僕の魔法のズボン(3)

2017-04-30 10:07:00 | 童話
僕は学校で遠くへ歩いて行く遠足も頑張った。
ついにズボンの脚の折り返しが無くなった。
そのまま履いて丁度良くなり、お兄ちゃんのように大きくなったのだ。
だけど、お兄ちゃんのようにカッコいいかなぁ?
僕は女の子をいじめたりしないし、年寄りの人が信号待ちをしている時は、青信号になったら手を挙げて一緒に渡ってあげている。
お兄ちゃんと同じように、僕もカッコ良くなっていると思う。

僕はお母さんに聞いてみた。
『ねぇ、お母さん、僕もお兄ちゃんと同じようにカッコいいかなぁ。』
『そうねぇ、そのズボンを履いている時は良い子でカッコいいけれど、そのズボンじゃない時はもう少し良い子になったらカッコいいわよ。』
『う~ん、まだカッコ良くないのか。どうすればカッコ良くなれるのかな? そうだ、魔法のズボンに聞いてみよう。』
『ねぇ、魔法のズボン君、どうすれば君を履いていない時もカッコ良くなれるのかな?』
『それはね、君がいつも僕を履いている時と同じように頑張っていればいいんだよ。僕はいつも君を見ているからね。』
『そうか、いつも同じように頑張らないといけないんだね。』

そして、僕は大きくなって魔法のズボンが履けなくなってしまったが、ズボンの魔法がなくても頑張れるようになった。
そして、今も魔法のズボンは大切にしているし、時々話もする。
僕はいつまでもこの魔法のズボンを大切にしていこうと思う。

             おしまい

僕の魔法のズボン(2)

2017-04-29 09:23:15 | 童話
僕は時々公園で友達と駆けっこをするが、いつも友達に負けてばっかりだったが、今日はお兄ちゃんにもらった魔法のズボンを履いているので、友達に勝てる気がする。

『ヨーイ、ドン。』
僕は友達みんなを追い越して1番になった。
友達みんなが
『速いなぁ。』
と言って驚いていた。そして、僕も驚いた。
お兄ちゃんのズボンは魔法のズボンだ。

僕は家に帰ってお母さんに
『お母さん、お兄ちゃんからもらったこのズボンは魔法のズボンだよ。』
『どうして?』
『いつも、駆けっこの時には友達にかなわないけど、この魔法のズボンを履いて駆けっこをするとみんなに勝てるんだ。だから、このズボンは魔法のズボンなんだよ。』
『そうなの、じゃ、魔法のズボンね。お兄ちゃんに魔法のズボンを貰って良かったわね。』
『うん、大切にするね。』
『そうね。だけれど自分でも頑張らないと魔法のズボンじゃなくなるわよ。』
『うん、僕と魔法のズボンの両方で頑張るよ。』

そして、僕は大きくなり、お兄ちゃんからもらったズボンの脚の折り返しが1回となった。
僕の魔法のズボンを履いて、友達と広場で戦隊ごっこをしている。
しかし、徒競走ではまだ1等賞は取れない。
いつも2等賞だ。

僕の魔法のズボン(1)

2017-04-28 21:36:48 | 童話
僕のズボンは、お兄ちゃんが小さい時に履いていたズボンだ。
ポケットが前に2つ、後に2つ付いていて、後のポケットには模様が付いている。
そして、色は薄いブルーで、カッコいいズボンだ。

お兄ちゃんはこのズボンを履いて、友達と戦隊ごっこをやっている時はカッコ良かった。
僕もこのズボンを履いたから怪獣をやっつけて、カッコ良くなれるかなぁ。

お兄ちゃんは小学校の運動会の時に、このズボンを履いて徒競走で1等賞になった。
僕はまだ小さくて、小学校も幼稚園も行っていないので1等賞は取れない。

お兄ちゃんが遠くまで歩いて遠足に行った時に履いていたのも、このズボンだ。
僕も頑張って遠くまで歩いて行けるかなぁ。

お兄ちゃんは剣道を習っていて、僕も一緒に見に行ったことが有る。
剣道場まで魔法のズボンを履いて行き、剣道場で稽古着に着替えて剣道の練習をやっていた。
魔法のズボンを履いている時もカッコ良かったが、ズボンを脱いで稽古着の時もカッコ良かった。
その時に僕も大きくなったら剣道を始めたいなぁと思っていた。

僕は今この魔法のズボンを履いているが、脚の所が長くて2回折り畳んでいる。
お兄ちゃんのように、折りたたまないで履けるようになるのはいつかなぁ?次の次の日曜日には僕もこのズボンを折り畳まないで履けるかなぁ?
お兄ちゃんもお母さんも、牛乳をたくさん飲むと大きくなれるよと言っているので僕は頑張って牛乳を飲んでいる。僕も早くお兄ちゃんのようになりたい。

一年だけの友達(3)

2017-04-27 21:30:23 | 童話
そして、秋となり、冬が終ってまた春になりました。
女の子が学校へ行く朝に、次の私は玄関の横から
『おはよう。』
と言いました。
女の子は玄関の横で、去年生えていたのと同じ小さな草が生えている私を見つけました。

女の子は
『あなたは私を知っているの?』
と言ったので、
『ええ、小さなお花を咲かせていたお母さんから、あなたに大切にしてもらったことを聞いていたわ。』
と答えました。
『そう、うれしいわ。あなたも大切にしてあげるからね。』
『ありがとう。』

そして、去年と同じように、
『行ってらっしゃい。』、
『おかえりなさい。』
とお話しをして、毎日同じ夢をみました。

また秋がきて、1年草はたくさんの種を残して枯れてしまいました。
その次の春に、女の子が学校へ行く時に、玄関の横から
『おはよう。』
という声が聞こえきました。
玄関の横を見ると、去年も生えていたのと同じ小さな草の私が生えているのを見つけました。

『あなたは私を知っているの?』
『ええ、小さなお花を咲かせていたお母さんから、あなたに大切にしてもらったことを聞いていたわ。そのお母さんもおばあちゃんから、あなたのことを聞いたと言っていたわ。』
『そう、うれしいわ。あなたも大切にしてあげるからね。』
『ありがとう。』
そして、私達と女の子との1年ごとの友達は、今も続いています。

      おしまい

一年だけの友達(2)

2017-04-26 21:19:45 | 童話
その夜、私は女の子と手をつないで歩きながら、たくさんお話しをしている夢をみました。
朝になって私は女の子に夢の話をすると、女の子も同じ夢をみていました。
女の子が学校から帰って来た時に
『今日も同じ夢をみるといいわね。』
と言いました。

その夜、私は女の子と女の子のお父さんとお母さんの4人でサイクリングに行っている夢をみました。
私は女の子の自転車の前カゴに乗せてもらいました。
川の土手は気持ちが良くて、土手でお昼ご飯を食べました。
次の朝に女の子にサイクリングに行った夢の話をすると、女の子は
『サイクリングは楽しくて、川の土手で食べたお昼ご飯はおいしかったわね。』
と言いました。
女の子も私と同じ夢をみたのでした。
それから、私と女の子は、ずっと同じ夢をみました。

そして夏が過ぎて、私のたくさんの花は種となって風に乗って遠くに飛んで行きました。
私は一年で枯れてしまう一年草なので、秋には枯れてしまうことを女の子に話しました。
『今まで大切にしてくれて、ありがとう。私はたくさんの種を残したので、私と同じ小さな草が生えてきたら、私と同じように大切にしてね。そして、散歩やサイクリングに連れて行ってね。』
『ええ、わかったわ。今まで楽しくしてくれて、ありがとう。』
『今日は、あなたが学校から帰ってきた時には、もう枯れて生きていないと思うの。私の種をお願いね。さようなら。』
『わかったわ、さようなら。』