僕の背中(2)

2019-10-31 06:50:08 | 童話
そして、運動会で2着になりました。
『お父さんの言うとおり練習していたから、すごく速くなったね。もう一人抜いて1着になるようにガンバレ。』
とお父さんが言ったので
『うん、あと一人だね、がんばるよ。』
と僕は応えました。

それからも練習を続けて、次の運動会で、ついに1着になれました。
また次の運動会でも1着になり、いつでも1着になれる自信がつきました。
小学校最後の運動会で、僕はみんなを抜き去って1番で走っていました。

その時、僕を抜き去って走って行った友達が二人いました。
僕はだれにも負けない自信があったのにビックリしました。
僕を抜き去って走って行った友達の顔を見た時、またビックリしました。
一人は5年生の時の僕で、もう一人は4年生の時の僕でした。

お家でお父さんにその事を話すと、お父さんが
『お前は他の友達より走るのが速いが、今は速くないよ。5年生の時が一番速くて、その次は4年生の時が速かったよ。だから、5年生と4年生のお前に負けたんだよ。』
『そうか、最近は走る練習をしてなかったからね。もう一度がんばって練習をするよ。』

そして、また練習を始めて、僕は友達の背中も、僕の背中を見ないで走れるようにしています。
世界陸上とオリンピックで金メダルをとるまでがんばるつもりです。

   おしまい

僕の背中(1)

2019-10-30 06:53:23 | 童話
小学校の運動会の徒競走で、僕はみんなの背中を見ながら走っていましたが、僕の背中を見ながら走っている友達はいませんでした。
また僕はビリになってしまったのです。

次の日、お父さんさんが
『テレビで見たんだけれど、ヒザを高く上げて走る練習をすると速く走れるようになれると言っていたよ。』
と言ったので、お父さんと一緒に、公園で練習を始めました。
『もっとヒザを高くあげて! もっともっと、高くあげるんだ!』
そして、1時間くらい練習して僕達はお家に帰りました。お風呂に入っている時にお父さんが
『じつはね、お父さんも走るのが速くなかったんだ。だから、お前は走るのが速くなってほしいんだ。』
と言いました。
『うん、僕ガンバルよ。』
『よしっ、がんばれば速く走れるようになれるよ。』

そして、普通の日は僕一人で、土曜日と日曜日はお父さんと一緒に公園で走る練習をしました。
少しずつヒザを高くあげて走れるようになってきました。
『その調子だ、ガンバレ。』
家に帰るとお母さんが
『お父さんから聞いたんだけれど、速く走れるようになってきたんだって。』
『そうだよ、僕、がんばっているんだよ。』
『えらいわね、今度の運動会が楽しみだわね。』
『うん、応援してね。』
『ええ、いっぱい応援しますよ。』

しばらくして、町内会で運動会をする案内の回覧板がきたので、僕も徒競走に出ることにしました。
『今までの成果を知ることができるね。』
と、お父さんも楽しみにしていました。
町内会の運動会は、6人で走って5着でした。
お父さんとお母さんは、
『良かったね。』
と喜んでくれました。
『僕、もっと、もっとがんばるよ。』
それからも、小学校の運動会をめざして走る練習を続けました。

1年だけの友達(3)

2019-10-29 06:43:17 | 童話
そして、秋となり、冬が終ってまた春になりました。
女の子が学校へ行く朝に、次の私は玄関の横から
『おはよう。』
と言いました。
女の子は玄関の横で、去年生えていたのと同じ小さな草が生えている私を見つけました。
女の子は
『あなたは私を知っているの?』
と言ったので、
『ええ、小さなお花を咲かせていたお母さんから、あなたに大切にしてもらったことを聞いていたわ。』
と答えました。
『そう、うれしいわ。あなたも大切にしてあげるからね。』
『ありがとう。』

そして、去年と同じように、
『行ってらっしゃい。』、
『おかえりなさい。』
とお話しをして、毎日同じ夢をみました。
また秋がきて、1年草はたくさんの種を残して枯れてしまいました。

その次の春に、女の子が学校へ行く時に、玄関の横から
『おはよう。』
という声が聞こえきました。
玄関の横を見ると、去年も生えていたのと同じ小さな草の私が生えているのを見つけました。
『あなたは私を知っているの?』
『ええ、小さなお花を咲かせていたお母さんから、あなたに大切にしてもらったことを聞いていたわ。そのお母さんもおばあちゃんから、あなたのことを聞いたと言っていたわ。』
『そう、うれしいわ。あなたも大切にしてあげるからね。』
『ありがとう。』

そして、私達と女の子との1年ごとの友達は、今も続いています。

   おしまい

1年だけの友達(2)

2019-10-28 06:49:10 | 童話
その夜、私は女の子と手をつないで歩きながら、たくさんお話しをしている夢をみました。
朝になって私は女の子に夢の話をすると、女の子も同じ夢をみていました。
女の子が学校から帰って来た時に
『今日も同じ夢をみるといいわね。』
と言いました。

その夜、私は女の子と女の子のお父さんとお母さんの4人でサイクリングに行っている夢をみました。
私は女の子の自転車の前カゴに乗せてもらいました。
川の土手は気持ちが良くて、土手でお昼ご飯を食べました。
次の朝に女の子にサイクリングに行った夢の話をすると、女の子は
『サイクリングは楽しくて、川の土手で食べたお昼ご飯はおいしかったわね。』
と言いました、女の子も私と同じ夢をみたのでした。
それから、私と女の子は、ずっと同じ夢をみました。

そして夏が過ぎて、私のたくさんの花は種となって風に乗って遠くに飛んで行きました。
私は1年で枯れてしまう一年草なので、秋には枯れてしまうことを女の子に話しました。
『今まで大切にしてくれて、ありがとう。私はたくさんの種を残したので、私と同じ小さな草が生えてきたら、私と同じように大切にしてね。そして、散歩やサイクリングに連れて行ってね。』
『ええ、わかったわ。今まで楽しくしてくれて、ありがとう。』
『今日は、あなたが学校から帰ってきた時には、もう枯れて生きていないと思うの。私の種をお願いね。さようなら。』
『わかったわ、さようなら。』

1年だけの友達(1)

2019-10-27 09:05:57 | 童話
私はこの家の玄関の横に生えている小さな草で、小さなお花をたくさん咲かせます。
だけれど、お花の本には私の名前はのっていません。

この家の女の子は私を大切にしてくれて、毎朝、学校へ行く時に
『小さなお花さん、おはよう。行ってきます。』
と言ってくれます。

そして、学校から帰ってくると
『小さなお花さん、ただいま。今お水をあげるからね。』
とお話しをして、お水をかけてくれます。

小さな草の私も夜になると眠るので、夢をみることがあります。
昨日の夢は、女の子と私は手をつないで学校へ歩いて行き、学校で私は女の子の横にすわりました。
国語の本を読む時は、女の子の次に読み、算数のお勉強では、女の子と一緒に手をあげて答を発表しました。
体操の時間は、私は走れないので、すわって女の子が走るのを応援しました。
そして、女の子と手をつないで帰って来て、玄関の横で女の子とわかれました。

朝になって、女の子が
『小さなお花さん、おはよう。行ってきます。』
と言って学校へ行ったので、私は
『行ってらっしゃい。』
と言う練習をしました。

そして、学校から帰ってきた女の子が
『小さなお花さん、ただいま。今お水をあげるからね。』
と言ってくれるので、私は
『おかえりなさい。』
と、
『いつもお水をありがとう。』
と言う練習もしました。

次の日は声が小さくて女の子は気がつきませんでした。だけれど、その次の日、私は
『行ってらっしゃい。』
と大きな声で言いました。すると、女の子はうれしそうに
『行ってきます。』
と言って学校へ行きました。そして、女の子が帰ってきた時に
『おかえりなさい。』

『いつもお水をありがとう。』
を言うと、女の子はうれしそうに
『ただいま。』
と言いました。