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小浜逸郎・ことばの闘い

評論家をやっています。ジャンルは、思想・哲学・文学などが主ですが、時に応じて政治・社会・教育・音楽などを論じます。

所有者不明の土地対策は、爆買いを誘発する

2018年06月13日 21時50分06秒 | 政治


所有者不明の土地は全国で410万ha、これは九州全域を超える面積です。
2040年には北海道本島に匹敵する720万haに及ぶと推計されています。
政府は、管理できない土地の所有権を所有者が放棄できる制度の検討に入りました。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO31241990R00C18A6MM0000/

一方、参院本会議では、所有者不明の土地を公共目的に限って使える特別措置法を可決しました。
防災や都市計画の妨げになるというのが理由です。
この法律では最大10年、民間業者やNPOなどに土地の利用権を与えるのが柱とされています。
都道府県知事が公益性などを確認した上で利用権を定めることになります。
利用権は延長もできるそうです。
https://www.asahi.com/articles/ASL664HKLL66ULFA00S.html

この二つのニュースでまず驚くのは、所有権のない土地の面積の巨大さでしょう。
次に思うのは、こういう事態を放置していた行政機関の怠慢です。
しかしそれはとりあえず差し置き、所有権放棄の制度創設、所有者不明の土地の有効活用という法律の可決は、一見よい方向への一歩のように思えます。

しかし、次のような連想と疑念を抱くのは筆者だけでしょうか

現在、中国が日本の土地を爆買いしています。
すでに北海道や沖縄を中心に、全国土の2%が中国人の所有になっています。
https://www.recordchina.co.jp/b190071-s0-c20-d0035.html
2%というと静岡県全県にほぼ匹敵します。
この話題は一年前にも取り上げたのですが、
https://38news.jp/economy/10151
このような事態を招いたのは、外国人が土地を取得することに対して法的な規制がないことが原因です。
WTOのGATSという協定が内国民待遇義務というのを定めているので、それをバカ正直に守っているのですが、インドやフィリピンなどは、GATSに加盟していながら、外国人の土地所有を原則不可としています。
政府各省庁もそれを知っていながら、中国人の土地爆買いに対して何らの法的な措置も講じようとはしません
国会議員も昨年12月に自民党の鬼木議員が問題視した程度で、動きが非常に鈍い。
http://www.buzznews.jp/?p=2113292

また6月10日のTVタックルでも(ようやく)取り上げていましたが、国防の要地であるはずの対馬が韓国人の観光客であふれかえっているだけでなく、韓国人に不動産を爆買いされ、民宿、ホテル、釣り宿など、彼らの思いのままに建設、経営されています
海上自衛隊対馬防備隊本部に隣接する土地に十年前リゾートホテルが建設され、その後、周辺地域に次々と韓国資本によるロッジが建てられました。
いたるところハングル文字だらけ、もはや対馬は日本ではないとぼやく地元の人たちもたくさんいます。
韓国のツアー客が大挙して対馬に来ると、ツアーガイドが開口一番、「対馬はもともと韓国の領土です」と説明するそうです。
こんな事態になっているのに、対馬市当局は何と、どれくらいの土地が韓国人の手にわたっているか、把握していません。
https://www.sankei.com/life/news/171030/lif1710300021-n1.html

こういう危機的状態は、政府がいち早く手を打たない限り、今後ますます加速するでしょう。

初めの二つの記事に書かれていたこと、
つまり、
九州全域に相当する土地が所有者不明という事実、
所有権放棄の制度の創設、
公共目的に限定して、民間業者やNPOに土地の利用権を与えるという趣旨

これらは、中国や韓国の爆買い攻勢を想定しているでしょうか。

不動産の外資規制がまったくない状態で、民間業者やNPOに土地の利用権を与えるのは、
中国人や韓国人にも、どうぞ爆買いを進めてくださいと言うのと同じではないでしょうか。
公共目的など、何とでも名目を作れます。
途中で営利目的に変えちゃったっていいのです。
日本名義のダミー会社に買わせる手もあります。
彼らはきっとそうした巧妙な手を使うでしょう。
まして、外国人が利用を申請してきた時に、いまの都道府県にそれを抑える論理と力があるとは到底思えません。
考え方が根本的に甘いのです。

ここには、いまの日本の行政機関が、それぞれ問題別に解決策を追求するだけで、総合的に危機に対処する力を喪失している状態がいみじくも象徴されています。

やがて北海道本島にまで広がりかねない所有者不明の土地。
すぐにでも公有化を進めるべきです。
国や地方自治体が素晴らしい公共施設を作ればいいではありませんか。
財源をどうするか?
いいかげんに、財源の話はしないでください。
大いに建設国債でも発行すれば済む話です。

またまた日本が自分の首を絞めている事実を痛感しました。


【小浜逸郎からのお知らせ】

●新著『福沢諭吉 しなやかな日本精神』
(PHP新書)が発売になりました!


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●『日本語は哲学する言語である』(仮)
を脱稿しました。徳間書店より7月刊行予定。


●『表現者クライテリオン』第2号
「『非行』としての保守──西部邁氏追悼」

●月刊誌『Voice』6月号
「西部邁氏の自裁死は独善か」

●『表現者クライテリオン』9月号特集
「ポピュリズムの再評価」(仮)の座談会に
出席しました。(8月15日発売予定)



高度大衆社会における統治の理想

2018年05月15日 23時31分50秒 | 政治


前回このブログに、「誰が実権を握り、日本を亡国に導いているか」という記事を投稿し、多くの方の支持をいただきました。
またこれとほぼ同じ記事を三橋貴明氏主宰の「新」経世済民新聞にも投稿し、ここでもかなり好評でした。
これらの支持をお寄せくださった方に感謝いたします。
しかし中には、「右顧左眄していて、何を言いたいのかよくわからない」といった意味のコメントもありました。
こうしたコメントを寄せる人々には、失礼ながら、もう少し正確な読み取り能力を養っていただきたいと思います。
もちろん、これ以外にも見当はずれなコメントは多々あります。

再読していただければわかりますが、筆者の言いたいことは明瞭です。
要するに、いまの日本の政治で実権を握って日本を動かしているのは、必ずしも安倍首相ではなく、まして与党の有力国会議員でもなく、国民の前に姿を見せない財務官僚たちと、内閣直属の各種会議の「民間議員」と称するグローバリスト委員たちなのです。
国民は、空しい議論に明け暮れる国会の動きや政局の今後などより、まず何よりも、そのことにもっと気づくべきだというのが、その趣旨です。
ちなみに筆者の論考は、何ら安倍首相や安倍政権を擁護するものではありません。
もとよりこの政権の経済政策が、日本を一歩一歩後進国化へと導いていることは確実ですし、国政の最高責任者が安倍総理大臣である以上、その最終責任が安倍氏その人にあることは論を俟ちません。

ところで、昨年七月、このブログに、「劉暁波氏の死去に際して、自由について考える」と題して書いたのですが、
https://blog.goo.ne.jp/kohamaitsuo/e/7696149109a06090abb7709bc9827b41
日本の言論状況は、なまじ「言論の自由」が形の上で保障されているために、諸説乱立のまま放置されています。
政府関係者も、野党も、マスメディアも、学者も、ネット言論も、みんな勝手なことを唱えて、ほとんどだれも責任を取ろうとしません。
まともな議論がいまの日本には成立していないのです。
いくら正しいと思えることを、論理と証拠を挙げて論じても、声のデカい勢力の洗脳にたぶらかされ、聞く耳を持たなくなった人たちが圧倒的多数を占めていて、「暖簾に腕押し」の状態です。

もちろん、中には少数ながら、こうした状況にもめげず、繰り返し正論を唱え、それに見合った実践をしぶとく行っている人々もいますから、絶望してはなりません。
じっさい、この人たちの努力が少しずつ浸透している兆候はあります。
たとえば、自民党の三回生議員が中心となって作られた「日本の未来を考える勉強会」(代表・安藤裕衆院議員)が、このたび消費増税凍結やPB黒字化目標の撤回を求める提言を発表し、安倍首相に、6月に予定された「骨太の方針」に反映するよう要求することを決定しました。
これなどは、そのよき兆候を明確に示しています。
この会は、30人ほどによって構成されています。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO30361800R10C18A5EA3000/
筆者は、この会を心から応援するとともに、ますます勢力を伸ばすよう祈りたいと思います。

ただ、「言論の自由」なるものがいまの日本の大勢のような状況を呈していると、こうした兆候だけではまだまだ足りず、言論人の端くれとしては、この「暖簾に腕押し」状態をどのように打開したらいいのか、と頭を悩ませざるを得ません。
社会批判、政権批判の有効性について考えるとき、やはり念頭に置かなくてはならないのは、高度大衆社会という苛立たしい現実です。
高度大衆社会とは、先進民主主義社会の必然的な帰着点と言ってもいいものです。
その条件は以下のとおり。

(1)経済的な豊かさがそこそこいきわたっている。
(2)高等教育がそこそこいきわたっている。
(3)誰にも言論の自由があることが法的には保証されている。
(4)誰にも政治参加の機会が一応は与えられている。
(5)マスジャーナリズムが不必要なほど肥大している。
(6)情報技術が高度に発達している。
(7)主権者であるはずの国民が中央政治やマクロ経済に真剣な関心を示さず、簡単に割り切る習慣を身につけている。
(8)世論なるものが、マスジャーナリズムの印象操作によって形成される。
(9)災害時の風評被害の例のように、情報伝達のスピードと不正確さが背中合わせになっている。
(10)豊かさに陰りが見え、格差が開くと、ルサンチマンが強い力を持つ。

こうした状態が長く続くと(続いているのですが)、実権を握る者たちの大衆操作がしやすくなる反面、民衆が、それとは必ずしも連続しない感情的な世論に迎合しやすくなります。
また情報発信が誰にでもできるので、深い考えもない人々が一丁前に意見を言うことで、「自己実現」を果たした気になります。
それらの多くは、大局を見逃した些末な問題に偏りがちになります。
つまり政治の表面にあからさまな権力者(皇帝など)が君臨していなくても、国家や国民生活の命運を左右する重大事が、慎重な議論もされないままに、いつの間にか空気や時々の勢いによって、決定されて行ってしまうのです。
かくして、高度大衆社会こそ、全体主義の生みの親です。
全体主義というと、だれもがヒトラー・ナチス・ドイツや、ソ連のスターリニズムを思い浮かべますが、現代の全体主義は、一人あるいは少数の権力者によって作り出されるのではありません。
民衆の一見不統一な集合のうねりそれ自体が、すでに全体主義なのです。
形式的な権力者は、高度大衆社会では、民衆に迎合せざるを得ず、その点でむしろ無力です。

こうした状況に対処するには、次の方法しかありません。
よく考えることにおいて卓越した能力を持ち、公共精神あふれる者たち(真のエリート)が、権力者に実際に働きかけ、適切な政策提言をし、時には政権に一定のポストを占めることです。
以前、このブログで、「新」国家改造法案として提案したことがあるのですが、
これを少しでも実現するためには、まず上のような人たちによる、「スーパー・シンクタンク」のようなものを作る必要があります。
https://blog.goo.ne.jp/kohamaitsuo/e/fee57cf113cc09fe54fde5299f6fb1b0
こういう人たちが少なくとも10人集まって、定期的に会議を開き、これからの日本の進むべき方向を決めていくのです。
これは、政権が代わっても存続する必要があります。
それだけの権威を維持するのに何が必要か、どうやって権力に食い込むのか、それを考えるのがさしあたっての課題です。
この発想は、プラトンの「哲人国家」論に近いものがあります。
筆者は、プラトン思想に必ずしも共鳴するものではありませんが、彼がペリクレス時代の民主政治にたいへん批判的だった点には、共感できるところがあります。
プラトンは、衆愚政治が師のソクラテスを殺したと考えていました。
真のエリートを活かすことができない現代でも、基本的な問題点は変わっていないのではないでしょうか。


誰が実権を握り、日本を亡国に導いているか

2018年05月02日 00時42分54秒 | 政治


GWたけなわですが、やはり大切なので、堅苦しい話題を。

財務省の不祥事が続く中、与党の中からは解散総選挙の声も出ています。
森山国対委員長が4月25日、「内閣不信任決議案が出されれば、衆院解散も一つの選択肢」と述べましたが、二階幹事長はこれを否定しました。
これはたぶん合意の上の役割分担でしょう。
解散されては困る野党へのちょっとした脅し。

万一総選挙ともなれば、国民の政治参加の機会というわけで、マスメディアはこぞって大騒ぎし、国民もつられて、その経緯をめぐって否応なく興奮します(筆者も少しは興奮しますが)。
しかし、以前にも書きましたが、国会議員の勢力分布がどうなるかに関心を集中させることが、本当にいまの政治の動きを理解したことになるのか。
答えはNOです。

なぜならまず第一に、いくら野党が安倍政権打倒を叫ぼうと、力関係が違いすぎます。
政権支持率が下がっても、選挙結果は大勢に変わりないでしょう。
解散をチラつかせられた野党の焦りがそれをよく示しています。

第二に、これが重要なのですが、いまの日本の政治を現実に動かしているのがどういう勢力かということを、多くの国民はあまり認識していません。
総選挙などがあると、何党が何人当選したかがいかにも日本の政治の焦点であるかのように見えます。

日本の政治を現実に動かしているのは、第一に財務省と総理官邸とのせめぎ合い、第二に内閣府の下にある経済財政諮問会議、規制改革推進会議、また経済財政諮問会議と連携している日本経済再生本部傘下の産業競争力会議(2016年9月より「未来投資に向けた官民対話」と統合され「未来投資会議」と改称)などの政府諮問機関の動向です。
やたら何とか会議という漢字が並び、名前を聞いただけでも引いてしまいますね。
ちなみに安倍首相は、規制改革推進会議以外の二つの議長を務めています。
でも議長職ってそんなに実権を握っていませんよね。
つまり、国民の見えないところで財務官僚やこれらの諮問機関の委員たちが大きな力を振るっているのです。

さて第一のせめぎ合いは、消費増税やPB黒字化の達成を目指す財務省と、これを本音では拒否したい安倍首相との、長きにわたる暗闘を意味します。
この暗闘の事実を打ち消して、安倍政権を全否定する向きもあります。
筆者はけっして安倍首相の肩を持つわけではありません。
ダメなところが山ほどあります。
しかし不正確な認識にもとづいて、財務省も安倍も一蓮托生としてとらえてしまうと、
何と戦うべきかが見えなくなります

事実、安倍首相は2014年の増税に懲りて、10%への増税を二回延期しました。
また、2017年の閣議決定(骨太の方針)では、それまで書かれていた「10%への増税」の言葉が消えるとともに、新たに「財政健全化」の方向性として「債務残高対GDP比」という正しい概念が書き加えられました。
残念ながらPB黒字化の方も残ってしまったのですが。
これは両論併記ということになるので、一体どちらが本筋なのかわかりませんね。

有力自民党議員のほとんどは、財務省に洗脳され、増税やPB黒字化が正しいことだと信じてしまっています。
安倍首相はこの面では孤独なのです。
財務省の度重なる不祥事が財務省を委縮させ、今年6月の骨太の方針でPB黒字化を抹消せざるを得なくなるという好影響を及ぼすといいのですが。

さて第二の各種諮問機関の動向ですが、ここには「民間議員」と称する輩が幅を利かせています。
未来投資会議(旧産業競争力会議)の首魁は、何といっても、あの竹中平蔵です。
他に経団連会長・榊原定征、東大総長・五神真、日立製作所会長・中西宏明といったお歴々がそろっています。
この人たちは、空港や水道などインフラの運営権売却の前倒しを提言しました。
つまりグローバリズムの申し子たちなのです。
またいわゆる「働き方改革」の内実である残業代ゼロ制度を推進しています。
この会議の前メンバーだった経済同友会代表幹事・長谷川閑史は、「ブラック企業に悪用されることはない」と発言しました。
安倍首相もこの動向には逆らえない様子がうかがえます。
というか、彼自身もグローバリストで規制緩和論者ですから、彼らの提言を積極的に支持しているというべきでしょう。

また、最も政権中枢に近い(中枢そのものと言ってもよい)経済財政諮問会議のメンバーには、「民間議員」として、榊原定征が二股をかけて名を連ねています。
他に財務省の御用学者・伊藤元重、日本総合研究所理事長・高橋進、サントリーホールディングス社長・新浪剛史といった「錚々たる」顔ぶれです。
すでに三橋貴明氏が4月27日のブログで暴いていますが、
https://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/day-20180427.html
以上四人は、4月24日の会議で、「地方行財政改革の推進に向けて」と称して、そのタイトルに背反するとんでもない亡国資料を提出しています。
それによると、
一般財政の総額に目安を設ける
つまり歳出を制限するということですね。

PB黒字化に向けては、税収増を地方歳出の増加に充てるのではなく、債務残高の引き下げに充てる
つまり「政府支出」ではなく、すべて「借金返済」に充てるというのです。
これでは、GDPになんら寄与しないことになります。
いや、その分だけGDPが減ることになります。
税収増は支出として市場に還元されず、返す必要のない「返済先」、つまり日銀当座預金残高のなかに消えます。

歳出についても不断の見直しを行っていく
つまりデフレ期に、なんと節約を奨励しているのです。

ちなみに「税収増」と言っていますが、消費増税によって税収増が見込まれることを自明の前提にしている点もおかしい。
増税で消費も投資も一層冷え込んで、その結果税収も減ってしまう可能性がきわめて大きいのに。
これは97年の橋本内閣の時に3%から5%への増税で実際に起きたことです。

こんなに政治も経済もわかっていない愚かな連中が、実際に日本を動かしているのです。
もりかけやセクハラなどをめぐる国会での与野党の、ほとんど意味のない攻防だけが報道されていますが、あんなものは時間と金の空費だけで、日本の政治を動かす何のきっかけにもなりません。
せいぜい財務省のデカい面を少しはげんなりさせるくらいでしょうか。

国民は、マスメディアの垂れ流す情報に惑わされず、国家の実権をだれが握り、どんなひどい方向に持っていこうとしているか、そのことに視線を集中させるべきなのです。
財界のボスや御用学者や無能なエコノミストによって構成される「民間議員」をまず追放せよ



財務省VS総理官邸

2018年03月28日 00時07分47秒 | 政治


3月27日、森友学園への国有地払い下げにともなう財務省の有印公文書書き換え問題で、前理財局長・佐川宣寿氏の証人喚問が行われました。
筆者は、朝日新聞が書き換えの事実を公表した時点で、いかにも傲慢な一省庁の体質を象徴するミステイクで、重大ではあるものの、それ以上のものではないと思っていました。
しかしこれを反日野党やマスコミが大々的に取り上げて、安倍政権攻撃・打倒の恰好の材料とし、その支持率が急激に下がるに及んで、その背景などを自分なりに整理しておく必要を感じるようになりました。

ちなみに筆者は、森友学園問題そのものが発覚した少し後に、自分のブログで、これはひょっとすると、財務省の緊縮財政路線の前に立ちはだかる安倍首相つぶしのための陰謀の可能性もあるという憶測を述べています。
https://blog.goo.ne.jp/kohamaitsuo/e/f5b4219a93999f39267870a90b100ba4
これはあくまで憶測ですので、確証は何もありません。しかし、書き換えが明らかになった現時点でも(かえって現時点だからこそ)、この説が成り立つ余地があります。
理由は次の二つです。

①財務省と総理官邸との間には、長く続く暗闘があり、その熾烈さを国民はあまり知らされていません。
これについては、筆者は信頼のおける複数の筋から情報を得ています。
この暗闘は、上記のような、財務省の緊縮財政路線をめぐる確執だけではありません。
2014年5月に内閣官房に設置された内閣人事局が、事務次官、局長、審議官など役員クラス約600名の人事権を握ることになり、これまでの官僚主導の行政から、政治家主導の行政にシフトさせることがある程度可能となりました。
これが実効性を示すようになると、財務省としては、自分たちの力で財政を動かすことが難しくなります。
つまり財務省には総理官邸を恨むだけの十分な理由があるのです。

②財務省がこのたびの書き換えを行なった決済文書の書き換え前の部分には、貸付料について平沼元経済産業大臣や鳩山元総務大臣の秘書などから財務省などに対し「高額であり、なんとかならないか」などと相談があったこと、安倍総理夫人の昭恵氏が学園を訪問して講演したことなどが書かれていました。
https://www3.nhk.or.jp/news/special/moritomo_kakikae/
ご存知のように、昭恵氏は、森友学園の名誉校長でした。
ここには、自民党政治家およびその周辺人物の関与をにおわせようという意図がありありと読み取れます。
決裁文書のなかで、交渉経過を記す部分(調書)に、なぜ自民党政治家およびその周辺人物を貶めるような(しかも昭恵氏の講演などは、価格交渉経過に何の関係もありません)記述をわざわざ入れる必要があるのでしょうか?
破格の安値で払い下げたことによって疑惑が生じた場合、その責任は、自分たちではなく、政治家およびその周辺人物にある、というこすっからい印象操作が感じられますね。
書き換え後は、これらはもちろん削除されています。
書き換える前にこの文書の存在は中央政界の一部に漏れていたのでしょう。
それが国会で問題視されると、自省の方針貫徹のためなら何でもするという財務省の陰謀的体質を突かれます。
そのことに配慮を巡らせた部内の何ものかが、あわてて書き換えを執行したと考えれば、つじつまが合うわけです。

これは、「安倍政権への忖度」などという「美しい」話とはとても思えず、単に、陰謀がばれることを恐れた組織防衛意識のわざではないかと推測されます。
以下の動画で、自民党の中では数少ない積極財政派である西田昌司参議院議員による、財務省攻撃の鋭さを見ると、これまで述べてきた財務省と、安倍首相自身を含む積極財政派との確執のありさまがよくわかると思います。
【西田昌司が財務省にブチ切れる】予算委員会にて『なんで報告しなかったんだよ!!!!』

https://www.youtube.com/watch?v=zajkdRLdh_I
口調だけを聞いても、西田議員と安倍首相との間には、財務省に対抗するための連携が成り立っている様子が感じられますね。

ところで、左派系野党は前々から安倍政権を倒すことだけを自己目的にしており、その後どうするかなど何も考えていません。
そこにめぐってきたこの書き換え問題を倒閣の絶好のチャンスと見て勢いづき、財務省攻撃ばかりでなく、昭恵氏の証人喚問を要求しています。
財務省問題を、政局の転換に結び付けたくて仕方がないのですね。
愚かとしか言いようがありません。
彼らが目先の問題にばかりとらわれて、日本国民のためなど少しも考えていないことは、次のように政局を見通すことで明らかとなります。

自民党が与党であり続けることが当面変わらないのだとすれば(変わるはずがありませんが)、もし安倍政権が倒れると、代わって立つ自民党の首班候補は、ほとんど財務省に尻尾を振るやからばかりです。
岸田氏、石破氏、野田毅氏、野田聖子氏、小泉氏、石原氏、二階氏など、自民党有力議員を思い浮かべてみても、財務省に対抗して、デフレ脱却を果たせるような力量と経済知識を持ち合わせる人が一人としていません。
これでは財務省の思うつぼです。
国民の貧困化は一層進むでしょう。

書き換え問題は、財務省オンリーの責任問題であり、政権全体にも、ましてや国民生活にも何の関係もないことです。
国民生活に関係のないことで連日国会審議の貴重な時間と金を空費している暇があったら、生活に直結する消費増税問題やPB黒字化問題や移民受け入れ問題について(いずれも経済の悪化に結びつきます)、なぜ国会で問題にしないのでしょうか。
与野党議員たちの志の低さが際立ちます。

むしろ書き換え問題は、財務省がこれまでまき散らしてきた悪をもっぱら象徴している問題であり、私たちは、ここを突破口として、財務官僚の横暴を打ち砕くべきなのです。
財務省と暗闘を繰り広げてきた官邸側にとっては、禍を転じて福と為すチャンスです。
国民は、何よりも、安倍政権打倒で勢いづいている野党やマスコミの口車に乗せられて、財務省と政権全体とを一体化して考えるという発想を捨てなくてはなりません。
国民は、選挙などになると何党が何人当選したなどと興奮しますが、本当に日本の政治を動かしているのがどんな勢力なのかということを、もっときちんと認識すべきです。

このたびの問題が意味しているのは、「民主主義の危機」などではなく(そんな危機ならとっくに続いています)、ただ財務省という腐った官僚組織の危機なのです。
この事件を安倍政権がうまく利用して、財務省がこれまで取ってきた「デカい面」を、コントロールできるように舵取りを行なう必要があります。
これが成功すれば、6月に控えた「骨太の方針」の閣議決定で、これまで財務省主導で採用されてきたPB黒字化という最悪の政策を破棄することも不可能ではありません。

それにしても、財務省の書き換えを朝日新聞にリークしたのは誰なのか。
まったく推測の域を出ませんが、これは二つ考えられます。

一つは、検察です。
この場合、検察は野党と同じように、その後のことなどまったく考えていず、硬直した正義感で行ったのでしょう。
あるいは、アジアの反日国家が検察内部に手を伸ばしているのかもしれません。

もう一つは、官邸自らがリークしたという推測も成り立たないわけではありません。
政権基盤を脅かすリスクを冒してまで、そんなことをするはずがないだろうと、ふつうは考えますね。
ごもっともですが、これまで述べてきたように、中央政権内部に財務省VS総理官邸という暗闘が存在する事実、そしてどちらに軍配が上がるかという成り行きこそ、日本のこれからを決定づける非常に重要なポイントなのです。
陰謀には陰謀を。
もし官邸側に、そうした「肉を切らせて骨を切る」だけの覚悟と気概があったとしたら、ちょっと希望が持てるではありませんか。


「安倍首相の平昌出席の是非」議論は無意味

2018年01月31日 17時01分03秒 | 政治



このところ、平昌オリンピックの開会式に、
安倍首相が出席すべきか、すべきでないかの議論が、
一部で盛り上がっています。
筆者は、こんな議論自体がもはや空しいと思っています。
出席してもしなくても、事態は何も変わらないでしょう。
その理由を以下に述べます。

文在寅政権が親北べったり政権というか、
北のエージェント政権であることはもはや明らかです。
また、2015年12月の慰安婦問題をめぐる日韓合意を見直すというのが、
この政権の基本的な立場ですから、
たとえ首脳会談で「合意を守れ」と釘をさしても、
ただの物別れになることは目に見えています。

一方では、「平和の祭典」という建前が、
政治利用にまみれている実態もあります。
金正恩様はこれをチャンスと見て、
いろいろと工夫なさっているようですね。
だからこそ、行くなという議論も成り立ちますし、
だからこそ、行ったほうがいいという議論も成り立ちます。

アメリカからは出席を要請されているに違いないでしょうから、
それに適当につきあっておくという外交的意義が絶無とは言い切れません。
なにしろ、ペンス副大統領も行くのですから、
そこで米韓の水面下の交渉に加わっておくのも得策かもしれません。
筆者としては、
まあ、行かないよりは行ったほうがいいかな、
くらいの気持ちでおります。

しかしいずれにしても、
これは対韓外交としての意義というレベルでは、
興奮してその是非を論ずるに値しない議論です。
それよりも、これを機会に再確認しておくべきことがあります。

それは、
あの日韓合意がどういう性格のものであったか、
その結果国際社会で何が起きたか、

以上を国民がしっかり思い出すことです。

これに関して、次の二点を肝に銘じることが最も重要です。
①間違った中韓の「歴史認識」を誘発し助長させ、
さらに、それを承認してきたのが当の日本人であること。
②この「歴史認識」は中韓を利するのみならず、
第二次大戦の戦勝国である米英豪にとってもはなはだ都合がよいこと。

①の日本人の主役は、言うまでもなく朝日新聞などの反日メディアであり、
敗戦利得を手放したくない国内左翼勢力です。
しかし彼らの言動を無意識のうちに支持し、
暗黙の承認を与えているのは、
戦後教育を受けた一般の日本人です。

戦後教育は、
七年間にわたるGHQの占領統治期間に巧妙に準備されました。
これによって日本人は、魂を抜かれ、
主権回復後もその路線を歩み続けることになりました。
自虐史観に骨の髄まで侵されてしまったのです。

多くの戦後日本人は、周辺諸国に対して、
謝罪姿勢を自ら進んでとる習慣を身につけてきました。
さらに、そういう姿勢をとっておけば、
向うは許してくれて丸く収まるだろうという、
お人好し丸出しの習性まで身につけてしまったのです。
国際社会はそんなに甘くないのだというまともな感覚の喪失です。

②の、中韓の「歴史認識」が戦勝国にとって都合がいいという点。
このでっち上げられた「歴史認識」は、
戦勝国の「正義」を揺るぎないものにすることに貢献してきました。
また原爆投下など、民間人大量虐殺行為の「悪」を隠蔽する効果もあります。
中共は、そのことをよく知っていて、
欧米が抱いている「あの戦争では日本が一方的に悪い」という、
自分たちに都合のよいイメージを大いに活用し、
日米分断を図ろうとしているわけです。

そもそも「日韓合意」は安倍外交の致命的な失敗です。
この合意によって安倍政権の対韓外交は、
河野談話、村山談話と何ら変わらない醜態をさらしました。
当時の岸田外相発言、
軍の関与の下に多数の女性の名誉と尊厳を傷つけた。日本政府は責任を痛感している
は、誰が読んでも軍の強制性を認めたとしか解釈できません。
また安倍首相は「心からのお詫びと反省」発言をしています。
さらに韓国新財団に10億円の出資
これは名目上「賠償」ではないと謳ってはいますが、
国際社会はそう見ません。

以上の三点セットで、
旧日本軍は20万人もの韓国女性をセックス・スレイヴとして扱い、虐殺した
とのこれまでの戦勝国の定説を、
オウンゴールで追認したことになります。

 その後、欧米メディアがこの「日韓合意」をどうとらえたかを見ると、
この認識が見事に裏付けられます。
山岡鉄秀氏が主宰するAJCNが、
合意直後の二〇一六年一月七日に出したレポートによると、
次のような記事が目白押しであることがわかります。

2015-12-28 The Guardian (Australia)
日本政府は、女性の性奴隷化に軍が関与していたことを認めた。
日本統治下の朝鮮半島で強制的に売春をさせられた女性の数には論争があるが、
活動家らは20万人と主張している。

2015-01-01 New York Times, To the editors (U.S.A)
生存者の証言によれば、この残酷なシステムの標的は生理もまだ始まっていない13,14歳の少女だった。
彼女たちは積み荷としてアジア各地の戦地へ送られ、日常的に強姦された。
これは戦争犯罪のみならず、幼女誘拐の犯罪でもある。

2016-01-03 Ottawa Citizen (Canada)
多くの被害者は14歳から18歳の少女で、軍の狙いは処女だった。
抵抗する家族は殺されるケースもあった。
41万人の少女や女性が誘拐され、生存者は46人のみ。
安倍の謝罪は誠意がなく、安部の妻は戦争犯罪者を奉る神社に参拝した写真を公開している。
10億円は生存者を黙らせるための安い賄賂だ。

ご覧の通りの集中砲火です。
これが戦勝国包囲網の常識なのです。
安易な「謝罪」や「責任表明」が何を呼び起こすか、
日本人は改めて肝に銘じるべきでしょう。

そもそも日本側には韓国の会談要求に応ずる必要などまったくなかったのです。
しかし応じてしまったからには、
最低限、次の三つを交渉の絶対条件として臨むべきでした。

①慰安婦問題に関してあらゆる意味で日本国には責任など存在しないことの確認
②大使館前の慰安婦像の撤去
③慰安婦問題に関するいかなる形での資金拠出も行わない。

あの反日メディア・朝日新聞が二〇一四年八月に、
はなはだ不十分ながらも慰安婦報道が誤報であったことを自ら認めました。
にもかかわらず、
安倍政権はこの合意によって、その事実をもひっくり返してしまいました。
安倍首相もまた、
占領統治時代の洗脳政策に始まる戦後教育の犠牲者です。
口では「戦後レジームからの脱却」などと言っていても、
その無意識レベルでは全然脱却などできていなかったわけです。

こういう状況ですから、
嫌韓感情から「安倍の平昌出席を認めるわけにはいかない」と言って、
毅然と拒否の姿勢を示したつもりになっても、
周辺の国際社会は「子どもの喧嘩だ」と受け取るだけでしょうし、
外交的配慮で出席して何か日本にとっての成果を期待しても、
アメリカ親分にくっついて日米同盟の堅固さを、
多少印象づけるくらいの効果しかないでしょう。

大切なことは、
短期間の時局に視野を限定して大騒ぎすることではなく、
私たち国民が日韓合意の大失敗を忘れず、
日本に対する国際社会の恐るべき名誉毀損を、
いかにして雪ぐか
に知恵とエネルギーを集中させることなのです。

なお、以上の主張の基礎になる認識は、
拙著『デタラメが世界を動かしている』で展開しております。
https://www.amazon.co.jp/%E3%83%87%E3%82%BF%E3%83%A9%E3%83%A1%E3%81%8C%E4%B8%96%E7%95%8C%E3%82%92%E5%8B%95%E3%81%8B%E3%81%97%E3%81%A6%E3%81%84%E3%82%8B-%E5%B0%8F%E6%B5%9C-%E9%80%B8%E9%83%8E/dp/4569830404/ref=sr_1_1?ie=UTF8&qid=1517381768&sr=8-1&keywords=%E5%B0%8F%E6%B5%9C%E9%80%B8%E9%83%8E


【小浜逸郎からのお知らせ】
●『福沢諭吉と明治維新』(仮)を脱稿しました。出版社の都合により、刊行は5月になります。中身については自信を持っていますので(笑)、どうぞご期待ください。
●月刊誌『正論』2月号「日本メーカー不祥事は企業だけが悪いか」
●月刊誌『Voice』3月号「西部邁氏追悼」(2月10日発売)




水道の民営化を阻止せよ・その2

2018年01月19日 16時01分26秒 | 政治


フェイスブックに、このブログの前記事「水道の民営化を阻止せよ」の掲載を告知したところ、石塚幾太郎さんという人から、たいへん詳しいコメントをいただきました。
https://www.facebook.com/i.kohama ">https://www.facebook.com/i.kohama

以下に掲げるのは、これに応えたものです。

水道民営化の問題は、国内政治問題としていま最重要と言っても過言ではないので、読者の皆さん、どうか最後まで読み通されることを願っております。

まず、結論的なことを申し上げますが、私の前ブログ記事の趣旨は、もともと次の点にあります。

①水道の民営化は政府の規制緩和方針の一環であり、私は、小泉政権以来の規制緩和路線をデフレ脱却のための成長戦略として位置づける考え方に、一貫して反対であること。
②この路線は、竹中平蔵氏に代表されるグローバリズム・イデオロギーにもとづいており、これは、日本国民の生活や日本の伝統を破壊する危険なイデオロギーであること。
③この路線は、緊縮財政を貫こうとする財務省の頑固な方針にまことによく合致しており、私は、この財務省方針こそが、長引くデフレと国民の貧困化をもたらしている最大の原因であることを一貫して指摘してきたこと。

ところで石塚さんは、コメントの中で、「少なくても『グローバル水企業に日本の水道が支配される』という事態にはならないと理解しています。」と書かれていますので、石塚さんご自身も、万一そういう事態になったら、それは危機的なことと考えていると理解できます。
私も日本の水道が「すべてグローバル水企業に支配される」と断定はしません。しかし、この間の水道法改正の流れや、日本の各自治体でのコンセッション方式による外資導入の動き、ことに今回明らかになった東京都の民営化方針の打ち出しなどを見ていると、「蟻の三穴」くらいはもう開いていると考えざるを得ません。これが、「自由はよいこと」「小さな政府」などの空気の席捲によって、今後全国に広まらないという保証はどこにもありません。緊縮真理教に染まっている財務省には、これほどうれしいことはないでしょう。また、この傾向が広まることが、国民生活の安全に取って、重大な危機に発展するという懸念は拭えません。

石塚さんが提供してくださった資料の中に、ご自身とYoshiko Matsudaさんという方とのコメントやり取りがありましたが、このなかに、次のようなMatsudaさんの意見があります。
https://www.facebook.com/groups/whatisTPP/permalink/1906350602919292/

「民営化するとサービスが低下して料金が上がる」これは日本でそうさせないためにも、起こり得る懸念として声高に言っておく必要がある事柄だと認識しております。

これが、普通の市民の方たちの平均的な感想だと思います。その上に、水の安全が脅かされること、外資系グローバル水資本に利益を掠め取られること、などの危険が伴うわけです。
しかし、石塚さんは、これらのまっとうな懸念に対して何ら答えていません。

また、石塚さんは、同じ記事の中で、麻生財務大臣の答弁を次のように克明に引用されています。

今、色々なアイデアが実に多くの人から出されているが、その中でと思っているのは、いわゆる規制の緩和です。規制の緩和、なかんずく医療に関して言わせていただければ、例えば日本では医療、介護用のロボットというのを作っています。事実、人間が思っているだけで手の方が勝手に動くと言うロボットはすでに開発されています。日本で。これをいわゆる介護用ロボットとして使う場合は、残念ながら日本の厚生省というところでは、ロボットを開発するに当たっての制度が全くありませんので、薬の開発する制度をそのままロボットに当てはめているため、臨床実験を何百回とやらされるため、その頃はそのロボットが古くなる。これが今の実態ですから、これに合わせて全く新しいシステムを作ろうとしている一つの例です。
このロボットは一つの例ですが、例えばいま日本で水道というものは世界中ほとんどの国ではプライベートの会社が水道を運営しているが、日本では自治省以外ではこの水道を扱うことはできません。しかし水道の料金を回収する99.99%というようなシステムを持っている国は日本の水道会社以外にありませんけれども、この水道は全て国営もしくは市営・町営でできていて、こういったものを全て民営化します。いわゆる学校を造って運営は民間、民営化する、公設民営、そういったものもひとつの考え方に、アイデアとして上がってきつつあります。


この答弁は、石塚さんも一部指摘しているとおり、間違いだらけですが、石塚さんは、この麻生氏の考え方に関して、同記事で、「注意して聞くと前後の文脈から、『介護ロボット認可の問題に続き、公が学校を設立し民間が運営するように水道民営化の規制緩和のアイデアとして日本で提案されている』と受け取れる。『全て民営化します。』と一旦話を切ったのが誤解を招く発言になったのだと思う。」と評しています。
しかし、この発言は、「注意して聞く」なら、介護ロボットによる新システムの開発や学校の民営化など、水道の問題と何の関係もない話で前後を埋めて、議論の焦点をごまかしているとしか聞こえません。問題の核心は、「なぜ規制緩和路線としての水道の民営化が日本国民にとって良いことなのか」「公営事業としてこれまでどういう問題があり、それが民営化によってどうよくなるのか」という点であって、麻生氏はそれにはまったく答えていません。規制緩和が既定路線だからやるのだと言っているだけです。

初めに述べたように、私は、小泉改革以来の規制緩和がまさにグローバリズムへの迎合であり、それは日本国民の利益にとって大きな危険を含むと主張しているのです。「水道を民営化しても大丈夫」「すべて民営化ということにはならない」という答え方は、まことに悪しき意味での官僚的な答え方で、国民の不安に答えていませんし、なぜある政策がよいことなのかという問いに対する答えにもなっていません。石塚さんもその意味で同じです。

また石塚さんは、浜松市の公式HPや、内閣府の調査資料、大阪都構想の一環としての大阪府の水道事業統合計画(大阪市議会での否決と住民投票の敗北により頓挫)、松山市の公式HPなど、やたら行政府の公式HPを一種の「証拠資料」として引用されていますが、多くの公式HPがきれいごとばかり並べている(それは当然のことですね)のを、石塚さんはそのまま承認しているのですか。それでは、政府や自治体が公式に宣明していることはすべて正しいと安易に信じているのと同じですね。国民の国政監視義務と反対のことをしていると言われても仕方がないのではありませんか。

さらに石塚さんは、(小浜がブログで)「リンクされている『アジア・太平洋人権情報センター』の国際人権ひろば No.73(2007年05月発行号)に民営化の経緯が書かれているが、その資料に引用された佐久間智子氏の投稿文が分かり易い。」として、「2017年1月3日、石塚幾太郎氏による調査 風説の検証」で、ボリビアの実態についての、日経記事に乘った佐久間氏の投稿を、誠実にも、わざわざ引用されています。その一部にこう書かれています。
https://www.facebook.com/groups/whatisTPP/permalink/1906350602919292/

「民営化されれば、効率的なサービスが提供される」という信条がそこにあったことまでは否定しませんが、しかし水道事業を民間企業が担うことは、「例え絶対に必要なものであっても、採算が合わなければ提供しない」ことをも意味します。実際、ボリビアでは民営化の直後、「従来の水道料金では採算が合わない」という理由で水道料金が2~3倍に引き上げられ、低所得者が水道にアクセスできない状況が続発し、暴動にまで発展しました

このまともな指摘に対して、石塚さんご自身はどのような見解をお持ちですか? できればお示しください。

最後になりますが、石塚さんは、同記事で、大阪府の水道事業と東京都のそれとは事情が根本的に違うということをしきりに強調されています。その上で、次のように書かれています。

東京都水道局の「東京水道事業の概要」表3-1財政収支の推移を見ると元利償還金が年々減少し、h28年度では建設改良費1千億円以上を計上しても黒字となり優良事業体です。民営化などの話はあり得ないと思います。

この予言、見事に外れましたね。私も予言を外すことがあるので、あまり大きなことは言えませんが、肝心なことは次の点です。
「東京都の水道事業は優良事業体なので、民営化などあり得ない」と多くの人が思っていたのに、今まさにそれを構想し始めたということは、いかに政府・自治体のみならず、ほとんどの国民が、「自由化はよいことだ」「民営化は必要だ」「規制緩和を進めるべきだ」といった抽象的なイデオロギー(「空気」といった方がわかりやすいですね)に染まっているかを示しています。
ちなみに私は、石塚さんからのご指摘を受ける前から、一部例外を除いて、多摩地区その他の水道事業が、東京都に統一されていることを知っていました。しかし、だからこそ、いったん東京都が民営化に本気で乘りだしたら、その深甚な影響が広汎に(もしかしたら日本全国に)及ぶのではありませんか。

初めに書きましたように、私は、アベノミクス第三の矢(規制緩和、構造改革)に早くから反対の論陣を張っています。この種の空気が蔓延することが一番怖いのです(もうとっくに蔓延していますが)。なぜなら、イデオロギーの支配、空気の蔓延は、そうすることがなぜ良いことなのかという根本的な問いを抹殺してしまうからです。このことは、これまで世界史の多くの局面で実証されていますね。
石塚さんにも、よくお考えいただくことをお勧めします。



水道の民営化を阻止せよ

2018年01月17日 11時26分17秒 | 政治



いよいよ、「水道民営化」法案(水道法改正)が、1月22日から始まる通常国会に上程されます。
この法案がいかにひどい考え方にもとづいているかは、すでに「三橋経済新聞」で、三橋貴明さんや島倉原さんが詳しく指摘しています。
https://38news.jp/economy/11490
https://38news.jp/economy/11500

要するに、地方財政が逼迫しているために、民間企業に上下水道の運営権を売却し(コンセッション方式)、その売却益を、自治体が政府から借りている負債(財政投融資)の返済に前倒しで充当させるというものです。
しかもそのお金も、政府は支出の増加に充てるのではなく国債の償還に充てるのだろうと、島倉さんは鋭く見抜いています。
そうに違いありません。

この法案では、
運営権売却に際して地方議会の議決が不要となるほか、
運営企業の利用料金設定も届け出制にする
と謳われています。
つまり、民間企業が勝手に料金を決め、勝手に管理運営を行うわけです。

財政が逼迫していない東京都までも売却を構想中です。
また、すでに多摩地域では、昭島市、羽村市、武蔵野市以外の市町では水道部門がありません。
水道業務を行っているのは、PUE、東京水道サービスといった、東京都水道局の外郭団体である株式会社です。
http://suigenren.jp/news/2017/03/10/9066/

水道の民営化については、第二次安倍政権成立後間もない2013年4月に、麻生財務大臣がワシントンで、
日本のすべての水道を民営化する
と言い放って周囲を驚かせたのが有名です。
http://www.mag2.com/p/money/312562

4年後の2017年3月には、その言葉通り、水道民営化に道を開く水道法改正が閣議決定されました。
このように、国民不在のまま、水道民営化路線は着々と進められてきたのです。

水道民営化が、電力自由化、労働者派遣法改正、農協法改正、種子法廃止と同じように、
規制緩和路線(グローバリズム)の一環であることは言うまでもありません。
これにより、外資の自由な参入、水道料金の高騰、メンテナンス費用の節約、故障による断水、
渇水期における節水要請の困難、従業員の賃金低下、水質悪化による疫病の流行の危険
などが
かなり高い確率で起きることが予想されます。

ちなみに現在の日本の水道管はあちこちで老朽化していて、これを全て新しいものと取り換えるには、
数十兆円規模の予算がかかると言われています。
しかしいくら金がかかろうと、国民の生命にかかわる飲料水が飲めなくなる状態を改善することこそは政府の責任でしょう。
それを放置して、すべて民間に丸投げしようというのです。
正しく公共精神の放棄です。

民間企業は利益にならないことはしません。
例によって、外資のレントシーカーたち(主としてフランスのヴェオリアとスエズ)の餌食になることは目に見えています。

浜松市では、2017年の10月にヴェオリアと契約し、下水道の運営を委託しました。
2018年の4月から実施されることになっています。
浜松市民の今後が思いやられます。
https://www.excite.co.jp/News/economy_g/20171101/Toushin_4370.html

フランスでは水道事業の半分以上をこれらの民間が担っているというのは、民営化論者がよく持出す根拠ですが、
そのフランスも、次のような状態になったために、パリでは2010年に再公営化に踏み切ったそうです。

フランス・パリでは1985年から25年間、スエズとヴェオリアの子会社が給水事業をおこない、
浄化・送水・水質管理業務は、SAGEP社(パリ市が70%を出資)がコンセッション契約で担当した。
すると2009年までで水道料金が2・5倍以上にはね上がった。
水道管が破損しても送水管や給水管の境界が不明確であるため、2つの水道会社が工事を押し付けあい、トラブルが続出した。

https://shanti-phula.net/ja/social/blog/?p=148552

「ではの神」が成り立たない典型ですね。
相変わらず、日本政府は「周回遅れ」をやっています。
しかも「水」という、広域にわたって住民の身体に直接かかわる物質の問題だけに、事態は深刻です。

このような水道民営化は、推進論者がうそぶくように、少しも世界のトレンドなどではありません。
それどころか、もうかなり前からその弊害が指摘され、反対運動も高まり、
再公営化した自治体が180にも上っているということです。
https://shanti-phula.net/ja/social/blog/?p=148552

経済評論家の高橋洋一氏は、この問題に関して詳しく調べもせずに、
水道事業の民間委託は『民営化』の成功モデルになる
などという無責任なヨイショ記事を書いています。
http://diamond.jp/articles/-/155402?page=4

消費増税に反対していたこの人が、すっかり御用学者ぶりを発揮しているわけです。
彼は、反対論者の提出する「弊害」例はボリビアなど、最貧国に近い極端な例ばかりで日本とは比較にならないと論じていますが、
そんなことはありません。
南米では、ボリビアだけでなく、アルゼンチン、ペルー、ウルグアイなど、民間企業が失敗したところは極めて広範囲にわたっています。
https://www.hurights.or.jp/archives/newsletter/section2/2007/05/post-246.html

先ほどのパリの例でも明らかなように、これらの民間企業は、先進国の都市部で失敗が続き撤退したからこそ、グローバル資本を利用して、
弱小国や日本のような免疫のない国を狙い撃ちしているのです。
また上述の再公営化を決めた180の自治体の中には、
ドイツのベルリンやマレーシアのクアラルンプールなどの首都も含まれています。

さらに、長峰超暉氏によれば、米アトランタでは、スエズ社の子会社によって水道事業が運営されていましたが、配水管が損傷したり泥水が地上に噴出したりして上水道の配水が阻害されてしまい、しかも復旧対応が大幅に遅れたことがあるそうです。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2017/07/post-7936_3.php

結局、2003年以降、アトランタ市でも水道事業が再公営化されています。

だいたい高橋氏の先の記事は、非論理的で実証性もなく、突っ込みどころ満載なのですが、その詳しい批判は、次の機会に譲りましょう。

それにしても世界最高レベルの濾過能力のある浄水場を持ち、飲料水として飲んでもほとんど害のない日本のきれいな水道水の運営を、
どうしてわざわざ外資を含む民間事業者に委ねる必要があるのでしょうか。


答えは簡単です。
初めに書いたように、いま多くの自治体は財政難で、しかも中央政府から十分な財政援助が得られないからです。

この20年間に政府の公共事業費は、約半分、ピーク時(平成10年)の五分の二まで下げられてきました。


またここ数年、地方の税収が増加していることを理由に、財務省は、
地方交付税を抑制する方向に
大きく舵を切っています。

https://www.jiji.com/jc/graphics?p=ve_pol_yosanzaisei20161027j-05-w350

税収が増加していると言っても、それは都道府県によって相当な格差があります。
首都圏など人口増加の大きい大都市部が上に引っ張っているのでしょう。
一律に地方交付税を削減する理由にはならないはずです。

しかも多くの府県では財政難が以前からずっと続いているわけですから、
その事実を見ずに、そっちが増えているからその分こっちを減らすというのは、あまりに乱暴な論理です。

もし政府が適切な積極財政策を取り、総需要が伸びてデフレから脱却できてさえいれば、歳入も増えるわけですから、
地方交付税を減らす必要などないはずです。
そうすれば、地方も潤います。
昨年報じられたように、橋を架け替えられないので撤去してしまった自治体が出るなどという情けない事態は避けられたはずです。
危険に満ちた水道民営化などもまったく必要なくなります。

「自由化」という麗しい言葉にだまされて、またまた麻生氏に代表されるような、愚策に踏み込もうとしている政治家たちは、
いい加減に、犯人が財務省の緊縮真理教であることに気づき、これを退治することに全力を注ぐべきです。

最後に付け加えますが、
発展途上国に水道の民営化を勧めてきたのは、IMFであり、
そのIMFには、
多くの財務官僚や財務省OBが深く関与しています。
緊縮真理教とグローバルな民営化(規制緩和)路線とは、見事に結託しているのです。



いずこも同じ「絶望の党」

2017年09月27日 12時04分52秒 | 政治



衆議院が解散されます。
10月22日が投票日と決まりました。

安倍首相は、2019年10月の消費増税を実行することを約束し、
増税による増収分をすべて「国の借金返済」に充てるのではなく、
「より多くを」教育無償化などに充てるそうです。
https://mainichi.jp/senkyo/articles/20170919/k00/00m/010/085000c

あ~あ、というしかありません。
いまさら言うまでもなく、PBの黒字化のために増税するというロジックには、何の根拠もありません。
そもそも日本には、財政問題など存在しないのですから。

増税によって税収が増すというロジックにも、何の根拠もありません。
増税によって消費が落ち込みデフレがいっそう進行すれば、GDPは下がり、税収はかえって減ります。
その可能性のほうがよほど高いでしょう。

このチンケな公約(?)に人気が得られないことを素早く見て取ったのか、
小池東京都知事は、「絶望の党」もとい「希望の党」代表に就任するや、
さっそく「消費増税凍結」を打ち出しました。
https://www.nikkei.com/article/DGXLASFB25HKJ_V20C17A9L83000/?n_cid=NMAIL005

さすがは人気取りの得意な小池さん、あっぱれと言いたいところですが、
実現させる気のないインチキ公約であることは見え見えです。

というのは、「希望の党」の政策には、
一院制、ワイズスペンディング(賢い支出)、議員定数・議員報酬の削減、行政改革
などが掲げられていて、緊縮財政路線とぴったり一致するからです。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B8%8C%E6%9C%9B%E3%81%AE%E5%85%9A

つまり両者は、あちら立てればこちら立たずの関係にあるわけです。
それにこれらは、すでに誰かが提唱してきたことで、何の新味もありません。

でもそんな理屈はどうでもいい。
とにかく選挙、選挙、目玉がなきゃダメなのよ!」と、
小池サン、若狭クンを叱咤したかどうか知りませんが、
もし本当に増税凍結を考えているなら、財務官僚の鉄壁の緊縮路線や、バカなマスコミの国民洗脳にどうやって打ち勝つのか、その処方箋くらいは示してほしいものです。
徹底した情報公開」を政策に掲げている限りは。

期待しても無駄でしょうが。

ついでに言わせてもらいますと、失言居士・麻生副総理は、最近ご高齢で耄碌されているのか(失礼)、
今回の小池氏の「消費増税凍結」打ち出しに対して、
「東京で景気回復を実感できないというのは、感性がおかしい。地方で実感できないというならまだわかるが」
などと、とんでもないオトボケを言っています。
http://www.sankei.com/politics/news/170926/plt1709260048-n1.html?utm_source=browser&utm_medium=push_notification&utm_campaign=PushCrew_notification_1506368619&pushcrew_powered=1

問題は「実感できるかできないか」ではなく、景気が客観的に回復しているかどうかでしょう。
財務大臣を勤めながら、地方の疲弊、東京一極集中という格差が財務省の緊縮路線に起因していることも見えないらしい。
すっかり財務官僚の罠にはまってしまって、もはや官僚をコントロールする気概もないようです。

というわけで、いまの政局見渡せば、
花も紅葉もなかりけり。
いずこも同じ絶望の党

でも総選挙となると、国民はけっこう興奮するんですよね。
「今度こそ何かが変わるかもしれない」なあんてね。
しかし、それこそが盲点なのです。

選挙に関心が集まるということ、
結果に何かを期待するということ、
これは、「国権の最高機関」たる国会が国政の大筋を左右する、とみんなが信じていることを意味します。

ところが、いま実際に国政を左右しているのは、
財務省、経産省、国交省、外務省、厚労省などの有力官庁であり、
パソナ会長・竹中平蔵氏のようなグローバリズム「民間議員」です。
実際、彼らの意向によって、この間、多くの悪法が通ってきました。
安倍総理、麻生副総理などは、ほとんどこの勢力の傀儡にすぎません。

ちょっと、そこのオバサン、
仮に万が一、小池新総理が誕生したとしても、この実態は変わりませんよ。

すると、総選挙というのは、大騒ぎをして、そういう実態を国民に見えなくさせる
「お祭り」にすぎないことになります。

そう、民主主義など、もはやこの国では機能していないのです。

では、選挙、つまり代議政治にはまったく意味がないのか。
いまのままではそう言えるでしょうね。
しかし「本質的に意味がない」と言っちゃあ、おしめえよ。

前にもこのブログで書いたのですが、
https://38news.jp/politics/10204
国民の代表が少しでも民意を国政に反映させられるように、選挙制度を根本的に見直すのです。
内閣や官僚が国民のためにならない政治をやったら、まっとうな批判ができるような真に優れた政治家が選ばれる。
そういう仕組みを考えるのです。

そのためには、民意そのものも優れたものにしなくてはなりません。

そこでアイデアですが、
有権者と立候補者それぞれにテストを課して、参政権保持者をある程度まで絞るのです。

それじゃあ、民主主義に反する、という反論があるかもしれません。
しかしよく考えてみてください。

世の中には、政治のことなどろくろく考えてもいず、判断能力のない人がいっぱいいます。
これから社会の高齢化が進むとますますそういう人が増えるでしょう。
いまの選挙制度は、そういう人たちにも、ふだんからよく考えている人と同じ一票を与える「形式的な民主主義」にもとづいています。
これで、いい世の中が生まれるとあなたは本当に思いますか。
実際、経済のことなど何にもわかっていない政治家が大きな顔をして、
「消費増税待ったなし、財政破綻の足音が聞こえてくる」
などと狂ったことをのたまっているではありませんか。

さてこのアイデアでは、
まず有権者には、健康な常識人なら、まあだいたいが合格できるような易しいテストを課します。
運転免許やパスポートと同じように、期間を決めて、期限が来たら更新が必要で、そのたびにテストを受けます。
高得点者には複数投票権を与えるような「差別選挙」も視野に入れるべきでしょう。
ちょうど株主総会の議決権のように。

また、立候補者のテストは、公共心をわきまえた政治的見識や、現実のマクロ経済の知識を問う難しいものにします。
ただし、大学などで講じられている政治学や経済学の知識ではありません。
またこのテスト問題には、イデオロギー色があってはなりません。

この場合は、期間を設けるのではなく、国政選挙のたびごとに実施することにします。

以上のアイデアは、悪平等主義の弊害や組織ぐるみの半強制的な動員、その場の人気だけに依存するポピュリズム政治などを避けるためです。
形の上だけの公正さは、真の公正さではありません。

このようにすれば、一般国民も忙しいなかを縫って少しは政治に関心を持つでしょうし、選挙に出たい人も必死で勉強するでしょう。
政治経済塾のようなビジネスが並び立つこともOKです。
こうして、民意全体の向上が期待できます。
「絶望の党」も少しは減るでしょう。

あとは、誰がこの制度を作り、誰が運用するのかという課題が残っているのですが。

政治の本質とは何か――山尾議員疑惑に寄せて

2017年09月12日 15時51分19秒 | 政治




報道によりますと、民進党は、8日、幹部会議で幹事長代行に辻元清美氏を選ぶことに決定しました。
この人選も問題ですが、山尾志桜里不倫疑惑問題の余震をなるべく早く終息させようとの思惑でしょう。まあ、勝手にやってくれというほかはありません。

山尾議員は不倫の事実を認めず、民進党を離党することになりました。
離党でなく議員辞職すべきだとの声もありますが、ここで論じたいのは、その種の議論ではありません。
解体しつつあるいまの民進党に何を期待しても無駄です。
壊れゆく運命にあるものは、自然の勢いに任せよ。

森友学園問題に始まり、加計学園問題、豊田議員暴言問題、稲田元防衛省失言問題、そして今回の山尾議員不倫疑惑問題と、ここのところ政局は、スキャンダルに翻弄されている感があります。
もちろん、ここにはワイドショーや週刊誌など、マスコミの興味本位によるすっぱ抜きや煽動が大いに関係しています。しかし、中央政局がそれらを大真面目に取り上げなければならない社会背景は何かということを見ておくことが大切です。

それは、ひとことで言えば、こうした「話題」にたちまち関心を集中させる国民大衆のどうしようもない空気です。
マスコミもビジネス、そこはちゃんと心得ていて、政治家のスキャンダルを取り上げ続ければ売れるという読みがあるのでしょう。
マスコミだけではなくネットもたちまち炎上します。ネットもビジネスですね。

民主政治では、国民が主権者であるという建前があるので、何となく、自分たち自身が国政とつながっているという幻想が膨らみます。
しかし実際には、国民の意思がよき国政に反映されるというふうにはなっていません。
そこで、なぜ国民はこの種の政治スキャンダルに飛びつくのかと言えば、要するに憂さ晴らしです。ルサンチマンのはけ口です。「パンとサーカス」です。
政府や政党も、この大衆社会のおそるべき動向を無視するわけにいかず、仕方なく「正義の政治、清い公党」を装って、ひたすら対応に追われるという按配。

ところで、じつは多くの人が、こうした成り行きを「くだらない」「何やってんだ」と感じているでしょう。それでも劣情を刺激されてつい視聴者になってしまう。
問題はこの「くだらなさ」の源がどこにあるかです。
民衆とはもともとそういうものだと言ってしまえば、身もフタもありません。
もう少し事の本質をよく見極めてみましょう。

上に挙げた政治スキャンダルには、一つの共通点があります。
それは、「政治に従事する者は道徳的に正しくあらねばならぬ」という金科玉条をタテにして騒ぎを起こしているという事実です。
この金科玉条は、日本の政治では、疑われたことがありません。それどころか、日本の国民のほとんどが、この命題を政治家非難や政治批判のために最優先させるべき武器だと考えているようです。

ここ近年、政治家が引きずりおろされた、または引きずりおろされかけた例を思い起こしてみても、国民大衆のほとんどがこういう発想をとっていることがわかります。
猪瀬直樹元東京都知事、舛添要一前東京都知事、宮崎謙介元衆議院議員、今井絵理子衆議院議員、そして上に挙げた人たち。
非難や批判の内容は、汚職、公金流用、不倫とさまざまですが、一様にこれらを「道徳的な悪」として糾弾し、それをもって「政治家失格」の烙印を押しつけています。

この発想は正しいか。

筆者はこう考えます。
ここには、政治家としての力量、業績、能力によってその適性を評価するという基準がほとんど見られません
政治家としての力量、業績、能力とは、案件を広い視野と公共精神をもって考え、知識と経験を活用して適切な政策を立案し、巧みな実行力を駆使してその政策を実現に導くことです。
そしてその実現された政策が、実際に国民の福利の増進に貢献したかどうかが絶えずチェックされなければなりません。

断っておきますが、筆者は、上に挙げた人たちが、政治家にふさわしいそういう資質の持ち主だったなどと言っているのではありません。
そこそこ能力を持った人もいれば、全然ダメな人もいます。芳しからぬ政策を取った人もいます。
憂うべきは、そういう判断が、該当する政治家たちの評価基準として採用されず、ただ清廉潔白であったかどうかという基準のみによって去就を決定させられてしまうという、おかしな風潮が蔓延してしまっていることなのです。

日本人のほとんどは、近代国家における政治というものの本質がわかっていないのです。
考えてみれば、これは日本の伝統と言ってもよい。
儒教道徳が流布した江戸時代から、孝悌忠信、至誠、質素倹約などばかり尊ばれ、こうした徳義に従わない者は人であるかのようなまなざしを受けてきました。政治家も例外ではありません。
江戸時代に沁み込まされた徳治政治こそ良しとする伝統が、いまなお続いていて、国民性の大きな部分を形づくっています。

ちなみにこういう国民性を戦後になって助長させた「大物」がいます。立花隆氏です。
彼は、田中金脈問題を執拗に追跡し、その名をとどろかせましたが、その膨大な仕事の中で、田中角栄の優れた政治的手腕(特に通産大臣時代の)に触れたことは、ただの一度もありませんでした。

しかしもはや近代百五十年、至誠や清廉潔白などを政治家評価の中心に置くような時代ではありません。複雑多様化したこの先進社会を維持発展させていくために、幅広い知識情報にもとづく的確な処理能力と優れた政治手腕とを結集させることこそが問われているのです。
また修羅場である国際社会に向けては、マキャヴェッリ的な巧智がぜひとも必要とされます。

もちろん、道徳は大切ですし、ことに一般人に比べて公人にはそれが厳しく求められることは論を俟ちません。
しかしそれは、あくまでも政治家としての資格要件の一つであって、政治家という職能の本質要件ではありません。
政治家の職能の本質は、錯綜した社会問題をいかに調整し、国民最大多数の最大幸福をいかに実現するかに求められます。

日本人の多くがこのことに気づかず、いつまでも道徳的判断だけをよりどころにスキャンダル合戦を繰り広げ、政治家降ろしにうつつを抜かしていると、わが国は内憂外患の増大によって確実に亡びの道を歩むでしょう。

言うまでもなく、日本はいま、北朝鮮の核保有問題や中国の不当な圧力の問題など、安全保障にかかわる喫緊の課題を抱えています。しかし日本独自の積極的な国防策は動き出す気配がありません。
また、この数年間、安倍政権の下で、消費増税、電力自由化、労働者派遣法改悪、農協法改悪、TPP批准、無原則な移民受け入れ、みなし残業手当廃止、種子法廃止など、国民のためにならない悪政が、大した議論もなく次々と押し進められてきました。
デフレ脱却のための有効策はちゃんとあるのに、財務省の「緊縮真理教」がこれをずっと阻み続けています。
「パンとサーカス」を求める大衆のどさくさにまぎれて、これらの悪政や政治的不作為が現にまかり通っているのです。

かつて福沢諭吉は繰り返し言いました。愚かな政府は愚民によって支えられると。
私たちが世界から愚民国家の住人と嘲笑されないためにも、政治の王道を外したくだらない「政治家降ろしの風潮」から一刻も早く脱却しましょう。


東部戦線、異常だらけ

2017年08月30日 00時59分49秒 | 政治



今年に入って14回目。
儀式のようになった北朝鮮のミサイル発射ですが、8月29日の発射では、襟裳岬上空を通過し、太平洋上に落下。迎撃措置は取りませんでした。本土上空を通過したのは、2007年以来とのこと(当時は人工衛星と発表されていました)。
安倍総理大臣は、「我が国の安全保障にとって、これまでにない深刻かつ重大な脅威」と発表し、「断固たる抗議を北朝鮮に対して行」うとともに、「国連安保理に対して、緊急会合の開催を要請し」、「さらなる圧力の強化を国連の場において求め」、「いかなる状況にも対応できるよう、緊張感をもって国民の安全・安心の確保に万全を期して」いくと発表しました。
http://www.yomiuri.co.jp/matome/20170416-OYT8T50000.html

毎度の決まり文句で、何とも空しく響きますね。「断固たる抗議」なんて効くわけないのに。万全を期するとは、いったい何をやるというのでしょうか。
次の措置も空しいとしか言いようがありません。

政府は発射直後、全国瞬時警報システム「Jアラート」を通じて、北海道・東北などの住民に避難を促した。(同記事)

Jアラートを発令した地域は、北海道、東北各県、北関東、新潟など、12の地域にまたがっています。こんな広い地域に警報を発令して、そこに住む膨大な住民の人たちはどうすればいいというのでしょうか。できること、やるべきこと、何にもありませんよね。
いくつかの自治体で避難訓練をやっている映像をテレビで見たことがありますが、滑稽そのものです。駆り出されている人たちも緊張感はまったくなく、笑ってさえいました。

北朝鮮のミサイル発射については、さまざまな事情により、日本独自の抑止策はほとんど不可能です。それを裏づけるため、信頼のおける情報を並べてみましょう。

1.北朝鮮の貿易は、カギを握っているはずの中国に9割依存している。仮に(ほとんど考えられませんが)、中国が北への石油輸出を止めたとしても、ロシアからの輸入を倍増させることが可能である(現在ロシアからの輸入は中国の六分の一)
http://news.livedoor.com/article/detail/12980205/

2.国連安保理の制裁決議があっても、中国やロシアが守るかどうかきわめて怪しい。

3.北朝鮮の存在は、中露にとって、米国およびその同盟国の圧力に対する緩衝地帯の役割を果たしている。金正恩体制が崩壊することは、中露が米と直接対峙する事態を招き、彼らにとって思わしくない。

4.北朝鮮に実質的な影響を与えている中国の北部軍区は、江沢民派が支配しているので、習近平主席は、たとえトランプ大統領からの協力要請に応じる気があったとしても、何もできない。
https://38news.jp/politics/10321

5.今年4月初めに北朝鮮が発射したミサイルは、中国製の弾道弾である。中国製の弾道弾には暗証チップが組み込まれており、暗証コードがなければ発射出来ないそうである。推測だが、このほかにも、これまで発射されたミサイルが中国製であることが十分考えられる。そうして、この中国製ミサイルを管理しているのはおそらく北部軍区である。ことほどさように、北部軍区と北との結びつきは強いのである。実質的には中国は、北のミサイル発射を強力にサポートしているわけだ。

6.日本の現在の防衛力、防衛体制では、どこに飛んでくるかわからないミサイルを迎撃することはきわめて困難である。PAC3は沖縄を含め全国に16基しか配備されておらず、また海上からの迎撃が可能なイージス艦も3隻にすぎないので、予告なしの攻撃にはとても対処できない。また、核基地やミサイル基地に対する先制攻撃も、理論上は可能だが、諸般の事情によりまず無理。

7.北朝鮮は、米国との直接対話を通して核兵器保有を認めさせるために武力行使をしているので、米国がそれを認めない限り(認めるはずがありませんが)、対話は不成立である。ティラーソン国務長官の先の対話ほのめかしは、ポーズのみ。したがって北朝鮮は、いつまでも、ボカボカと日本近海あるいは西太平洋にミサイルを撃ち続けることをやめない。これは、米の同盟国・日本の弱点を知悉した北の、いわば武力による「瀬戸際外交」である。先になされたグァム近海への発射予告の実行を引き延ばしているのも、その一つの手である。今回の発射は飛行距離がグァムに近いところから見て、グァムにだってこの通り撃てるぞというアッピールの意味があるだろう。

8.日本は北朝鮮と国交がないので、政府にとって有効な情報の直接入手や、外交交渉による圧力のかけようがない。たとえこれらができたとしても、いまの外務省の体たらくでは、その限界は推して知るべし。

9、日本人一般に危機意識が不足している。たとえあったとしても、それを活かすための新たな実践的方策がとられていない。財務省が防衛予算倍増を阻止しているからである。

というわけで、結局は、いつも通り、アメリカ親分の意向に全面的に依存するしかない、というのがいつわらざる実情なのです。
しかし覇権崩壊と内政危機を抱えるいまの親分に依存しても、それが役に立つかどうかは、はなはだ心もとない。なので、核武装の可能性も含めた自主独立・自主防衛の必要を訴え続けることはぜひとも必要ですが、情けないことに、政府がそれを積極的に進めようという気配はまったく感じられません。

本来なら、わが国にとっての緊急事態なのですから(それはもうずっと前から続いてきたのですから)、政府は直ちに特別予算を組んで、国防のためのあらゆる手段を速やかに講ずるべき「だった」のです。普通の国なら、とっくにそうしているでしょう。

北朝鮮問題に関して唯一、理想的で、かつ実現可能な方策として考えられるのは、次のシナリオです。これもアメリカ親分にやってもらうほかないのですが。

アメリカが戦後行なった戦争で唯一成功したのは、湾岸戦争でした。この時のスピーディーな処理に学ぶべきです。
つまり、当時よりもはるかに進歩しているハイテク軍事技術を駆使して、北朝鮮の核基地、ミサイル基地をピンポイント攻撃で一挙に破壊します。金正恩体制を崩壊させるための斬首作戦も同時並行的に遂行すべきでしょう。韓国や日本を巻き込んだドンパチは、犠牲が大きすぎるので禁じ手。

さてこれが成功したとして、代替政権の樹立に当たって、中露が黙っているはずはなく、世界大戦の危機はいっそう高まるかもしれません。しかし、北と話し合うよりは、中露相手のほうがまだ対話の可能性があります。大国同士のプライドがそれを許すのです。


いやな予感

2017年07月04日 18時02分59秒 | 政治
        





東京都議会選は、都民ファーストの圧勝、自民党の惨敗に終わりました。
自民党もまさかこれほどとは思っていなかったでしょう。
投票結果を見ると、自民党は、定数の多い地区で今までどおり2人候補者を立てていたために、共倒れや一人だけ当選というケースが多くなっています。党選対策本部の警戒感がまったく足りなかったのが最大の敗因だと筆者は思います。

各紙、「もりかけ」問題、豊田問題、稲田問題などにおける「自民党のおごり」が今回の結果を招いたと報じています。自民党自身もそのように総括しています。
しかし、マスコミ主導による反安倍キャンペーン、反権力・反日キャンペーンが功を奏したという意味でなら、それは当たっていますが、こういう形で勢力分布ががらりと変わること自体に、筆者は政治のマスヒステリア化を見ます。

また小池都知事の人気が都民ファーストの圧勝をもたらしたという見方もあるようですが、これも必ずしも当たっていないと思います。
というのは、まず、投票率が前回より上がったとはいえ、有権者の半分しか投票していないのです。都知事選に対する都民の関心の低さが歴然としています。
次に、小池都知事の人気は、選挙公示前の意識調査では決して高くなく、特に豊洲問題では、あの引き延ばし政策にほとんどの人が反対していました。
一月時点で安全確認がなされていたにもかかわらず、小池氏はこれをひと月以上も隠しており、「安心と安全」などという怪しげなキャッチコピーによって、いたずらに移転を引き延ばしてきました。そのために巨額の税金が無駄遣いされており、現在もこの事態は続いています。
ちなみに豊洲市場が築地に比べてはるかに安全であり、衛生的であることは、氏の都知事就任以前からわかっていたことです。
要するに「選挙ファースト」であり、肝心の問題を無視して陣営固めのために時間稼ぎをしていたにすぎないのです。
さらに、小池氏はゆくゆく国政進出を狙っているようですが(すでにそれを匂わせています)、この人には、日本をどうしたいのかというヴィジョンと信念が何もありません。悪い意味でのポピュリズム政治家の典型です(「国民ファースト」!)。
たとえば、安倍政権が進めてきたグローバリズム政策の害毒(消費増税、TPP,農協法改悪、「岩盤」規制緩和、移民政策、労働者派遣法改悪、電力自由化、種子法廃止など)について、何か定見を持っているでしょうか。筆者にはとうてい、そうは思えません。これまで国政にさんざん関与してきながら、重要課題に関する立場をほとんど明らかにしたことがないからです。

以上のように、今回の選挙結果は、安倍政権に対する都民一般の「飽き」の気分、「デフレ疲れ」の気分、権力者や公務員に対する「ルサンチマン」の気分の蔓延に、反日・反権力野党やマスメディアがうまく乗っかった結果にすぎないのです。

これがただの気分、ムードにすぎないというのは、都民(あるいは国民)の大半が、安倍政権の政策の問題点や、これまでの都政一般の問題点について、よく理解しているとは思えないからです。
それは、ここ最近、首長や政権批判が高まる時に、具体的な政策に関しての理性的な批判として現われるのではなく、必ず権力者のスキャンダルだけを大げさに騒ぎ立てる感情的な形として現れるのを見てもわかります。
しかもそのスキャンダルは、半分以上、反日・反権力野党やマスメディアによってほじくり出されたりフレームアップされたりしたもので占められています。

思えば、この大衆のムードによる権力者引きずりおろしの兆候は、舛添要一前都知事に対する執拗な攻撃の時から始まっていました。多くの人が舛添批判にうつつを抜かしている時に、筆者はこの引きずりおろしの動きには実に不快なものがあるということを、このブログに発表しておきました(「舛添騒動に見る日本人の愚かさ」2016年6月16日)。
http://blog.goo.ne.jp/kohamaitsuo/e/0ced7935bbc25e77b979dc7856739432

気分、ムードの支配による政治の転換は、たいへん危険です。
安倍政権や自民党には上述のように、良くないところがたくさんあります。しかし外交、軍事的安全保障、憲法問題などの面では、現行憲法やアメリカの睨みなどに手足を縛られた厳しい制約の中で、概してよくやっています。
そのように、是々非々で物事を見ず、他に適切な対抗馬も見当たらないうちに、「盥の水と一緒に赤子を流す」体のことをやってしまうと、そこに空白が生じます。アナーキー状態ですね。いま、日本の政治は、確実にこの道を歩んでいます。
アナーキー状態では、国民の不満感情、やけっぱち感情が高まります。それに乗じて、国民感情を巧みに束ねたデマゴーグ政治家が登場して、一挙に全体主義政治体制を作り上げてしまう。これは、歴史が教えているところですね。

安倍長期政権疲れやデフレ不況疲れ、ブラック企業下での過重労働疲れ、これらが重なって、中身は何でもいいから、とにかく都政も国政もリフレッシュ! 
先の拙ブログ原稿には、日本がこうした傾向を深めていることがすでに書かれているのですが、この傾向は、残念ながらさらに脈拍を高めていると思わずにはいられません。
というのは、メルマガ・三橋経済新聞(新経世済民新聞)でも以前触れましたように(https://38news.jp/politics/10577
)、天才的デマゴーグ・橋下徹氏が、いよいよ国政の中枢部に登場しようとしているからです。

すでに藤井聡氏が7月4日の同メルマガでこの危険について強調されているとおり、橋下氏入閣は、かなり確度が高そうです。水面下では橋下氏入閣の交渉が進んでいるのでしょう。
「ゴネ得」という言葉がありますが、橋下氏は、入閣しない、しないと拒否し続けることで、「ほかに人がいなくてそんなに求めるなら、仕方ないから引き受けるか」という手法で印象をよくしておくと同時に、「ただし引き受ける以上は、こちらにも条件が……」などと切り出して、巧みに「条件闘争」をしていくのではないかと疑われます。有力ポスト、実際に発揮できる権限などについて。

政府が彼に求めているポストは、報道によれば「人づくり革命」担当相だそうです。
https://dot.asahi.com/wa/2017070200034.html?page=3
何じゃ、そりゃ? という感じですね。
人づくりは養育者、教育者、社会全体が行なうもので、橋下氏などにそんなことをされたらたまったものではありません。このネーミング(誰が考えたのか知りませんが)そのものが、イデオロギーに付和雷同する単純人間製造装置の新設を企んでいるようで、全体主義的発想そのものではありませんか。

ちなみに、予定されている内閣改造は、「都知事選の大敗を受けて」と報道しているメディアが多いですが、都知事選とは直接関係なく、任期中に憲法改正を実現したいとする安倍総理が、その体制固めを目論んで以前から決めていたことです。橋下氏の入閣プランは、そのための最大の目玉です。
先のメルマガでは、それがいかに百害あって一利なしか書いておきましたが、都議会選大敗という結果と合わせて考えると、さらにとてもいやな予感がしてきました。

以下は、筆者が考えた最悪のシナリオです(敬称略)。

都議会選大敗の結果、これまでくすぶっていた自民党内の反安倍勢力がさらに力を増し、安倍引きずりおろしの気運が高まる。安倍はそれを敏感に察知し、自分の首相生命は遠からず終わりを告げるだろう。早々に自分の任期中に改憲を実現させなくてはならない。内閣改造を急ごう。改憲発議を急ごう――こうして8月には橋下徹が入閣。
一方、ポスト安倍を狙う石破茂は、安倍凋落という絶好の機会を逃さず、消費増税の必要性を党内外で力説する。おバカな自民党員の多くの賛同を集め、増税延期を防ぐため、来年の総裁選を待たずして首班交替を画策する。
年内に改憲の発議が成立し、来年早々に国民投票へ。安倍政権支持率低下のため、公明党もこれまでの協力的態度を変え、国民投票では「自衛隊の存在を憲法に記入」ならず。安倍の責任が問われ、総理辞任。総裁選前倒しで石破が当選、そのまま総理に就任。橋下は安倍の期待に応えなかったにもかかわらず、新閣僚人事で巧みな根回しにより留任。総務大臣に。
経済音痴の石破は、財務省の緊縮真理教をそのまま実行。日本のデフレ化が加速し、国民生活は貧困化を深める。財務省と黒幕竹中と橋下が実権掌握。国民の不満表現を弾圧。言論統制へ。
グローバリズムの浸透さらに早まり、中国人の移民、不動産取得、企業買収激増。小池は中国の一帯一路に賛同、二期目の習近平主席に媚びを売り、東京五輪の財政は事実上中国資本で。

こんなことにならないように、心より祈念いたします。


憲法改正と「橋下大臣」

2017年06月06日 20時52分25秒 | 政治

        





安倍総理は、2020年までに憲法を改正し、9条1、2項はそのままにして新たに自衛隊の存在を盛り込む考えを今年の憲法記念日に明らかにしました。
あたかもこれに呼応するかのように、5月31日、日本維新の会法律政策顧問の橋下徹氏が現職を辞しました。
両者の間には関係がないといっても、「そりゃ聞こえませぬ」ですね。

憲法改正は自民党の党是であり、悲願と言ってもよいでしょうが、これまで同党では、改正憲法草案の作成、96条(改正条規)の改正や9条2項の削除の可能性模索など、さまざまな試みがなされてきました。しかし時期尚早ということで見送られてきました。
国際環境の激変を思うとき、これはまことに残念なことです。

私事にわたりますが、筆者は改憲論者です。増補版『なぜ人を殺してはいけないのか』(PHP文庫・2014年)という本の中で、自民党草案や産経新聞草案の不徹底性と冗長性を批判しつつ、主として次の二点を主張しました。

1.思想の言葉として憲法について語る場合、「改正」について喋々するのではなく、その目標を断固として自主制定憲法におくべきこと。
2.とはいえ、国内外の政治情勢に配慮せざるを得ないため、実際には9条2項(*)の削除のみで発議に打って出るべきこと。

(*)「前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。」

つまり理想は理想として掲げ、現実には現実的に切り込む二刀流を主張したわけです。
筆者はこの考えで、1の自主制定憲法の草案を作ってみました。
ちなみにこの草案では、国防軍の設置など謳っていません。当たり前のことをいちいち憲法に書き込む必要はないからです。ただ内閣総理大臣は、その職務として「軍の最高指揮権を持つ」ことと「現に軍職であってはならない」こととが謳ってあるだけです。

なお書物にする以前の草稿段階ですが、以上の主張と草案とは、当ブログの以下のURLでご覧になれます。
http://blog.goo.ne.jp/kohamaitsuo/e/f923629999fb811556b5f43b44cdd155
http://blog.goo.ne.jp/kohamaitsuo/e/2aff34e653f463326a618d7e7376983f

さて今回の動きについては、次の二点について考える必要があります。いちおう両者は切り離しましょう。

1.9条をそのまま残して自衛隊の存在を新たに書き込むという安倍総理のアイデアは適切か。
2.橋下徹氏を、憲法改正を成立させるための要員として起用することは適切か。

まず第1の問題
筆者自身は、安倍第二次政権成立後間もない時点で、2項削除ならぎりぎりのところで国民的コンセンサスを得られるだろうし、アメリカも承認するだろうと踏んでいたのです。しかし、その後現在に至る騒然たる国民感情のうねりなどを見ていると、どうやらそれも怪しく、安倍総理の苦肉の策のような形をとるしかないのではないかと思うようになりました。
理屈を言えば、2項との整合性がどうの、といろいろ議論があるでしょうが、そこは文言次第でうまく切り抜けられるかもしれません。たとえば自然災害、他国侵略などとは一切書かず――
国民の生命、財産の安全を保障するために、自衛隊を置く」

安倍総理のアイデアについては、公明党はすでに理解を示しています。自民党内では、何の経済知識もなく政治家としての確たる識見も持たないただの親中派・石破茂氏のような「有力者」が、ポスト安倍を狙うためだけのために、さっそく難癖をつけているようですが。
http://www.zakzak.co.jp/society/politics/news/20170601/plt1706011100001-n3.htm
この種の人たちを懐柔するために、自民党憲法推進本部は、これまでの幹部会9人体制から一気に役員会21人体制に拡大し、その中に石破氏も含めるそうです。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170606-00000041-mai-pol

まあ、筆者なりの理想からはずいぶんかけ離れてしまいますが、国論をいたずらに四分五裂させないためにも、この日本式政治手法は仕方がないでしょう。トランプ方式は危険。

第2の問題(以下の文章には筆者の推定が混じります)。
橋下徹氏という人は、天才的なデマゴーグです。
この人が今回、日本維新の党の顧問役をやめたのは、明らかに憲法改正に関して安倍総理に直接「協力」するためです。
もともと日本維新の会は改憲に賛成の立場ですから、その点では整合性があります。
しかし、彼は人も知るように、かなり前から安倍総理とは蜜月を送ってきました。そこには、橋下氏なりの明白な目算があります。一政党の党首として国政選挙に打って出て、多数の国会議員の一人として仕事をし、そこで力を蓄えるというのはいかにも迂遠な道です。
橋下氏は、どうすれば権力の中枢にいち早くたどり着いて自分のしたいように政治を動かすことができるか、その秘訣を初めからわきまえているのです。
あの竹中平蔵氏などを見ていて、そのやり口を学んだのかもしれません。

安倍政権は、テロ等準備罪の成立を是が非でも今国会中に果たして(それは当然必要なことですが)、9月に内閣改造を行って体制を建て直し、それから憲法改正に力を注ぐつもりでしょう。
永田町周辺では、この内閣改造の際に、橋下氏が「民間大臣」に抜擢されるのではないかともっぱら噂されているそうです。十分ありうることです。まさに橋下氏の狙い通り。
http://www.zakzak.co.jp/society/politics/news/20170601/plt1706011100001-n1.htm

当の安倍総理はどう考えているのか。
もちろんその心のうちを「忖度」することはできませんが、彼がほとんど外交的軍事的な安全保障のことしか頭にないために、利用できるものは利用してやろうと思って、橋下氏を側近に近づけていることは確かでしょう。
「彼は日本の安全保障政策に関して自分と共鳴できる数少ない一人だし、住民投票の経験者だから、国民投票になった時に人心のつかみ方をよく心得ているだろうし……」
これこそ危険な一歩への踏み出しというべきです。

安倍総理は、橋下氏が大阪都構想(特別区設置構想)の賛否を問う住民投票(2015年5月)の際、どうやって大阪市民を騙したか知っているのでしょうか。
彼はまず、市が特別区群として解消されたからといって、「大坂都」なるものが、現行法規上は成立しないことを正しく伝えませんでした。
また、投票用紙には特別区を設置することの是非を問うのみで、「大阪市を廃止して」とは書かれていませんでした
また、府は2012年に負債が18.4%に達し、起債許可団体(**)に指定されており、橋下氏は、府のこの窮状を、潤沢な市の財政の一部(2000億円超)で肩代わりさせるつもりだったのに、そのことを市民に伝えませんでした。
また、「特別区」なるものが東京都の区と同じように、区民としての独自の権利を奪うものであることを伝えませんでした。
さらに、この都構想(特別区設置構想)なるものは、それを記した協定書が2014年10月に市議会、府議会でいったん否決されているにもかかわらず、その後の公明党の寝返りなどもあり、半ば無理やり住民投票に持ち込まれたものです。これでは代議制民主主義が正しく活かされたとは到底言えません。

(**)総務省の許可を得なければ新たに借金できない団体

こうした手法を平気で用いる橋下氏という人を、安倍総理は、改憲に有利だからという理由だけで重用し、「民間大臣」の座に据えようとしているのでしょうか。
多くの首都圏在住者は、あの「大阪都構想」を、しょせんは関西という一地方のこととして、高みの見物を決め込んでいたようです。しかしもし彼が「民間大臣」などになれば、今度は、国民全体にかかわる問題の帰趨を天才的デマゴーグの手にゆだねることになるのです。
橋下氏はさぞかし辣腕をふるって安倍「お坊ちゃん」総理に「協力」し、彼から称賛を勝ち得ることになるでしょう。さらに枢要な地位を手に入れるかもしれません。
心情保守派もさぞ喜ぶことでしょう。
さてそれからが問題です。
折から財務省の「緊縮真理教」のせいで、デフレからの脱却がままならず、国民の間にはルサンチマンが鬱積しています。ルサンチマンの鬱積は全体主義の土壌です。

かつて筆者は、維新が国会で勢力を飛躍的に伸ばした時、橋下氏を「プチ・プチ・ヒトラー」と称したことがあります。
維新の基本政策は当時と変わっていません。首相公選制、国会議員削減による小さな政府、道州制の採用、憲法裁判所の新設――当時橋下氏にはまださほどの権力がなかったから見過ごされがちでしたが、社会不安が募ってきたときにこれらの政策を強大な権力者が実行すると、どういうことになるか。
はじめの二つが代議制民主主義の破壊に結びつくことは容易に見て取れます。
「道州制」とは、地方自治の尊重に見せかけて、実際には底力を持たない地方の疲弊をいっそう招き、それに乗じて一気に中央独裁に場を与えてくれるような制度です。
「憲法裁判所」とは、法令などの合憲性を判断する機関で、首相または衆議院、参議院いずれかの総議員の4分の1以上の求めで訴えを提起できるとされています。首相が文句をつけさえすればなしくずしに法令を違憲として捨て去ることも可能です。
要するにこれもまた権力集中を高めるのにたいへん都合のよい制度です。
このように、橋下氏の党綱領は、社会不安で動揺した大衆の心理を利用して、全体主義体制に持っていくのにじつに都合よくできているのです。
条件はそろってきました。「プチ」を一つぐらいとってもいい、と筆者は思っています。

幼稚で空想的な平和主義から少しでも脱するために、初めの一歩としては、安倍総理のアイデアは悪くありません。しかしそのために別に橋下氏という黒幕の力を借りる必要はないでしょう。民主的に選ばれた政権が、堂々と提起して国民に信を問えばよい。姑息な点数稼ぎに走ると後でとんでもない目に遭いかねません。筆者は、橋下氏の勝手な国政参加を断固拒否すべきだと、安倍さんご自身に向かって訴えたいと思います。


経済音痴が日本を滅ぼす

2017年05月24日 12時21分05秒 | 政治
        



以下は、5月13日付「日刊スパ!」デジタル版に掲載された、「自衛隊を守る会」顧問・梨恵華氏の記事の一部です。
https://nikkan-spa.jp/1329422
《ここでさらに防衛大綱で潜水艦の新造艦や延命措置によって大幅に増やされることとなり、人員を増やす計画がなされないまま潜水艦だけが増やされた形となっています。
 財務省としては、防衛予算を毎年、少しでも削減することが目標ですから、潜水艦が増えた分のコスト削減目標があります。何かを増やせば何かを削減しろというのが財務省です。潜水艦が増えたら、潜水艦に必要な乗組員を大幅に増やす予算を確保しなければならないはずなのに真逆の目標があるのです。
 毎年防衛省から発行される「防衛省の我が国の防衛と予算」には「自衛隊定数等の変更」という報告があり、必ずどれくらい定数を減らしたのかという削減マークが付けられています。モノが増え、船が増え、装備が大型化しても、予算削減のためにその運用するための人員は減らすといういびつな予算が潜水艦の過酷な労働を生む大きな原因です。潜水艦を増やすが人は増やさないとなると、方法は一つです。休みなしに長時間労働で補うしかないのです。また従順な潜水艦乗組員は不満を表にあらわさずちょうどいいのでしょう。》

 自衛隊員は、有事平時に限らず、労働基準法適用外です。人員が十分確保できないため、有給休暇などとることができず、長時間苛酷な任務に耐えなくてはなりません。
 特に潜水艦乘りは秘密厳守が必要なので、おいそれと停泊できず、狭く暗い環境の中で、休日、睡眠なしの長期勤務を強いられるのが常識となっています。これは容易に想像できることですね。
 おまけに医者を乗船させるだけの予算もなく、病気になっても十分な投薬もされないとのこと、そのためここ1、2年間で自殺や事故が多発しているそうですが、これも表ざたになっていません。

 梨恵華氏は、「これを改善する道はただ一つ、人員を大量に募集して二交代制にすることだ」と書いていますが、上記の引用でわかるように、財務省の予算削減の方針がこれを頑固に阻んでいます。
 当たり前のことが当たり前に行われていない。これで日本の安全保障が守られるはずがありません

 この記事に触れたすぐ後、今度は次のような記事に触れました。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS16H5U_W7A510C1PP8000/
《自民党税制調査会の野田毅最高顧問ら有志議員が16日、財政再建に向けた勉強会を発足させた。勉強会を通じて安倍晋三首相の経済政策「アベノミクス」に警鐘を鳴らすのが目的。野田氏が代表発起人を務め、中谷元・前防衛相や野田聖子元総務会長が呼びかけ人となった。野田毅氏は「財政破綻の足音が聞こえてきており、このまま放置するわけにはいかない。財源の裏付けがないまま、惰性に流されるのはあまりにも無責任だ」と語った。

 臍が茶を沸かすとはこのことです。ようよう、おバカ政治家・両野田氏、財務省にペーパーなど出してもらって何をお勉強するの。
 「国の借金1000兆円」「PB黒字化目標」「積極財政は国債の暴落(金利の暴騰)を招く」「財政再建待ったなし」――耳にタコができるほど聞かされたこれらの嘘八百を真実と勘違いして、進んで再確認しようというのですから、話になりません。一体どこから財政破綻の足音が聞こえてくるのか。

 この記事についてはすでに三橋貴明氏がご自身のブログで、「野田毅氏の幻聴」といううまい表現を使ってすでに触れていましたが、「財源の裏付け」なんて、財務省教祖様の「緊縮真理教」をいち早く棄教して、財政出動に打って出るだけでいくらでも確保できるではありませんか。
 政権与党である自民党の重鎮が、このようにマクロ経済のイロハも理解していないために、財務省お墨付きの「勉強会」とやらをやってますます騙されていくという構図です。
 これが日本の政治です。情けないとしか言いようがありません。
 笑って済ませられないのは、この中に防衛問題に強いはずの中谷元氏が含まれていることです。
 中谷氏は、いったい自衛隊のボロボロの現状をどれだけ知っているのか。前防衛大臣として自衛隊が可愛くはないのか。
 さらに笑って済ませられないのは(こちらの方が重要ですが)この勉強会なるもの、明確な政治的意図のもとに組織されているという事実です。
 言うまでもなく、ここには、今のうちに、2019年に予定されている消費増税への足固めをしておこうという魂胆がありありと見え透いています。
 ふつふつと怒りが沸き起こってくるのを抑えることができません。

 安倍政権は、2020年までのPB黒字化目標という方針を見直して、政府債務の対GDP比率を重視するという方針に転換しようとしています(これにはおそらく、内閣官房参与の藤井聡氏の懸命な努力が功を奏しているのでしょう)。野田氏らの「勉強会」なるものは、これに対する露骨な対抗措置と言えます。
 ここからは想像になりますが、その底にあるのは、党内の反安倍勢力による安倍降ろしという、ただのくだらない権力争いです。
 たぶんポスト安倍と目されている石破茂氏を担ぎ出そうとでもいうのでしょう。筆者は自民党内の派閥勢力図などよく知りませんが、石破氏もまた恐るべき経済音痴であることだけは知っております。
 筆者はまた、けっして安倍首相を支持しているわけではありませんし、彼がマクロ経済をよく理解しているとも思いません。しかし、せっかく彼がデフレ脱却に結びつく少しはマシな政策を取ろうとしている時に、無知な政治家たちが財務省のデマを政争の道具に利用して足を引っ張ろうとするのを許すわけにはいかないのです。
 まことに無知ほど恐ろしいものはありません。

 まだあります。
 これも三橋氏や藤井氏がすでに触れていますが、1~3月期のGDP実質成長率が年率換算でプラス2.2%と5四半期連続で伸びているという内閣府発表にもとづく最近のニュースです。
 いかにも景気が回復しているように見えます。
 じっさい少し前に、筆者は「景気が回復したので」といった経済記事の記述を見てびっくりしたおぼえがあります。
 しかしこれもペテンに引っかかっているのです。
 実質成長率は、それ自体は計算できず、「名目成長率-物価上昇率」という式で表されます。ですから、たとえ名目成長率がマイナスでも(実際そうなのですが)、物価上昇率がそれを上回ってマイナスなら(これも実際そうなのですが)、実質成長率はプラスとして表されることになります。
 名目成長率がマイナスで、物価上昇率が大きくマイナスに落ち込んでいるということは、言うまでもなく、日本が再デフレ化に突入しつつあることを意味します。名目成長率も物価上昇率もともにプラスになるのでなければ、景気が回復したとは言えません。
 にもかかわらず政府およびマスコミは、名目成長率にも物価上昇率にも触れず、実質成長率のプラス化だけを発表・報道し、あたかもデフレから脱却しつつあるかのような悪質な印象操作を行っているわけです。
 政府はこの四年間何ら有効な財政政策を打たなかったのに、数字をごまかすことによって国民を騙し、来たるべき消費増税を正当化しようとしているのです。私たちは、このウソを見破って、断固として国民窮乏化をもたらす動きに抵抗しなくてはなりません。
 冒頭に例示した自衛隊のような悲惨なありさまは、他の社会領域でもあちこちで起きています。大げさでなく、亡国への歩みは確実に進んでいるのです。



カジノ法案――米中のはざまで亡びの道を歩む日本

2017年04月04日 15時19分14秒 | 政治

      





政府は4日午前、カジノを含む統合型リゾート(IR)導入に向けた推進本部の初会合を首相官邸で開きました。
以下、日経新聞電子版4月4日付より、一部を引用します。

推進本部の本部長を務める安倍晋三首相は「世界最高水準のカジノ規制を導入する」と表明。政府はカジノの運営方法や入場規制について本格的な検討を進め、秋の臨時国会にIR実施法案の提出を目指す。ギャンブル依存症対策なども議論し、詳細なルール作りを急ぐ。
首相はIRについて「大規模な民間投資がおこなわれ、大きな経済効果・雇用創出効果をもたらすことが重要だ」と強調。カジノに関しては「国民の幅広い理解を得られるようクリーンなカジノを実現する」と述べ、法案提出へ向けた作業の加速を全閣僚に指示した。
(中略)
 政府はIRを経済成長の起爆剤としたい考え。カジノ解禁を巡ってはマネーロンダリングなどの犯罪防止策や暴力団対策が重要課題となる。(以下略)


経済成長の起爆剤としてIR法とは! 
何と愚かしい正当化とごまかしでしょう。
政府はデフレ脱却のためにやるべき財政政策をなんら打たず、「経済成長」を観光収入やカジノに依存しようとしています。
ちなみに、やるべき財政政策とは、言うまでもなく、まずは交通インフラ整備のための大規模な財政出動です。これによって大きな需要を作り出し、デフレのために疲弊しきっている地方に活力を甦らせること。

カジノについてですが、この法案に対しては、すでに米在日商工会議所が露骨な要求を押しつけてきています。「進出企業の税率を10%以下の低率にせよ、日本人の誰もが利用できるように高額の入場料検討はやめて無料とせよ。東京や大阪にはリゾート施設に複数併設せよ」等々。
http://www.jcp.or.jp/…/aik14/2014-12-21/2014122113_01_1.html
カジノでの収入は当然、米国を中心とした進出企業の手に落ちるので、この要求を呑めば、低い税収以外には、何ら日本の経済成長には寄与しません。また大都市圏に複数のカジノを併設すれば、いろいろな意味で都市と地方の格差はますます開きます。しかしアメリカの属国化している今の日本の状況からして、この米在日商工会議所の要求を、政府は結局は呑むことになるのでしょう。
安倍首相は「最高水準の規制を導入する」などと言っていますが、全然信用が置けない。なぜなら、TPPでは農産品の関税率は死守すると言っておきながら、結果は軒並み大きく下げられてしまった<からです。

これがアメリカ発グローバリズムの恐ろしさなのです。
もちろんアメリカは、TPPから離脱した今でも、個別の通商交渉でさらに厳しい条件を日本に突きつけてくるでしょう。トランプ大統領は、国益を最優先する生え抜きの「ビジネスマン」ですから。
いま日本は、従来のよき慣習を次々に捨て、悪い意味でアメリカ化しつつあります。外国人メイドさんOK、非正規社員増大OK,全農、農林中金潰しOK。国家戦略特区での英語使用、すべてはアメリカの思うツボです。
安全保障のためにアメリカに縋りつきたい安倍政権の気持ちはわからなくはありません。
衰えたとはいえ、アメリカはやはり超大国です。対ロシア外交で中露分断を狙っても、両国の相互依存関係は、容易には断ち切れません。
また、東南アジア諸国は中国と経済的な結びつきが強い上に、その軍事的脅威を恐れているので、対立をできるだけ避けようとします。現にフィリピンのドゥテルテ大統領が、中国に対して事実上の敗北宣言をしたことは記憶に新しいところです。ですからアジアの親日国はあまり当てにならないのです。頼みの綱はアメリカだけということになります。
しかし個別政策課題でアメリカに追従することが、必ずしもわが国の安全保障に貢献するとは限りません。アメリカの通商戦略関係者が日本のそういう意向を読み取って、ちゃっかりつけ込んでいるにすぎないのかもしれないのですから。いや、おそらくこの推測は当たっているしょう。
なるほどアメリカは、日本の完全な自立(たとえば核武装)をけっして許しません。日米同盟とは親分子分の関係ですから、日本の国家としての自立行動は、子分の分際を守る限りで、つまり監視付きで許されているのです。しかし、軍事問題ではなく、個別の経済問題に関してだったら、交渉次第で断固たる抵抗を示すことは可能なはずです。要は、時の政権がどれだけ国民の利益に重きを置いて、毅然として交渉に当たるかなのです。
安倍政権は、この区別をせずに、経済交渉と安全保障とを一括して捉え、とにかくアメリカの意向に逆らうなという姿勢ですから、少しも「戦後レジーム」からの脱却が果たせないのです。

じっさい、トランプ政権の対日姿勢は未知数です。いつ日本という「財布」を、中国と分け合おうという協定を結ばないとも限りません。この場合、「財布」とは、金融や実体経済の面だけを指すのではなく、領土・領海の意味も含みます。
先の安倍・トランプ会談では、安倍首相がワシントン行きの飛行機に乗っている最中に、トランプ・習近平電話会談が行われています。何を取引したやら。
政府は、安倍・トランプ会談で、トランプ氏が100%日本の側に立って尖閣を守ることを保証したような発表をしていました。マスコミは右から左まで、これを聞いて、会談は大成功だったと浮かれていましたが、事実は異なります。
トランプ氏は、「The United States of America stands behind Japan , its great ally, 100%.」と言ったのです。「stands behind Japan」――つまり「日本の後方に立つ」、言い換えれば「後ろから支援する」と言ったにすぎません。(月刊Voice 四月号・中西輝政「米国は100%後方支援だけ」)
要するに、安保条約第五条を守るというこれまで何度も繰り返されてきた既定路線に、多少社交辞令としての粉飾を施して再確認を示しただけのことです。
自ら喜び、日本国民をぬか喜びさせるマスコミは、バカというかなんというか、じつに罪が深い。

先に当ブログに投稿したように、中国は尖閣・沖縄を狙っているのみならず、わが日本列島の後頭部(あまり政治的経済的関心の対象にならない部分)に相当する北海道で、土地買収により着々と「実効支配」を実現しています。
http://blog.goo.ne.jp/kohamaitsuo/e/aaf36ed3b0d0adf5a081f1cc4a8861be
また、安倍政権は、EUの悲惨な状況にもかかわらず、「技能実習生」「留学性」の名目で、率先して移民政策を進めています。この該当者のうち半数以上が中国人です。
グローバリズムをヒト、モノ、カネの自由な移動を積極的に進める考え方と定義するなら、いま日本は、ヒトとモノ(土地)の面において主として中国に、カネの面において主としてアメリカに浸食されつつあるわけです。日本はすでにグローバリズムから国民を守る戦争に巻き込まれているのです。ドンパチだけが戦争ではありません。日本は経済戦、情報戦、歴史戦、領土・領海戦において、じわじわと敗北し続けている。この事実を国民がしっかり自覚しなければなりません。


森友学園問題は財務省の陰謀?

2017年03月18日 13時25分35秒 | 政治

      




 北朝鮮の核ミサイル問題、韓国の親北政権誕生問題、中国の領土侵略問題、アメリカ通商省の対日FTA交渉問題と、国政全般に関わる喫緊の課題が山積しているにもかかわらず、日本国会村は、森友学園問題という矮小な村内スキャンダルで時間と税金を空費し続けています。
 これについて書くつもりはありませんでしたが、あまりのくだらなさを見ているうちに、ふとあることに思い至り、一度は触れておいたほうがよいと考えるに至りました。

 推測のかぎりを出ませんし、裏を取る力もありませんが、この問題は、次のように考えると、妙に符合します。
 籠池泰典理事長は、なぜ昭恵夫人をたらしこみ、さらにフリージャーナリストの菅野完氏に、安倍首相から数百万円(?)単位の寄付を受けたというようなことを言ったのか。
 国交省大阪航空局が地下埋設物撤去という籠池氏の言い分を聞いて、1億3000万円という破格の値段で国有地払い下げ契約を結んだのは2016年3月。しかしこの値段での売却を認可したのは近畿財務局でしょう。財務省がこの一件に大きく絡んでいることは確実です。
 さて財務省は、消費増税を安倍首相に2度延期されています。2度目は2016年6月。これ以前に財務省は安倍首相が再び延期する意志を固めていたことをキャッチしていたはず。これを何としても阻止するために、安倍落としを狙った。この時点で落とせなくても、安倍首相のイメージをダウンさせて首をすげ替えることに成功すれば、彼以外には増税を阻止できる首相候補は他にいないと考えた(これは実際そうでしょうね)。
 籠池氏ははっきり言って愚かな安倍信者であり、金さえつかませれば何とでもなると財務省は睨んだ。

 ここ数日の籠池氏の言動を見てみましょう。
・「財務省からしばらく身を隠すように言われた。10日間身を隠していた」と菅野氏を通してマスコミに発表(財務省はこれを否定)。
・塚本幼稚園での記者会見で息子を同席させ、もし開校が認可されなければたいへんな負債を抱えることになると言わせている(これも事実でしょうね)。
・その夜、籠池夫妻はうれしそうな顔をしながら帰宅したところをテレビカメラにキャッチされている。
・東京での記者会見をキャンセルしておきながら上京し、菅野氏と会い、その後菅野氏に、「現職閣僚から数百万円の金銭供与があった」旨を記者たちに語らせている。
・証人喚問を受けて立つと言い、「安倍首相から昭恵夫人を通じて2015年9月に百万円受け取った」と発表。

 この一連の言動の中には、思わず本音が出た部分と誰かから言わされている部分とが混在しているようです。
 さて誰かとはだれか。
 やはり財務省ではないか。
 籠池氏に、ある時点で相当のモノをつかませて口封じを試みたが、おっちょこちょいな籠池氏は、けっこうボロを出している・・・。
 つまりこの騒動の背景には、消費増税を何としてでも実現させたいという気〇いじみた財務省の執念と、これに精一杯の抵抗を試みている安倍首相との暗闘があるというのが、私の推理です。

 私は、周回遅れのグローバリズムの道を邁進する安倍政権の政策にはまったく賛成できませんが、財務省のウソまみれの緊縮財政路線圧力に抵抗している安倍首相の姿勢には賛同します。もしこの推測が当たっているなら、ここには財務官僚の救いようのない腐敗が現われています。
「将を射んと欲せばまず馬を射よ」。それにしても一連の報道が事実とすれば、昭恵夫人は少々軽率でしたね。

 好きではない陰謀論を試みました。好きではないのに、やらずにはいられない気持ちにさせる何かが私の中でうごめきます。