僕達の小さくて大きな森(2)

2020-11-30 09:49:08 | 童話
『ああ、ビックリした。』
『そのままエンピツを持っていたら、どうなったのかなぁ。』
『僕達も小さくなって、見えなくなってしまうのかなぁ。』
『もうおじいちゃんが帰ってくると思うのでキャッチボールは止めよう。』
『そうだね、ボールも3個無くなってしまったので、キャッチボールもできなくなってしまったしね。』
『僕はもう帰らないといけないので、また明日、学校から帰ったら遊ぼうか。』
『そうだね、3個のボールも明日探そうね。』
僕は植木が気になっていたけれど、ボールは明日探すことにした。

僕達の小さくて大きな森(1)

2020-11-29 09:03:04 | 童話
 去年、僕の投げたボールがおじいちゃんの大切にしている盆栽という小さな植木に当たり、植木を折ってしまったことがある。だから、僕が家にいる時にはおじいちゃんは植木を大事にして片付けているが、今日は片付けるのを忘れて出掛けたみたいだ。

僕は友達とボールが植木に当たらないようにキャッチボールをしていたが、僕の投げたボールが植木の方に飛んで行って植木に当たりそうになった。しかし、その時ボールが見えなくなった。植木には当たらなかったので植木は壊れなかったが、ボールが見つからない。
『危なかったね。』
『うん、危なかったね。』
『だけどボールはどこへ行ったのかなぁ。』
『見つからないね。』
『植木に当たりそうになったのが見えたのに、急にボールが見えなくなったね。』
『ボールが急に小さくなって植木の所にぶつかったみたいに見えたよ。』
『もう一個のボールをそっと投げてみようか?』
『うん、だけど植木が壊れるとおじいちゃんに怒られるからソッと投げてよ。』
『うん、分かった。』

友達が植木に向ってボールをソッと投げた。その時、ボールが小さくなっていき、植木に当たりそうなったが、ボールは見えなくなってしまった。
『やっぱりボールが小さくなったね。』
『うん、そうだね。今度は僕が投げてみるね。』
僕は持っている最後のボールをソッと投げたが、やっぱりボールが小さくなって見えなくなってしまった。
『今度はボールが小さくなっていったのがよく見えたね。』
『うん、そうだね。』

『今度はボールではなくエンピツを投げてみようか?』
『そうだね。』
僕は机の上に置いてあるエンピツを持ってきて植木に当たりそうなくらいまで近付けた。その時エンピツがブルブルと震えた。僕はビックリしてエンピツを離した。するとエンピツは小さくなって見えなくなってしまった。

カタツムリの富士登山(11)

2020-11-28 09:13:08 | 童話
僕は長い間歩いたので、みんなで登山口の近くのキャベツ畑で休憩をしていました。
その時、キャベツ畑の持ち主さんがやって来て、みんなが休憩をしていたキャベツを箱に入れました。トンボ君とチョウチョさんは羽が有るので、他のキャベツへ飛んで行きました。だけれど、僕は飛べないので、キャベツと一緒に箱の中に入れられました。
『うわっ。』
僕は箱の穴から頭を出して、箱の外を見ました。箱の外には「たのしい農協キャベツ」と書いてありました。
「たのしい農協」は、僕がお父さんやお母さんと一緒に住んでいる所から近いので、少し安心しました。

『トンボ君、チョウチョさん、僕はこのまま箱の中にいて、僕の住んでいる所の近くに連れて行ってもらうからね。一緒に山から下りて来てもらってありがとう。みんな元気でね。バイバイ。』
『バイバ~イ、元気でね。』
『バイバ~イ、お父さんとお母さんを大切にしてあげてね。』
『うん、わかったよ。バイバ~イ。』

キャベツを入れた箱をたくさん積んだトラックが走り始めましたが、トラックはスピードが速く、トンボ君もチョウチョさんも追いつけませんでした。
トラックが「たのしい農協」に着いたので、キャベツの入った箱を全部下ろしました。

僕は箱の穴から外へ出て、お父さんとお母さんのいるお花畑へ歩いて行きました。
『お父さん、お母さん、ただいま、帰って来たよ。』
そして、僕はチョウチョさんとトンボ君と一緒に登った事や、富士山の山頂からのきれいな風景や、チョウチョさんとトンボ君と一緒に下りて来た事をお話ししました。
今度はどこへ行こうかな、考えていると楽しいよ。

   おしまい

カタツムリの富士登山(10)

2020-11-27 09:24:41 | 童話
そして、何日か歩いて下りて来ると、トンボがやって来て、『おかえり。』と言った。
だけれど僕の知っているトンボ君ではなかった。
そこへチョウチョがやって来て『おかえりなさい。』と言った。
『だけれど、一緒に登ったトンボ君とチョウチョさんとは違うね。』
『そうよ、チョウチョもトンボも1年しか生きていられないので、前に会ったチョウチョもトンボも、もういないんだよ。だけれど、僕がまだ卵の時に、カタツムリさんの事をお父さんやお母さんから聞いていたんだ。そして、お父さんやお母さんも、卵の時におじいさんやおばさんから聞いていたんだと、お父さんやお母さんが言っていたよ。だからここで待っていたんだよ。』
『そうなのか、うれしいなぁ。それでは一緒に下りて行こうか?』
『うん、いいよ。』
『ええ、いいわよ。』

そして、みんなで
『ランランラン、ランランラン。』
『ルンルンルン、ルンルンルン。』
『ピッピピピ、ピッピピピ。』
と歌いながら下りて行きました。
何日間かみんなで歩いて、富士山の登山口に着きました。

カタツムリの富士登山(9)

2020-11-26 09:06:51 | 童話
『あ~あっ、よく寝たなぁ。』
僕は、あまり寒くないので目がさめた。
そして、岩の穴の中から外を見ると雪はほとんど無くなっていた。
『お父さんとお母さん、僕はまた約束を守って家の中にいたよ。』
そして、穴の外でお水をタップリ飲んで歩き始めた。雪の上や、雪解け水の上は冷たいので、乾いている所を歩いて行った。

『ランランラン、ランランラン。』
今度も、僕が歌っても、だれも『ルンルンルン、ルンルンルン。』や『ピッピピピ、ピッピピピ。』と歌ってくれる友達がいません。
また時々寒い日があるので、寒い時は暖かそうな岩の穴を探して暖かくなるのを待つことにした。