夢のおじさん(6)

2018-03-25 11:38:12 | 童話
広い草原に有る学校の夢を見てからは、僕は夢を見なかった。
いや、夢のおじさんに会っていると思うのだが、夢を見ていないから夢のおじさんのことを覚えていないのです。
そして、何年かしてから夢のおじさんに会いました。
『やあ、しばらくだね。』
『そうですね、おじさん。』
『今日も夢は無いんだけれど、君に会いたくて来てもらったんだよ。』
『僕もおじさんに会いたかったよ。用事はな~に?』
『君はもう大きくなったので、夢は自分で作るんだよ。楽しい夢や悲しい夢や普通の夢をいっぱい作って、楽しい夢だけを友達みんなにあげるんだよ。』
『うん、分かったよ。』

『それでは、これからこの高い階段を一緒に上がって行こうか。』
『この階段の上には何が有るの?』
『何も無いよ。』
『それでは、どうして階段を一緒に上がって行くの?』
『何か夢を見ないと私のことを覚えていないからだよ。こうして階段を一緒に上がっているのを夢で覚えていられるんだよ。』
『そうだね、これは夢だね。そしてこれが、おじさんが作ってくれた最後の夢だね。』
『そうだよ。明日から楽しい夢をたくさん作りなさい。』
『うん、分かった、おじさん元気でね。』
『ああ、ありがとう。君も元気でな。』
『バイバイ。』

僕は次の日、学校へ行った時に夢のおじさんのことを友達に教えてあげました。
『へえ~、夢はおじさんが作っているのか、すごいね。』
『そうよね、すばらしいわよね。』
『僕の夢にも、夢のおじさんが来るかなあ。』
『ああ、おじさんが最後の夢だと言うまで来るんじゃないかな。』
『楽しみだなあ。』
こうして、みんな夢のおじさんが夢の中に来るのを楽しみにして待っています。

        おしまい