ばぶちの仕事しながら司法試験を突破し弁護士になりました

仕事をしながら司法試験に合格したばぶち(babuchi)の試験勉強記録+その後です。

捜索・差押の範囲

2013年03月10日 09時34分03秒 | 刑訴法
基本的な問題だと思っていましたが、難しいです。


難しいと考えているのは、102条2項の条文です。


被疑者以外の第三者の身体、物又は住居その他の場所について捜索する場合には、押収すべき物の存在を認めるに足りる状況のある場合に限り許容されます。



甲を被疑者とした場合

■事例1
被疑事実を覚せい剤所持罪、被疑者を甲、捜索場所を甲宅とする捜索差押許可状が発付された。

事例1-1
警察官が踏み込んだ際、甲が隣家へ覚せい剤を投げ込んだ。

この場合、隣家へは、差押えるべき物を現状に回復するために、許可状の執行に必要な処分(222条1項前段、111条1項)として許容されると考えられます。


事例1-2
警察官が踏み込んだ際、同居人乙が覚せい剤を衣服に隠匿した。

この場合、同居人乙は、第三者に当たるが、第三者が隠匿所持していると疑うに足りる相当な理由があり、必要性があり、緊急性が認められるには、許可状の効力が及ぶ。
ただ、これを必要な処分とするのか、102条2項によるのかよくわかりません。


事例1-3
警察官が踏み込んだ際、たまたま居合わせた丙が覚せい剤を衣服に隠匿した。

事例1-2と同じだが、同居人でないことに配慮すべき。
ただ、これを必要な処分とするのか、102条2項によるのかよくわかりません。


事例1-4
警察官が捜索中に室内にあったメモには、3軒隣の家に覚せい剤を預けた旨が記載されていた。

事例1-1に似ているが、102条2項の差押えるべき物の存在する蓋然性が必要になるが、3軒隣の家に捜索しに行くことができるかは、疑問。別途許可状が必要な気がする。


事例1-5
甲宅は、マンションの201号室であったが、警察官が捜索中に室内にあったメモには、701号室の乙宅に覚せい剤を預けた旨が記載されていた。

この場合も、差押えるべき物が存在する蓋然性が必要になるが、701号室の乙宅は別途許可状が必要な気がする。



■事例2
被疑事実を覚せい剤所持罪、被疑者を甲、捜索場所を甲が間借りしているK宅2階の甲居室とする捜索差押許可状が発付された。

事例2-1
警察官が踏み込んだ際、甲が甲居室の隣の部屋に覚せい剤を投げ込んだ。

事例1-2と同様、必要な処分として許容される。


事例2-2
警察官が踏み込んだ際、甲がKが覚せい剤を衣服に隠匿し、甲居室の隣の部屋に逃げた。

この場合も事例2-2と同様であるが、第三者たるKの衣服を捜索するためには、102条2項の差押えるべき物の存在する蓋然性が必要である。


事例2-3
警察官が捜索中に甲居室内にあったメモには、K宅1階の部屋に覚せい剤を隠している旨が記載されていた。

102条2項の差押えるべき物の存在する蓋然性が必要である。



102条2項の適用によってどこまで捜索場所が拡張されるのかがよくわかりません。
事例1-4で3軒隣なら不可のように思われますが、隣の家に預けた、なら許容されるようにも考えられますが、この区別の根拠は難しいです。

この場合、いずれもダメだとすれば、102条2項の範囲は、「住居その他の場所」としているのはどう考えるのかが難しいです。
同じ建物だけど、別の部屋ならいいとか?
あるいは、本件の甲宅が捜索場所だったが、差押えるべき物が存在する場所が甲の車の中だったとかでしょうか?



この問題と関連してややこしいのが、220条1項2号の逮捕に伴う捜索差押で、相当説を取った場合です。
この場合、上記事例で同様に考えるのか、もっと限定するのかがよくわかりません。


甲の逮捕令状が発付された。
甲がK宅に逃げたため、警察官はK宅に入って1階居間で逮捕した。
K宅には甲が間借りしている2階居室がある。逮捕に伴う捜索差押として2階居室を捜索できるか?

また、K宅に甲が間借りしていない場合、K宅には甲が預けた金庫がある。
甲を逮捕したことによって、この金庫を逮捕に伴う捜索差押として捜索できるか?


本来、逮捕の現場は、その管理権が及ぶ範囲に限定されます。
上記事例の場合は、K宅であるため、Kの管理権が及ぶ範囲になります。
しかし、K宅2階甲の居室は甲の管理権があり、Kの管理権は無いと考えられます。
しかし、被疑者は甲なのに、甲の居室を捜索できないのは疑問です。



去年の新司法試験の問題で、T社で乙を現行犯逮捕した場合、乙のロッカーを捜索できるか、という問題がありました。
この問題、いまだによくわかりません。
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