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日本株と投資信託のお役立ちノート

株や投信の運用に役立つ記事を探します。
(主に日経,ロイター,WSJから引用。賞味期限の短い記事は今後省きます)

バンガロール・インドIT都市(上) 世界企業の意思決定担う 「20年,シリコンバレー抜く」

2015年01月20日 | インド ・ スリランカ
〔15.1.20.日経新聞:アジアBiz面〕


 世界のIT(情報技術)勢力図でインドの存在感が増している。かつての下請けから脱し、企業の意思決定まで左右する高度なサービスが台頭。潤沢な人材はベンチャー創出にも向かう。インドが「世界の頭脳」へ――。うねりの中心、南部の都市バンガロールは米シリコンバレーを猛追する勢いで沸いている。

 眺めのいい高層ビル。執務室の壁に米国の起業家3人の肖像画がかかっている。マイクロソフトのビル・ゲイツ、アップルのスティーブ・ジョブズ、アマゾン・ドット・コムのジェフ・ベゾス。

「何でもやる」
 「それぞれサイエンス、アート、スケールの象徴だ。わが社には全てある」。部屋の主、ディラージ・ラジャラム(40)がいう。ビッグデータ分析会社ミューシグマの最高経営責任者(CEO)。ITを洗練された形で使いこなし、事業を拡大すると自信たっぷりだ。

 コンサルティング会社を辞め2004年に創業した。▽ムダのない輸送ルートを見つけ、流通大手の物流費を30%カット▽販売量の予測精度を高め、食品メーカーの売上高を2%アップ……。企業が持つデータから業務改善の糸口を探し、意思決定を指南する。

 担い手はその名も「ディシジョン・サイエンティスト」。社内大学でデータ解析や統計、経営学をたたきこんだ3500人の精鋭だ。世界の有力企業「フォーチュン500」のうち米ウォルマート・ストアーズ、マイクロソフトなど140以上を顧客に持つ。現地メディアによると、15年は売上高2億5千万ドル(約290億円)をめざす。

 ラジャラムはデータを収集・分析する新手法の開発にも貪欲だ。社内ラボでは様々な技術を体験できる。「あなたは毎分78」。カメラで顔の血流をとらえ、30秒で心拍数を割り出すシステムという。室内にはドローン(無人飛行機)も舞う。「ソフト、サービス、ハード。何でもやる」

 インドのIT関連産業団体NASSCOMによると同国では314万人がITサービスに従事しコストは日本の6分の1だ。年100万人の理系学生が卒業する。「20年にはバンガロールだけでIT人材が200万人に達し、米シリコンバレーを抜く」(地元カルナタカ州政府幹部)。進化するITと結びつき、新サービスを育む。

 製薬大手を顧客に持つインデジンライフシステムズの取り組みがその一つ。薬の情報をわかりやすく伝えるデジタル資料の作成や製薬会社の担当者と医師がネットで対話するシステムの開発などを手がける。同社では医療や薬の専門家とプログラマーが協力して働く。

 「製薬会社は業務の効率化、(医師の接待禁止など)規制への対応を迫られる」。CEOのマニッシュ・グプタ(42)は医療をIT化するサービスで世界市場を狙う。1200人の社員は2年で2千人を超す勢いだ。

 インドは1990年代以降、米欧企業からシステム開発や運用を引き受け、ITの力を蓄えてきた。市場規模は約1200億ドルまで膨らむが「量」だけでなく「質」の変わりぶりも急だ。

 財務や調達などの業務を企業から請け負うビジネス・プロセス・アウトソーシング(BPO)の大手アクセンチュア。バンガロールを軸に専門員2万4千人を抱えるインドはサービスの要だ。幹部のマニッシュ・シャルマ(47)が明かす。「顧客の要求はコスト節約から、組織の変革、売り上げ増などへと高度化している」。もはや単純作業の下請けではない。

 米シスコシステムズ、インテル……。バンガロールのあちこちに有力外資のビルがそびえ立つ。アウトソーシングから一歩踏み込み、自前の施設を設ける動きが広がる。

日本は影薄く
 米流通大手ターゲットのバンガロール拠点を訪ねた。インドには1店もないが3千人を雇う。ソーシャルメディア上の顧客の声などビッグデータの分析、ネット販売やサプライチェーンに必要な技術開発などが仕事だ。

 「小売りはITがけん引するビジネスになった」とインド法人社長のナブニート・カプーア(43)。モバイルや検索などで本業に役立つ技術を発掘しようとベンチャー支援にも乗り出した。

 日本勢の影は薄い。米国の570社、欧州の157社がインドに開発拠点を持つが、日本は10~20社との調査もある。このままではグローバル競争に取り残されかねない。そんな危機感から進出日本企業が核となり14年、NASSCOMに日本委員会ができた。インドのITの最前線を学ぶためだ。代表の武鑓行雄(ソニー・インディア・ソフトウェア・センター社長)は「日本企業はインドへの理解を深める必要がある」と訴える。

 モディ政権はITインフラを全土に整える構想を掲げる。増殖するインドの頭脳をどう取り込むか。グローバル経営の重要テーマだ。 =敬称略 (編集委員 村山恵一)

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