日本株と投資信託のお役立ちノート

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(主に日経,ロイター,WSJから引用。賞味期限の短い記事は今後省きます)

(新金融秩序 攻める中国・下) 欧州・アジアに決済銀拡大 「非ドル経済圏」にらむ

2015年01月19日 | 中国
〔15.1.19.日経新聞:1面〕


 「イランやスーダンなど米国の制裁対象国との金融取引は違法だ」。米司法省がフランスの銀行最大手のBNPパリバに巨額の罰金を科すとの情報が走った2014年6月、欧州各国に広がった「ルールを無理強いする米国への反感」を中国は見逃さなかった。

10カ所に新設
 中国当局は英国、ドイツで通貨・人民元の決済銀行を指名したのに続いてフランス、ルクセンブルクにも置く方針を打ち出した。ほかの通貨と自由に交換できない人民元を国境をまたぐ取引に使うには、中国に決済銀の設置を認めてもらうしかない。決済銀があると、取引の拡大で人民元が足りなくなりそうな時に、中国本国の市場からいつでも調達できる。

 今年1月5日、マレーシア、6日、タイ……。中国側は13年まで香港、マカオ、台湾、シンガポールの「中華圏」だけだった決済銀を、この1年で欧州、アジア、中東などに10カ所も新設した。国有大手銀の現地支店を使い、人民元の利用を世界に広げる戦略だ。

 「5年前とは様変わりだ」。久しぶりに上海に赴任した外資系銀行の幹部は、中国の輸入原油の7割を調達する中国石油化工集団(シノペックグループ)の資料を見てうなった。かつて米ドルで決済していた海外取引の大半が人民元建てに切り替わっていたからだ。

 中国は08年秋に起きた米国発の金融危機(リーマン・ショック)の後にドルの信認が一時揺らいだのをみて、人民元を国際的な貿易や投資に徐々に使えるようにする道を探り始めた。この時点では人民元の価値や国内企業の業績が為替相場に振り回されるドル依存から抜け出すことが主眼で、いわば守りの策だった。

 「人民元の国際化」を重要政策と明示する習近平指導部は攻めに転じようとしている。世界2位の経済大国には4兆ドル近い世界最大の外貨準備がある。将来像と見据えるのは、人民元が国際通貨として流通する「非ドル経済圏」の構築だ。

人民元2%未満
 「20%に引き上げる」。韓国は対中貿易の決済で占める人民元の比率を20倍に高める目標を掲げる。英国はチベットへの対応など中国が嫌がる政治問題に深入りするのをやめ、「ロンドンを人民元取引の世界的な中心地にする」(オズボーン財務相)と秋波を送る。中国人民銀行(中央銀行)の胡暁煉副総裁は欧州、アジア、アフリカを中心に「30を超える国が人民元を外貨準備として保有している」と語る。

 ドルやユーロ、円などと異なり、まだ人民元は自由な取引ができない通貨だ。中国の人民元外交のミソは不便な通貨を逆手にとり、相手を選別して投資や決済などの規制緩和の恩恵を認める手法にある。明や清の時代に海外との貿易を原則禁じる一方、朝貢国には特権を授けた体制に似る。

 ただ、いびつな戦略には限界も浮かぶ。世界全体の決済の4割強を占めるドルに対し、人民元はまだ2%未満だ。米国はロシアに金融制裁を仕掛け、基軸通貨国の強さを見せつけた。中国は成長力が陰り、14年の人民元相場は対ドルで5年ぶりに下落した。

 いくら中国が希望しても、世界を自由に行き交うマネーを意のままに制御できない。為替の急変やバブルの崩壊など日米欧の先進国は金融の負の連鎖を何度も経験した。中国が難しさをかみしめるのはこれからだ。

 大越匡洋が担当しました。

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