日本株と投資信託のお役立ちノート

株や投信の運用に役立つ記事を探します。
(主に日経,ロイター,WSJから引用。賞味期限の短い記事は今後省きます)

新薬開発活気づく 投資急増しバイオ振興策寄与 プリズムファーマ/皮膚難病薬,ナノキャリア/抗がん剤

2015年10月19日 | 8.医薬品
(日経10/19:新興・中小企業面)
 創薬ベンチャーの新薬開発が活気づいている。プリズムファーマ(横浜市)は皮膚難病の治療薬の臨床試験(治験)を米国とドイツで開始。ナノキャリアは今月、国内で膵臓(すいぞう)がん薬の治験の最終段階に入った。リーマン・ショック後に資金調達で苦戦した創薬ベンチャーだが、国のバイオ振興策も追い風に資金が流入。バイオ・製薬分野への2014年度の投資は約150億円と前年度比5割伸びた。

  
ナノキャリアは副作用の少ないがん治療薬の開発を進める(千葉県柏市)

 プリズムはアミノ酸の結合物「ペプチド」を使った新薬開発を進める。細胞内のたんぱく質に作用するのが特長で難病向け治療薬として期待されている。米国ではがん治療の新薬候補「PRI―724」の治験を始めているが、皮膚が硬くなる「強皮症」など他の疾患にも効果が見込めることが分かり、プリズム単独でも米国とドイツで治験を始めた。13年に実施した第三者割当増資で調達した14億円を開発資金に充てている。

 ナノキャリアは「ミセル化ナノ粒子」という微粒子で抗がん剤を包み、がん細胞に効率よく届ける技術が強みだ。台湾の製薬会社オリエントユーロファーマと提携し、アジアに販路を広げる。膵臓がんの治療薬「NC―6004」は最終段階の治験を台湾やシンガポール、韓国などアジア各国・地域で実施。今月1日から日本でも始めた。

 日本化薬に開発権を一時金5億5000万円で譲渡した乳がん治療薬「NK105」は国内での治験を終えた。16年3月までに販売に必要な承認申請をする見通しだ。

 デ・ウエスタン・セラピテクス研究所は国内で緑内障治療薬「グラナテック」の承認を取得、昨年末から興和を通じて販売を始めた。ピーク時に年76億円の売上高を見込み、収益の一部を受け取る。緑内障薬「H―1337」の動物実験も来年の開始を検討する。

 新薬開発に勢いがあるのは、資金調達の環境が改善しているからだ。一般財団法人ベンチャーエンタープライズセンターによると、14年度の国内ベンチャーキャピタル(VC)のバイオ・製薬部門への投資額は約150億円と13年度比で5割増えた。2年前と比べると3倍の水準。14年度の全分野の投資額が36%減っているのとは対照的だ。

 創薬ベンチャーは00年ごろから起業が相次いだ。ただ05年以降は資金不足で経営に行き詰まる例も目立ち始めた。その後もリーマン・ショックの影響で資金の流入は伸び悩んだ。新薬開発は長期戦になるため「10年ほどで投資回収を求めるVCから敬遠される傾向が強かった」(大手VC)。

 風向きが変わったのは12年ごろだ。京都大学の山中伸弥教授がiPS細胞の研究でノーベル賞を受賞したのを機に、政府が再生医療や創薬を育成する方針を打ち出した。市場は再びバイオ関連企業に注目し始めた。

 いちよし経済研究所の山崎清一首席研究員は「創薬ベンチャーは投資回収に向かっている」と指摘する。商品化が秒読み段階に入った例が増え、欧米の製薬大手と共同開発を進めることで上場当初から利益を確保する企業も登場し始めた。こうした変化が資金を呼び込む材料になっている。

▼創薬ベンチャー、大手との連携課題
 資金調達の環境が改善している創薬ベンチャーだが、国内の大手製薬との連携は遅れている。IT(情報技術)分野ではサイバーエージェントやディー・エヌ・エーといった新興企業が有望企業に投資したり、営業や採用面で支援したりしている。

 製薬大手からのスピンアウト(分離)はあるものの、開発支援や人事交流はまだ少ない。日本の製薬業界は「自前・自尊主義が根強い」とされる。このため海外にパートナーを求める動きが広がりつつある。

 ペプチドリームは、たんぱく質の断片を使った次世代医薬品に取り組んでいるが、共同開発の相手は仏サノフィやスイスのノバルティスなど海外勢ばかりだ。窪田規一社長は「新しい技術なので国内の製薬会社は様子見と感じている」と話す。

 アムジェンなど世界的な製薬会社に成長したベンチャーを生んだ米国では「ベンチャーと大手の間で人材の交流が活発。臨床試験や事業化計画といったノウハウも共有されている」(いちよし経済研究所)。

 2015年のノーベル生理学・医学賞を受賞した大村智博士が発見した物質を米メルクが動物用の駆虫薬「イベルメクチン」として商品化したように、日本生まれで世界的な薬に育った例はある。創薬ベンチャーが日本で成長を続け、国内産業を活性化するには事業しやすい環境や土壌作りも欠かせない。


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