両手を広げて(1)

2018-03-26 21:19:11 | 童話
『お母さん、僕ね、夢の中で空を飛んでいたんだよ。』
『あらっ、すごいわね。』
『両手を広げて、ビューンと飛んでいたんだよ。』
お父さんは
『夢は何でもできるけれど、本当は飛べないよ。』
だけど、僕は飛べると思う、夢の中で飛んでいたから飛べるんだ。

『お母さん、僕ね、また夢の中で空を飛んでいたよ。今度はね、パラグライダーを付け飛んでいたんだよ。』
『あらっ、すごいわね。』
お父さんは
『少し現実味のある夢になったな。』
と言ったが、すごいねとは言わなかった。
僕はできそうな気がする。

そして、今晩はどのようにして空を飛ぶのか楽しみだ。
『お母さん、僕ね、また夢の中で空を飛んでいたよ。今度はね、ヘリコプターを操縦していたんだよ』
『あらっ、今度はすごいわね。』
お父さんは
『そうだなぁ、努力すれば可能性のある夢だな。』
と言ったが、すごいねとは言わなかった。
僕は大きくなったらヘリコプターに乗ろうと思った。

『お母さん、僕ね、また夢の中で空を飛んでいたよ。今度はね、ジェット旅客機を操縦していたんだよ。』
『あらっ、すごいわね。』
お父さんが
『いっぱい努力しないとなれないよ。』
と言って、ガンバレと言った。
僕は努力してジェット旅客機を操縦しようと思った。