日本株と投資信託のお役立ちノート

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(主に日経,ロイター,WSJから引用。賞味期限の短い記事は今後省きます)

(原油安と世界・上) 窮地のロシア 岐路に

2014年12月22日 | エネルギー:化石系 (石炭石油)
〔14.12.18.日経新聞:1面〕


 プーチン・ロシア大統領の怒りが目に浮かぶ展開だ。16日午前1時前に発表した電撃利上げにもかかわらず、ロシアの通貨ルーブルは一時1ドル=80ルーブル目前まで売り込まれた。

協調か対立か
 ウクライナ領クリミア半島の自国編入で絶頂を極めて9カ月。原油安が連邦予算の半分を石油ガス部門に頼るロシアを追い詰めている。「我々を破壊する試みと戦う」。プーチン大統領はこう強調するがルーブル安で物価上昇は10%を超す勢い。資金難に陥った国営石油大手ロスネフチは政府に2兆ルーブルの支援を求めた。

 通貨防衛を目的とする利上げは、景気後退に拍車をかけロシア国民の痛みを増す面がある。「国内軍を投入すれば抑え込める」。国内の反プーチン運動の再燃を懸念するコロコリツェフ内務相はこう宣言した。

 夏場に100ドルを超えていた原油価格は半値近くに下げたが底値は見えない。その軌跡は価格が高騰した1970年代の反動が出た80年代と重なる。85年に1バレル30ドル超だった原油価格は10ドル割れまで急落。原油輸出への依存を強めていたソ連を直撃した。「ソ連のアフガニスタン侵攻に反発するサウジアラビアと米国が結託した」。こんな陰謀説すら飛び交った。

 今回もウクライナ問題で米欧とロシアが対立を深める「新冷戦」と呼ばれる状況下だ。中東ではサウジがイランと敵対し、そのイランをロシアが支援する。イランのロウハニ大統領は10日の閣議で「(サウジが減産を拒むのはイランを追い込もうとする)政治的な動機もある」とぶちまけた。

 最大の焦点は今回もロシアだ。80年代の原油安で窮地に陥ったソ連の最高指導者ゴルバチョフ氏は改革にかじを切り、米欧との緊張緩和に動いた。ソ連の解体プロセスが世界的動乱にならなかったのは、西側との協調を探ったゴルバチョフ氏の功績が大きい。

 原油安を機にプーチン政権が欧米との関係修復に動けば世界は安堵する。日米欧の経済制裁の緩和が進めばルーブル相場は底を打ち、深手を負ったロシア経済の回復の道筋を描きやすくなる。「制裁緩和は(ウクライナ問題での)プーチン大統領の行動次第だ」。ルーブル相場が底割れした16日、米ケリー国務長官は水を向けた。

 現実がそううまくいくかどうか。ロシア政府筋は「国民は景気悪化が大統領の責任ではなく米国の攻撃によるものだと知っている」と主張する。クリミア編入で支持率が8割に上がった成功体験をテコに「プーチン政権は米欧との対立を一段と強めかねない」(欧州の外交官)。

中国接近に懸念
 止まらない原油安に中国はほくそ笑んでいるに違いない。原油の純輸入国である中国の経済にプラスに働くだけでなく、追い詰められた産油国が中国に頼らざるを得ない状況をつくる。

 デフォルト(債務不履行)寸前に陥ったベネズエラ。中国は500億ドルの融資の返済を繰り延べて支えた。5月に大型のガス輸出契約を中国と結んだプーチン大統領はシベリアの石油権益や政府保有のロスネフチ株売却も中国に提案した。

 デフォルトや政情不安、そして外務省高官が日本の安全保障上の「最悪のシナリオ」と呼ぶ中ロの接近。原油安がもたらす地政学リスクに日本も無縁でいられない。

(編集委員 古川英治)

 原油安が世界を揺さぶっている。世界経済への恩恵は大きいが、金融市場は波乱に身構え、揺れる産油国は新たな世界のリスクになりかねない。深層を探る。


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