KONASUKEの部屋

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民話の世界展⑥狼ばしご

2018年04月03日 | イベント
狼ばしご(石岡市)

秋も深まったある日のこと、日はとっぷりと暮れてしまったのに山道に迷い、泊まる家もなく、困っている二人の若い坊さんがありました。

あいにく月もなく、足探りで道を探しながら、歩かねばなりません。
「どこかで休ませてもらうところはないものか・・。」
すると、はるか谷を下ったところに小さなあかりが見えました。
「あ、あったぞ!
あそこで休ませてもらおう。」
二人は足を滑らせて傷ついたりしながら、ようやく谷を下り、その家に着きました。
たどりついたときには、もう立っているのもやっと・・というほど疲れ果てておりました。

「お頼み申す。」
「どなたかな・・。」
中からしゃがれた声が聞こえました。
戸のすきまからのぞくと、白髪頭のやせたばあさまが一人、いろりばたで何かうまそうに食べているところでした。
ぷーんと肉を焼くにおいがします。

「お入りなんしょ、戸はあくから。」
旅の坊さんたちはいわれるがままに中へ入りました。
「こんな夜更けにお許し下され。
道に迷って難儀しています。
今晩泊めて下され。」
ばあさまは、
「あいにくひとりぼっちの暮らしなもんでなんもねえ、こんな小屋みたいな家だけんど、雨露はしのげやんす。
いつ死ぬかわかんねえわしのような年寄りのとこへ坊さんが泊まってくれるのもありがてえ。」
と言いました。
そして二人が手足をすりむいて血をだしているのをみると、
「あれ、もったいねえ、血までだして。」
と何かごくりとつばを飲み込んだようでしたが、疲れ果てている二人は、ばあさまがもったいないと言ったのは二人が坊さんなので、敬っていってくれたのだと思い、傷をみてびっくりしたのだろうとしか思いませんでした。
「腹が減っていますべ、おあがりなんしょ。」
と、骨がついたまま、ちょっとあぶっただけの肉をひょいと差し出しました。
「山家じゃあ、なんもねえで。」
坊さんたちは後ずさりしました。
腹は減って目も眩むほどです。
でも僧侶の身としては肉は食べられません。
「せっかくですが、わたくし共も僧侶のはしくれ。
たとえどんなに空腹でも肉はいただきかねます。
泊めてくださるだけで十分です。」
「そうかえ、せっかくうんめえもん食わせんべと思うたに・・・。」
と言いながら、がつがつとその肉を食べていましたが、ふと、
「肉を食べねえ生きものは肉がうめえっていうけど・・・。」
と、いろりのなかに足を下ろした二人の足を見やってつぶやきました。
肉のなまぐさいにおいがたちこみ、二人は気持ちが悪くなりました。

やがてばあさまがむしろをひいてくれ、あるだけのむしろをだして、上にかけてくれましたが、二人は疲れ切っているのに、なにか神経がたかぶって眠れません。
ばあさまは、
「どれ、ねたんかな。」
と二人の様子を伺っているようです。
寝たふりをしながら、ばあさまを見ると、ぺろぺろと不気味に舌なめずりをしている恐ろしい山姥でした。
二人は大声をだしたくなるのを必死に我慢していると。
山姥は二人がすっかり寝入ってしまったと思ったのでしょう、あったかいざらざらした舌で、足の血のにじんでいるあたりをぺろぺろと舐め始めました。
舐められた坊さまは冷や水を浴びたような寒気に襲われ、思わず起き上がってしまいました。
その気配に、ずっと眠ったふりをして我慢していたもうひとりも起き上がりました。

山姥は何事もなかったかのように
「おや、どうしたんかえ。」
といいながら、二人をじろりと見ました。
「ちょっと、小便をしてきます。」
「わ、わたしも。」
山姥は
「おお、そうかえ、ちょっくら待ってろよ、こうしてやっから。」
つるをとりだして、二人の首にしっかりと結びつけました。
「逃げ出されちゃあ、困るからな。」
二人はさからうこともできません。

首を繋がれた二人はずるずると表にでました。
戸を閉めようとすると
「戸を開けておけ。」
と、山姥に怒鳴られてしまいました。

それでも、家の中から見えないように岩陰に入ることが出来ましたので、急いでつるをはずすと、これを木に結び付け、夢中になって逃げだしました。

もう、足が痛いの、腹が減ったの、なんて言っていられません。
ころんだりすべったりしながら、二人は必至でにげました。

さて、二人があまりに遅いので、
「むむっおかしいぞ!
さては!
逃げやがったな!」
山姥は唸り声をあげて、表に飛び出しました。
うお~~!
山姥がまた一声大きな声で雄叫びをあげると、それはかなたの山にこだまして身の毛もよだつ叫びが轟きわたりました。
すると
うお~!
うお~~!
わお~ん!
あちこちから狼が飛び出してきて、山姥のもとへ集いました。
山姥はひょいっと先頭の狼にまたがると、ほとばしる勢いで狼たちと二人の後を追うのでした。

ころんだりすべったりしながら必死に逃げてきた二人の坊さんは、いつのまにか断崖絶壁の上に来ておりました。
山姥たちはぐんぐん追いついてきます。
進退きわまった二人の眼に大きな一本の松の木がうつりました。
「あの木に登るんだ!」
しかし、木の幹は太すぎてよじ登ることもできません。
「もうだめだ・・。」
と思ったとき、さあっと二人の顔をなでるものがあります。
「きゃっ」
二人は思わずそれにしがみつきました。
それは一本の垂れ下がったつるだったのです。

そのときです。
「みつけたぞう。」
追いついた山姥が二人の襟首をつかもうと飛びつきました。
「ぎゃあっ!」

二人はつるにしがみついたまま、崖から飛び降りました。
ぐう~ん
つるは谷へゆれてぶら下がりましたが、
ぐう~ん
再びふりこのように揺れて狼と山姥のもとへもどっていきます。
「ひ、ひえ~~。」
二人は夢中になってつるをよじ登っていきました。
「逃がすものか。」

つるが戻ってくると山姥がそれにとびつきました。
山姥はぐんぐんと追いついてきます。
つるを必死によじ登っていた二人の手が何かにふれました。
それは大きく谷にせり出した松の木の枝でした。
二人が木にしがみついた時、山姥の手が坊さんの足首にふれました。
「あっ!」
思わず足をひっこめたとき、捕まえることだけに夢中になっていた山姥の腕がつるりとすべり、つるからずり落ちてしまいました。

「いまだ!」
二人は急いでつるをひきあげてしまいました。
ところが敵もさるもの、山姥はとっさに崖に飛び移り谷へ落ちることもなく、松の木の根元で二人をにらみつけました。
山姥が狼たちに合図をすると、どうでしょう、狼の上に狼が乗り、さらにその上に狼が乗っていき・・・たちまち狼ばしごが出来上がりました。
そして一番上に山姥が立ちました。

「なんまいだ、なんまいだ、なんまいだ・・・。」
坊さんたちはもう祈るしかすべがありません。
もはやこれまで、とひたすら念仏を唱えるのでした。
ところが、
山姥が松の木の枝に飛びつくのにはあと一匹分くらい狼ばしごが足りないのです。
くやしそうに歯をむきだし、目をぎらぎらとさせた山姥は松の幹をよじ登ろうとしますが、太すぎてそれもかないません。
うお~~!
怒り狂った山姥は松の木に飛びつきました。
「ぎゃあ~~おおおお~~~~。」

枝をつかみ損ねた山姥は深い深い谷底へと落ちていきました。

恐怖におののいた二人はそれを見ることもできず・・・。
念仏の声も枯れ果て、夜が明けて、お日さまがのぼるのも気づかずにひたすら松の木の枝にいつまでもいつまでもしがみついておりましたとさ・・・。

おしまい。

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5 コメント

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Unknown (Unknown)
2018-04-03 19:40:19
てに
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Unknown (すい丸)
2018-04-03 19:41:38
フライング(笑)

手に汗 握りました。
コワイコワイ
返信する
こんばんは (そよかぜ)
2018-04-03 19:45:49
面白いお話に引き込まれました
民話はよいですね
どこかほのぼのとしていて読んでいて楽しかったですヽ(^。^)ノ
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すい丸さんへ (KONASUKE)
2018-04-04 23:21:29
コメントありがとうございます。

何の暗号かと思いました(笑)

「日本昔ばなし」のおどろおどろバージョンですね(笑)
返信する
そよかぜさんへ (KONASUKE)
2018-04-04 23:32:07
コメントありがとうございます。

「民話の世界展」のネタは、まだまだ沢山あるんですが。
入力に時間がかかるので、なかなか進みません。
笑い話とかもあるので、楽しみにしていて下さい。
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