それは体内時計と光の関係についての記事であった。
真夜中に光を浴びると体内時計が機能停止に陥ることを理化学研究所、近畿大学、名古屋大学の研究チームが突き止め学会で報告というもの。
真夜中に光を浴びると眠れなくなるというのはよく言われることだが、実はその原因と言うのが今まではっきりとは明らかにされていなかったらしい。
今回、研究チームがそれを突き止めたのだという。
結論から言うと、真夜中に光を浴びると細胞に組み込まれている体内時計がその刺激によってバラバラとなり、機能しなくなるのだという。
体内時計は人間などの動物に生まつき備わっているというのは今までも言われてきたことだった。
身体をつくる細胞はいろいろな「時計遺伝子」をもっていて心拍や体温などを二十四時間周期で調節している。
この周期が何らかの原因で乱れると不眠症など身体に異常を引き起こすのだという。
実はこの二十四時間で一日というのは地球の時間であって、人間の一日というのは二十五時間なのだとか。
それゆえに、もし光も温度も一日中変らない条件の中で生活すると、人間は二十五時間を一日と判断し、寝たり起きたりすることになってしまう。
また、当然のように人間以外の生物も一日二十四時間とは限らず、二十四時間より長かったり短かったりしているのだという。
この人間でいう二十五時間周期を二十四時間で一日という周期に合わせられるのが体内時計というわけである。
では、いったいこの体内時計というものはどういうものなのか。
実は左右の眼の網膜からのびた視神経が、視床下部で交叉しているところのすぐ上にある、視交叉上核を指しているという。直径わずか一ミリのその時計は朝、眼から入る強い太陽の光を感知すると、松果体(三ミリ~五ミリ)というところに信号を送る。
その松果体が「時計ホルモン」と呼ばれるメラトニンを分泌するのである。
メラトニンは約十四時間後に睡眠を促すホルモンで、それが血流によって体内に時間の情報を流す。
つまり、私たちの身体は太陽の光を浴びることで本来の二十五時間サイクルを二十四時間に調節しているということなのである。
真夜中に強い光を浴びると体内時計が一時的に止まってみえる現象が起きるのは、個々の細胞のリズムがばらばらになるということに他ならず、睡眠のリズムを守るには、やはり深夜に強い光は避けることが重要ということだろう。
ずっと以前、家庭内暴力が起こる原因のひとつにこの体内時計のズレが関係あるという説を聞いたことがある。
不規則な生活をおくることで体内時計が働かなくなり、毎日一時間ずつの生活リズムがズレ始め、それがやがて昼間に寝て真夜中に活動し始めるという生活の逆転現象となって心身に影響を与え、ひとつの歪として家庭内暴力が現れる場合が考えられるという話だった。
もちろんそれが原因のすべてではなく、あくまでひとつの可能性として私は受け止めていたが、体内時計が正常に働かなくなることでの心身への影響は無いとは言えないだろう。
体内時計を正常にするポイントがいくつかある。
1.朝、太陽の光を浴びること(できれば決まった時間)
2.昼間、明るいところで活動する。(夜、メラトニンの生成が多く促される)
3.毎日できるだけ他人とふれあう。
(社会のリズムに合わせることで、一日二十四 時間サイクルを感じやすくなる)
4.規則正しい時間の食事。
(朝食を摂ることで早く血糖値が上がり一日のリズムがとりやすくなる)
環境面では
夜…暗くする工夫 (遮光カーテン、アイマスクetc)
朝…明るくする工夫 (部屋全体の照明を明るく、カーテンを一気に引く、目覚めたら窓際やベランダ、戸外で陽を浴びる)
が有効だという。
目覚めるためには自律神経の切り替えが必要なのだが、光からの刺激によってそれが切り替えられる。
気持ちの良い一日の始まりをこうしたちょっとした意識や工夫によってむかえたいものだ。