日本株と投資信託のお役立ちノート

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(主に日経,ロイター,WSJから引用。賞味期限の短い記事は今後省きます)

クリミア編入1年(中)欧州、対ロ融和を転換 安全保障青写真描けず

2015年03月19日 | ロシア&CIS
〔15.3.19.日経新聞:国際2面〕


 「親ロシア派武装勢力は捕虜を釈放しないどころか、強制労働に使っている」。記者会見でまくし立てる大統領にメルケル首相が寄り添った。「(ロシアは)停戦合意を守るべきだ」

 メルケル氏はこの1年足らずの間にポロシェンコ氏と11回会談し、少なくとも60回は電話で話し合った。ウクライナ接近の一方でロシアとは距離を広げる。プーチン大統領が5月にモスクワで主催する対独戦勝70年の記念式典は欠席することを決めた。

「G8復活ない」
 親ロシアとされたドイツの覚悟を見てフランスなどもじわりとロシア離れを図る。「もはやロシアを加えた主要8カ国(G8)の枠組みの復活は想定できない」と欧州の外交筋は口をそろえる。

 少し前まではロシアは排除すべき相手ではなく、仲間に取り込むべき国だった。ドイツは冷戦時代からソ連との融和を進める東方外交を展開。1970年にはお互いに武力の不行使を誓う「モスクワ条約」で合意した。

 ソ連のゴルバチョフ大統領が80年代に「欧州共通の家」構想を打ち出すと、欧州はロシアが将来、統合に加わるかもしれないとのユーフォリア(幸福感)に浸った。北大西洋条約機構(NATO)もロシアを「戦略的パートナー」と呼んだ。

 ロシアが武力でクリミア半島を編入したことで、平和と安定を求める欧州の悲願だったロシアとの融和は逃げ水のように遠のき、幻想は消えた。欧州連合(EU)は米国と歩調を合わせ、対ロ経済制裁に踏み込み、外交の歴史的な転換に動く。

 経済を軸に積み上げた欧ロの結びつきはほぐれつつある。ミラノのブティックからはロシア人の姿が消え、オーストリアの銀行はロシアでの営業網の縮小に踏み切る。欧ロの貿易は細り、中銀も定期会合を減らした。

 水面下では冷戦期を思わせる工作も繰り広げられる。フランスの国民戦線など欧州各国の極右政党が親ロ色を強めている。クレムリン(ロシア大統領府)に近い銀行が活動資金を工面しているとの臆測も流れる。「敵陣営をかき乱す古いソ連の手法が復活した」と独政府筋はいう。

小国に戸惑い
 ロシアと再び対峙することに欧州の小国はとまどいを隠せない。「ロシアとの事務レベルでの交流を途絶えさせてはならない」。そう語ったのはブルガリアの政府首脳だ。スロバキア政府はモスクワでの戦後70年式典に出席するかどうかまだ悩んでいる。観光収入やエネルギーをロシアに頼る国は経済の土台が揺らぐことを心配する。

 練り直しが必要な安全保障政策の青写真も見えない。バルト3国とポーランドは冷戦崩壊以来、四半世紀ぶりの軍備増強に走るが、ロシアの軍事力には対抗できないのは目に見えている。ユンケル欧州委員長らが提唱する「EU軍創設」の具体策はこれからだ。

 「欧州と共通の価値観のために戦っている」。ポロシェンコ氏はベルリンでこう訴えたが、メルケル氏はウクライナを将来、EUに加盟させるかどうかについては煮え切らない。欧ロ対立の最大の犠牲者は置き去りにされるウクライナ国民だ。 (ベルリン=赤川省吾)

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