(日経9/10:1面)
政府の経済財政諮問会議(議長・安倍晋三首相)の民間議員は9日、10月に発足する改造内閣で取り組む新たな経済政策の素案をまとめた。外国人の在留資格(総合2面きょうのことば)に示す滞在期間を最長8年に延長し、高い技術や経営能力を持つ人材を確保。公務員の配偶者手当の見直しなどを通じ女性や高齢者が働きやすい環境を整え、500万人程度の就労拡大を目指す。人手不足の解消などの日本経済の構造改革を通じ、成長戦略を加速する。
11日に開く諮問会議で民間議員が提言する。安倍首相は自民党総裁選の政策集で、経済政策「アベノミクス」は「いよいよ第2ステージに入る」と表明した。素案は新たな経済政策のたたき台となる見通しだ。
政権発足時は金融緩和と財政出動に重点を置いていた。これに対し素案では中国経済の減速などを踏まえ、内需主導の持続的成長の加速を重点課題に掲げ「内需強靱(きょうじん)化構造改革プログラム」の策定を求めた。
企業の生産性を上げる柱のひとつは、外国人の高度人材の活用だ。海外企業の本社から日本にある支店への転勤や、IT(情報技術)など専門分野で高度な技術を持つ外国人の滞在期間を延長する。実現には入国管理法の改正が必要で、来年の通常国会での法改正を視野に入れる。
政府は2012年に外国人の在留資格を最長3年から最長5年に延長しており、これを最長8年に再延長する。在留資格の更新手続きの頻度が少なくなるなど、国内で働きやすくなる。
日本に滞在する外国人数は212万人(14年時点)。12年に期間を2年延長した効果などから約10万人増えた。経済産業省の調査では国内で働いている外国人の約5割が「在留期間が短い」との不満を持っているという。さらに3年延長すれば一段の増加が見込める。
民間議員は、日本の大学などで学んだ留学生にインターンを勧め、国内企業への就職率を現状の2割から5割に高めることも提言。国内企業が人手不足に苦しむ現状を踏まえ、これまで以上のペースの増加を目指す。
女性の就労拡大に向けた目玉が、公務員の配偶者手当の見直しだ。
配偶者手当は配偶者の収入が130万円など一定水準を超えると支給されなくなるため、女性が就労時間を抑制する一因とみられている。これについて「政府が率先して見直す」と明記した。政府は国家公務員に月1万3000円の配偶者手当を支給している。首相は14年に人事院に見直しの検討を要請したが、人事院は民間企業での取り組みが進んでいないのを理由に見送っていた。素案を踏まえ来年の人事院勧告までに見直す方針だ。
手当の総額は変えずに、配偶者手当を減らした分を子育て世帯への給付に変える案が浮上している。政府税調の配偶者控除の見直し議論とセットで検討を進めたい考え。
働く高齢者の賃金に応じ年金の受給額が減る在職老齢年金制度の見直しも打ち出した。年金は働きながら受給することもできるが60歳以上で働くと老齢厚生年金が減額されてしまう。受給額が減りにくい制度に改め、高齢者の労働参加を促す。
20年の労働力人口は14年比で400万人減少すると試算しており、有効な手立てを打たなければ人手不足が一層深刻になるとみている。
▼外国人の在留資格 30種類、活動範囲定める
▽…外国人が日本に入国して滞在する際の身分や地位、活動範囲を分類したもの。現在は「教育」「留学」「企業内転勤」など30種類の資格があり、それぞれ日本で行える活動の範囲が決まっている。滞在できる期間も資格ごとに異なり、「外交」「永住者」を除くと多くは最長5年となっている。
▽…法務省によると、就労(外交、公用、技能実習を除く)を目的として滞在している外国人は2014年時点で21万4千人いる。このうち企業に勤めるのは、調理師や通訳、デザイナーなど「技術・人文知識・国際業務」、外国の本社から日本支社に転勤する「企業内転勤」があり、約3分の2を占める。
▽…同省は2020年までの出入国管理基本計画に在留資格を拡大する方針を盛り込んだ。日本の労働力人口は14年時点で約6600万人だが、30年には5900万人程度まで減る見通しとなっている。うち外国人の割合は現状で1%にとどまり、米国の16.2%、英国の8%などに比べると低い。日本の経済成長に貢献する高度な技術や知識を持つ外国人の受け入れを進め、働き手不足を補う方針だ。
政府の経済財政諮問会議(議長・安倍晋三首相)の民間議員は9日、10月に発足する改造内閣で取り組む新たな経済政策の素案をまとめた。外国人の在留資格(総合2面きょうのことば)に示す滞在期間を最長8年に延長し、高い技術や経営能力を持つ人材を確保。公務員の配偶者手当の見直しなどを通じ女性や高齢者が働きやすい環境を整え、500万人程度の就労拡大を目指す。人手不足の解消などの日本経済の構造改革を通じ、成長戦略を加速する。
11日に開く諮問会議で民間議員が提言する。安倍首相は自民党総裁選の政策集で、経済政策「アベノミクス」は「いよいよ第2ステージに入る」と表明した。素案は新たな経済政策のたたき台となる見通しだ。
政権発足時は金融緩和と財政出動に重点を置いていた。これに対し素案では中国経済の減速などを踏まえ、内需主導の持続的成長の加速を重点課題に掲げ「内需強靱(きょうじん)化構造改革プログラム」の策定を求めた。
企業の生産性を上げる柱のひとつは、外国人の高度人材の活用だ。海外企業の本社から日本にある支店への転勤や、IT(情報技術)など専門分野で高度な技術を持つ外国人の滞在期間を延長する。実現には入国管理法の改正が必要で、来年の通常国会での法改正を視野に入れる。
政府は2012年に外国人の在留資格を最長3年から最長5年に延長しており、これを最長8年に再延長する。在留資格の更新手続きの頻度が少なくなるなど、国内で働きやすくなる。
日本に滞在する外国人数は212万人(14年時点)。12年に期間を2年延長した効果などから約10万人増えた。経済産業省の調査では国内で働いている外国人の約5割が「在留期間が短い」との不満を持っているという。さらに3年延長すれば一段の増加が見込める。
民間議員は、日本の大学などで学んだ留学生にインターンを勧め、国内企業への就職率を現状の2割から5割に高めることも提言。国内企業が人手不足に苦しむ現状を踏まえ、これまで以上のペースの増加を目指す。
女性の就労拡大に向けた目玉が、公務員の配偶者手当の見直しだ。
配偶者手当は配偶者の収入が130万円など一定水準を超えると支給されなくなるため、女性が就労時間を抑制する一因とみられている。これについて「政府が率先して見直す」と明記した。政府は国家公務員に月1万3000円の配偶者手当を支給している。首相は14年に人事院に見直しの検討を要請したが、人事院は民間企業での取り組みが進んでいないのを理由に見送っていた。素案を踏まえ来年の人事院勧告までに見直す方針だ。
手当の総額は変えずに、配偶者手当を減らした分を子育て世帯への給付に変える案が浮上している。政府税調の配偶者控除の見直し議論とセットで検討を進めたい考え。
働く高齢者の賃金に応じ年金の受給額が減る在職老齢年金制度の見直しも打ち出した。年金は働きながら受給することもできるが60歳以上で働くと老齢厚生年金が減額されてしまう。受給額が減りにくい制度に改め、高齢者の労働参加を促す。
20年の労働力人口は14年比で400万人減少すると試算しており、有効な手立てを打たなければ人手不足が一層深刻になるとみている。
▼外国人の在留資格 30種類、活動範囲定める
▽…外国人が日本に入国して滞在する際の身分や地位、活動範囲を分類したもの。現在は「教育」「留学」「企業内転勤」など30種類の資格があり、それぞれ日本で行える活動の範囲が決まっている。滞在できる期間も資格ごとに異なり、「外交」「永住者」を除くと多くは最長5年となっている。
▽…法務省によると、就労(外交、公用、技能実習を除く)を目的として滞在している外国人は2014年時点で21万4千人いる。このうち企業に勤めるのは、調理師や通訳、デザイナーなど「技術・人文知識・国際業務」、外国の本社から日本支社に転勤する「企業内転勤」があり、約3分の2を占める。
▽…同省は2020年までの出入国管理基本計画に在留資格を拡大する方針を盛り込んだ。日本の労働力人口は14年時点で約6600万人だが、30年には5900万人程度まで減る見通しとなっている。うち外国人の割合は現状で1%にとどまり、米国の16.2%、英国の8%などに比べると低い。日本の経済成長に貢献する高度な技術や知識を持つ外国人の受け入れを進め、働き手不足を補う方針だ。