〔14.12.23.日経新聞:マーケット総合1面〕
22日の日経平均株価は小幅続伸した。海外を中心に市場参加者が減り、東京証券取引所第1部の売買代金は、かろうじて2兆円台に乗せた。市場全体が盛り上がりを欠く中でも上場来高値を更新した銘柄をみると、2014年を象徴した成長株志向が色濃くにじむ。15年も「カネ余り下での銘柄選別」が引き続き相場のテーマになりそうだ。
「なんでいまだに流入するのか」。メガバンクの幹部は驚く。大手銀行の11月の預金残高は前年同月比で4.8%増えた。伸び率は02年5月以来、12年半ぶりの大きさだ。関係者は「業績の好調な大企業が手元資金として預金を増やしている」と話す。
一方の貸出金は2.0%増だった。預金と貸出金の格差は拡大が続く。米連邦準備理事会(FRB)は15年にも利上げする見通しだが、日本国内では運用難による金利低下圧力は簡単に解消しそうにない。
カネ余り状況でも銘柄選別は続く。キッコーマン、西武ホールディングス、元気寿司――。22日に上場来高値を付けた銘柄にはグロース(成長)株という共通点がある。投資尺度となる株価純資産倍率(PBR)は3~4倍程度だ。
PBRの低いバリュー(割安)株ではなく、成長株を買う。こうした選別は最近に限ったことではない。バリュー株とグロース株の動きを日米欧でみると、この1~2年は「日本株のグロース優位」が明確になる。
成長株の多くは自己資本利益率(ROE)など資本効率や収益性が高く、株価の変動率が相対的に小さくなる傾向がある。この点に注目して、需給面で成長株を後押ししたのが、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)などの年金マネーだ。ROEや株価変動率などに着目する「スマートベータ」と呼ばれる新たな株価指数は、GPIFの採用をきっかけに一気に広がった。三菱UFJ信託銀行では11月末、スマートベータに連動する運用資産残高が1兆円を超えた。3月末に比べ約2倍となり「今後も残高は増えそうだ」(増田義之インデックス戦略運用部長)という。
ゴールドマン・サックス証券の秋葉茅麦氏は「今年有効だった投資尺度は15年も効果を上げる可能性が大きい」と指摘する。ROEなどの「品質」の高さに注目した資金流入が続くとみるためだ。
品質で銘柄を選ぶ手法は着実に広がっている。農林中央金庫は14年秋、運用助言会社「農林中金バリューインベストメンツ」を設立した。バリューと名付けたが、持続的成長が見込める銘柄に厳選投資する。機械など世界的に市場シェアが高い銘柄を保有しているようだ。
国内の年金や金融機関などから1500億円強を受託し、14年の運用成績は25%超と市場平均の約10%を上回る。運用責任者の奥野一成氏は「ほれ込んだ銘柄は半永久的に持ちたい」と話す。
ROEの改善に向けて、企業が現預金を株主配分や成長投資に使う動きも鮮明になりつつある。長期投資家が報われる時代が近づいているのかもしれない。 (田口良成)
22日の日経平均株価は小幅続伸した。海外を中心に市場参加者が減り、東京証券取引所第1部の売買代金は、かろうじて2兆円台に乗せた。市場全体が盛り上がりを欠く中でも上場来高値を更新した銘柄をみると、2014年を象徴した成長株志向が色濃くにじむ。15年も「カネ余り下での銘柄選別」が引き続き相場のテーマになりそうだ。
「なんでいまだに流入するのか」。メガバンクの幹部は驚く。大手銀行の11月の預金残高は前年同月比で4.8%増えた。伸び率は02年5月以来、12年半ぶりの大きさだ。関係者は「業績の好調な大企業が手元資金として預金を増やしている」と話す。
一方の貸出金は2.0%増だった。預金と貸出金の格差は拡大が続く。米連邦準備理事会(FRB)は15年にも利上げする見通しだが、日本国内では運用難による金利低下圧力は簡単に解消しそうにない。
カネ余り状況でも銘柄選別は続く。キッコーマン、西武ホールディングス、元気寿司――。22日に上場来高値を付けた銘柄にはグロース(成長)株という共通点がある。投資尺度となる株価純資産倍率(PBR)は3~4倍程度だ。
PBRの低いバリュー(割安)株ではなく、成長株を買う。こうした選別は最近に限ったことではない。バリュー株とグロース株の動きを日米欧でみると、この1~2年は「日本株のグロース優位」が明確になる。
成長株の多くは自己資本利益率(ROE)など資本効率や収益性が高く、株価の変動率が相対的に小さくなる傾向がある。この点に注目して、需給面で成長株を後押ししたのが、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)などの年金マネーだ。ROEや株価変動率などに着目する「スマートベータ」と呼ばれる新たな株価指数は、GPIFの採用をきっかけに一気に広がった。三菱UFJ信託銀行では11月末、スマートベータに連動する運用資産残高が1兆円を超えた。3月末に比べ約2倍となり「今後も残高は増えそうだ」(増田義之インデックス戦略運用部長)という。
ゴールドマン・サックス証券の秋葉茅麦氏は「今年有効だった投資尺度は15年も効果を上げる可能性が大きい」と指摘する。ROEなどの「品質」の高さに注目した資金流入が続くとみるためだ。
品質で銘柄を選ぶ手法は着実に広がっている。農林中央金庫は14年秋、運用助言会社「農林中金バリューインベストメンツ」を設立した。バリューと名付けたが、持続的成長が見込める銘柄に厳選投資する。機械など世界的に市場シェアが高い銘柄を保有しているようだ。
国内の年金や金融機関などから1500億円強を受託し、14年の運用成績は25%超と市場平均の約10%を上回る。運用責任者の奥野一成氏は「ほれ込んだ銘柄は半永久的に持ちたい」と話す。
ROEの改善に向けて、企業が現預金を株主配分や成長投資に使う動きも鮮明になりつつある。長期投資家が報われる時代が近づいているのかもしれない。 (田口良成)