夢の交換(1)

2018-05-31 06:04:22 | 童話
僕は学校で昨日見た夢を友達に教えてあげることがあります。
旅行に行った夢、飼っている動物とお話しをした夢、友達と遊んだ夢、大きなカブトムシやクワガタと遊んだ夢、そのほか楽しい夢がいっぱいあります。
そして、友達もたくさんの楽しい夢を見ますが、僕しか知らない夢や、友達しか知らない夢がいっぱい有るので、僕は友達と夢を交換する方法を相談しました。

『僕の見た夢を、何かの入れ物に入れて持って来ることができるといいんだけれどね。』
『そうだね。どんな入れ物だと夢が入れられるのかなあ?』
『キャンディーが入っていたビンに入るかなあ?』
『うん、やってみようよ。』
『だけれど、どうやって夢をビンの中に入れるの?』
『夢を見た朝に、ビンの入口に向って「夢っ!」と言ってビンの蓋を閉めたらどうかなあ?』
『いい考えだね。やってみようよ。』
『今度、夢を見たらやってみようね。』

僕も友達もしばらく夢を見ないか、起きた時に夢の内容を覚えていなかったので、夢を入れることができませんでした。
ある日、僕はカブトムシを捕まえた夢を見たので、起きた時に夢を入れるビンの蓋を開けて「夢っ!」と言ってビンの蓋を閉めました。

そして、夢を入れたビンを学校の持って行って友達にあげました。
『ありがとう。だけれど、どうやって夢を見るの?』
『寝る時に、ビンの蓋を開けて「夢っ!」と言って寝るといいんだと思うよ。』
『うん、やってみるよ。』

次の日、友達は『言われたとおりやったんだけれど、夢は見なかったよ。』と言いました。
『夢の入れ物はビンだとダメなのかなあ?』
『ビンはダメなんじゃないかなあ?』
『よしっ、今度はジュースの入っていたペットボトルに入れてみようよ。』
『そうだね、ペットボトルならきっと大丈夫だよ。』
『うん、ペットボトルならきっとうまくいくよ。』

火星ネズミ(3)

2018-05-30 05:54:21 | 童話
僕はすごい衝撃を受けて体が床に押しつけられた。
三人の宇宙飛行士も座席に押し付けられていた。
しばらくして押し付けられる力が弱くなり、立てるようになった。
そのあと、こんどは体が浮かび上がった。
今迄隠れていたが、空中に浮かんだので3人に見つかってしまった。
僕は仕方なくみんなに挨拶をした。

『僕も宇宙飛行士になりたかったのです。みんなに迷惑をかけないので火星に連れて行ってください。僕の食べる物とお水は持っていますし、オシッコやウンチを貯めて押し固める袋も持っています。』
三人の宇宙飛行士は相談した。

『今この宇宙船から外へ出したらハツカネズミは死んでしまう。食べ物もお水も持っているし、ハツカネズミは体が小さいので酸素もあまり使わないので連れて行こうか。』
僕は大喜びをして、『みんなの訓練の様子はずっと見ていましたので、この宇宙船のことは大体分かりますので、僕を宇宙飛行士として手伝わせてください。』

『よしっ、分かった。君には機械の操作はできないが計器の見張りをやってもらうよ。空気の圧力や炭酸ガス濃度、それと電気の状態を毎日記録するんだ。いいかい、君は宇宙飛行士なんだから。』

僕はすごく嬉しかった。
『よしっ、頑張るぞ。』
こうして、僕は宇宙飛行士となり、3人の宇宙飛行士と一緒に、今も火星に向けて飛行している。
みんなとミッションを成功させて帰ってくるように頑張っている。
 
      おしまい

火星ネズミ(2)

2018-05-29 06:00:43 | 童話
それから僕は、みんなが宇宙の勉強をしている教室に入って行き、テーブルの隙間から勉強の様子を見ていた。
そうか、地球の空気が無い宇宙では、宇宙に飛んでいる宇宙線や、太陽からの太陽風が直接当たるので体を悪くするのか。
宇宙船はその影響を少なくするようになっているが、太陽の爆発が大きくなった時は、それでも防げない場合が予想されるので、その時は安全な宇宙服を着るんだ。
勉強は大切なんだね。

そうすると僕も宇宙服を作らないといけないね。
だけれど、僕は機械が使えないので宇宙服が作る事ができない、どうしようか?
そうだ、倉庫に有る宇宙服用の布地を少しもらってきて、ロケットに乗り込む時に持って行こう。
もし宇宙で危険になった時に、宇宙服用の布地にくるまっていればいいや。

そして僕は倉庫に行った時に、実験に使った宇宙服用の布地を僕の住家に持ってきた。
その時に、宇宙食とお水、それとオシッコとウンチを貯めて押し固めておく袋も一緒に持ってきた。宇宙飛行士として、人間に迷惑をかけないようにするためだ。

そして、人間の訓練が順調に進み、僕の訓練も進んだ。
今回のロケットの行先は火星であり、永い宇宙旅行になる。
そして訓練が終り、十名の宇宙飛行士から今回乗り込む三名が決定した。

発射の一ヶ月前となり念入りの最終チェックが続き、僕もロケットに乗り込む物の最終チェックをした。
機体の確認ができたのでロケットに荷物が積み込まれたが、その時に僕が荷物を持って、そっと乗り込んだ。
成功だ、僕は宇宙飛行士になれるのだ。

いよいよ、ロケットに燃料が入れられて、発射の秒読みが始まった。
僕は足を踏ん張って、発射の時に体にかかる重力のGに耐えられるようにした。
大きな声のカウントダウンのアナウンスがあった。
十、九、八、七、六、五、四、三、二、一、発射。

火星ネズミ(1)

2018-05-28 05:44:38 | 童話
僕はハツカネズミ、僕の仲間には宇宙環境の実験のために、小さなオリに入れられて宇宙へ行ったネズミも居る。
だけれど、僕は宇宙飛行士として宇宙に行きたいと思っている。

日本の宇宙飛行士十人は、ロケットの発射による重量に耐える訓練や宇宙船の操縦、そしてボットアームの操作の訓練を毎日行なっていた。
一日の訓練が終ると疲れて、宿舎に帰って食事をしてお風呂に入ったら、すぐ寝てしまうのだ。

ハツカネズミの僕はみんなが寝ている間に訓練の装置を見て回った。僕は機械の操作はできないが、全部見ておけば人間が実際に訓練している様子が良く分かる。
昼間は見つかってしまうので夜の間の探検だ。

僕の一番のお気に入りは操縦室だ。コンピュータ画面や計器がいっぱい並んでいる。まだ全然分からないが、打上げまであと一年くらいかかるのではないかと思うので、その頃までには全て分かる予定だ。
『訓練開始!』教官の大きな声が響いた。

僕は訓練装置の隙間から訓練の様子を見ている。
『ふぅ~ん、そうなんだ。ハッチを閉めるのは、そのボタンで、船内の気圧は、あのメーターで、炭酸ガス濃度は、こっちのメーターなのか。』
計器類の確認が終わったら
『Gをかけます。』
とのアナウンスがあり、徐々に僕の体が重くなってきて、ついに体が床に張り付いて動けなくなった。
『そうか、ロケットが打上げられる時に体にかかる重力なんだ。』
しばらくしてやっと歩けるようになった。
『ふぅ、大変なんだね。』
それからみんなは、いろいろな計器が異状を示した時に、原因を調べて修理する訓練をやっていた。『ふぅ~ん、予備の装置がいっぱい付いているんだ。誰もいない宇宙に何年も飛んで行くから、全部自分達で直さなければならないから大変なんだね。』

何日か見ている間にいろいろ分かってきだした。

山の巨人(2)

2018-05-27 08:38:28 | 童話
次の日、巨人がいつものように、右の足で山の頂上にポン、今度は左の足で次の山の頂上にポン、そして、右足左足と山の頂上をポンポンポンと跳んでやって来ました。

そして、町に着くと巨人は小さくなったのですが、小さくなり過ぎて大人の手のひらに乗る大きさになったのです。
小さくなり過ぎた巨人は、町の人の足で踏みつぶされないようにして歩きました。
『さっき豆粒みたい物が走って行ったね。』
『そうだねぇ、あれは何だったのかねぇ。』
『もう来ないのかなぁ。』

そして、巨人は食堂に入ったのですが、お店の人は気がつきません。
巨人は小さくなり過ぎたのに気が付き、誰もいない所で大きくなって大人と同じ大きさになり、いつものように、町の食堂でお昼ご飯を食べて、お買い物をして、山に帰って行きました。
もちろんいつもの巨人のように大きくなって、右の足で山の頂上にポン、今度は左の足で次の山の頂上にポン、そして、右足左足と山の頂上をポンポンポンと跳んで帰ったのです。

その次の日、巨人がいつものように、右の足で山の頂上にポン、今度は左の足で次の山の頂上にポン、そして、右足左足と山の頂上をポンポンポンと跳んでやって来ました。
町に着くまで、着いたら小さくなるのを忘れないようにしていましたし、あまり小さくならないようにすることも忘れないようにしていました。
そして、いつものように町の食堂でお昼ご飯を食べて、いろいろな買い物をして帰りましたが、帰る時に山の中で暗くなってきました。そ
の時、巨人は普通の大人の人と同じ大きさであることに気が付きました。
元どおりの巨人の大きさになるのを忘れていたのでした。

そして、巨人は、また大きくなって、山の頂上をポンポンポンと跳んで帰りました。
それから巨人は、小さくなることや、元のように大きさなることを、もう忘れ無いだろうか?

君達みんなで『もう忘れないでね。』と言ってあげようか。
『山の巨人さ~ん、忘れないでね!』

おしまい