先日、渋谷で開催された日本グリーフケア協会主催のグリーフケア・アドバイザー講習会を受講してきた。
グリーフというのは「大きな悲嘆」「強い悲しみ」「喪失感」という意味である。
グリーフケアというのは主に大切なひとを亡くした方々へのサポート、ケアを指している。
昨今、このグリーフケアの必要性が全国的に見直されてきている。埼玉医科大学では独立して「遺族外来」という外来が設けられていて、癌やその他の病気で家族を亡くされた方のケアをしているそうだ。
そうした流れを受けて、最近ではいくつかのグリーフケア、グリーフカウンセリングのカウンセラーを養成する機関や、大学でもオープンカレッジに「グリーフケア」の講義をカリキュラムに加えるところが増えてきた。
今回私が受講したのは、ご自身も11年前にご主人を亡くされ、その後、アメリカでグリーフの勉強、研究をされた宮城大学で看護学を専門にしている宮林教授と言うかたが中心となって設立した日本グリーフケア協会が開いている講座だった。
聞くところによると、参加者の3分の1は看護師さんで、やはり病院関係、心理援助職についているひとの受講が多かったらしい。
なかには葬儀を取り仕切る会社の責任者、あるいは教育関係に携わっているかたも参加されたようだった。
午前、午後と5時間の講義を受けたが、やはり感じたのは私が以前から感じていたひととの別れにたいしての考え方と、講座で話された内容がほぼ同じ内容であるということだった。
グリーフケアというのは、もともとはアメリカが中心でフロイトなど歴史的な精神科医、心理学者といったひとの考え方が軸となっていたという。
その考え方と言うのは、できるだけ早く死別や大きな悲しみを取り除くこと、忘れることが中心となっていた。しかし、ここへきて考え方に変化が表れてきたという。
無理に早く悲しみを取り除いたり、亡くなったひとたちを忘れるのではなく、遺されたひとがこの世に存在しているあいだそのひとのことを思い続け、ともに生きることを奨励するようになってきているのだそうだ。
さらにここ数年の流れの特徴として表れてきたのが、悲嘆の対象が以前は配偶者や子どもであったものが、「親」に対しての悲嘆が急増しているという。
その背景には、親への依存、子離れできない親の存在があるのだとか、結婚をしないで親と長く同居している子ども、仕事を見つけられず親に生活の殆どを依存している子ども、また親のほうも子離れができず子どもの独立を阻んで結果的に共依存の関係になっている親子も存在する。
そうしたことから以前はほとんど見られなかった「親」に対しての悲嘆、喪失感が表面化してきたのだった。
また、別の方面からいわゆるペットロスの問題もテーマになっていた。
数年前までのアメリカでは公認されない悲嘆というかたちで、ペットが死んだことによる飼い主の悲嘆、喪失感が扱われてきたそうである。
現在は、そうしたペットとの別離によるグリーフも世の中に認知され、取り組みがおこなわれているという。
講師の宮林先生ご自身がご主人との別離を体験されていることもあり、講座の中では具体的な体験を語られる場面が幾度もあった。
そのすべてを紹介することはできないが、心理職にとどまらず一般の方々にも知っていただき、身近なひとが万が一グリーフケアを必要としたときの参考になればと思う。
まず、基本的には悲嘆はどんなに時間がたっても消えることはないということを承知しておくといい。そのため「もう忘れてもいいのでは」とか「もう何年たったでしょう」といった言葉かけはしないようにしたい。
それと同様に、落胆しているひとに「頑張って」は絶対に禁句である。すでに頑張っているひとに頑張ってということは酷な言葉のなにものでもない。その言葉によって相手は深く傷つき「これ以上どうやって頑張ればいいのか」と怒りを覚える場合もある。
もし、どうしても「頑張って」という言葉が出そうになったときは「頑張っているよね」と労いの気持ちを表す意味に使うといいだろう。
特に高齢者の場合、強い悲しみによって考えることができなくなったり苦痛になり、数字が嫌いになる傾向にあるそうだ。
参考事例として聴いた話によると、パートナーを失った女性が数字を嫌うようになったのを見て、周囲が認知症と間違えて施設に入れたということがあったそうである。
強い悲嘆の時期には周囲もくれぐれも判断を間違わないようにしてほしい。
また最近では、大事な人を看病して看取ったひとがうつ症状を訴えるケースが注目されてるが、うつ気分とうつ病との判断は慎重におこなったほうがいい。
ひとつの判断の目安として、一時的なうつ気分の場合は周りの思いやりに応える、反応、感謝の意思を示したりするが、うつ病の場合はあまりそれが見られないそうである。
グリーフは決して限られたひとが体験するものではない。
誰もが体験することである。
今までもグリーフケアを提供してきたが、これからはグリーフケア・アドバイザーとして、より一層グリーフケアが必要な人たちへ寄り添っていきたいと考えている。
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