僕達の小さくて大きな森(1)

2021-12-30 11:00:28 | 童話
 去年、僕の投げたボールがおじいちゃんの大切にしている盆栽という小さな植木に当たり、植木を折ってしまったことがある。だから、僕が家にいる時にはおじいちゃんは植木を大事にして片付けているが、今日は片付けるのを忘れて出掛けたみたいだ。

僕は友達とボールが植木に当たらないようにキャッチボールをしていたが、僕の投げたボールが植木の方に飛んで行って植木に当たりそうになった。しかし、その時ボールが見えなくなった。植木には当たらなかったので植木は壊れなかったが、ボールが見つからない。

『危なかったね。』
『うん、危なかったね。』
『だけどボールはどこへ行ったのかなぁ。』
『見つからないね。』
『植木に当たりそうになったのが見えたのに、急にボールが見えなくなったね。』
『ボールが急に小さくなって植木の所にぶつかったみたいに見えたよ。』
『もう一個のボールをそっと投げてみようか?』
『うん、だけど植木が壊れるとおじいちゃんに怒られるからソッと投げてよ。』
『うん、分かった。』

山の上のロックの永~い旅(6)

2021-12-29 10:56:43 | 童話
『あれっ、あっちこっちの角が取れちゃったので、段々丸くなってきた。』
そして、取れた角の小石も川の中でコロコロと転がっていた。

『お~い、みんな大丈夫かい?』
『大丈夫だよ。一緒に転がっているからね。』
『だけど、君達の方が小さいから転がるのが速いね。』
段々川が広くなって、魚も多くなってきた。人間が川下りする船とも出会った。
『僕はロック、君達は?』
『ぼくはコイ。』
『わたしはアユ。』
『ぼくはイワナで、あそこにウナギも居るよ。』
『ロックはどこへ行くの。』
『海へ行くんだよ。』
『海はまだ遠いよ。』
『この川を転がって行くと海へ行けるよね。』
『うん、海の少し前まで行った事があるけれど、遠いよ。』
『ありがとう、頑張って行ってくるからね。』

そして、何年か転がって海の入口にやって来た。
『水が少し塩辛くなったね。』
遠くに大きな船が見えてきた。
『海だ、海だ、海に着いたのだ。』
僕の上を大きな波がザブン、ザブン。
『ここは、波でユラユラと楽しいな。』
『やぁ、僕たちよりも前に来た石達もみんな丸くなっているね。』

『お父さん、お母さん、僕は海に着いたよ。お姉ちゃん、弟、海で待っているからね。気を付けて来るんだよ。』
何年もかかったけれど楽しい旅だったと、僕は思った。

   おしまい

山の上のロックの永~い旅(5)

2021-12-28 09:27:47 | 童話
何年か経った時に台風が来た。山に沢山の雨が降り、小川の水量が増えて、僕はまた動き出した。そして、もっと広い川まで滑って来た時、急に水の流れが激しくなってきて、あっちこっちぶつけながらすこしずつ進んだ。

その時、前の方の川岸や木が見えなくなり、空が見えてきて、急に体がふぁっと浮かんだ。 次の一瞬、下へ下へと体が落ちて行った。それは、お父さんやお母さんから聞いていた滝だ。初めて見たし、初めて下へ落ちて行った。ドボーン、ドスン。僕は滝壺に落ちてお尻をぶつけた。その衝撃で体が半分くらいになってしまい、滝壺から飛び出した。そして、僕の体の仲間が沢山できたのだ。

『みんな大丈夫かい?』
『大丈夫だよ。』
『大丈夫。』
『元気だよ。』
『一緒に居るよ。』
『僕も元気だよ。』
『良かった、良かった。みんな無事でよかった。』
『この滝壺から出るのに何年かかるかわからないけれど、みんなで海に向かっていこうね。』
そして何年もかけて、ゆっくり、ゆっくりと川を下って行った。

今度は広い川の中なので、僕は転がりだして、大きな岩にぶつかった。
『痛いっ。岩にぶつかったので、頭とお尻の角が取れちゃった。』
そして、僕は次々と岩にぶつかりながら転がって行った。

山の上のロックの永~い旅(4)

2021-12-27 10:27:17 | 童話
『いっぱい来たね。すごい、すごい。』
『この飛んでいる中にお父さんとお母さんも居るよ。』
『こうしてお父さんやお母さんとお話しをしているの?』
『そうだよ、他のトンボともお話しをしているんだよ。』
『それなら寂しくないよね。』
『うん。』

『ここには、ヤゴ君以外は居ないの?』
『沢山居るよ。アメンボやタガメ、そしてゲンゴロウも居るよ。今はみんな出かけているのかな。』
『帰って来たら教えてよ。』
『いいよ。』

『あっ、小鳥が来た。』
すぐ近くでウグイスが鳴き始めた。
『僕の名前はロック、いい声だね。』
『褒めてくれてありがとう。』
『いつも、こんなにいい声で鳴いているの。』
『違うよ、お嫁さんを探す時だけこうして鳴くんだよ。』
『今、君は鳴いているからお嫁さんはまだなんだね。』
『うん、まだ鳴き方が上手くないから仕方ないんだ。』
『僕は上手いと思うけれどね。』
『みんな、もっと上手いよ。』
『頑張ってね。そしてお嫁さんが見つかったら教えてよ。』
『少し時間がかかるよ。』
『暫くここに居るからいいよ。』
『素敵なお嫁さんが見つかるといいね。』
『もっともっと頑張るよ。』
『応援しているからね。お嫁さんが見つかったらプレゼントは何がいい?』
『そうだね、玄関に飾る花輪の飾りがいいかなぁ。』
『いいよ、僕は作れないけれど、リス君に作って貰おう。』
『リス君は手が器用だから、きっと素晴らしい花飾りができると思うね。』
『うん、楽しみにしているね。』

山の上のロックの永~い旅(4)

2021-12-25 09:45:51 | 童話

『いっぱい来たね。すごい、すごい。』

『この飛んでいる中にお父さんとお母さんも居るよ。』

『こうしてお父さんやお母さんとお話しをしているの?』

『そうだよ、他のトンボともお話しをしているんだよ。』

『それなら寂しくないよね。』

『うん。』

『ここには、ヤゴ君以外は居ないの?』

『沢山居るよ。アメンボやタガメ、そしてゲンゴロウも居るよ。今はみんな出かけているのかな。』

『帰って来たら教えてよ。』

『いいよ。』

『あっ、小鳥が来た。』

すぐ近くでウグイスが鳴き始めた。

『僕の名前はロック、いい声だね。』

『褒めてくれてありがとう。』

『いつも、こんなにいい声で鳴いているの。』『違うよ、お嫁さんを探す時だけこうして鳴くんだよ。』

『今、君は鳴いているからお嫁さんはまだなんだね。』

『うん、まだ鳴き方が上手くないから仕方ないんだ。』

『僕は上手いと思うけれどね。』『みんな、もっと上手いよ。』

『頑張ってね。そしてお嫁さんが見つかったら教えてよ。』

『少し時間がかかるよ。』

『暫くここに居るからいいよ。』

『素敵なお嫁さんが見つかるといいね。』

『もっともっと頑張るよ。』

『応援しているからね。お嫁さんが見つかったらプレゼントは何がいい?』

『そうだね、玄関に飾る花輪の飾りがいいかなぁ。』

『いいよ、僕は作れないけれど、リス君に作って貰おう。』

『リス君は手が器用だから、きっと素晴らしい花飾りができると思うね。』

『うん、楽しみにしているね。』