〔15.2.2.日経新聞:地域総合面〕

新年度からは地元大学進学生を優遇(高松市の香川大学)
大学進学などで県外に出た若者は卒業後も東京などの大都市圏に就職し、地元に戻ってこないケースが多い。こうしたことが、地方の人口減を招き、活力を奪う要因の一つだとして、香川県は大学卒業後、県内に戻って就職すれば一定額を免除する独自の奨学金制度を導入した。国も地方創生の一環で同様の制度導入を他の自治体に促している。
香川県は2012年度からこの制度を導入。卒業後、県内の企業などで3年以上働けば、奨学金(四年制大学で月額3万―6万4000円)のうち、月1万5000円分、最大で計72万円の返還が免除される。香川に戻らなかった場合は全額を返済する。
今春、進学予定の高校生などのうち、この奨学金制度を申し込んでいるのは122人。昨春、卒業生が出た短大や専門学校などでは、利用者32人のうち9人が地元に戻った。
制度を導入した浜田恵造・同県知事は「進学する高校生の8割が県外の大学に行き、卒業後も戻って来ない。地域の活力を取り戻すためにはどうしたらいいか考えた」と話す。県外進学は費用面の負担も重く、「安心して出産、子育てができるようにしたいという狙いもあった」という。
関西の大学に通っている高松市出身の女子学生(22)は「大学1年の時、その奨学金を知り、申し込んだ」といい、卒業後は香川に戻って働くことを決めた。「高齢化が進む中、若い自分が戻って地域の役に立てるならと思う。私の周りでは多くが大都市圏に就職するが、地元に戻る人がもっと増えてほしい」と話す。
県内では小豆島町が8年間働けば月額5万円の奨学金(総額で240万円)の全額を免除する独自の制度を導入。塩田幸雄町長は「町には毎年、100人以上の新規移住者がいるが、それでも人口減が止まらない。Iターンの呼びかけだけでなく、Uターン施策も重要」と話す。
香川県では新年度から、県内の大学に進学し、県内に就職する学生には既存の制度に上乗せして、さらに優遇する制度を検討。「県内大学を卒業する人は地元就職率が高い」というデータを基に、成果をさらに高めたい考えだ。
ただ、こうした制度を定着させるには、奨学金の充実だけでなく、就職先の選択肢の数や質も重要となる。同県の場合「世界的なシェアを誇り、技術が高く評価されている企業は多い」(浜田知事)といい、仕事がないわけではない。
それでも地方の進学校では、県外の有名大を出て都会の大企業などで活躍するのが成功者、という意識が根強く残る。娯楽など大都市が若者をひき付ける魅力を持つのも事実だ。
浜田知事は県内の進学校から東大に進学、旧大蔵省に入った経歴を持つが、「地方から東京へ、大阪へ、という若者の流れを変えたい」と意気込む。活性化に欠かせない「若い力」を地元へと呼び戻せるか。香川の挑戦の成果が注目される。
(高松支局長 岩沢健)

新年度からは地元大学進学生を優遇(高松市の香川大学)
大学進学などで県外に出た若者は卒業後も東京などの大都市圏に就職し、地元に戻ってこないケースが多い。こうしたことが、地方の人口減を招き、活力を奪う要因の一つだとして、香川県は大学卒業後、県内に戻って就職すれば一定額を免除する独自の奨学金制度を導入した。国も地方創生の一環で同様の制度導入を他の自治体に促している。
香川県は2012年度からこの制度を導入。卒業後、県内の企業などで3年以上働けば、奨学金(四年制大学で月額3万―6万4000円)のうち、月1万5000円分、最大で計72万円の返還が免除される。香川に戻らなかった場合は全額を返済する。
今春、進学予定の高校生などのうち、この奨学金制度を申し込んでいるのは122人。昨春、卒業生が出た短大や専門学校などでは、利用者32人のうち9人が地元に戻った。
制度を導入した浜田恵造・同県知事は「進学する高校生の8割が県外の大学に行き、卒業後も戻って来ない。地域の活力を取り戻すためにはどうしたらいいか考えた」と話す。県外進学は費用面の負担も重く、「安心して出産、子育てができるようにしたいという狙いもあった」という。
関西の大学に通っている高松市出身の女子学生(22)は「大学1年の時、その奨学金を知り、申し込んだ」といい、卒業後は香川に戻って働くことを決めた。「高齢化が進む中、若い自分が戻って地域の役に立てるならと思う。私の周りでは多くが大都市圏に就職するが、地元に戻る人がもっと増えてほしい」と話す。
県内では小豆島町が8年間働けば月額5万円の奨学金(総額で240万円)の全額を免除する独自の制度を導入。塩田幸雄町長は「町には毎年、100人以上の新規移住者がいるが、それでも人口減が止まらない。Iターンの呼びかけだけでなく、Uターン施策も重要」と話す。
香川県では新年度から、県内の大学に進学し、県内に就職する学生には既存の制度に上乗せして、さらに優遇する制度を検討。「県内大学を卒業する人は地元就職率が高い」というデータを基に、成果をさらに高めたい考えだ。
ただ、こうした制度を定着させるには、奨学金の充実だけでなく、就職先の選択肢の数や質も重要となる。同県の場合「世界的なシェアを誇り、技術が高く評価されている企業は多い」(浜田知事)といい、仕事がないわけではない。
それでも地方の進学校では、県外の有名大を出て都会の大企業などで活躍するのが成功者、という意識が根強く残る。娯楽など大都市が若者をひき付ける魅力を持つのも事実だ。
浜田知事は県内の進学校から東大に進学、旧大蔵省に入った経歴を持つが、「地方から東京へ、大阪へ、という若者の流れを変えたい」と意気込む。活性化に欠かせない「若い力」を地元へと呼び戻せるか。香川の挑戦の成果が注目される。
(高松支局長 岩沢健)