日本株と投資信託のお役立ちノート

株や投信の運用に役立つ記事を探します。
(主に日経,ロイター,WSJから引用。賞味期限の短い記事は今後省きます)

イノベーション2015(4) IT農業 脱「勘と経験」効率アップ

2015年01月07日 | 先端技術・知財
〔15.1.7.日経新聞:企業1面〕


 担い手不足、耕作放棄地の増加、世界の食糧不足――こうした農業を取り巻く課題を解決すべく、IT(情報技術)を活用する「IT農業」が注目を集めている。これまで非効率とされ、勘と経験に頼るしかなかった農業がITで、もうかる農業、低コストで誰でもできる農業に変わろうとしている。

 「明日は市場で大根の相場が安いから、収穫をやめて別の作業に従業員を使おう」。価格が安いときにただ同然で売るのではなく、時期をずらして出荷することで利益を最大化する。データをうまく使えばこうした経営判断が可能になる。

 NTTデータと日本総合研究所が折半出資するJSOL(東京・中央)は野菜の収穫日と収穫量を事前に予測するサービスを提供する。品種や日々の作業情報と気象予測などを組み合わせてビッグデータ分析することで2日程度の誤差で収穫日を予測できるという。

 「初めて休みが取れた」。愛知県の農業生産法人、鍋八農産がトヨタ自動車の「カイゼン方式」を取り入れた農作業管理ソフトを試験的に導入して2年。八木輝治代表は劇的な効果に驚く。いままで繁忙期は日曜祝日も出ずっぱりだったが、過去の実績などから最適な農作業や資材量を割り出したことで、無駄な作業が減らせたためだ。資材費の削減効果も大きく、累計の削減額は数千万円に及ぶという。

 トヨタは年内にこのソフトの一般販売も目指す。トヨタの友山茂樹常務役員は「非効率といわれがちな農業の現状を変え、競争力を高める手伝いをしたい」と話す。

 品薄が続く日本酒「獺祭(だっさい)」。製造する旭酒造(山口県岩国市)は原料米の山田錦を安定調達するために富士通の農業クラウドを導入した。いつ、どの圃場で、どんな作業をしたか、稲の丈や茎の数などのデータをパソコンやスマートフォンなどで記録し、最適な栽培条件を分析する。旭酒造は2015年度以降、この取り組みに参加する生産者を増やし、それぞれの地域特性に応じた栽培マニュアルをつくる計画だ。

 富士通は今年、ベトナムに植物工場を稼働させるなど農業クラウドをアジア各国に本格展開する。山本正已社長は「世界で食糧が不足するのは明白。ITで社会課題を解決できる」と意気込む。

 農機メーカーもIT活用に本腰を入れ始めた。井関農機は田んぼのポイントごとの肥沃さをセンサーで測定しながら、最適な量の肥料を散布する「スマート田植え機」を12月に発売する。ヤンマーやクボタもITを活用した無人トラクターや、刈り取ったコメの品質が即座にわかるコンバインなどを相次ぎ開発している。

 日本企業ばかりではない。米グーグルのエリック・シュミット会長らは14年11月に農業技術ベンチャーを資金や技術面で支援する集団「ファーム2050」を立ち上げた。グーグルのほか、米デュポンなどが名を連ねる。50年には地球の人口が100億人に達し、食糧を70%増産しなければならないという。IT農業のフィールドは世界に広がっている。(深尾幸生)

農業クラウドとは
 インターネットを活用して農業の生産や流通、経営の効率化を支援する仕組み。現場の機器から環境情報や作業情報をクラウドに集め、データ分析などの計算処理をして、現場に指示を戻す。

 新規参入者に熟練農家のノウハウを提供したり、家族経営の生産者に企業経営の手法を導入したりできる。月額制などで少額で利用できることが多い。  

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