日本株と投資信託のお役立ちノート

株や投信の運用に役立つ記事を探します。
(主に日経,ロイター,WSJから引用。賞味期限の短い記事は今後省きます)

ビール再編 最終局面 首位インベブ、SABに買収打診 独禁法対応で事業売却、争奪戦も

2015年09月22日 | 企業:M&A・合併・事業承継
(日経9/22:グローバルBiz面)
 ビール世界最大手のアンハイザー・ブッシュ・インベブ(ABI、ベルギー)が2位の英SABミラーに買収を打診し、業界の大型再編が最終ステージに突入した。SAB側が600億ポンド(約11兆円)を超える巨額買収に賛同しても、独占禁止法への対応で米国や中国では事業売却を迫られるのは必至。海外事業を拡大したい日本勢には「出物」の獲得で好機が訪れる可能性もある。

 「取締役会は提案を検討し、適切に対応する」。SABミラーは16日に公表した声明で、まずABIの正式な買収提案を待つ意思を示した。ABIは英国のルールに従い、10月14日までに具体的な買収条件をSABミラーに提示する見通しだ。

 世界のビール大手の再編は1990年代後半から徐々に進んだ。2002年に当時のサウス・アフリカン・ブルワリーズ(SAB)がたばこの米フィリップ・モリスからミラーの事業を買収すると、04年にベルギーとブラジルの大手が統合してインベブが誕生するなど一気にM&A(合併・買収)が加速した。


 インベブは08年に米アンハイザー・ブッシュを買収。当時の為替レートで5兆円を超えるM&Aの後も、50%を出資していたメキシコ首位のグルポ・モデロを完全子会社にするなど大型買収を連発した。かねてSABミラーの買収が噂されたのも、M&Aが戦略の軸にあるからだ。

 ABIの売上高営業利益率は30%を超え、営業キャッシュフローは14年12月期で141億ドル(約1兆7千億円)と業界で突出した規模を誇る。先進国で飽和感が出たビールよりもウイスキーなどに向かうとの観測も浮上し、蒸留酒の世界最大手、英ディアジオの株価が急騰したこともあった。

 ABIは本命獲得のためなら事業売却もいとわない。アンハイザーの買収後には負債圧縮のために中国2位の青島ビールの株式約2割を現在のアサヒグループホールディングスに売却、韓国の大手OBビールも投資ファンドに売り渡した。グルポ・モデロの完全子会社化ではメキシコ市場を最優先し、米司法省との和解の末に米国で「コロナ」の販売権を手放した。

 ABIによるSABミラーの買収が実現すれば、SABが米国で58%を出資するミラー・クアーズの売却は確実とされる。買い手の筆頭候補は合弁相手の米モルソン・クアーズになりそうだ。

 中国ではSABが最大手の華潤雪花ビールに49%を出資する一方、傘下にハルビンビールを持つABIは3位。過去に経営権を握れなかった青島ビールの株を売った経緯から、ABIは華潤雪花の株を放出するとの見方がある。華潤雪花の親会社が国外企業との提携を望めば、日本企業にも買い取る機会になる。

 ABIとSABミラーはそれぞれ200ほどのブランドを抱える。買収に伴う整理で欧州や東南アジアでも事業を売却すれば、世界各地でブランドの争奪戦に発展する可能性もある。それを期待し、買収の打診が明らかになった16日は世界3位ハイネケン(オランダ)や4位カールスバーグ(デンマーク)の株価も上昇した。



 もっとも、SABミラーが防衛策として別会社との統合を模索することもあり得る。ただ、ハイネケンの創業家は昨秋にSABからの買収の打診を断った。カールスバーグも議決権の75%をカールスバーグ財団が持つため、買収で傘下に収めるのは難しいとの見方が大勢だ。

▼日本勢も標的か
 日本のビール会社は世界的な再編の波に乗り遅れた。世界での販売量シェアはキリンホールディングスが2.3%、アサヒグループホールディングスが1.2%で9位と10位だ。日本勢は2007年から海外M&A(合併・買収)を加速したが、ビールで上位に追いつくことは断念。清涼飲料や乳業へと領域を広げてきたことも、シェアが低い一因だ。

 一方、世界の大手は日本での事業を国内企業との合弁や提携にとどめてきた。市場は長期縮小傾向にあり、ビール系飲料への酒税の税率は高いうえに複雑だ。国内企業同士の競争も激しく、本格参入のうまみは少ない。

 だがアンハイザー・ブッシュ・インベブ(ABI、ベルギー)が英SABミラーを買収すれば、その先に狙える市場は限られる。日本は大手の空白地では最大の市場だ。

 7月末の決算説明会でABIのカルロス・ブリト最高経営責任者はこう話した。「一部の市場では(工場を持たずに輸出で稼ぐ)『軽資産モデル』のために現場の人を増やしている。例を挙げればオーストラリアと日本がそうだ。成果も見え始めた」

 少なくとも日本に無関心なわけではない。当面はSABの買収に専念するとみられるが、その後、さらに巨大化したABIが日本企業を狙う可能性は十分にありそうだ。  (ジュネーブ=原克彦)


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