。米国では持続的な景気回復と、ドル独歩高によるドル建て運用の改善期待を支えに投資マネーの本国回帰が進む。一方、円安の影響でドル建て日経平均株価は昨年後半から低調な値動きが続く。
もう一つは、相対的な日本株の魅力の低下だ。ギリシャ不安に揺れる欧州だが、市場では欧州中央銀行(ECB)が大胆な量的緩和に乗り出すとの期待が強い。グローバルに資金を運用するタイプのヘッジファンドには、ユーロ安と株高が同時に進むシナリオに賭けようとする動きがある。
アジアで注目を集めるのは一本調子の株高が続く中国だ。原油安がもたらす経済のプラス効果も「中国やインドの方が大きく、原油安だからすぐ日本株買いとはならない」。海外の投資家動向に詳しいみずほ証券の菊地正俊氏は話す。
海外勢の視線を日本に引き戻すにはどうすべきか。ゴールドマン・サックス証券の宇根尚秀氏は「アベノミクスがもたらす具体的な果実以外にはない」と話す。まず今春の賃上げで日本景気の再浮揚にメドをつける。同時に海外勢に関心の高い雇用規制の改革や環太平洋経済連携協定(TPP)交渉を前進させることが欠かせないという。
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国内勢も危機感は共有している。「企業は内部留保をもっと投資にまわすべきだ」(麻生太郎副総理・財務・金融相)、「今年はアベノミクスの内容と実績が厳しく評価される一年になる」(日本取引所グループの斉藤惇グループ最高経営責任者)。年始の証券業界の集まりで関係者の表情には緩みがなかった。
14年の海外勢の日本株買越額は13年から急減した。改革が実を結べば証券各社は今年、再び2兆~5兆円程度の買い越しはあり得ると読む。待ったなしで成否が問われる15年は日本株にとっての正念場となる。 (川上穣)