(日経7/29:企業総合面)
<訂正>29日付朝刊企業総合面「川重、航空機に240億円投資」の記事中で、「年産10機」とあったのは「月産10機」の誤りでした。(2015/7/31 8:38)
川崎重工業は航空機事業で大型投資に踏み切る。岐阜県で米ボーイング向けに機体の合金部品を量産する工場を新設し、騒音を低減する機体を研究開発する設備も80年ぶりに建て替える。投資額は合計で約240億円。世界の航空機産業は年率5%の成長が見込まれており、積極投資で成長に弾みをつける。

川崎重工業が製造する「787」の胴体(愛知県弥富市の工場)
川崎重工はボーイングの機体を分担生産する主要サプライヤー。ボーイングは1000機強を受注した最新鋭機「787」を現在の月産10機から2019年に14機に引き上げるほか、17年ごろからは大型機「777X」の生産も始める。
川崎重工が岐阜工場(岐阜県各務原市)に新設するのは、胴体や機体の構造部に使われる部品の加工工場。アルミやチタン合金といった金属部品に表面処理を施す設備で、生産能力を1.5倍に増強する。6メートルの中小型から10メートル超の大型まで幅広いサイズの部品を処理できるようになる。18年度から稼働する。
金属を化学薬品に浸す中核工程の処理にはロボットや搬送装置を使って全面的に自動化し、生産コストを1割以上引き下げる。投資額は190億円。
川崎重工はこれとは別に、初飛行前にすでに320機を受注している「777X」向けでも250億円を投じた新工場建設を決めている。
防衛省向け航空機の開発では、岐阜工場の「風洞」と呼ばれる研究開発設備を約80年ぶりに建て替える。敷地面積は5千平方メートルで、投資額は50億円。20年に稼働させる計画だ。
秒速最大100メートルの人工気流を航空機の縮小サイズの模型に当てて、機体にかかる圧力や騒音となる風切り音を計測し、データを解析する。近年、空港を離着陸する機体は騒音規制が厳しくなっており、空気圧を減らせる機体の設計開発を通して騒音低減や燃費の改善を目指す。
特殊材料を多用し高度な安全性も求められる航空機部品は付加価値が高く、海外生産は難しい。14年度の日本の航空機生産額は前年度比17.1%増の1兆6613億円と2年連続で過去最高額を更新した。15年度も同水準となる見通しだ。
日本勢は右肩上がりの成長をにらんだ大型投資に動いており、三菱重工業や富士重工業も相次ぎ新工場やライン新設を決めている。高度な品質管理や独自の生産技術が根付く国内で積極投資を進め、安定供給していく考えだ。
▼ジャムコ、3工場を新設 ボーイング増産に対応
米ボーイングの増産や新型機投入は他の航空機関連メーカーにも波及している。機内のラバトリー(化粧室)やギャレー(厨房設備)で世界大手のジャムコは、新潟県と宮崎県の3カ所に新工場を設ける。他社の既存建屋を買い取り設備を導入、2016年度にも生産を始める。投資額は約25億円。

ジャムコは品質管理と安定供給に強みを持ち、ボーイング「787」などにラバトリーを独占供給する。次期大型機「777X」にも独占供給が決まっており、今年から設計を始めた。
制御機器大手のナブテスコも3月、777X向けの基幹部品を受注。主翼後方を動かしながら機体の傾きや高度を調整する「アクチュエーター」と呼ぶ制御装置で独占供給が決まった。
現行の「777」では部品は4種類だったが、777Xでは8種類にまで受注を増やしており、岐阜工場(岐阜県垂井町)の生産能力増強も検討中だ。
日本航空機開発協会(東京・千代田)によると、世界で運航されるジェット旅客機数は2034年に3万7147機と14年から約2倍に増える見通し。製造機数ベースでボーイングと欧州エアバスはほぼシェアを二分しており、今後も激しいつばぜり合いを演じそう。
日本の航空機関連各社が大型投資後、着実に収益を刈り取るには、ボーイングの厳しいコスト削減要求に耐えながら納期と品質を順守することが必要になる。
<訂正>29日付朝刊企業総合面「川重、航空機に240億円投資」の記事中で、「年産10機」とあったのは「月産10機」の誤りでした。(2015/7/31 8:38)
川崎重工業は航空機事業で大型投資に踏み切る。岐阜県で米ボーイング向けに機体の合金部品を量産する工場を新設し、騒音を低減する機体を研究開発する設備も80年ぶりに建て替える。投資額は合計で約240億円。世界の航空機産業は年率5%の成長が見込まれており、積極投資で成長に弾みをつける。



川崎重工業が製造する「787」の胴体(愛知県弥富市の工場)
川崎重工はボーイングの機体を分担生産する主要サプライヤー。ボーイングは1000機強を受注した最新鋭機「787」を現在の月産10機から2019年に14機に引き上げるほか、17年ごろからは大型機「777X」の生産も始める。
川崎重工が岐阜工場(岐阜県各務原市)に新設するのは、胴体や機体の構造部に使われる部品の加工工場。アルミやチタン合金といった金属部品に表面処理を施す設備で、生産能力を1.5倍に増強する。6メートルの中小型から10メートル超の大型まで幅広いサイズの部品を処理できるようになる。18年度から稼働する。
金属を化学薬品に浸す中核工程の処理にはロボットや搬送装置を使って全面的に自動化し、生産コストを1割以上引き下げる。投資額は190億円。
川崎重工はこれとは別に、初飛行前にすでに320機を受注している「777X」向けでも250億円を投じた新工場建設を決めている。
防衛省向け航空機の開発では、岐阜工場の「風洞」と呼ばれる研究開発設備を約80年ぶりに建て替える。敷地面積は5千平方メートルで、投資額は50億円。20年に稼働させる計画だ。
秒速最大100メートルの人工気流を航空機の縮小サイズの模型に当てて、機体にかかる圧力や騒音となる風切り音を計測し、データを解析する。近年、空港を離着陸する機体は騒音規制が厳しくなっており、空気圧を減らせる機体の設計開発を通して騒音低減や燃費の改善を目指す。
特殊材料を多用し高度な安全性も求められる航空機部品は付加価値が高く、海外生産は難しい。14年度の日本の航空機生産額は前年度比17.1%増の1兆6613億円と2年連続で過去最高額を更新した。15年度も同水準となる見通しだ。
日本勢は右肩上がりの成長をにらんだ大型投資に動いており、三菱重工業や富士重工業も相次ぎ新工場やライン新設を決めている。高度な品質管理や独自の生産技術が根付く国内で積極投資を進め、安定供給していく考えだ。
▼ジャムコ、3工場を新設 ボーイング増産に対応
米ボーイングの増産や新型機投入は他の航空機関連メーカーにも波及している。機内のラバトリー(化粧室)やギャレー(厨房設備)で世界大手のジャムコは、新潟県と宮崎県の3カ所に新工場を設ける。他社の既存建屋を買い取り設備を導入、2016年度にも生産を始める。投資額は約25億円。

ジャムコは品質管理と安定供給に強みを持ち、ボーイング「787」などにラバトリーを独占供給する。次期大型機「777X」にも独占供給が決まっており、今年から設計を始めた。
制御機器大手のナブテスコも3月、777X向けの基幹部品を受注。主翼後方を動かしながら機体の傾きや高度を調整する「アクチュエーター」と呼ぶ制御装置で独占供給が決まった。
現行の「777」では部品は4種類だったが、777Xでは8種類にまで受注を増やしており、岐阜工場(岐阜県垂井町)の生産能力増強も検討中だ。
日本航空機開発協会(東京・千代田)によると、世界で運航されるジェット旅客機数は2034年に3万7147機と14年から約2倍に増える見通し。製造機数ベースでボーイングと欧州エアバスはほぼシェアを二分しており、今後も激しいつばぜり合いを演じそう。
日本の航空機関連各社が大型投資後、着実に収益を刈り取るには、ボーイングの厳しいコスト削減要求に耐えながら納期と品質を順守することが必要になる。