日本株と投資信託のお役立ちノート

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(主に日経,ロイター,WSJから引用。賞味期限の短い記事は今後省きます)

シンガポール・ポスト、ネット通販の黒子に 脱・郵便依存、物流に軸足

2015年03月13日 | 外資:台・印・東南ア
〔15.3.13.日経新聞:アジアBiz面〕
 
シングポストはネット通販で購入した商品を受け取れるロッカーを設置している



 郵便大手のシンガポール・ポスト(シングポスト)が物流事業に軸足を移し始めた。中国の電子商取引(EC)最大手のアリババ集団と提携。アジアで急拡大するEC需要を取り込み、物流部門の売上高はこの5年で2倍になり、全体の5割弱を占めるまで成長した。ネットの普及で減る一方の郵便への依存から脱し、EC向け物流で生き残る戦略は世界の郵便会社のモデルになる。

 シンガポールのオフィス街に立つ青いロッカー。若い女性が立ち寄り、携帯電話に届いた暗証番号を画面に入力するとロッカーの扉が開いた。取り出したのはアリババ集団のネット通販サイト「淘宝網(タオバオ)」のロゴ入りの箱だ。シングポストが国内約70カ所に設置したネット通販商品の受け取り設備「POPステーション」は仕事が忙しく、自宅で通販商品を受け取れない一人暮らしの人に人気だ。

 ECの商品を自宅外のロッカーで受け取る動きは欧米でも広がり始めた段階だ。日本でも楽天が日本郵便と組み、今春から順次、設置を進める。

海外配送迅速に
 東南アジアには海外からECサイトが多く進出し利用者が増える一方、地場の物流大手は不在で注文した商品を届けるのに時間がかかる。そこで物流改革に目を付けたのがコンサルタント出身のヴォルフガング・バイエル最高経営責任者(CEO)だ。マッキンゼー&カンパニー時代に担当していたシングポストに引き抜かれる形で2011年にトップに就任した。

 郵便業界はインターネットの普及ではがきや封書などの郵便物が減る一方、ネット通販は急成長している。米調査会社イーマーケッターによるとアジア太平洋地域のネット通販の市場規模は14年に5250億ドル(約62兆円)に達し、初めて北米を超えた。17年には現在の2倍の1兆ドルを突破する見込みで拡大は続く。

 バイエル氏がCEOに就任して最初に取り組んだのがネット通販を支える物流システムなどを構築する部門「SPeコマース」の設立だ。米アマゾンやIBMなどから引き抜いたIT技術者がEC企業の需要を洗い出し「海外配送のスピードアップ」という課題を解決しようと戦略を練った。

 まず、独自の国際物流網の構築に着手した。M&A(合併・買収)を通じて東南アジアや日本、オーストラリア、インドなど世界22カ所に商品管理用の倉庫を確保した。中核となる巨大物流倉庫は来年、シンガポール東部に開設する。約160億円を投じ東京ドームほどの広さの倉庫に東南アジア市場向けの在庫を集約する。宅配事業も東南アジアの主要6都市やオーストラリアで始めた。

アリババと提携
 もう一つの大きな決断は昨年5月のアリババとの提携だ。3億シンガポールドル(約270億円)強で約1割の出資を受け入れた。アリババが持つ中国の運送網とシングポストの東南アジアの運送網を結び、効率的な物流ネットワークができあがる。例えば、中国からインドネシアへの商品発送にかかる時間は従来の半分以下の2週間に縮んだという。

 3月9日にはインドネシアの携帯電話販売会社トリコムセルと合弁会社の設立を発表した。インドネシア国内に約900あるトリコムセルの店舗を商品の受取場所に活用しEC事業を支援する。

 「シングポストの強みは150年以上の郵便事業で培った配達への信頼とブランド力だ」とバイエルCEOは胸を張る。英国統治時代からの歴史があり、遅配や誤配が少ないことで知られる。92年の民営化以降は事業多角化を探ってきた。郵便事業が細るのは世界の郵便会社共通の悩みだが、ネットの逆風を追い風に変え、国際的なEC物流企業への脱皮を目指す。 (シンガポール=菊池友美)

▽郵便各社、成長アジアで争奪戦
 世界の郵便会社はECの需要を取り込めるかどうかで業績は明暗を分けている。中でもシングポストは好調で、利益率は高水準を維持する。日本郵便は欧州物流大手のジオポストと昨年提携して国際宅配便に参入したのに続き、豪物流大手トール・ホールディングスの約6千億円での買収を決めた。アジアを中心としたEC物流の争奪戦は激しさを増しそうだ。

 シングポストの2014年10~12月期決算は売上高が前年同期比8%増の2億3900万シンガポールドル(約209億円)、純利益は同7%増の4200万シンガポールドル。売上高純利益率は18%に達した。欧州物流大手DHLインターナショナルを傘下に収め、物流分野で攻勢に出るドイツポストは足元の業績は堅調だが、売上高純利益率は3%台にとどまる。

 一方、ECの物流分野に出遅れた郵便会社の業績は厳しい。英ロイヤル・メールは欧州連合(EU)内の郵便自由化で国内シェアを海外勢に奪われ苦戦が続く。公社形態を維持する米郵政公社(USPS)も14年10~12月に赤字を計上した。

 国際物流で世界トップ5を目指す日本郵政傘下の日本郵便はアジアのEC向けでは後発だ。トールの売上高は8千億円規模と大きいが、石油掘削機器の輸送なども含み、宅配はビジネス書類など法人需要が中心だ。

 コンサルティング大手アクセンチュアのブローディー・バーラー氏は「シングポストは倉庫管理などネット通販のサプライチェーンに入り込んでいるのが強み。企業間物流に強いトールとは範囲が異なる」と分析する。 

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