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(主に日経,ロイター,WSJから引用。賞味期限の短い記事は今後省きます)

ウクライナ東部、再び緊迫 親ロ派攻勢、空港掌握

2015年01月27日 | ロシア&CIS
〔15.1.27.日経新聞:国際面〕


 【モスクワ=石川陽平】ウクライナ東部の情勢が再び緊迫してきた。隣国ロシアが支援する武装勢力が政府軍に対して攻勢に転じ、戦略的に重要なドネツク空港を掌握した。貿易港のマリウポリ近郊も砲撃し、約30人が死亡した。和平協議が暗礁に乗り上げるなか、親ロ派武装勢力には戦闘で劣勢を一気に挽回しようという焦りが見える。欧米はロシアを批判し、新たな制裁発動も辞さない構えだ。

 マリウポリ近郊では24日、親ロ派によるとみられる激しい砲撃が続き、市民30人が死亡した。2014年9月の停戦合意以降では、最大級の犠牲者が出ている。アワコフ内相は26日、負傷者も多く出たとして「105人の市民が病院に搬送された」と親ロ派を批判した。一方、親ロ派は砲撃を否定し、政府軍の「扇動だ」と主張した。

 戦火は南方のマリウポリやルガンスク州に急速に広がってきた。1月中旬までは政府軍によるドネツク市への砲撃や同市近郊の町、ドネツクの空港を巡る攻防が主だった戦闘だったが、24日にはルガンスク市北方の政府軍が管理するシャスチエも砲撃され、市民2人が死亡した。

 親ロ派が攻勢に出た背景には形勢の悪化を押しとどめ、政府軍に対して優位を確立する狙いがある。昨年2月の政変で誕生した親欧米政府に反発して武装蜂起した親ロ派はドネツク、ルガンスク2州の約3割の地域を支配してきたが、政府から経済封鎖を受け、停戦合意後も政府軍の強い軍事圧力を受ける。

 ロシアも東部の戦略が行き詰まり、親ロ派への軍事支援で事態の打開を急いでいるもようだ。ウクライナ政府に東部に高度な自治権を与える「連邦制」の導入を求めるが、繰り返し拒否されている。

 ロシア経済も欧米による制裁で急速に悪化した。ウクライナ政府と親ロ派の直接協議の再開も働きかけているが、実現のめどが立たない。

 ウクライナの有力シンクタンク「グローバル戦略研究所」のワジム・カラショフ所長は「ロシアは東部情勢を悪化させ、ウクライナ政府を親ロ派との交渉の席に引きだそうとしている」と分析した。政府と親ロ派は昨年9月に停戦や東部への「特別な地位」の付与を柱とする和平計画で合意したが、戦闘が収まらず、形骸化した。

 ロシアと仏独ウクライナの4カ国は東部危機に関する首脳会議を開く方針だが、日程の調整が遅れている。前提となるウクライナ政府と親ロ派の直接協議の開催が遅れているためだ。

 ウクライナのクリムキン外相は25日、「4カ国に(ウクライナ寄りの)欧州連合(EU)と米国を加える」ことを検討していると述べ、ロシアをけん制した。

 東部情勢の行方は予断を許さない。ポロシェンコ・ウクライナ大統領や同国軍によると、親ロ派はロシア軍から兵員や戦車の補充を受けて戦力を増強している。

 これに対し、ウクライナ軍は15年、3回に分けて兵力を動員する計画で、1回目だけで5万人を招集。政府内ではヤツェニュク首相ら強硬派が発言力を強め、親ロ派との協議を難しくしている面もある。

▽ウクライナ東部の危機とは
 2014年3月のロシアによるクリミア半島編入に続いて、ドネツク、ルガンスク両州で起きた、ウクライナ政府軍と親ロシア派武装勢力の武力衝突。親欧米派による同年2月の政変に反発し、4月に「人民共和国」創設を宣言した親ロ派に対して、政府軍が「対テロ作戦」に乗り出した。
 親ロ派を後押しするロシアと、政府を支援する欧米の対立も深まり、対ロ制裁が発動された。 

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