日本株と投資信託のお役立ちノート

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(主に日経,ロイター,WSJから引用。賞味期限の短い記事は今後省きます)

稼げる大卒 どう育てる 就職率低迷、2割が非正規雇用 職業教育重視の動き

2015年01月19日 | 国内:少子化・地方再生
〔15.1.19.日経新聞:総合・経済面〕



 大学での勉強が若者の役に立っていない――。そんな問題意識が世の中にじわりと広がっている。大学進学率は5割を超す一方、就職率は低迷している。大卒者が就いた仕事を雇用形態で見ると、非正規の割合が2割に達する。政府内では実践的な職業教育をする新しい学校制度をつくる動きが出てきた。就職後に職場で役立つ技能や知識を学校でどこまで教えられるのか。課題も多い。(松尾洋平)

 国際的に競争する「G(グローバル)型大学」と地域に根ざした「L(ローカル)型大学」。経営共創基盤の冨山和彦最高経営責任者(CEO)は昨年10月、文部科学省が開いた有識者会議に提出した資料でこんな大学の分類を提唱した。

 その上で「ごく一部のトップ校以外はL型大学と位置づけ、職業訓練校にする議論も必要」「(経営学者の)マイケル・ポーターでなく弥生会計ソフトの使い方を教えるべきだ」と主張した。

 大学進学率は1980年代まで20%台半ばだったが、90年代に入って一気に上昇した。大きな理由は大学の新設ラッシュや定員拡大だ。全国の大学数は2014年に781校と90年比の1.5倍、学生数は286万人と同1.3倍に増えた。

 大卒者の数が増える一方、企業側の求人ニーズはこの間、低迷した。

 リクルートワークス研究所によると、民間企業への就職希望者に対する求人数の倍率は、90年3月卒の学生で2.77倍だった。だが、00年3月卒は0.99倍まで低下、景気回復で人手が不足する足元(15年3月卒)でも1.61倍にとどまる。

 大学院進学の影響はあるものの、卒業者に占める就職者の割合は14年時点で69.8%と、バブル期のピーク(91年の81.3%)を1割以上下回る。経済協力開発機構(OECD)によると、大卒者の生涯賃金を大学4年間で費やす学費や高卒で得られたはずの賃金と比べた投資収益率は主要国で最低ランクにある。

 深刻なのは卒業後に就く仕事の質だ。独立行政法人労働政策研究・研修機構の小杉礼子特任フェローらの研究によると、大学卒業後の最初の仕事が非正規だった割合は、10~12年卒の場合、男性で20.6%、女性で23.1%に達する。小杉氏は「産官学で人を育てる仕組みを再構築しなければならない」と訴える。

▽訓練制度、独仏にヒント 専門校で実践力鍛える/資格で能力「見える化」

 実践的な職業訓練を見据えた大学をどうつくるかは課題も多い。最大の論点は何を教えるかだ。戦後の日本は企業による職場内訓練(OJT)が人材育成の根幹で座学での職業訓練は苦手分野だ。

 一つのモデルは高等専門学校にある。全国で57校ある5年制の高専は電子回路の理論を学びながら実際にロボットをつくるなど実践力を磨く。企業では即戦力との評価が高く、求人倍率はリーマン・ショック後でさえ15倍に迫る高さだった。

 ただ高専が18歳人口全体に占める割合は1%。教育内容もものづくりに偏る。ドイツでは幅広い業種で労働と教育が一体化した「デュアルシステム」制度が確立しており、これは一つの手本だ。

 2つ目は能力の認定だ。学んだ中身を客観的に示す制度は国家資格が整った看護師や介護士、保育士など一部にとどまる。フランスでは8000もの職業資格があり、能力の「見える化」が進む。日本でも職歴や能力を示すジョブカードやキャリア段位などの制度があるが、普及は道半ばだ。

 最後は従来の大学とのすみ分けだ。大学は先端研究を通じて人々の発展に貢献する使命もある。職業訓練に偏りすぎては科学技術の国際競争力に悪影響が出かねない。

 今後の教育のあり方について、産業界からの意見が少ないのも気になる。一連の課題は政府と産業界とが連携して解決する努力が欠かせない。 

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