カピバラさんの2泊3日(5)

2018-01-26 21:26:25 | 童話
そして、またみんなで歩き始めました。
みんなで元気を出して森の入口の大きな杉の木を目指して歩きました。
『有った、大きな杉の木だ。』
お父さんが言ったので、みんなで立ち止まって大きな杉の木を見ました。
『あの木の所にある家ね。』
『きっとそうだよ。』

僕はみんなに会いたくて駆け出していきました。
お父さんが
『そんなに走ると危ないよ。』
と言いましたが僕は全力で走ったので、石につまずいて転んでしまいました。
『だから危ないって言われたでしょ。』
僕は背中から落ちたリュックをもう一度背負いました。
『みんなで一緒に行くよ。』
とお父さんが言って、またお父さんを先頭に一列になって歩いていきました。

そして、お父さんが玄関のチャイムを鳴らしました。
『あらっ、よく来たわね。』
とカピバラの飼い主さんのおばさんが迎えてくれました。
すでに日が沈みかけて、少し暗くなりかけていました。
『疲れただろうから中に入ってくつろいで。』
と言って藁を敷いた箱をすすめてくれました。
その箱は僕達家族全員が入るのに丁度良い大きさでありました。
この家で大事に育てられているカピバラが、自分達の箱を持ってきて隣りに置きましたが、その箱も柔らかい藁が敷いてありました。

『これでみんなで遅くまでお話しができるね。』
とお姉ちゃんが言いましたが、お父さんが
『今日は疲れたから早く寝るよ。』
と言って、夕食の後、お風呂に入りました。お風呂はいつ入っても気持ち良く、ウトウトとしてしまう。

僕達家族全員で風呂上りの牛乳を飲んだ。
『美味しいねぇ、お姉ちゃん。』
『うん、美味しいね。』
お父さんも
『風呂上りの牛乳は、本当に美味しいね。』
お母さんも
『そうね、幸せね。』
と言って目を細めていました。
この家のカピバラは両親と男の子の3匹で、子供は僕と同い年です。
僕はその子と遊びたかったのですが、お父さんの言う通り早く寝ました。

カピバラさんの2泊3日(4)

2018-01-25 21:25:37 | 童話
4匹で道路を歩いている時に、道端に綺麗な水が流れている小川があるのを見つけました。
『あっ、メダカだ。水草の所に小さなフナもたくさん居る。』
『よそ見しないで歩きなさい。行くわよ。』
と言って、お母さんは歩いて行きました。
僕は、お母さんの注意が耳に入らないくらい立ち止まって小川を眺めていました。
するとメダカが
『どこへ行くの?』
と話し掛けてきたので
『みんなと田舎の友達の所へ行くんだ。』
と応えると、メダカは
『僕達も川の上流まで行く事があるけど、すぐここに帰ってくるよ。ここは居心地がいいんだ。』
『僕も川に入っていい?』
『ああ、いいよ。』
『気持ちいいな~あ。』

僕は小川の中に男の子が居るのに気が付いた。
『何しているの?』
『ヤゴを捕まえているんだ。』
『捕まえたヤゴはどうするの?』
『家の池で育ててトンボにするんだよ。』
『楽しそうだね。』
『トンボになって空へ飛んで行くのは、すごく楽しいよ。』

その時、遠くで
『キュルル、キュルル。』
という声が聞こえました。
お父さんとお母さんが、
『キュルル、キュルル。』
そして、お姉ちゃんも、
『キュルル、キュルル。』
みんなで僕を探しているのでした。
僕は男の子に
『僕は友達の家に行くところなんだ、もう行くからね。』
と言って、お父さんやお母さんに向って
『キュルル、キュルル。』
と鳴きました。
僕は急いで皆の所に戻った時に、お父さんからお尻をポカリとたたかれました。
『道草をしたらダメじゃないか。』
『ごめんなさい。』

カピバラさんの2泊3日(3)

2018-01-24 21:26:54 | 童話
3時になったので僕達は休憩をして、残り半分のキュウリとニンジンを食べ、水筒の水を飲みましだ。
『疲れたね。』
『そうね。』
『もうじきだから頑張れ。』

そして、僕達はまた歩き始めました。
暫くしてからお父さんが『あそこを曲がるよ。』と言って細い道に入っていきました。
今度は道幅が狭く、所々に草が生えていて歩きやすかったです。道の右側に池があり、アメンボがスイスイと走っていました。
『楽しそうだね。』
『水の上は涼しいし、スイスイ走れるので楽しいよ。』

向うから耕耘機がやって来て、運転していたおじいさんが、『気を付けて行きな。』と言いました。
お父さんが田舎に住んでいるカピバラさんの家を聞くと、『まっすぐ一時間ほど行ったら森が有り、その森の前の神社を右に曲がって10分位行った所の、大きな杉の木のある家だよ。』と教えてくれました。
『やっと近くまで来たのね。』とお母さんが言いました。

僕たちはここで最後の休憩をして、水筒のお水を飲みましだ。そして、10分ほど休憩した後で歩き始めました。
僕が『もうじきみんなに会えるね。』と言うと、お母さんが『そうよ、みんな頑張ったわね。』と言って、僕とお姉ちゃんに声をかけてくれました。
お父さんが『さあ、頑張って行くよ。』その合図でみんなが一列になって歩き始めました。僕は、『楽しいな、楽しいな。』と何度も叫びながら歩いていきました。

カピバラさんの2泊3日(2)

2018-01-23 21:18:27 | 童話
お父さんの『出発するから起きなさい。』の声に起こされたが、外はまだ真っ暗です。
僕たちは、リュックの中から水筒を取り出し、水を入れて再び水筒をリュックに詰込んだ。
そして、みんな頭とお尻に懐中電灯を付けて、暗い道を歩き始めました。

僕たちカピバラは、飼い主さんと一緒でなければ電車に乗れないので仕方ないのです。
飼い主さんと一緒でも、カートの大きさ制限が、長さ77センチ以内で、タテ・ヨコ・高さの合計が90センチ程度には、お父さんやお母さんは入らないので仕方がないのです。

お父さんが先頭で、次がお姉ちゃん、そして僕、最後がお母さんで、一列になって道路の右側を歩いていきました。広い道路なので、前から大きな車が沢山来て少し怖かったです。

暫くすると太陽が出てきて明るくなり、僕たちは道路の横の草むらで懐中電灯をはずし、リュックを下して休憩しました。
みんなの背中は汗でビッショリになっていました。
その草むらには美味しい草がいっぱい生えていたのでリュックの中の干し草は食べませんでした。
1時間ほどして、僕たちは懐中電灯をリュックにしまい、そのリュックをまた背負って歩き始めました。
しかし、今度は日が照っていて暑いので、1時間ごとに休憩をして、リュックの水を飲みましたが、その水は、すごく美味しかったです。

そして、お昼になって野菜を食べることにしました。
僕は『ニンジンにしようかなぁ、それともキュウリにしようかなぁ。』と考えていると、お姉ちゃんが、『両方を半分ずつ食べればいいのよ。』と言いました。よく見ると、お父さんとお母さんも半分ずつ食べていました。そして、食後の休憩をしている時に、前から来た自動車が止まり、小さな男の子が窓から顔を出して『何処へ行くの?』と聞きました。
僕は『田舎の友達の所へ行くんだ。』と言ってバイバイしました。

カピバラさんの2泊3日(1)

2018-01-22 21:30:17 | 童話
僕はカピバラです。両親とお姉ちゃんと4匹で住んでいます。
僕たちはお風呂が大好きです。美味しい草をモシャモシャモシャと食べた後のお風呂が一番好きです。
お風呂の中でボ~としていると気持ち良くて、眠くなってしまいます。
そして、お風呂から出た時に飲む牛乳は最高のご馳走です。

こんな楽しい毎日を過ごしている時、お父さんが『向うの角に住んでいたカピバラさんから手紙が来たよ。飼い主さんが定年で田舎へ引越し、みんなも一緒に広い土地の広い家に住んでいるらしいよ。』
お母さんは『あらっ、素敵ね。』
『手紙の中に、是非、遊びに来て下さい、と書いてあるよ。』
『あらっ、いいわね。みんなで行きましょうよ。
『そうだね、飼い主さんに聞いて見ようか?』
『ええ、お願い。』

そして、お父さんが飼い主さんんとお話しをして、3日間のお出かけの了解を貰ってきました。
そして、飼い主さんから帽子とリュックと懐中電灯を貰ってきたのです。
帽子には「私たちカピバラは旅行中です。」と書かれていました。
リュックは前足と後ろ足が入る様になっていて背負える物です。
また、懐中電灯は、頭用とお尻用の2個ずつ有りました。
僕とお姉ちゃんは両手でハイタッチをして喜びました。

お父さんが、『明日は朝早く出かけるから、今の内に出かける用意をしなさい。』と言いました。
僕たちは、お水を入れる水筒と、ニンジンやキュウリの野菜と、干し草をリュックに詰込んで今夜は早く寝ました。