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今も 66年前も 海はどこまでも青い


 たまたま寄った本屋で、手にとって思わず吸い込まれた本。『新装版 いつまでも、いつまでもお元気で』(草思社)。内容は第二次世界大戦末期に、鹿児島の知覧基地から、いわゆる特攻出撃(=今風にいえば 自爆攻撃)していった若者たちの遺書を集めたもの。僕がすい寄せられた理由は、申し訳ないけど、遺書の中身ではない。

 どのページも現在の鹿児島の島々の青い海や空のカラー写真を背景に遺書が掲載されているからなんです。今まで、この手の話は歴史上の出来事として、当時の粗雑な白黒フィルム映像やモノクロ写真を背景に語られていたよね。つまり、常にもモノトーンな過去の幻影でしかなかった。

 でも、考えてみれば、当たり前の話だけれど、66年前の若者たちが見ていた海も空も山も夕焼けも、今の僕えらが見るのとまったく同じ、どこまでも青く、そして緑深く、限りなく赤かったわけだ。この本は、今の僕らと66年前の若者を、リアルタイムに見事に結びつけてくれている。そこに引かれたんだね。


↑どのページもこんな感じ

 戦没学生の手記には、かの「きけわだつみのこえ」(岩波文庫じゃなくて、カッパブックス版の方だよ)があるが、その旧版に、東大の渡辺一夫氏が次のような序文(抜粋)を寄せている。

僕は、本書が、あらゆる日本人に、とくに最近の
・戦争のことを忘れてけろりとしている人々に
・のんきに政争ばかりしている政治家に
・文化生活を謳歌する紳士淑女に
・深遠な学理にふける大学教授に
・命令一下白い棍棒をふるう警官に
・裁判所へ「人民様のお通り」と叫んで赤旗を振りかざしながら突入するモブに
・娯楽雑誌以外は本など読まぬ実業家に
・幼いころ「楓のような手をあげて」「兵隊さん万歳」と言ったことのある若い学生諸君に
読まれてほしいと思う。

・・・・・・・そうだね。せめて今日くらいは、静かに 渡辺氏の声に耳を傾けたいね。





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