僕は自転車(2)

2018-03-03 10:18:04 | 童話
友達は
『なんだ、乗れるじゃないか。』と言った。
男の子は嬉しそうに
『うん、そうだね。』
と言って公園の中をぐるぐると、いつまでも僕に乗って走っていた。
だんだん上手くなり、僕はグラグラしなくなった。
お父さんさんが
『おぅ、乗れるようになったじゃないか。』
と言い、男の子以上に嬉しそうにしていた。

男の子は、夕飯の時にお母さんに
『あのね、僕、自転車に乗れるようになったよ。』
と言うと、お母さんは
『あらそう、頑張ったのね。良かったわね。』
と喜んでくれた。
そして、しばらくお父さんや友達と一緒に僕に乗って楽しんだ。

ある日、お父さんが男の子に
『大きくなったので新しい自転車を買ってやろうか?』
と言った。男の子は嬉しそう『うん。』と言った。だけれど男の子は
『要らない、僕が自転車に乗れるようになったのは、この自転車だったからなんだ。僕はこの自転車が大好きなんだ。僕がこの自転車を乗らなくなると自転車がかわいそうだから。』
と言ったので、僕は
『ありがとう、だけど僕は違う子供に乗ってもらうから大丈夫だよ。』
と涙を抑えて言った。
お父さんが
『それでは、新しい自転車を買ってやるが、この自転車も家に置いておくから、時々この自転車にも乗ってやればいい。』
と言ったので、男の子は『うん、そうする。』と応えた。
僕は嬉しくなり、『ありがとう、ありがとう。』と何度も言った。

そして僕は、綺麗に磨かれて、油もさしてもらって元気にしている。
新しい自転車で帰って来た男の子は必ず僕の所に来て、サドルをボンポンとたたいてくれる。何も言わないが僕は嬉しい。

少し経って、僕の仲間ができた。男の子が大人になって、自分のお金でカッコいいマウンテンバイクを買ったのだ。そして、今迄乗っていた大きな自転車もきれいにして、僕の隣りに置いてある。2台の自動車で時々お話しをするので僕は寂しくない。