日本株と投資信託のお役立ちノート

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(主に日経,ロイター,WSJから引用。賞味期限の短い記事は今後省きます)

ASEAN共同体 発足まで1年(下) 成長の裏で「開放恐怖症」、多様性ゆえのハードル

2014年12月31日 | 東南アジア(ASEAN)
〔14.12.31.日経新聞:国際国際1面〕


 「いくらかかってもいいから、英語と金融のできる人材をかき集めろ」。ミャンマーの最大都市ヤンゴンで今、激烈な争奪戦が始まっている。

 ミャンマー政府は今年10月、日本のメガ3行を含む外銀9行に支店開設の免許を与えた。来年には保険業の外資開放や証券市場開設も控える。国軍支配下で半世紀にわたって門戸を閉ざしてきたこともあり、金融業の層は薄い。シンガポールなどで実務経験を持つ人材は引っ張りだこで、報酬が高騰しているという。

保護主義に走る
 東南アジア諸国連合(ASEAN)内で進む外資導入や金融機関の再編劇は、ASEAN経済共同体(AEC)発足を先取りする動きだ。急速な成長と膨大なインフラ需要に見合うマネーを行き渡らせるには、金融分野の協調は欠かせない。「カネ」の流れの改革はAECの大きな課題だ。

 だが、現実に目立つのは保護主義的な動きだ。

 人口・経済規模でASEANの4割を占めるインドネシアでは現在、政府が金融機関への外資規制の一段の強化を検討中。銀行についてはすでに2012年に出資上限を99%から原則40%に引き下げることを決めている。保険業の上限も現在の80%から49%への引き下げが取り沙汰され、外資系各社に警戒感が広がる。

 10月に就任したジョコ大統領は選挙戦中から「外銀には規制が必要だ」と公言。シンガポールなどでインドネシアの銀行の事業展開が制限されているとして、「我々に門戸開放を迫るなら、彼らも市場を開くのが筋だ」と強硬論をかざす。

 1年後のAEC発足を前に広がる開放恐怖症。根っこにあるのは、域内の格差の大きさだ。

 株式時価総額でみると、地域の金融ハブであるシンガポール市場は約7700億ドル。インドネシアはその6掛け、フィリピンは3分の1程度の規模にとどまる。ASEANの証券市場を相互接続する制度に参加するのは現時点でシンガポール、マレーシア、タイのみ。「まず国内市場を充実させたい」(フィリピン証取のハンス・シカット最高経営責任者)との声も漏れる。

 自由化が進めばシンガポールなどに金融機能が集中し、未熟な国内金融機関は淘汰される――。そんな不安は根強い。

人材流出も危惧
 「ヒト」の流動性を高めることにも慎重論は強い。後発組の国々では、人材が流出し、さらに産業の育成が遅れる悪循環に陥りかねない。

 最も豊かなシンガポールの1人当たり国内総生産(GDP)は13年時点で約5万5千ドルと日米を上回る。一方、世界の最貧国の一つ、ミャンマーは900ドル弱で、その差は実に60倍超。これだけの格差があると、野放図にヒトの行き来を許せば摩擦や混乱は避けられない。

 大和総研の神尾篤史研究員は「できる分野から着実に自由化や統合を進めるのが重要。後発国には専門家派遣など支援が必要だ」と話す。価値観や文化の共有基盤を持つ欧州でさえ、一体感のある経済統合に半世紀を要した。豊かな多様性ゆえ、ASEANを待つハードルはさらに高い。

 ASEANは11月にミャンマーで開いた首脳会議で、16年以降も地域統合の取り組みを続けるとする「ネピドー宣言」を打ち出した。AECが一大経済圏という理想像にたどり着くには、長い道のりが待っている。  (マニラ=佐竹実)

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