なぜだろう(2)

2018-12-31 08:02:13 | 童話
電車に乗っていると、窓に映った僕が話しかけてくる。
『気を付けていないと、電車が揺れた時に転ぶよ。』
『うん、わかった。』
どうしてみんなが話しかけてくるのだろうか?
何時ごろから話しかけてくるようになったのだろうか?

夏休みのある日の夕立で、近くの大きな杉の木に雷が落ちた事が有る。
ゴロゴロ、ゴロゴロ、ピカッ、ドド~ン。
『ビックリしたね。』
僕がおもわずつぶやいた時に、部屋の中に置いて有るサボテンが
『そうだね、ビックリしたね。』と返事をした。
『えっ、だれ?』
『僕だよ。サボテンだよ。』
『サボテン君はしゃべれるの?』
『うん、しゃべれるけれど、今迄黙っていたんだよ。』
『君以外にしゃべれる植物がいるの?』
『みんなしゃべれるよ。』

僕は玄関に飾っている花瓶の花に話しかけた。
『君もしゃべれるの?』
『うん、しゃべれるよ。』
『机の僕もしゃべれるよ。』
『テーブルの私もしゃべれるわよ。』
『植物以外もしゃべれるんだ。』
『犬や猫もしゃべれるよ。』
『わぁ、楽しいなぁ。みんなでお話しをしようよ。』
『ワイワイ、ガヤガヤ。』

僕以外にも、みんなとお話しができる子がいるのかなぁ?
僕は友達に聞いてみた。
『ねぇ、君んちのお花やテーブルは話をするの? 僕んちのお花やテーブルはお話しをするんだよ。』
『うん、お話しするよ。』
『いつから?』
『この前の雷が落ちた時からだよ。』
『ふぅ~ん。僕んちと同じだね。』
『そうだね。』
『どうしてなのかなぁ。』
『どうしてなのかね。』
『だれかに聞いてみようか?』
『ねぇお母さん お花やテーブルはしゃべれるの?』
『えっ、人間じゃないのに、しゃべれるハズが無いでしょ。』
『僕んちのお花やテーブルもお話しするよ。』
『そう、不思議ね。』
『どうしてなのかなぁ?』
『お母さんも分からないわ。』
『ねぇお母さん、このテーブルとお話しをしてみて。』
『もしもしテーブルさん、お話しができますか?』
『僕には話しかけるのに、お母さんには返事しないね。』
『そうだね。今度はお花に話しかけてよ。』
『お花さん、お花さん、返事をしてね。』
『やっぱり大人には話しかけないんだ。』
『そうだね。』

なぜだろう(1)

2018-12-30 10:02:13 | 童話
『おはよう。忘れ物は無~い? 教科書とノートは全部持ったの? 宿題のプリントも持ったの?』
『おはよう。全部持ったよ。』
僕に毎朝、玄関の花瓶の花が話し掛けてくる。
『おかえり。学校は今日も楽しかった? 宿題は有るの?』
『ただいま。宿題はね、プリントが2枚だよ。』
僕は玄関の花瓶の花に話し掛ける。

僕が宿題をしていると、机が話しかけてくる。
『今日も学校で頑張ったね。』
『うん、勉強も運動会の練習も頑張ったよ。』
『宿題が終ったらどこへ行くの?』
『友達とグラウンドで野球をするんだよ。』
『ケガをしないでね。』
『うん、わかったよ。』
『宿題が終ったからグラウンドへ行ってくるからね。』
『行ってらっしゃい。』
僕は机に行ってきますを言ってグラウンドへ向った。

家に帰って手を洗っていると、水道の蛇口から声が聞こえる。
『今日も楽しかった? せっけんをよく付けてゴシゴシと洗ってね。』
『うん、わかった。』

お母さんが用意してくれていたオヤツのケーキを食べようとするとフォークが話しかけてくる。
『今日のケーキはね、高いケーキだから特別おいしいよ。』
『そうだね、いつものケーキよりおいしいね。』
『終ったら片付けてね。』
『うん、わかった。』
『これから、どこへ行くの?』
『これからお母さんとお買い物に行くんだよ。』
『何を買いに行くの?』
『スニーカーを買ってもらうんだよ。』
『カッコいいのを買ってもらうの?』
『ううん、普通のだよ。走りやすいのがいいんだ。』
『お母さんが来たよ、行ってらっしゃい。』
『うん、行ってくるからね。』

空のイルカ、夢のイルカ(3)

2018-12-29 09:07:43 | 童話
僕が目開けると、僕はジェット旅客機の操縦席にいた。
『乗客のみなさん、これから離陸しますので、シートベルトをシッカリ締めてください。管制塔、管制塔、これから離陸します。』
僕の操縦するジェット旅客機がゴーと音をたてて空高く上がって行きました。
『こちらは機長です、上空に来ましたのでシートベルトを外しても構いません。』

僕の操縦するジェット旅客機はしばらく飛行して着陸の準備を始めました。
『乗客のみなさん、これから着陸しますので、シートベルトをシッカリ締めてください。』
『管制塔、管制塔、これから着陸します。』
『乗客のみなさん、空港に着きました。お疲れ様でした。』
そして、目の前が急に明るくなった。
『すごいね。僕は夢の中でジェット旅客機を操縦していたよ。』
『まだ夢の中だよ。今度はどこへ行きたい?』
『写真で見たんだけれどオーロラがきれいだったので、オーロラが見える所へ行きたいなぁ。』
『いいよ。目を閉じていて。』
『もういいよ。』

僕が目を開けると、僕は北極にいた。
『少し寒いね。』
『今は夢の中だから、あまり寒くないけれど、本当はもっともっと寒いんだよ。』
『ふぅ~ん、そうなんだ。』
『空をみてごらん、オーロラがきれいだよ。』
『わぁ~、きれいだね。オーロラはじっとしていなくて、次から、次から形が変わるんだね。』
『寒いから、もう帰ろうか?』
『うん、いいよ。』
そして、目の前が急に明るくなった。

『もう夢の中から外に出たよ。』
僕とイルカは、さっきの海にいた。
『本当に夢の中に行けるんだね。』
『あっ、お家でお母さんが呼んでいる。もう帰るからね。またここで遊ぼうね。』
『いいよ、バイバイ。』
『バイバ~イ。』
僕は、宿題が終ると、今もイルカと仲良く遊んでいる。

     おしまい

空のイルカ、夢のイルカ(2)

2018-12-28 08:24:54 | 童話
イルカは力いっぱい尾ビレで水をたたきました。すると、イルカと僕は空へ上がり始めました。
そして、イルカは尾ビレを何度も何度も動かして、ドンドン高く上がって行き、ビーチボールに近付きました。
『イルカ君、もう少しだ、がんばって。』
『うん、もう少しだね。』
『あっ、届いたよ。』
『ビーチボールをつかんだら降りて行くよ。』
『うん、いいよ。』

僕とイルカは海に戻って来ました。
『イルカ君はどこまで高く上がって行けるの。』
『ずっと空高く行けるよ。空だけでなく夢の中へも行けるんだよ。』
『夢の中へは、どうやって行くの?』
『僕が頭の上で1回転すると夢の中へ行けるんだよ。』
『やってみてよ。』
『いいよ。僕が頭の上を飛び越えるから、海の中で立っていてね。』
『うん、いいよ。』

イルカがすごいスピードで泳いで来て、立っている僕の上を飛び越えて、1回転しました。
その時僕の目の前が少し暗くなりました。
『今、夢の中に来たよ。これから、どんな夢の中へ行こうか?』
『どんな夢の中へも行けるの?』
『行けるよ。』
『飛行機を操縦している夢へ行きたいな。』
『いいよ。目を閉じていて。』
『うん。』
『もういいよ。』

空のイルカ、夢のイルカ(1)

2018-12-27 05:37:35 | 童話
『お~い、お~い。』
誰かが呼んでいる。
『なぁ~に? だぁ~れ?』
小さな島の、海の見える家に僕がいると、海の方から僕を呼ぶ声がした。
『お~い、お~い。』
とまた呼んでいる。
『誰なの?』
海の中を見ると、イルカがいて、ヒレで水をバシャバシャとやっていた。
『やぁ、イルカ君、な~に?』
『一緒に遊ぼうよ。』
『今、宿題をやっているから、1時間くらいあとでね。』
『うん、待っているからね。』

そして、宿題が終るころにまた『お~い、お~い。』とイルカが呼んでいる。
『まだ宿題は終らないの?』
『今終ったよ。』
『一緒に遊ぼうよ。』
『いいよ、今行くからね。』
『僕は泳ぎがうまくないので、海の深い所へは行けないから、一緒に遊べるのは、海の浅い場所だよ。』
『うん、いいよ。』
『何をして遊ぶの?』
『軟式野球のボールを投げるよ。それっ。』
『よしっ、僕はヒレでポンッ。』
『今度は、僕はバットでボコン。』
ポンッ、ボコン、ポンッ、ボコン
『もう少し大きなビーチボールで遊ぼうか? 僕が海の方へボールをけるから、イルカ君は海の方からボールを投げ返して。』
『いいよ。それっ。』
僕がポンッ。

そして、イルカが尾ビレでボンときつく打ちました。
『うわっ、そんなにきつく打ったら取れないよ。』
『ゴメンゴメン。』
イルカが尾ビレで打ったビーチボールは風で空高く上がりました。
『あんなに高く上がったら取れないよ。風に流されてドンドン高く上がって行くよ。』
『よしっ、一緒に取りに行こうか?』
『あんな高い所へ、どうやって取りに行くの?』
『僕の背ビレにつかまっていて。』
『うん、いいよ。』
『それでは行くよ。』