小浜逸郎・ことばの闘い

評論家をやっています。ジャンルは、思想・哲学・文学などが主ですが、時に応じて政治・社会・教育・音楽などを論じます。

アメリカ大統領選の背後に蠢くもの

2020年11月11日 19時50分57秒 | 政治


これを書いているのは2020年11月11日です。

アメリカ大統領選がまだ決着を見ていない事実については、多くの人がご存知と思います。
それにもかかわらず、世界のマスコミはバイデン氏当選を報じ、日本を含む先進諸国首脳は、すでにバイデン氏に祝辞を送っています。台湾の蔡英文総統までも祝辞を送っているのです。
けれども現時点で、信頼のおける情報を総合すると、次の事実が確実です。
①トランプ氏はまだ敗北を認めていない。
②共和党陣営は、これからが本当の選挙戦であると言明している。
③開票がすべて終わったわけではない。
④今回の投票では、バイデン陣営による大規模な不正が行なわれた。
⑤各州で民主党の不正と11月3日の選挙無効を訴える訴訟がいくつも起きている。
⑥これらの訴訟が却下された場合、最高裁まで上訴されることが確実視されている。
⑦いくつかの州では再集計が検討され、ジョージア州ではすでに再集計が決定している。
⑧中国、ロシア、北朝鮮、メキシコ、ブラジル、トルコは、まだバイデン当選を認めていない。

この未曽有の混乱で、焦点となるのは、次の二つでしょう。
A.民主党の不正の実態としてはどんなことが挙げられるのか
B.これから大統領が正式に決定されるためのプロセスはどうなっていくのか


Aについて。
・ウィスコンシン州、ミシガン州で、一夜の間に12万票、13万票という大量の偽の投票用紙が持ち込まれ、それらがすべてバイデン票だった。
・全米で少なくとも15の州で、大量のトランプ票をバイデン票に自動的に変換させるソフトウェアが導入されている。ミシガン州では、6000票のトランプ票がバイデン票につけかえられた。
・郵便局員や選挙スタッフが、宣誓供述書を提出した上で、投票締め切りを過ぎて届いた票に、投票日当日の日付を付けるように上司から指示されたと証言した。
・不正票の中には、すでに死んだ人の票や18歳未満の人の票、引っ越して州の外部に住んでいる人の票などが大量に含まれている。これらはすべてバイデン票である。
・投票率が理論的には考えられないほど高い州が複数ある。
・ペンシルベニア州(特にフィラデルフィア)では、共和党の監視員を強制的に排除したり、共和党支持者が投票に来た時には水性ペンを渡して認識不可能にしたり、本来州議会が決めるべき投票締め切り日を役人が3日延長を認めるなどの決定をした。
・郵便投票用紙のかなりの部分が、事前にバイデン側にマークシートされていた。
・投票用紙を売買する現場の動画や、いくつもの大きなバッグに詰まった投票用紙を業者がトラックに詰めて運ぼうとしている動画が公開されている。

まだまだあるでしょうが、とにかく民主党サイドで膨大な不正が行なわれたことは確かです。大統領選挙では、昔から不正が行なわれてきたことは有名ですが、今度のような露骨な形で行われたのは前代未聞と言っていいでしょう。
日本のどのマスメディアも、トランプ陣営の訴訟提起を報じながら「証拠を示さなかった」と締めくくっていますが、証拠を公開すれば、被告側が証拠隠滅を図ることは明白です。検察や警察が、犯罪容疑者の証拠を、法廷開始以前に公開するでしょうか。
さらに、NHKをはじめ、日本のマスメディアは、ジュリアーニ元ニューヨーク市長が暴いたジョー・バイデン、ハンター・バイデン親子の中国との醜悪な癒着関係について、まったく報じていません。日本や世界のマスメディアは、ぐるになって民主党に加担しているのです。日本の一部のマスメディアは、トランプ氏は身内までが見放しているのに往生際が悪いなどという、民主党寄りのメディアが流しているデタラメ情報を、そのまま報じている始末です。往生際が悪いといった指摘は、日本人の道徳感情をいたく刺激することでしょう。
しかし、トランプ陣営は、はじめからこうなることを見越して、合法的な戦略を取っているだけのことです。私たちは、アメリカという権謀術数にあふれた政治的国家が、目的遂行のために合法的であるかぎりはいかなる手段をも取ろうとする強靭な政治的意思を秘めている光景に立ちあっているのです。良し悪しはともかく、アメリカ大統領の選出は、国民の投票が最終決定手段なのではないという事実を、私たちは肝に銘じて知るべきです。心あるアメリカ国民なら、往生際だの潔さだのといった日本人好みの「切腹美学」的判断など歯牙にもかけないでしょう。政治と道徳とは同じではありません。

このような組織的不正(ボケじいさん・バイデンが投票日前にそのことをうっかりしゃべってしまいましたね)の背景には、当然、中共独裁政府の間接侵略が考えられます。そう、これは共和党と民主党の闘いを超えて、アメリカ本土を戦場とした米中戦争なのです。

それはともかく、ではどのような手続きでトランプ氏は、当選を果たそうとしているのか。
アメリカの大統領選挙の仕組みはたいへん複雑ですが、概略次のような手順を踏みます。
まず最高裁判事の判断ですが、5人の保守派の判事がトランプ陣営の主張に賛成票を投じると、トランプ氏は、米国大統領に再選されます。
もし保守派判事5人のうち1人が、トランプ陣営の主張に反対票を投じると、最高裁では決着がつかないことになります。すると、舞台は連邦議会に移ります。12月8日までに選挙人が決定しないと12月14日の選挙人投票が実施できなくなるので、連邦議会で大統領を選出しなければなりません。上院で副大統領が、下院で大統領が選出されます。
ただし、議員全員が議決に参加するわけではありません。下院で各州一人ずつの代表50人の投票が行われ、過半数を得た者が大統領に選ばれます。それが2021年の1月6日です。下院議員全員では民主党が多数を占めていますが、各州一人ということになると、共和党が多数を占める州が26、民主党が多数を占める州が22と、共和党のほうが優っています(残り2州は比例代表制)。しかし共和党議員が必ずトランプ氏を指名するとは限らず、後の暴動などを恐れて日和る者も出てくる可能性があるので、必ずこの50人の代表投票でトランプ氏が勝つとは限りません。
さらに、もしも下院で、トランプ氏もバイデン氏も過半数を獲得できなかったら、大統領が決まらないことになります。その場合、共和党が過半数を占める上院で現副大統領のペンス氏が副大統領に選ばれれば、ペンス氏が大統領職を代行することになります。
さらにさらに、ここでも共和党上院議員に棄権者が出て副大統領が決まらなかった場合、ペロシ下院議長が大統領職を代行することになります。ペロシ下院議長は民主党で、トランプ氏とは犬猿の仲です。

以上のようなややこしい過程を経て初めて大統領(代行)が決まるので、トランプ氏は、この長い過程での勝算をあらかじめ頭に入れていて、いま法廷闘争に打って出ているわけです。

ところで、一つ懸念があります。
私は、最終的に大統領選自体はトランプが勝つとみていますが(間違ったらごめんなさい)、中国、ロシア、北朝鮮、メキシコなど、アメリカと仲のよくない国々が、バイデンの勝利宣言を認めていない事態に不気味なものを感じます。
それに、このたびの民主党の不正は、まるでそれに気付いてくれとでもいうように、あまりに露骨で幼稚とさえ言えないでしょうか。これも考えてみれば不気味です。
陰謀論めきますが、中共は、本当はトランプに勝たせて、それによって生じる国内混乱に乗じて自国の覇権欲望を満たそうとしているのではないか? 実際、習近平氏は、来年1月まで、いやトランプ氏の就任によってその後も増大するであろうアメリカの混乱状態を、台湾攻略の絶好のチャンスとみているという囁きも聞かれます。

さあ、もしこの私の懸念が当たっているとすると、仮にトランプ勝利が実現したとしても、それを手放しで期待するわけにいかなくなりますね。まさに地球を巡る巨大ギツネと巨大タヌキの化かし合いです。ただ私は、習近平や極左や、さらには世界秩序の混乱によって得をするディープステートの連中が、無能でボケのバイデン氏を傀儡に立てて、世界や日本を思い通りに動かすようになるよりは、この際トランプ氏に頑張ってもらって、超大国アメリカの分断を統合し、国家秩序を維持してもらいたいと思っています。その上でチャイナの横暴に力を合わせて闘う方が、日本にとってはるかにましだと考える次第です。米中戦争は全世界を巻き込んで、長くなりそうです。

*参考資料
及川幸久:
https://www.youtube.com/watch?v=vSCtZlO8t5Q
https://www.youtube.com/watch?v=jWgld56SlBo
https://www.youtube.com/watch?v=YNnNaxMuqVI
田中宇:
http://tanakanews.com/201106election.htm?fbclid=IwAR33luvFX6QbhfrGpio4hPOchY2aueafzIeMFJf4xxyXdSs-v_sJURSChCg
https://tanakanews.com/201107election.htm?fbclid=IwAR0GhQTvQuaaFvUXgQ8AejsaI3kOM_XwCpiXxMqBZmDFq5-Dx_CCzFCyAB4
藤井厳喜:CFR FAX NEWS Novenber9
あえば浩明:https://www.facebook.com/jikido.aeba
美津島明:
https://blog.goo.ne.jp/mdsdc568/e/117b4579bed260ec401db435fa79a0f2?fbclid=IwAR1mse9QHfxwAYM_Ifc8NQmTPMntS4fRus6GC4oBawrdJ3RQO_-_LjY1iHo
ケント・ギルバート:https://www.youtube.com/watch?v=GeQben_bByU
エポックタイムズ(大紀元時報):
https://www.youtube.com/results?search_query=%E5%A4%A7%E7%B4%80%E5%85%83


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ホームレス・トラックという現実

2020年10月29日 16時23分37秒 | エッセイ


必要があって、27日の夜9時半から11時ごろ関越道を東京に向かって突っ走りました。
それまで夕食を食べていなかったので、さすがにここらで食った方がいいかと思い、レストランマークのある寄居(よりい)PAに寄ったのが10時少し前。ところがすでに土産物店も食事の場所もすべてCLOSED。
仕方がないので、その先の高坂(たかさか)なら規模が大きいから何か食えるだろうと踏んで、10時ちょっと過ぎに高坂SAに入りました。レストランは閉まっていましたが、オープンスペースで、何とかラーメンにありつくことができました。
客はほとんどいません。ひとり侘しく醤油ラーメンをすすりながら、これもコロナの影響かと思いつつ、その閑散とした風情に、この世のはかなさを味わったのでした。
これがバブル期だったら、けっしてそんなことはなかったでしょう。
あの頃は、都会の飲食店は終夜営業が多く、地下鉄やJR山手線、首都圏の私鉄さえ、終夜営業をすべきではないかという主張がかなり盛り上がったものです。鉄道のほうは実現しませんでしたが、でも明らかにそれをやってもペイするような気分の高揚がありました。
筆者は、深夜、高速道路のSAに立ち寄った経験はありませんでしたが、バブル期にはおそらく食事処の深夜営業もやっていたのではないでしょうか。でないと、トラックの運転手さんなど、困りますからね。

トラックといえば、SAでの売店が閉店になっていることにはさほど驚きませんでしたが、この時間帯、寄居も高坂も駐車スペースに何百台もの大型トラックでいっぱいになっていたことには衝撃を受けました。乗用車はまったくといっていいほど見当たりません。
売店がやっていないのに、広い駐車場がトラックで溢れている、これは運転手さんたちがここを仮眠のための場所にしているとしか考えられません。つまり、彼らが帰社してトラックを納め、帰宅してゆっくり休むだけの時間がほとんど与えられていないことを示しているでしょう。
つまり彼らは一つの仕事を終えると、ただちに別の仕事を命じられ、日本全国を休みなく走り回っているわけです。いわば「ホームレス・トラック」ともいうべき状態に置かれていることになります。

少し前にテレビで、トラック運転手さんたちの行動を、彼らに付き添ってルポする番組を見たことがあります。人手不足のため、荷揚げ、荷卸し作業も一人で行わなくてはならず、一つ納品が終わるとトンボ返りで別の荷主のところに向かう。これを休みなしに続けます。生活時間はめちゃくちゃになります。いつ寝るのかとの記者の質問に、「時々仮眠を取るしかないですね」と答えていました。少しでも納期に遅れると、荷主や届け先からクレームが来て、上司からも圧力がかかります。過酷極まる労働状態ですし、危険でもあります。
その事実は頭ではわかっていましたが、実際に壮観と言ってもいいあの光景に触れると、ああ、たいへんだな、とため息が出てきます。おそらくこれから起きて三々五々、深夜便に出発するのでしょう。彼らのほとんどは、食事もゆったりととる暇もなく、コンビニのおにぎりやハンバーガーショップのジャンクフードなどを車内で食べていると思われます。
トラック運転手の待遇は、以下の記事が参考になります。
https://toyokeizai.net/articles/-/365703?page=3

肝心なことは、この過酷さが、需要が多過ぎるために生まれているのではないという事実です。
この記事の前段にも出てきますが、90年の規制緩和で様相が一変し、競争市場になったため賃金低下が起き、過酷な条件に耐えられずやめていく人が多いので、結果的に慢性的な人手不足になっているということなのです。コロナで失職した人がこの業界に転身しても「3日ともたない」とも。

同じようなことは、看護師業界や介護士業界でも言えて、資格を持っているのに、労働条件の悪さのためにやめていく人が跡を絶ちません。その結果、常に人手不足に陥り、資格もなく言葉も満足に通じない移民労働者に頼るという悪循環に陥っています。ひどい場合には、福祉施設がホームレスを雇っていたなどという例さえあります。いつまでこんな悪循環が続くのでしょうか。

これは、特定の業界内の問題ではなく、政治問題です。
命や生活に直接かかわる大切な仕事に対して、政府が十分な財政的支援を行ってこなかったそのしわ寄せを、これらの現場労働者がもろに被っているのです。
政治家や官僚たちには、目先の利益追求や権力維持に汲々とするのではなく、もっと一般国民の生活実態について想像力を培ってもらいたい。そして誰の、どういう仕事によって自分たちの今が支えられているのかを、よくよく考えてもらわなくてはなりません。

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いわゆる「大阪都構想」は日本解体構想

2020年10月14日 19時50分01秒 | 政治


いわゆる「大阪都構想」についての住民投票が11月1日に行なわれます。
ご存知の方も多いかと思われますが、この住民投票は2回目です。5年前に一度行われて、否決されたにもかかわらず、維新は性懲りもなくまたやろうというのです。
前回は公明党が反対していたのですが、今回は、公明党議員の選出区に殴り込みをかけるぞと維新に脅されたため、それにビビッて賛成に回り、住民投票決行が議決されました。
法律用語に「一事不再議」という原則があります。一度議決された案件は再び審議することを許さないという原則ですね。維新は明白にこれに違反しています。

今回の住民投票に関しては、多くの反対議論がすでに出ています。元内閣官房参与の藤井聡氏、室伏政策研究所所長の室伏謙一氏らが活躍されるなかで、地元の方たちの反対運動も高まっています。去る11日には、関西の学者・研究者たちによる「大阪都構想」の危険性を明らかにするための記者会見が大阪市内で開かれました。その詳しい内容は、以下の報道で知ることができます。
https://www.chosyu-journal.jp/seijikeizai/18698
また23日には大阪で、藤井氏が中心になって、シンポジウム「大阪都構想の真実」が開かれます。
https://the-criterion.jp/info/2020oosaka/?fbclid=IwAR1ROlXRz4ciXBsL7i-33nZ5p_d67Z_deKAcChIeVeoDrtl1s2IMY081iT4
また、地方紙・長周新聞には、この「大阪都構想」以前、10年前から橋下徹が行なってきた大阪府・大阪市の行政改革がどんな問題点を生み出してきたかも含めて、この構想がいかにひどいものであるかが、具体的に詳しく報道されています。皆さん、ぜひ目を通してください。
https://www.chosyu-journal.jp/seijikeizai/18753?fbclid=IwAR1kcKGobV7u_5h5Lyy7UoIgVmADgLj20kj9odgnuJE5qDn5cdBItMCxCx8

大阪市民でもない筆者(横浜市民)がこれらに何か口出しする必要はないのかもしれません。しかし、この問題は、日本国全体にとって大きな危険をはらんでいます。とかく大阪という一地域、一自治体固有の問題と見られがちなために、全国的には(特に首都圏の住民には)関心の高まりがいまいちのようですが、これは他人事ではなく、これからの日本をどうしていくべきなのかにかかわる大きな問題なのです。
この「都構想=大阪市廃止構想」は、いろいろな意味で、いまの中央政府が取りつつある方向の、いわば雛形です。その思想がまったく一致しているのです。「行政の無駄を省く」「効率化を図る」という名目で、緊縮財政に固執し、福祉・教育・文化行政を削減し、水道など公共事業の民営化を推し進め、外資を自由に導入し、インバウンドと称してカジノを誘致し、補助金を切り捨てて「自助」「自己責任」にすべてをゆだねる――まさに安倍政権から菅政権へ引き継がれた、グローバリズム、構造改革、新自由主義路線そのものですね。
上記の記事の指摘の中で、最もひどいと感じたのが(ワーストを選ぶのも一苦労なのですが)、いま大阪市では、区役所の電話口、窓口に出るのがすべてあの竹中平蔵率いるパソナの非正規職員だという点です。質問しても答えられないので、「あなた、職員なの?」とこちらから聞くこともしばしばとか。このように、行政サービスのはなはだしい劣化が明らかとなっています。
またこの「都構想」では、小・中学校を含むさまざまな公共施設の統廃合や民営化がすでに実施されるか、計画に上るかしています。
アメリカでは、民営化路線に突っ走った結果、極端な貧富の格差が生じました。かの国では州によって刑務所まで民営化されているそうですが、営利目的で刑務所を運営したら、犯罪が増えるほど儲かるというシャレにもならない話になります。
維新がやっていることは、施策の基本線としてそういうことなのです。そしてもちろん、菅政権もそういう方向に日本をもって行こうとしています。

では、なぜ維新は、大阪市民を騙して、このような市民生活を破壊するような都構想なるものをぶち上げているのか。
これについては、先に掲げた、「関西の学者・研究者たちが行なった『大阪都構想』の危険性を明らかにするための記者会見」のなかで、神戸女学院大学教授・石川康宏氏の発言が多くを語ってくれています。氏によれば、橋下徹は2011年のダブル選挙で維新が勝った時、「次の衆院選は道州制選挙だ」と公言したそうです。また次の年に出した「維新八策」では「統治機構の作り直し」とあり、道州制の推進を明言しています。当時筆者もこの「維新八策」なる代物を批判したことがあるので、よく覚えています。
石川氏の言葉は続きます。

「大阪都」という発想は、道州制における関西州をつくるための一里塚として位置づけられている。2010年7月の大阪府自治政府研究会では、大阪市と府は役割分担が不明確だから、新しい自治体(大阪都)をつくり、さらに関西広域連合を作り、これらを合体させて関西州をつくるという構想が府の資料に出てくる。つまり、市民や府民のための構想ではなく、財界が喜ぶ国づくりに向けて、道州制を関西・大阪から作り出していくという一里塚に位置づけられている。だから平気で市のお金を府に吸い上げさせ、大きな広域経営体にしていく方向だ。こんなことはまともに市民に説明ができないから、説明会で「マルチ商法のようだ」といわれるやり方になる。こんなものにダマされてはいけない。

まことにその通りという他はありません。今回の住民投票に際しては、単に市民のためになるのかならないのかという視点だけではなく、こうしたより大きな視野の中で、維新が何をやろうとしているのかということも含めて考えなくてはなりません。

道州制は、大前研一らをイデオローグとして、経団連をはじめ関西の財界が長く主張してきたものです。経済活動にかかわる規制を撤廃し、国家統合を解体し、全国をいわば8つから10の自治州として互いに競わせれば、民間の自由度が高まり、産業も発展するという、幼稚きわまるバカみたいな政治理念です。中央政府は外交と軍事だけを担当する、いわば「小さな政府」の典型というわけです。
こんなことをすれば、ただでさえ東北地方や中国、四国地方など、スタートラインではるかに後れを取っている地方が競争に勝てるわけがありません。ますます引き離されて衰退していくでしょう。また、災害大国・日本で大災害が起きた場合、その救済や物資の供給で、州をまたいで連携を果たさなくてはならない時に、だれがどうやってその統合を図るのでしょうか。そのためのインフラは誰が整備するのでしょうか。長く続いてきた日本人としての共同体感覚を壊してしまって、自由競争至上主義の徹底でうまく行くと、維新及びその支持者たちは本当に思っているのでしょうか。さらに言えば、北海道が独立州になったら、虎視眈々とその領有を狙っている中共の思うつぼです。

安倍政権が押し進め、菅政権がそれをさらに拡大しつつあるグローバリズム路線は、デービッド・アトキンソンなる不良ガイジン(この前もこの言葉を使いましたが、何度でも使います)の入れ知恵によって、ついに日本の宝である中小企業潰しにまで手を伸ばそうとしています。
経済的なコロナ禍も、彼らにとっては国民生活救済の喫緊の課題としてではなく、むしろ国民を窮地に追い込む絶好のチャンスとしてしかとらえられていないのです。そう意図しているわけではないでしょうが、国家理念を喪失して権力維持に汲々としている今の中央政府がやっていることは、結果的にそうだと言われても反論できないでしょう。

維新の推進しようとしている「大阪都構想」は、国家破壊の急先鋒です。これを一自治体の問題として高見の見物をするのではなく、全国民が自分たちの問題として危機感を共有するのでなくてはなりません。


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絶望の中の希望を若者の中に

2020年09月30日 20時29分08秒 | 政治


勤務する大学で、ゼミを受け持っています。オンライン授業なので、毎週レポートを提出させる形式を採用しました。
秋学期が始まってから第1回目のレポート課題を、次のように出しました。

《あなたが住んでみたい国を一つ挙げ、なぜそう思うのか、その理由を述べなさい。自国でもかまいません。また住みたい国はないというのでもかまいません。その場合でも理由をつけること。字数600字以上。》

これまで、20名のうち、14名の学生から提出がありました。内訳は、日本人学生10名、アジア系留学生4名。
この結果を見ると、留学生の中に2人、日本を挙げた者がいます。
また日本人学生では、日本を挙げた者2名、住みたい国は特にないと答えた者2名。この後者では、やはり、結局は自分の国に住むのがいいという結論でした。
すると、14名中、6名が、住みたい国というイメージを持たず、日本に落ち着きたいと考えていることになります。
理由はだいたいご想像がつくでしょう。治安の良さ、暮らしの便利さ(たとえば自販機やコンビニの整備)、人々の礼儀正しさや親切さ、災害時の秩序を守る態度など。日本は世界の中でも特殊だと、的確な指摘をする学生もいました。なかなかすぐれたレポートでした。
留学生で、日本をべた褒めしている子がいるので、その子には、もう少し日本の悪いところも見てほしいと講評しておきました。しかしいずれにしても、日本の学生も含めて、彼らの指摘する日本の長所が、客観的に見ても的を射ていることは確かです。
「暮らしやすさ」という観点に関する限り、複雑な問題を抱える諸外国から見たら、日本はまだまだ「天国」のように映っているといっても過言ではありません。
もちろん、日本人のお花畑思考、お人好し、外交力のなさ、主体性のなさ、グローバリズムに侵蝕されている現状、内政のだらしなさとそれによる凋落ぶり、などを講釈する場所ではないので、講評では、そういうたぐいのことには触れませんでした。長所が同時に短所としてあらわれることにもなるというのが現実なのですが。

ところで、そんなに世界情勢を勉強しているはずもないのに、こうした学生たちの素朴な表現には、何となく世界の現状に対する直感が働いているのがうかがわれます。もっとも、サンプル数が少なすぎて、ここから直ちに結論を導き出そうとするのには、慎重を期すべきです。

ひところ、と言ってもそう遠くない過去に、他国と比較して、いまの日本の若者たちが海外に進出していこうとする積極性が欠けていることを指摘する論調が目立ちました。それは実際数字に表れている傾向ですから、間違ってはいないのですが、この傾向を単純に嘆かわしいこととしてとらえるのが正しいかどうかは、また別問題です。
もしかしたら、コロナの疫病としての被害が欧米諸国に比べて極端に少ない原因の一端にも、この「心理的鎖国」がほんのいくらかは関係しているかもしれません。

さて財界、政界、官界、学界の主流は、デフレ脱却、コロナ恐慌回避の大前提をすっかり忘れて、外資歓迎の規制緩和、構造改革路線、中小企業潰し、消費増税促進の空気に沸き立っています。菅政権になってから、その傾向がさらに露骨に出てきました。
政権交代という単なる「儀式」に過ぎないものが、空気をすっかり変えてしまいました。いま自民党の中枢部からは、第三次、第四次補正予算の必要を訴える声が聞こえてきません。今さらながら、「空気」というものの恐ろしさに戦慄します。
代わって、竹中平蔵という売国男がにわかに元気づいて、ベーシックインカム7万円というとんでもない国民殺しの政策を吹聴するかと思えば、デーヴィッド・アトキンソンという不良ガイジンが、菅義偉・無能総理にべったり張り付いて、中小企業360万社を160万社に減らせという日本破壊の音頭を取ろうとしています。その菅政権、支持率何と74%!
一方、党幹事長に留任した二階俊博は、民間の対中国利権の代弁者たるべく、相変わらず習近平閣下の国賓招請を画策している模様。

こうして奈落の底に落ちようとしている日本。
革命が起きてもおかしくない、と思うのは一部少数者だけで、実際にはマスクも取らずに過酷な状況に静かに耐えている大多数の日本人がいるだけです。そんななかで、ほとんどの若者たちは、政治経済はおろか、海外進出への意欲すら示さず、おとなしくバイトにいそしんでいます。

財政破綻危機の大ウソが功を奏して長い長い時が過ぎました。先日、私の親しい友人が、遅まきながら国債の返済不要性と銀行の信用創造の理屈を数人の知人に話してみたところ、だれもが「そんなバカな」と、聞く耳を持たなかったそうです。
この絶望的な状況の中で、私は苦し紛れにこういうことを考える――若者たちの意欲喪失による「心理的鎖国」状態は、ひょっとして、一つの希望をあらわしてはいまいか、と。
つまりこうです。
世代交代が進んで(もちろんいまの政府の中枢を占める売国男どもには引導が渡され)、内向き志向の若者たちが働き盛りの年代になれば、それがかえって内需の拡大にむすびつくのではないか、と。
この心理的鎖国状態をうまく活用すれば、ひょっとして現実的鎖国状態を作りだすことは不可能ではないのではないか、と。
もちろん現実的鎖国状態と言っても、それは程度問題です。
オール・オア・ナッシングがいいとは思いませんし、資源、食糧の安全保障で大きな危機を抱える日本が、他国に依存せずに自給自足経済を維持することなど不可能事中の不可能事です。
しかし、コロナや米中戦争でブロック化しつつある世界経済の現状は、ひょっとして(という言葉をすでに3回使ったのですが)、バランスある半自給自足状態を実現する糸口になるのかもしれません。
もしそうなら、いまの財界、政界、官界、学界に君臨するオヤジどもは、いつまでも新自由主義やグローバリズムのイデオロギーに金縛りになっていて、早晩、古臭いゾンビと化するのではないか。
あと20年後、30年後の日本は、意外と需給関係のバランスがとれた経済社会を実現できている可能性が無きにしも非ずです。
もちろん、そのためには、PB黒字化だの消費増税だの福祉破壊のBIだの中小企業潰しだのといった、日本国消滅の元凶をすべて取り払うべく、私たちが不断の努力を重ねて、若者世代のための露払いを行なっておかなくてはなりませんが。

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東京愛と愛国心とナショナリズム

2020年09月16日 23時51分01秒 | 思想


先日、当方が主宰している映画鑑賞会「シネクラブ黄昏」で、上映作品が比較的早く終わったので、そのあとの談話に花が咲きました。映画の感想にとどまらず、話がいろいろな方面に広がったのです。
上映作品は、オムニバス映画『世にも怪奇な物語』のフェリーニが監督した部分、「悪魔の首飾り」でした(この会では、毎回上映者を変えて、その人が思い入れのあるDVDを持ってくることになっています)。
フェリーニのローマに対する執着は相当なものなので、談話の中で上映者が「ローマやパリなど、首都をテーマにした作品はたくさんあるが、東京をテーマにした映画はほとんどない。面白い町なのだから、だれか作ってほしい」という見解を述べました。
そう言えば確かにそうです。私は少し考えてから、次のような意味のことを述べました。

それは、結局、東京に住んでいる人たちが東京を愛していないからではないか。東京という町は、浅草、日本橋など、江戸のコアの部分から、近代化に伴ってどんどん無原則にスプロールしていった。東北地方からは東東京に住民がなだれ込み、西からは西東京に住民がなだれ込んだ。その結果、へそのないメガロポリスに発展した代わりに、その圏内に池袋、新宿、渋谷、品川、吉祥寺、北千住など、いくつかの「部分都市」が誕生した。これらの「部分都市」の住民は、それぞれの町に対する愛着を持っているだろうが、東京全体に対して愛着感情を抱いているとは思えない。かつての江戸住民は落語などに表現されているように、江戸の町に対する愛着を確実に持っていたが、急速な近代化の過程で江戸情緒的な雰囲気は次々に壊されてしまった……。

すると、上映者の方が私の言葉に呼応して、「そう言えば、外国人観光客が東京に来ても、東京の伝統的部分に感心するんじゃなくて、自動販売機がどこにもあるとか、高速道路が一般市街地の上をまたいで通っているとかを面白がってるんですよね」と。
また誰かが、「やっぱり石造りの建築は何百年の歴史を持つけど、木や紙でできている日本建築はすぐ建て替えられますよね。地震も多いし。その代わり、パリなんかでは、電気・ガス・水道などの近代的インフラを古いアパルトマンに整備したりメンテナンスするのがたいへんで、故障しても修理してくれないのが当たり前なんですね」と。

これに付け加えて後から考えたことですが、やっぱり、「都市」というものの成り立ちが、ヨーロッパと日本ではまるで違います。よく言われることですが、ヨーロッパの都市はもともと城壁で囲まれていたので、市民には農村との間に確固たる境界の意識がありました。いわゆる「ポリス」ですね。都市住民の結束と愛着が強いのも歴史的な由来があると言えるでしょう。
これに対して、日本の都市は、ニワトリかタマゴかみたいな関係で発展してきていて、市が立てばそこに人が集まってくる。お寺があればそこを中心に商業地ができる。海運に適していれば港を作る。城下町にしても、町に城壁があるわけではありません。何となくそこに社会資本が集積していったというのが実情です。
おまけにあらゆる情報や流通機能が集中する現在の東京のようなメガロポリスになってしまっては、まことに便利このうえないとは言えても、いまさらそこに愛着のような情緒的なものを育てようとしても無理ではないでしょうか。

話を少し広げてみましょう。
私は日本滅亡の危機を常に訴えているナショナリストですが、「愛国心」という言葉が好きではない。かなり嫌いなほうに属する言葉です。愛国心が必要だとか、愛国心教育を、などと書いたことは一度もありません。そういう主張に意味を認めないのです。
それはネトウヨと名指されることを避けているからではありませんし、サヨク的な心情に呪縛されているからでもありません。
倫理の起源』という本に詳しく書いたのですが、この言葉は、そもそも概念があいまいです。
「国を愛する」とは? 巨大な社会システムと化したこの「共同幻想」に対して、女を愛するように熱い私情を差し向ける? どのようにすればいいのでしょうか。
ふつう、この言葉を好んで使う人々は、深い考えもなしに、日本人として国を愛するのは当然だろうとか、身近な人々への愛や郷土愛からだんだんその気持ちを広げていって国への愛にまで到達すればよいなどと漠然と思っているようです。
しかし、日本のような巨大な近代国家は、残念ながらそういう私情を受け入れてくれるほど単純には出来ていません。私情と巨大な近代国家との間には、連続性が認められないと言い換えてもよい。

これは、次のような例を考えればすぐわかります。
国家がやむをえず戦争を始めてしまった。大量の兵士が必要です。兵士たちには愛する妻子がいる。長く住んできた郷土にも愛着を持っている。しかし、戦場に赴くには、人や土地と別離しなくてはなりません。戦争を遂行する国家を憎むわけではないし、「おくにのために」喜んで戦う決意も人後に落ちない。
しかし事実として、人や土地との別離は避けがたい。つまりそこには越えられない切断線があり、それが彼の身体を引き裂くのです。
要するに愛という私情は、国への忠誠と根源的に矛盾するのです。このことは平和時でも言えて、企業社会や公共体での活動に精を出せば出すほど、家族への愛や倫理を実践することが困難になります。古くて新しい問題です。

愛国心という言葉を安易に使わないようにすることにして、ではどのように考えればよいでしょうか。
これは、ナショナリズムというカタカナ語を、私たちの頭や心の中でどう処理すればいいかという問題にかかわっています。
ナショナリズムという用語は多義的です。『大辞林』を引いてみましょう。
一つの文化的共同体(国家・民族など)が自己の統一・発展、他からの独立をめざす思想または運動。国家・民族の置かれている歴史的位置を反映して、国家主義、民族主義、国民主義などと訳される。
他の辞書やウィキだと、「国粋主義」も入れているようですが、これはあからさまな排外主義のニュアンスが強いので、外した方がいいでしょう。
ここでは、三つ目の「国民主義」を採用します。国民生活の安寧、豊かさ、幸福を第一に考える――私も先にナショナリストだと名乗りましたが、こういう意味合いでナショナリズムという言葉を理解すべきと確信しています。
で、こう理解すれば、すべての国民の安寧や豊かさを目指すという理念がそこに含まれますから、ナショナリズムに反対する日本人は、いないはずです。もちろん反日サヨク、コスモポリタン的リベラリスト、国家によって人権が保障されていることを自覚しない人権真理教信者、グローバリスト、ネオリベ、リバタリアンなどがうようよいますから、現実には、この理念はなかなか実現できないわけですが。

さて国民主義としてのナショナリズムを少しでも発展させることにとっての必要条件とは何でしょうか。
それはもとより「愛国心」というような感情的な概念ではありません。こんなに複雑化して、どこにその実在性があるのかわからなくなった超抽象的な幻想の存在に対して、「愛」などを差し向けることは不可能です。大方の日本国民も、そういう実感を持っているだろうと思います。国家の実在性(政府の実在性ではありません)が希薄にしか感じられなくなったということは、逆に言えば、人々の生活が極度に個人化・バラバラ化してしまったということでもあります。そうした社会構造上の事情があるところで、愛国心が必要だと百万回叫んでも、それは、戦争をなくしましょうと百万回叫ぶのと同じで、何の効果も生みません。

では、ナショナリズムを少しでも活かす必要条件とは。
第一に、国家の危機は当然、国民生活の危機としてあらわれますから、その危機の本質とは何か、危機を作りだしている主犯格は誰かを冷厳に見極める認識力が必要とされます。
第二に、その認識の力を少しでも活用させようとする意志の力が必要です。
第三に、その意志を共有して運動に発展させるための実践力(政治力、組織力)が必要です。
第四に、こうした運動は理解されないのが常ですから、挫折を経験してもめげない持続力が必要です。
目下の対象である国家に対処するには、こうした理性的な姿勢があくまでも要求されます。

教科書的な言い方になってしまいましたが、いまの日本国民には、さまざまな歴史的・社会的・民族的事情から、この四つがはなはだしく欠落しているように思えてなりません。
中央政府がどんなひどい過ちを犯していても、大多数の国民はそれを認識しようとしません。
また自分たちが政府からどんなに不当な仕打ちを受けていても、ほとんどの国民は、声をあげずに我慢しています。
もっとひどいことに、その政府を積極的に支持する国民がわんさかいます。
要するに、権力依存の習慣が染みついてしまっていて、主体的に考えよう、何かしようという気概をすっかりなくしているのです。

いまの日本はポンコツ車のようなものです。ポンコツ車を何とか修理してまともな状態に戻すには、何が必要でしょうか。
その車を愛してみても始まらないでしょう。むしろ、どういう高度な技術が要るのかという、機能的な対応こそが求められているのです。

初めに、東京都民は東京を愛していない、それが東京をテーマにした良い映画ができない理由だ、そしてそこには都市成立に関わるそれなりの歴史的事情があると述べました。日本全体に関しても同じことが言えます。
元気・やる気・公共精神を喪失した日本人。事態に悲憤慷慨する前に、なぜ日本人がそうなってしまったのか、そこに焦点を合わせて、多方面から考察することが先決です。
菅義偉という何もわかってない人が総理の座についたひどい政局劇の直後に、言っても無駄かもしれないと思いつつ、ごく基本的なことを書きました。


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「集団免疫獲得説」噺

2020年09月15日 00時03分25秒 | 文学


【ブログ管理人前口上】みなさま、本日は小浜席亭へようこそお出で下さいました。新型コロナウイルス感染予防のため、座席はソーシャルディスタンスを確保し、一席ずつ空きを取っております。また会場内では、必ずマスクをご着用ください。大きな声での会話はお慎みください。掛け声はご遠慮願います。笑いたくなっても極力我慢していただき、どうしても我慢できない時は、できるだけ声を低めてお笑いくださるようお願い申し上げます。また、お帰りの際には、順にご退席いただくようご案内いたしますので、ご着席のままお待ちください。みなさまにはいろいろとご迷惑をおかけいたしますが、ご協力のほど、よろしくお願い申し上げます。それでは、最後までどうぞごゆっくりお楽しみください。
          
                         賽子亭薮八(さいころていやぶはち)

 落語には「地噺」と呼ばれるジャンルがあり、八つぁん熊さんのやりとりではなく、噺家独り語りの与太話で、形は漫談と同じだけれども、おそらく枕の発展型ではないかと思われる。四代目鈴々舎馬風の得意芸で、遠い昔、ラジオで聴いた。風刺の効いた際どい毒舌に人気があり、子どもの私に風刺がピンときたかどうかは怪しいが、けっこう楽しみに聴いて、その口舌は少し覚えている。

 藪八:
てなわけで四代目馬風師匠の前座として、賽子亭の与太話にしばしのおつきあいのほどを。
 小浜席亭のブログで上久保靖彦先生の集団免疫獲得説が話題になっとりやすね。あたくしも感染症やウイルス学は畑違いでズブの素人。さりながら、ヤブの薮八とはいえ、エッヘン、それがしも医者の端くれ。端くれもうんと端っこの端くれとは申せ、素人にちょっぴり毛が生えておりやす。ま、オバQの頭のテッペンくらいの毛で、威張れる代物じゃありやせんが・・・。そいつを頼りにコロナの一席。
上久保先生の出発点は「ウイルスの干渉(競合)」で、これは「インフルエンザに罹ったと思ったら風邪まで引いちまったぜ、ハックション!」てことが、なぜか起きねえ。その説明をするもんです。インフルが重いんで風邪は紛れちまうてぇわけじゃなくて、一つの細胞組織に二種以上のウイルスは住めねぇのがウイルス界の掟。国で言や「領土問題」。ヤーさんで言えば「縄張り問題」。複数種のウイルスが同じ細胞組織に侵入すると競い合いになって、勝ったウイルスだけがその組織で増殖できる。だからインフルと風邪とを同時に患う心配は無用。これが「ウイルスの干渉」。
さて上久保先生は、冬にぐっと増え春にぐっと減るパターンを毎年繰り返すンフルエンザが、今年に限って、例年ならピークの1月に逆に急減した事実に目をつけたんすね。これは不思議、一体、何があった? 
あたくしの灰色の脳細胞は、この急減を一目見て、インフルエンザに対する「ロックダウン」が秘密裏に行われたに違いねえと睨みやしたね。秘密の三密。何せ、インフルは怖い。日本だけでも2017年に2566人、18年に3329人、19年には3412人も死んでおりやす。新型コロナはワクチンも治療薬もないからヤバイと皆さん口を揃えますが、インフルはワクチンや治療薬があってこの数字。ヤバかありやせんか。インフルも重症化すればICUのお世話になりやすし、病状次第ではECMOも使うに違えありやせん。コロナに周章てて首相が「学校ぜんぶ休みにせい!」とお達しする以前から、インフルでの学級閉鎖や学校閉鎖が繰り返されておりやした。
ただねぇ、こいつについちゃ、やれ有名人の某がインフルに罹った、やれ今日は何人インフルで死んだ、本日のインフル感染者数とか、いちいちご親切に報じてくれるメディアがなかったんで、日本中「知らぬが仏」だっただけのこってすね。このあんまりの差別にインフルウイルスは「不公平だ! 偏向報道だ! 新顔のコロナばっかりに目を掛けやがって!」と怒っとりやすよ。
てなわけで、3年続きのインフル流行にも、年々増えるインフル死者数にも無関心なマスコミや世間に、「このままじゃヤバイ!」「もう当てにせんわい!」と、誰が号令するでもなく黙って三密回避を始める日本人が出てきて、それがインフル急減させたに違えねえ。え? 「そんな話きいたことない、そんなことした覚えない」とおっしゃるんで? ふむ、そこがそれ「黙って秘かに」なされた証しでさ。メディアやネットで騒ぐばかしが日本人じゃありやせん。不言実行。男は黙ってサッポロビール。奥ゆかしいなあ。
ところが上久保先生のお説は、こうなんすね。日本には昨年末から1月にかけて中国からすでに初期の新型コロナが渡ってきて、それがインフルとの間で「ウイルスの干渉」を起こした。インフル急減が起きたのはそのせい、と。ふーむ。わが「秘密裏のロックダウン説」は、なんせ「秘密裏」ですから証拠が無え。エビデンスがないのがエビデンスじゃあね・・・。インフルフル急減の説明としちゃ、ウイルス干渉説のほうが何やら科学的ですなぁ。
しかし、御説鵜呑みも癪なんで、ちょいと屁理屈をこねやす。「ウイルスの干渉」たあ、要は椅子取りゲーム、侵入口となる細胞レセプターの奪い合いで、問題は何が勝敗を決めるかすね。早いもん勝ちだったり、大量動員したもん勝ちだったり、ウイルスによってレセプター侵入力に優劣があったり、勝利の方程式は複雑なんでしょうな。インフルがわが世の春とばかりに、いや、わが世の冬とばかりにのさばっていた日本国に初期新型コロナが襲来、驕るインフルに待ったをかけたちゅうのが、上久保先生の干渉説。でも、インフルは急減したもののすぐ新型コロナの流行が始まったわけじゃない。勝利の方程式は複雑で、コロナ圧勝とはいかずインフルの足を引っ張るのが精一杯だったのか、双方譲らず相打ち共倒れになったのか。
なぜ、すぐコロナ流行が起きなかったか。ここが上久保説のミソで、干渉を起こした初期新型コロナは、感染力に比して病原力は弱かったからだ、と。現在の新型コロナも感染者の8割は無発病か軽症ですから、これは十分考えられやす。だから、感染しても発病しなかったり「おや、風邪かな」で済んだりで、誰もコロナ襲来には気付かなんだ。気付かねば、「ロックダウン」だ「三密」だ「マスク」だの言い出す者もいやせんね。渡航制限もなし。こうなりゃ、遠慮なく感染は拡がりますよねぇ。「病気」として表面化しないだけで、水面下で「感染」がどんどん拡がる。免疫は感染によって得られるんで、この見えねえ新型コロナの感染拡大に合わせて、このコロナに免疫を獲得する者も知らぬ間に急増。これが上久保説ですな。人工的に無害な感染を起こして免疫をつけるのがワクチンなら、こいつはいわば天然自然のワクチン接種。
ところが武漢で流行ったのは、上久保先生によればその変異型(g型)の新型コロナだった。こっちは病原性が高く、当初の隠蔽もわざわいして、武漢にパンデミックをもたらし、このウイルスが欧米に渡って多数の死者を生みだし、グローバルなコロナパニックに火をつけた。ところが、その欧米に比べ、日本の死者数は現時点では去年のインフル死者にも遠く及ばないほど少ない。初期型コロナの水面下の流行によって多数がすでに免疫を獲得しており、それが変異型の新型コロナにも有効だったからだと先生は仰いやす。
社会内でその伝染病に免疫をもつ人口比が一定以上になれば、感染がネズミ算的に拡がることはなくなり、パンデミックの心配は消える。これが「集団免疫」で、日本はこの域に達しとるちゅうのが、先生の主張すね。ラッキー、ああ、よかった! それに対して、欧米は早々と渡航制限、ロックダウンを徹底したのが裏目になって、初期コロナによる「天然自然のワクチン」接種を経ることなく、いきなり変異型のウイルスを迎え撃つ羽目に。アンラッキー!
以上が、頭のテッペンの毛が三本でキャッチした上久保説の骨子でして。先生は初期コロナをs型とk型に分けてもうちょい話をややこしくしとりますが、これはインフルの流行曲線に落ち込みが二か所あるためでしょうな。このようにマスとしての病気の動きを数理的・統計的に解析するってぇのは、疫学研究でよく使われる手。ただ、s型、k型、g型の検証となりゃ、各時期のウイルスの物質構造の緻密な解明が必要で、その道の技術をもつ専門家を待つほかありやせんなあ。理論物理と実験物理みてぇな関係。
あたくしが上久保説にいちゃもんつけるとすれば、日本人に免疫をもたらした初期の新型コロナが中国生まれで中国からの渡来なら、中国でもその水面下の大流行が起きて大勢に免疫が獲得されていたはずではないかという疑問でしょうなあ。このへん釈然といたしやせん。
ついでに言やあ、集団免疫ができたとは、感染爆発やパンデミックの心配がなくなったってぇことで、個々の人がコロナになる心配が消えたってぇこっちゃありやせん。免疫をまだ得てない人口の何割かは感染のチャンスも発病のリスクも幾らでもありやす。「集団免疫があるから」マスクもソーシャルディスタンスも不要っていう先生のご託宣は、大きな誤解を招きやすね。同じ理由で「感染者がまだ毎日でてるじゃねぇか」てぇのも、集団免疫獲得説への反論・反証になりやせん。
さて、毛が生えた程度の医学談義、お粗末な前座噺はこの辺で。お後はいよいよ真打ち、馬風師匠のご登場を。

                 *

馬風:
おう、よく来たな。このコロナ渦中で。よっぽど感染が怖くねぇ命知らずめ。自粛で仕事なくなっちまって、どうせ行くとこねえんだろ。ま、カップ片手にソファにくつろいでステイホームしとる優雅なお方は、寄席なんぞに来なさらねえよな。『デカメロン』も黒死病蔓延の巷を逃げて別荘にステイホーム、艶笑譚に興じていられる特権的な方々のお話よ。ステイホームなんて横文字の居場所なんぞ、わしらにはねえんだ。ハチミツだかサンミツだか知らねえが、このとおり寄席もがらがらだ。来てくれてありがとう。
ステイホームと言やあ、そんなもんいらんっていう、あの上久保先生のナントカ説。理屈が難し過ぎらあ。カミクボ先生、もうちょいカミクでえて説明してくだせえよ。ま、理屈なんかどうでもいいんだ。あの御説がけっこう受けてるのは、自粛やら三密禁止やらソーシャルディスタンスやらに、あたしらみんな、内心、イヤになっちゃってるせいじゃありやせんかい。ああ、やんなっちゃった。ああああ、驚いたって。やってられっか、こんなこと! おっと(見まわして)・・・でえじょうぶ、でえじょうぶ、ほとんど誰もいねえな。こんならネットで叩かれる心配はあるめえ。客がいなくて喜んでどうする。ま、こんなふうに気を遣わにゃなんねえ空気が情けねえ・・・。さあ、ここなら気兼ねはいらねえ、お客さんも大声でどうぞ。パチンコいきてえ! 飲み屋にどっと繰り込みてえ! 行楽に行きてえ! どうせいくなら賑やかなとこ行きてえ! 歌舞伎町のどこが悪い! 寄席は大入りじゃなきゃ寄席じゃねえ!
国民の生命が優先か、国の経済が優先かみてぇな大上段の議論は、あたしにゃどうでもいいんで。パチンコいったり飲みにいったりのふつうの暮らし、ふつうの楽しみがなくって、何が生命、何が経済でぇ。マスクして高座あがって何が落語でぇ。
いやあ、こいつは、この「非常時」にあたしのワガママ、自己チュウですかねえ・・・。どーもすいません。三平だね。反省。いやいや、そうたぁ言い切れねえ。あたしらの心の底には、ロックダウンだの自粛だのステイホームだの、ホンマに役に立つんかい?って疑惑がヒソカに頭もたげちゃいやせんか。上久保先生の話は、小難しい理屈はともかく、その疑惑の琴線に触れてくるんじゃありやせんか。だって、あんだけ泡食って国民あげて自粛しあって、「やったぜ、頑張ったぜ」「日本モデル」とか自画自賛したのは一瞬のマボロシ。緊急事態宣言解除したらみるみる感染拡大。元の木阿弥。一体あたしらは何を頑張ってきたんだ? あの自粛、なんだった? と疑わねぇほうがおかしいや。
ど素人の頭で考えても、おかしいだろ。自粛してみんな引きこもっておりゃ、そのうちにコロナウイルス、「日本人ちとも出てこないあるね。来た甲斐ないあるね。国に帰るあるね」と中国に引っ返してくれるんかい? 感染先に窮してウイルス野郎みんなホームレスになって、そのまま野垂れ死んでくれるんかい? ホームレスになりそうなのは、こちとらだ。解除早すぎたとか、また緊急事態宣言せよとか、自粛守らん奴には罰則をとか言うんなら、何年何月何日まで自粛続ければウイルスどもが消えちまうのか、そいつを責任もって言ってくれ。
いくら自粛したって消えちまわねぇだろな、きっと。上久保先生の話からあたしの頭でも分かるのは、メンエキってもんが出来ねえかぎり、感染は起きるってこった。だが、感染しねえかぎり、メンエキってもんは出来ねえ、と。ややこしいこったなあ。あたしゃ、酒がなきゃあ働く気になれねえが、働かなきゃあ酒が買えねえ。や、これは違うか。自粛しとれば、確かに感染はしねぇが、代わりにメンエキもできねぇ。だから自粛やめたとたん、またぞろ感染が増えるのは当たり前の話じゃねえか。第二波もへったくれもあるかい。
感染の増加ってぇのは、メンエキの増加で、長い目で見りゃだんだんコロナ発病減ってくってこっちゃありやせんか、めでてぇ、めでてぇ。え? 感染して死ぬ者もいるんだ、「めでてえ」なんてもってのほかって。どーもすいません。また三平だね。人の命は何より大事、感染なんて万が一にもあっちゃなんねえ。それもご尤もなご意見だが、去年インフル感染で大層な数の高齢者が亡くなっても、そのときゃ誰もそんなこと言わんかった。そこが、わけ分からねえ。
あたしみてぇなよいよい爺さんはいいやね。どっちみち長ぇことねえからな。若えもんが可哀想だ。若くて元気だから感染しても滅多にゃ発病しねえ、しても大概軽く済む。遊びてぇ盛りだ、もっと遊ばせればいいじゃねえか。働き盛りだ、もっと仕事させればいいじゃねえか。ところが、若えもんが外に出りゃコロナ拾って帰ってきて、本人は発病しねえとしても、そのコロナが高齢者に感染する。だから、若者よ、高齢者を護るため外に出るな、とのたまう。いつから日本は敬老精神溢れるお国になったんだ。だったらあたしの老齢年金、もうちっとは上げてくれ。
誰がのたまっているかと思やあ、中高年のエライさんじゃねえか。元気な若者への焼き餅か、巻き添えで手前がコロナに罹るのがイヤなんだ。ロックダウン、自粛、ステイホーム。どれをとっても、それをしたってとうぶん困らねぇ金のある年寄りの生き延び策に違えねえ。たんと長生きするがいいさ。金のねえ若者こそ災難だ。明日の釜の蓋は開くのかい?
商売もおんなじだ。このぼろい寄席小屋はもうもたねぇよ。今宵が最後か。ひい、ふう、みい・・・お客さんは四ったりだ。来てくれてありがとうよ。寄席の向かいの蕎麦屋。爺さん婆さんふたりで細々やってる旨い店だが、たたむってよ。あのふたり、これからどうやって食ってくんだ。敬老精神よろしくな。個人のちっぽけな、でも味のある店や仕事がどんどん潰れていく。いやさ、潰されていく。このコロナ騒ぎで世界中そうなってくんだろうなあ。ロックダウンや自粛にも生き残り、焼け太るのは、エゲツねえグローバルな大資本ばっかりだ。いずれ、コロナ不況からV字回復するにはこれしかねぇとか言って、そいつらをどんどん受け入れてくことになるだろうよ。何もかも巻き上げられちまわあ。この寄席も蕎麦屋の跡地も、この懐かしい街界隈、ひとまとめに買い叩かれて、ローラーで押し潰されて、そこにおっ建つのは中国資本やラスベガス資本のド派手なカジノか。やったあたしに言わせりゃ、博打、賭け事なんざ隠れてやってこそ味わいがあらぁ、どっかの検事長さんもそうだったじゃねぇか。情けねえ。落語がこんな愚痴になっちゃおしめえだ、お後がよろしいようで。いや、もう後はねえかも・・・友よ、サラバ。


安藤裕衆議院議員を自民党総裁に

2020年09月02日 23時33分47秒 | 政治


日ごろ筆者は、「政治評論家」と称する人々をあまり信用していません。
政局の変化に応じて個々の政治家や派閥の動向を、競馬の予想屋のようにああだこうだとマスコミで語りますが、その知識は競馬場や厩舎の周りをうろうろするところから得てきたもので、日本のこれからにとってどんな政策をとるべきかといった肝心な問題について真剣に議論しようとする姿勢がないからです。
すべてを信用しないと言っては、少数の立派な人に失礼ですから、「概して」と断っておきましょう。

さて8月28日に安倍首相が辞意を表明し、新しい自民党総裁が9月14日に選出されることになりました。菅、岸田、石破の三氏が出馬表明をし、当選者の予想や、ポスト安倍の政策運営をだれだれはどうするといったにぎやかな「政治評論家」的議論が交わされています。そんなに大騒ぎすることかなと筆者などは思うのですが、国民の多くも冷ややかに見ているだけではないでしょうか。
安倍路線を引き継ぐにしろ、少しばかり新機軸を示すにしろ、彼らにこの沈みゆく難破船「日本丸」を劇的に救い出すことなどできるはずがありません。なぜなら、安倍首相一人が辞めても、彼を取り巻いてきた、竹中平蔵に代表される諮問機関の委員たち、経団連、経済同友会などグローバリズム企業の代表機関、それに財務省、さらにその向こうにアメリカや中国の「日本食い」勢力などががっちり包囲網を固めているからです。

今さら去りゆく安倍政権の負の「レガシー」をあげつらってみても仕方がありませんが、現在の日本丸がどういう惨憺たる状況にあるかをおさらいするためには、少しは意味があるかもしれません。

ここに、三橋貴明氏が安倍政権の「負のレガシー」を手際よくまとめた一覧がありますので、少しだけアレンジして借用いたします。
https://38news.jp/economy/16605
●緊縮財政系:
・プライマリーバランス黒字化目標堅持。
・新規国債発行減額。
・二度の消費税増税。
・公共投資、地方交付税交付金、科学技術予算、教育支出、防衛費、防災費、診療報酬、介護報酬など
の抑制と削減。
・公共病院統廃合と病床の削減。
・国民の社会保障負担の引き上げ。

●規制緩和系:
・派遣拡大、残業代ゼロ制度。
・混合診療拡大。
・水道民営化。
・非正規公務員割合の拡大
・モンサント社(現バイエル)の農薬グリホサートの安全基準引き上げ
・種子法廃止(種苗法改定法案も閣議決定)
・農協改革、農地法や農業委員会法の改定。
・漁業法改定。
・国家戦略特区にてグローバリズム政策を実行。
・電力自由化。
・民泊拡大や白タク解禁の検討、シェアリング・エコノミー推進。
・IR法(カジノ解禁)。
・法人税減税。

●自由貿易系:
・TPP、日米FTA、日欧EPAなどの自由貿易協定。
・移民受け入れ拡大。
・インバウンド依存推進のためのビザ緩和。
・外国人の土地購入推進。

いやはや偉大なレガシーですね!
これだけ国民を苦しめる政策を一貫して取り続けた政権は、歴史にその名を刻まれて「名誉ある地位」を占めるでしょう。
その結果、何が起きたかも見ておきましょう。
・25年続くデフレの継続・悪化
・実質賃金:マイナス15%
・2019年10~12月期におけるGDP:前期比年率マイナス7.1%
・2020年1~3月期におけるGDP:前期比年率マイナス2.2%
・民間最終消費支出2014年4~6月期:前期比マイナス4.8%
・民間最終消費支出2019年10~12月期:前期比マイナス2.9%
・鉱工業生産指数2014年消費増税時:前期比マイナス4.9%
・鉱工業生産指数2019年消費増税時:前期比マイナス9.1%(東日本大震災時よりも悪化)
・民間設備投資2019年消費増税時:前期比マイナス4.7%
・世帯収入中央値:95年550万円から、2017年には423万円に
・2017年世帯所得分布:年収100万円台~300万円台が41%に
・ワーキングプア:96年の800万人から安倍内閣発足後1100万人を突破し、以後高止まり。
・生活保護世帯数:97年(63万世帯)以降激増し、2014年160万世帯を突破、以後高止まり。
・金融資産ゼロ世帯割合:95年に8%、以後急増し、2012年に30%を突破、以後高止まり。
・非正規労働者割合:2014年に37%を突破、以後高止まり。
・非正規労働者の平均賃金:正規労働者の65%(2018年)、地方公務員は三分の一未満。
・子ども食堂:2012年ごろ開設。2016年319か所、2019年3700か所。

というわけで、「一億総活躍」してきたわけでございます。
そこにコロナがやってきて、2020年4~6月期GDP前期比年率マイナス28.1%という仕儀に至りました。
上記総裁候補のだれも消費税に手を触れようとしませんし、仮に触れたとしても、期間を1年に限って2%の減税がせいぜいのところでしょう。これでは、景気回復効果はゼロに等しく、財務省やそのまわりをうろつくゴロ学者、マスゴミどもに「ほら、減税してもやっぱり効果がなかったじゃないか。さあ、これからはコロナ税で取り返さなくっちゃ」という口実を与えてしまいます。池上彰センセイ、万歳。おまけに、「財政出動、緊急時だからこそこれだけやってあげたんだぞ」とばかり、再び「財政健全化」に勢いづくこと疑いなしです。

さて、どうしましょう。
安藤裕衆議院議員が代表を務める自民党の議員連盟「日本の未来を考える勉強会」では、コロナ以前から消費税ゼロ、大胆な財政出動を主張してきました。このたび、ひどい経済的なコロナ禍から少しでも回復方向に舵を切るために、第二次補正予算の成立に獅子奮迅の働きを示したのはこのグループです。もちろん、まだまだこんなものでは足りません。第三次、第四次が必要でしょう。
そのため安藤グループは、消費税の廃止、休業を余儀なくされた経営者への100%粗利補償、真水100兆円の国債発行など、真に実効性のある政策を提言しています。
野党勢力も含めて、いまの政界の中で、このグループと西田昌司参議院議員以外、まともな提言を掲げている勢力はいません。彼らを応援し、安藤代表に14日の総裁選に立候補してもらう――これが現在考えられる唯一希望の持てる選択です。
安藤グループは、インフレ率の制約さえ守れば、政府がいくら財政出動をしても一向に困らないという事実を理解している数少ない人たちです。窮乏化した国民を救い日本の経済を立ち直らせることこそは、国家の役割です。この人たちは、そのために財源など気にする必要がないことを、理論的根拠をもってしっかりと認識しているのです。
もちろん、諸般の事情から見て、上記の政策提言が、そのまますんなり通るのは至難の業でしょう。また安藤代表はまだ三回生で、上層部を占める支配勢力が、その言い分を素直に聞くとも考えられません。しかし、これ以外に日本の危機を救う道が考えられないのだとすれば、この際、少なくとも一つの重要なステップとして、安藤氏に立候補してもらい、その存在感を内外に印象付けることには、大きな意義があるのではないでしょうか。ほとんど安藤氏や参議院議員の西田昌司氏だけが、現職の有力国会議員の中で、与党という有利な立場にいつつ、しかも正しい主張をしているのですから。

仮に万一、安藤氏が総理大臣になったとしても、先に述べたような強大な勢力に阻まれて、何もできないで終わってしまうのではないか――こういった悲観論を言う人もいます。もっともな意見と思います。もしかしたらそうかもしれません。しかし、スタートラインの前でこのまま足踏みし続けていたのでは、日本丸はブクブクと沈没を進行させていくだけです。やってみなければわかりません。
総裁選告知日は8日です。筆者は、この数日の間に安藤氏が立候補の届け出をしてくれることを、切に期待して已まない者です。
「絶望の虚妄なることは、まさに希望と相同じい」(魯迅)

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食文化研究家からのお手紙

2020年08月24日 23時58分47秒 | 歴史

京都のお菓子・水無月(旧暦6月の晦日に夏バテを避ける祈りを込めて食べたそうです)

前々回の記事『第2波は来たか』を何人かの人たちにお送りしたところ、食文化研究家の河田容英(やすひで)さんから、うれしいお返事をいただきました。河田さんは日本の歴史にたいへん詳しく、当方主催の「思想塾・日曜会」にもたびたび参加していただいております。そこで、今回、ご本人の了解を得て、以下に全文を転載することにいたしました。
このお返事にはまた、映画監督・伊丹万作(伊丹十三の父)が書いた「戦争責任者の問題」という、きわめて優れたエッセイが紹介されています。ブログ管理者としては、このエッセイをぜひできるだけ多くの方に読んでいただきたいという思いもあります。
また河田さんは、「美味求眞」というメルマガに、最近「夏越の祓」という論稿を寄稿されています。
https://bimikyushin.com/chapter_1/01_ref/harae.html

これはいまに伝わる「茅の輪くぐり」の由緒などを紹介した味わい深い文章ですが、この中で彼は、平安時代の疫病の時に人々がどうふるまったかについて詳しく触れています。


**********************

小浜さま

河田です。
ブログ読ませて頂き、改めてコロナ対策や報道に対する違和感のモヤモヤが何かがはっきり出来ました。
特にマスクに関しては以前から同じようなことを感じておりまして
伊丹万作の書いた「戦争責任者の問題」という短いエッセイを、
今この時期に、ぜひ小浜さんにも読んで頂きたいと思っています。
https://www.aozora.gr.jp/cards/000231/files/43873_23111.html

ご存じのように伊丹万作は映画監督で、伊丹十三の父親です。ということは大江健三郎の義理の父でもある。
この「戦争責任者の問題」で面白いのは、かつての戦争責任者が誰だったのかという話のなかで
戦時中にゲートルを巻き戦闘帽を被らずに外出すると厳しく批判する者がどこにでもいたとする指摘です。
これはコロナ時代におけるマスク着用を他人に強要する自粛警察と呼ばれる人々にも通底します。
そいう意味でわたしは、伊丹万作の書いた「戦争責任者の問題」を
「コロナ責任者の問題」としても読み代えることも可能ではないかと考えています。
まさに全体主義への警鐘が必要です。


そしてもうひとつ。
現在、私は過去の疫病流行の事例を調べていまして
『本朝世紀』の994年(正暦5年)に悪疫が流行した記録を見ています。

4月8日には「京の市中で病が流行し始め、路上に多くの人々が行き倒れて絶えなかった」とか

4月16日には「左京の三条大路と油小路の交差する辻から西入るところに湧いている小さな井戸があったこと。
その井戸からは通常であれば濁っていてとても飲めないような水なのに、これを飲むと疫病を免れると言って、
都の人々は男も女も貴人も庶民もこぞって水を汲み、それを桶や壷、タライや水差しに貯めておいた」とあります。

疫病が流行り、デマが広がって多くの人々がそれを信じたあたりは
現代のコロナで、多くの人々がマスクやトイレットペーパーを買占めたり、
大阪知事の会見を受けて、イソジンなどの苦い水をこぞって買い占めている様となんら変わりがありません。
日本人は千年前となんら進歩していないとも言えます。

6月10日の記事には「疫神が洛中を横行するという流言があり、家々は門を閉ざしたこと。
さらには全ての者が勤めを中止した」とあります。

仍或恐奇夢閉門。或稱物怪不仕。如此之間。上下無勤。

正に現代で言うところのソーシャル・ディスタンスとロックダウンが行われたことが
読み取れるのですが、疫神の横行のようなデマに右往左往する様子は、現代人となんら変わるところがありません。


千年前の疫病、太平洋戦争の時代と言い、どうも日本人が経験してきたことは
何ら現代にフィードバックされておらず、その都度、その都度の場当たり的な対処であることも
コロナに対する、一貫性の無さや、過度に恐れるように煽ることにも反映されているように思います。


今回の正確なデータの読み方に裏付けされた小浜さんのブログでスッキリしました。
ありがとうございました。

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前回記事の上久保靖彦説の要約

2020年08月21日 14時11分39秒 | 社会評論
以下に掲げるのは、前回の記事「第2波は来たか」の付録です。前回記事の中で、松田学氏による上久保靖彦教授の説(「日本人はすでに集団免疫が獲得できている」)の紹介動画をURLのみ記載しておきました。
https://www.youtube.com/watch?v=ajWWHBem-r0&fbclid=IwAR2dOCBCY1Wxh_0FL24zS4W1aBaY8birz8cYao-NGR6eHfzCoTDWXmpLh7E
このほど、ある方からこの動画記事の詳しい要約が寄せられました。たいへん正確で遺漏のないものなので、ここにコピペさせていただきます。
なお前回記事の中に、「コロナ感染者が死亡した場合、死因をコロナとせよとの厚労省の通達があったという情報がある」と書かれていますが、そのソースは、この動画記事でした。Q&Aの部分を読むともっと正確な形で出てきます。




上久保靖彦 京都大学大学院教授によるデータ分析から判明した事実

<コロナウイルスとインフルエンザウイルスは逆相関の関係にある(疫学調査の結果)>

 ・インフルエンザが流行すると免疫ができるのでコロナにかかりにくくなる

 ・コロナにかかると逆に免疫物質ができてインフルエンザにかかりにくくなる

 ・日本のインフルエンザ流行曲線をみると、1月のある時点から不自然な減り方(急激な減り方)をしている。
このときに新型コロナウイルスK型が日本に入ったのではないかと思われる。

<新型コロナウイルスはスパイク部分(突起の所)の形によってS型 K型 G型に分けられる>

 ・新型コロナウイルスは、突起の部分で人間の細胞にある受容体と結合して感染するが、この突起の部分が変異して、現在S型、K型、G型の3つがある

 ・日本が新型コロナウイルスとどのように関わってきたか、経緯

  2019年12月~ 
  弱毒性の先祖型であるS型が中国で発生し、日本に入ってくると共に世界に拡散

  2020年1月13日~3月8日
  S型が変異したK型が中国人観光客を介して日本に流入、この時点で集団免疫が成立(人口比率で55%免疫獲得 T細胞免疫)
  台湾やベトナムといった中国の周辺国も日本と似たような状況で死者数が非常に少ない

  ※欧米は2月はじめに中国からの入国を全面規制シャットアウトしているので、K型による集団免疫は獲得できていない

  2020年~
  K型が変異したG型(武漢型が上海で変異したのが欧米型)が襲来。すでに強力なT細胞免疫を獲得していた日本ではT細胞免疫によって武漢型・欧米型共に撃退に成功

  ※欧米はK型が流入しなかったのでT細胞免疫ができていなかった。S型のみでK型の暴露がなかったせいでAED(抗体依存性感染増強)が生じ、G型ウイルスを強化・増強して劇症化・感染拡大を起こしてしまった

  G型が集団免疫獲得に至るには人口比率85%が感染する必要があるが、日本の場合、すでに4月の時点で達成されているものとみられる。

  今後、G型が変異したY型、H型が流行する可能性があるが、獲得したG型の免疫を維持するため、免疫を獲得できている者についてはむしろウイルスに曝され続ける方がよい

<免疫とは、自然免疫と獲得免疫がある。獲得免疫にはT細胞免疫と液性免疫がある>

 ・新型コロナウイルスの免疫で重要なのはT細胞免疫だが、現在行われている検査ではB細胞免疫が評価されているだけ

 ・現在、T細胞免疫の状態を調べる検査キットを開発中

<Q&A>

Q:中国ではS、K、Gと順序良く感染してるにもかかわらず、武漢G型で大爆発したのはなぜか?

A:発生地の武漢にかぎってはS、K、Gが時間差無くほぼ同時に発生。SやKでめんえきを獲得する時間がなかったことによるものと思われる

Q:変異したウイルスは6000種もあるっていうけど?

A:人間の細胞の受容体と結合して取り付くための突起部分の変異が重要で、その突起部分の形がS型、K型、G型の3種あると言う話。Gの後もI型H型と変異は続くが、だいたいH型で終わる。意味のある変異は1年くらいで終わる。

Q:集団免疫戦略(わざとウイルスに曝されて免疫を獲得する)をとったスウェーデンは大失敗だったじゃないか

A:世界のリスクマップをみるとスウェーデンはリスクの高い国なので集団免疫戦略はやるべきではなかった。むしろ、周辺のノルウェーやフィンランドで集団免疫戦略をやるべきだった

Q:コロナウイルスを大量保有した中国人観光客の実測値での検証がないぞ。「正常性バイアス」の議論で経済活動再開最優先主義者の好みに合う説明をしているだけでは?

A:実測値をとることは不可能(実際に当時どれだけウイルスが入ってきてたのかを見るのは不可能)。だからこそデータ見て推計(疫学調査)をおこなっている。批判をするのであれば、データをもってしていただきたい。

Q:こんなに短期間で集団免疫が達成されるはずがない

A:日本についてはK型に曝された期間が長く、集団免疫を獲得するに足る十分な時間があった

Q:抗体検査の陽性率は極めて低い。集団免疫は達成されていないはず

A:新型コロナウイルスの感染を防ぐ主な免疫であるT細胞免疫については検査されておらず、現在調べられているのはB細胞免疫

Q:PCR検査に代わる免疫検査方式を確立すべきじゃないか

A:現在開発中です

Q:BCG説や遺伝などの自然免疫で説明できるのではないか?

A:BCGについてはBCGをうっていても死者が多い国もあれば、BCGをうたなくても死者が少ない国もあるので、BCG説についてはどうか分からん。

Q:陽性でも暴露なら、自身が重症化しない、他者に感染させないのか

A:
感染者数が増えていると言うけれど、正確にはPCR陽性者数です。
集団免疫が達成された現在の日本では、すでに感染して免疫ができている所に再びウイルスがやってきているということ。
なので、免疫細胞が再度侵入してきたウイルスをすぐに駆除するので、自分も重症化しないし、他にうつすこともほとんど考えられない

Q:集団免疫が達成されたはずのいまでも高熱のコロナ患者が発生し、今までに感じたことのない症状がでている

A:
新型コロナの検査では新型コロナしか検出できない。肺炎球菌を培養した検査であれば肺炎球菌が検出される。鼻孔の黄色ブドウ球菌を培養した検査では黄色ブドウ球菌が検出される。
新型コロナが検出されても、発熱などの症状は他の菌やウイルスによるものである可能性がある。
新型コロナに似た症状を起こす細菌やウイルスはたくさんある。

Q:数字を見ると、重症者が再び拡大しているのではないか

A:
6月18日に厚生労働省が各都道府県に「コロナウイルスに感染したことがあり、その後死亡した人については、死因を問わず新型コロナで死亡したとして公表せよ」という連絡が通達されている。
この通達があった後から死亡者数が増えている
たとえ、死因が別の病気によるものだとしても、過去にコロナウイルスにさらされたことがある者については全てコロナで死んだということにされている
注意して見てほしいのが、感染者数の推移とPCR検査数の推移は連動しているが、死亡者数の推移はまったく連動していないというところ

Q:安倍総理はどうして上久保教授による分析結果を国民に語らないのか

A:安倍総理も、菅官房長官も加藤厚労大臣もこれらのことは知っている。ただ、政治力の強い専門家会議の意見の方を尊重しているだけ

Q:後からG型に感染した35%の人は免疫がなかった状態での感染なので、欧米並みに死者が出るはずではないか

A:欧米はAEDで重症化してしまった。欧米で起きていることと日本で起きていることでは全く違う


<2020年7月9日の新型コロナ国内感染状況と他の死因との比較>

 ・2018年の日本の死亡者比較

  交通事故 3532人(人口10万人当たり2.94人)
  インフル 3323人(人口10万人当たり2.77人)
  肺炎  94654人(人口10万人当たり78.88人)
  餅の窒息 1300人(人口10万人当たり1.08人)

  コロナ陽性者数1936人(人口10万人当たり1.61人)
  重篤患者数    31人(人口10万人当たり0.03人)
  コロナ死亡者数 981人(人口10万人当たり0.82人)

 ・年間の世界の死者数:約7千万人

  2月~7月で世界では約3千5百万人の死者数、この内、新型コロナによる死者数は60万人

  例年のインフルエンザによる死者数は50万人~100万人

  日本は半年で新型コロナ関連の死者は約1000人

 ・平成30年厚生労働省による死因の統計(1位~5位の原因で年間約90万人が死亡している)

  1位 癌     年間37万3547人
  2位 心疾患   年間20万8210人
  3位 老衰    年間10万9609人
  4位 脳血管疾患 年間10万8165人
  5位 肺炎    年間9万4654人


<上久保靖彦 京都大学大学院教授による提言>

 ・暴露しただけなのと感染はわけないといけない。正確にPCR検査陽性者数と表現すべき(ウイルスには曝されていても免疫があるので感染はしていないという人でも陽性にはなる)

 ・日本はS型、K型のスパイク変異からしっかりスタートした。スパイクの変異には限りがあるので1年程度で終わる

 ・死者数の43%が院内感染。PCR検査は7割程度の精度で本当は陽性なのに陰性と判定されている人が普通に入院していると感染が広がってしまう

 ・新型コロナ肺炎が原因の死亡者数は約45%で、本当は他の原因で死亡している人が多い。

 ・東京都のコロナ死亡者の平均年齢は79.3歳(男性の平均寿命は79.64歳)他の死因と比較してリスクは低く、普通の生活を営むべし

 ・秋には第二波が来る可能性があるが、欧米のように自粛してしまうとAED(抗体依存性感染増強)でかえって重症者を増やしてしまう可能性がある。集団免疫を達成している日本はむやみな自粛は避けた方がいい

 ・上久保教授によるデータとその解析結果に対し、英語にして世界に発信し、データによる検証を行ってほしい(因みに日本の学会には疫学に関する査読ができる人がいないらしい)

 ・小川栄太郎さんと、日本の免疫学のパイオニアであり権威である順天堂大学の奥村さんが新型コロナについて記者会見をしたところ大手メディアが何故か全く来なかったそうな

 ・順天堂大学の奥村康さん曰く「日本が集団免疫という状態になければ現状を説明できない」と発言

 ・日本の免疫学の権威も上久保教授とおなじ結論に達している

 ・コロナに医療資源を割き過ぎて、診るべき人が診られることなく死亡しているケースが多い、このあたりも考えて

 ・専門家や政治家は利権なのか何なのか、変に合意形成を妨げるのではなく、国民のために真実を言ってほしい

第2波は来たか

2020年08月20日 14時08分30秒 | 社会評論


しつこくしつこくコロナ話題です。

巷では、第2波が来たとか、第2波の最中とか騒がれていますが、本当に第2波は来たのか。
確実に来ました。
おっと申し訳ない。これは疫病・新型コロナ(covid-19)の流行の話ではありませんでした。日本経済の落ち込みの話です。
言うまでもなく第1波は、昨年10月1日の消費増税によるGDPが、年率換算で▲7.1%を記録した時点、そして第2波は、8月17日発表の4月~6月のGDPが年率換算で▲27.8%を記録した時点です。
予想された結果でした。7月~9月はさらに落ち込みが予想されます。コロナ禍が続いているという不安が国民からなくならない限りは。
そして、狂気の殺人集団・財務省に牛耳られた今のだらしない政府では、この経済の落ち込みから回復することはできないでしょう。もちろんどんな野党勢力でも無理です。およそ右から左まで、間違った経済観から抜け出せていないのですから。

すみません。ちゃんと疫病コロナの第2波が来たのかどうかに話を戻しましょう。
使う資料は例によって以下の通り。
●東洋経済ON LINE 新型コロナウイルス 国内感染の状況
https://toyokeizai.net/sp/visual/tko/covid19/?fbclid=IwAR2S54N_qvGv4pvErqYep9pud9caVBH44VsTj9dv0q5nXk8iq4ZnOyHd6xw

●都内の最新感染動向
https://stopcovid19.metro.tokyo.lg.jp/

初めに、全国版。
PCR検査による陽性者数、検査数、死亡者数、実効再生産数(一人が何人にうつすか)はそれぞれ次のようになっています。
まず当たり前ですが、陽性者数は、検査数によって変わります。検査を増やせば、当然、陽性者の絶対数は増えます。つまり陽性者の絶対数が増えていることだけを発表して、検査数との割合を知らせなければ、その発表はインチキということになります。後述しますが、この間、マスコミは一貫してこのインチキ報道を自ら疑うこともせずに垂れ流し、国民を終わることなき不安に陥れてきました。

そこでインチキ報道から逃れるために、第1波の時のピーク時、8月のピーク時、最新データ、における陽性者数/検査数をそれぞれ見てみましょう。
A(ピーク時4/10)陽性者数    708
B(ピーク時4/10)PCR検査数  5,389
A /B=13.1%
C(8月ピーク時8/7)陽性者数  1,595
D(8月ピーク時8/7)PCR検査数22,698
C/D=7.8%
E(最新データ8/18)陽性者数    904
F(最新データ8/18)PCR検査数 21,130
E/F=4.3%
以上でわかることは、陽性者数/検査数が、第1波の時に比べて激減しているということです。

次に、死亡者数を、ピーク時前後の2週間と直近8月5日~8月18日の2週間で比べてみましょう。
(ピーク時5/8前後の2週間)  278名
(8/5~8/18)          106名
ここ数日、たしかに死亡者がやや増える傾向にありますが、それでも、ピーク時の38%です。
ちなみに、8月に入ってからの熱中症による死者は東京23区だけで103人に上っています。多くは屋内での死者です。
https://www.youtube.com/watch?v=_338Kwc2Zao
コロナを恐れて籠っている老人が冷房をかけずに亡くなってしまったとしたら、シャレにならない話です。おそらく孤独で貧困な境遇の人が多いのでしょう。エアコンがないか、あっても電気代を節約するためにかけなかったのではないでしょうか。熱中症死者もまた、社会問題、政治問題である可能性が大きい。

実効再生産数は、4月3日がピークで、2.27、8月16日時点では、0.86と激減しています。あっという間に感染が広がるこの疫病の性質からして、感染はほぼいきわたったと考えられますから、想定外の変異が起こらない限り、今後もゆるやかに下がり続けるでしょう。
また、年代別死亡者数の割合は、8月12日時点で80代以上が55%70代以上が82%を占めます。80代以上が過半数ということは、ほぼ平均寿命(84歳)と変わらない年齢で亡くなっているわけですから、他の病気による死者と特段の相違がないことを意味します。

では次に東京版。
東京では、陽性者数/検査人数は、ピーク時が4月17日で、206名/329名で、62.6%、8月の陽性者数のピークが8月1日で、472名ですが、検査人数が3539名ですから、13.3%という少なさです。
死亡者数は、ピーク時が5月2日、その前後9日間(4/24~5/11)で102名、8月に入ってから18日までの18日間で9名です。10分の1以下ですね。
連日記者会見を行って今日は「感染者」が200名だの300名だのと、ナントカの一つ覚えのように危機を煽ってきたKY知事は、自分のおひざ元で発表されているこういうたしかな数字情報を1度でも確認したことがあるのか。いや、KY知事はまさにKY(空気を読む)にかけては天才的なお方です。ですから、そんな数字の検証などは無視して、「大事なのは雰囲気づくりよ」と言わんばかりに、「感染者数」だけを発表して、都民や国民をあおり続けているわけなのでしょう。

また実効再生産数は、ピーク時が3.62、最新情報8月16日時点で0.87です。陽性率の東京都データでは、ピーク時が4月11日で31.7%、まあこれは検査人数が極端に少ない頃のものなので、あまり一般化できません。緊急事態宣言解除後は1%代から2%代で推移し、6月下旬から7月にかけてやや上昇しましたが、その後8月13日までずっと6%台、最近では5%台にまで下がっています。陽性率が先に示した陽性者数/検査人数に比べて低いのは、あるピークの日だけでなく、7日間平均値を採っているからでしょう。そして、こちらの方が実態に近いと言えます。
全国版では、検査人数の累計が8月18日時点で1,097,033名、陽性者数の累計が57,366名と出ていますから、陽性率5.2%となり、この間の東京の陽性率とほぼ見合っていると言えるでしょう。

以上、統計的に推定できることをできるだけ正確に記載してきました。これだけでも、コロナの第2波が来ているという俗説は、すこぶる疑わしいことがお分かりいただけると思います。
日本人にとって、コロナはもともと大騒ぎするような話ではなかったのです。

ところで、これまで根拠としてきた統計的前提を覆すような印象を持たれるかもしれませんが、じつはPCR検査というのは、その結果にあまり信用が置けません。理由はいろいろあります。
一つは、この検査の陽性反応はウイルスが体内で曝露したことだけを示すもので、疫病に「感染」したことを示すものではありません。だから陽性反応者の中にあれほど無症状の人が多いのです。そこで、陽性反応が何名出たからと言って、それを「感染者」とするのは間違いです。マスコミは「感染者何名、感染者何名」と騒ぎ立ててきましたが、正しくは「陽性者」と呼ぶべきです。マスコミはそのへんの配慮がまったく足りず、もちろんKY氏もその配慮不足を存分に悪用してきました。
実は筆者自身もメルマガや自身のブログでこの二つを混同して使ったことがあるので、これを機会に訂正してお詫びいたします。
もう一つは、PCR検査は、何も新型コロナウイルスにだけ反応を示すのではなく、旧型コロナによるふつうの風邪、A型、B型インフルエンザ、アデノウイルス、クラミジア、マイコプラズマなどにも反応を示すそうです。そうだとすると、陽性者の中には、新型コロナに反応したのではない人もたくさん含まれる可能性があります。きわめてあり得る想定ですね。ますます陽性者=感染者と決めつけるマスコミは、大罪を犯していることになります。
さらに、PCR検査の精度の問題ですが、これはよく知られているように、100%精確とは言えません。ある時陽性だった人が、次の検査で陰性になったり、逆もあります。これは検査キットや検査方法の精度、その時々のウイルスと体細胞との関わりの仕方、などによるものでしょう。
何ごとであれ、医療技術や科学技術を盲信するのは避けたいものです。

さらに言えば、死因確定にも曖昧さが残ります。死因は医師の診断書によるわけですが、コロナ死亡者とされている人たちは、高齢で基礎疾患の持ち主が多いため、それが悪化して死んだ可能性もあります。志村けんさんの場合などは、もともと仕事や野放図な遊興のために相当体が弱っていたので、必ずしも死因をコロナと特定できない可能性が残ります。これは死因が普通の肺炎とされている場合でも言えることです。
また、厚労省が、コロナ陽性者が亡くなった場合には、死因をコロナとせよという通達を出したという情報もあります。これが事実とすれば、厚労省は流行の事態を重く見過ぎたために、結果的に不安を誘発する情報操作を行ったことになります。あるいは、もし意図的にそういうことをしたのだとすれば、許し難い欺瞞です。
もっと広げて言えば、死因の特定に限らず、検査で陽性とされた人が発熱しているからといって、それがコロナによるものとは断定できないわけです。

次に、マスクの問題ですが、日本人のほとんど全員がたちまちマスクを着用するようになった光景は、まことに不気味なものがあります。マスクは厚労省自身も言っているように、感染者が咳やくしゃみなどによる飛沫を飛ばさないためには有効ですが、健康者がマスクをしても予防効果はありません。
この暑いさなかに、夏休みを早く終わらせて学校に通うようになった子どもたちがマスクをしているのを見ると、何とも無意味でかわいそうに思えてなりません。統計によれば19歳以下で陽性を示したのは、検査人数全体の6%未満に過ぎませんし、軽症者も重症者も死者ももちろんゼロです。未成年の陽性者は、新型コロナによるものではない可能性が大です。
このマスクについては、漫画家の小林よしのり氏が面白い指摘をしています。
https://www.youtube.com/watch?v=lizHEl0ZKQs
コロナウイルスの大きさは、0.1㎛しかないのに、家庭用マスクの網目は10㎛から100㎛なので、大量に網目を通り抜けてしまうというのです。これもマスクすることの無意味を表しています。
また、スウェーデン在住の医師・宮川絢子氏は、スウェーデンでは医師さえマスクをしていないのに、はるかに死者の少ない日本ではなんでマスクをするのか、窮屈でかわいそうだと述べています。
https://www.youtube.com/watch?v=2VAQGJCvKVo&pp=wgIECgIIAQ%3D%3D&feature=push-fr&attr_tag=KyEH2RjgJHsEZMQr%3A6&fbclid=IwAR2DhudaVYn4KSpZtEOSUPLNOD1CB1EookBFHhY6ISwKV66dRXzavHU8u9Q

猫も杓子もマスクをしてソーシャル・ディスタンスとやらを取る、この日本人の強迫神経症的な反応を筆者は少し前の拙稿で全体主義と呼びました。
https://blog.goo.ne.jp/kohamaitsuo/e/0dc6465388521731c8286a8d4ad8eb1f
特にコンサートやスポーツ大会などのイベントで、相次ぐ中止をしたり、観客を半分しか入れないといった措置は、経済の毀損はもとより、文化破壊にもつながるので、ちょっと許しがたいところがあります。ソーシャル・ディスタンスをとるとか、三密を避けるなどをしても、それ自体は何の意味もありません。なぜなら、新型コロナの感染は、飛沫による感染なので、お互い黙っていれば距離を詰めたところでうつるはずがないからです。レストランで複数で食事をしている人を見ていると、ふだんマスクをしていても外さざるを得ませんから、食べながら近距離でおしゃべりをしまくっています。あれあれ、ヤバいんじゃないの? だったら道を黙って歩いている時に何のためにマスクをしているのかな。

この全体主義的空気、どうも嫌だと思っていたら、案の定、自粛警察、マスク警察、東京から実家に帰った人に村八分的な貼り紙をするなどの、最もしてはならない賤しい傾向が出てきました。戦中に、少しでも戦争反対の意思をほのめかすと、一部の国民が自ら進んで「非国民」呼ばわりして袋叩きにしたのと同じです。人間の品性なんて状況次第でいくらでも下劣になる。昔から変わらないものです。

それにつけても驚いたのが、次のようなNHK意識調査の結果です。この調査は、8月8日から3日間、電話で行われ2163人の回答を得たものです。
https://note.com/shinsakuitou4708/n/n1794f24e2c97
新型コロナウイルスへの感染が新たに確認された人が、全国で1000人を超える日が相次いでいます。国が再び緊急事態宣言を出すべきだと思うかどうか聞いたところ、「出すべきだ」が57%、「出す必要はない」が28%でした。
「感染者1000人を超える日が相次いでいる」という前提からして、ひどい印象操作を行っています。これが間違いと情報不足に満ちていることは、これまでの記述で明らかでしょう。NHK自身が事態をまったく誤解しているわけですが、それにそっくり誘導されている回答者もまた、どうしようもありません。何と6割近くが緊急事態宣言の復活に同意しているのです。あれほど経済的ダメージをもたらした自粛要請が復活したら、日本経済は終わりだということに気づこうともしない。大衆とはそんなものさと切り捨てるのは簡単ですが、自粛によってひどいダメージを受けたのが外食産業や観光業だけでなくあらゆる関連産業に及んでいることをつい先ごろ痛感させられたはずなのに、それと結びつけることすら思い及ばない思考停止状態と健忘症。
先ほどの宮川医師も、「いのち、いのちというけれど、経済もいのちです」と静かに述べていました。その通りです。こうして抽象的な「いのち絶対主義」イデオロギーは、自分たちの暮らしをどうしていくかという、誰にとっても切実な具体性のある課題について考えることも蝕んでしまうのです。恐ろしいことです。

いま世界では、欧米先進国が終息状態にあり、南米や南アフリカ、オーストラリアなど南半球の国々(冬であることが関係しているでしょう)やインド、サウジアラビアなど発展途上国で死者が増えつつあります。
https://web.sapmed.ac.jp/canmol/coronavirus/death.html
世界的にはこの先、どうなるかわからない部分を残していますが、日本では、奇跡と言われるほど死者が少ないですね。これはなぜなのかという問いには諸説がありますが、最近、日本はすでに集団免疫が獲得できているという京都大学大学院特別教授・上久保靖彦氏の説が注目を集めています。
https://www.youtube.com/watch?v=ajWWHBem-r0&fbclid=IwAR2dOCBCY1Wxh_0FL24zS4W1aBaY8birz8cYao-NGR6eHfzCoTDWXmpLh7E
これについて、筆者は当否を判断する資格がありませんが、なかなか説得力があります。
いずれにしても、少なくとも日本では、コロナ禍は、大したことのない流行病を過大視して、そのために国民ぐるみ自殺行為に走った愚劣な人災です。おそらく1年後か2年後には、私たち日本人は、きちんとした総括もなされないままに、「あれはいったい何だったのか」という記憶喪失現象の中に置かれるでしょう。ますます没落してゆく経済的・文化的環境に抗うこともできずに。

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女帝・小池百合子のあくなき野望

2020年07月24日 00時27分45秒 | 社会評論


しつこくコロナの話題です。
別にそんなにこだわっているわけではなく、ほかのテーマもあるのですが、向こう(小池都知事)が毎日のようにテレビに顔を出していて目障りですから、この際彼女がどういうインチキな印象操作で、コロナについてのデマを垂れ流しているのかをはっきりさせておきたいと思うのです。
合わせて、この女がこれまで失敗に失敗を重ねてきたにもかかわらず、あくなき権力欲に取りつかれ、民衆がそれに応えて三百三十万票の期待を寄せた、その不死鳥のごとき秘密に迫ってみたい。
といっても、この記事は「小池百合子」ドキュメンタリーではありません。
筆者は彼女の私的人生になど何の関心もありませんし、評判になった石井妙子著『女帝 小池百合子』も読んでおりません。
問題は、彼女の政治活動がきわめて内容空虚なものであり、そのつどの政局や世間の動きを敏感に察知して自分の上昇志向を図るだけのものだということです。
同時に、この特徴こそ、この高度情報社会・大衆社会の時代の全体主義者のあり方をきわめてよくあらわしていると言いたいのです。
彼女はいわば、現代日本女性版「なにがし」として、いま最も危険視しなくてはならない政治家なのです。
混乱を極めた今の時勢もまた、彼女のような空虚なヒロインを求めている風がうかがえます。

前置きが長くなりました。
まず忘れないように、小池都知事が失敗した例の主なものを列挙しておきましょう。
・2017年9月、希望の党代表として野党糾合を目指し自民党に対抗するも、民進党・前原らと折り合わず、野党を混乱させただけに終わった。その綱領は、他党からのパクリが多く、右にも左にもいい顔をするパッチワークのようだった。希望の党は選挙で大敗、11月小池は代表を辞任し、翌年5月解党。
・初めの知事選の時に掲げた「七つのゼロ」公約は、ペット殺処分ゼロ以外、一つも果たせていない。
・築地市場の豊洲移転の方針を二転三転させ、根拠のない理由から1年半延期させ、膨大な経費を費やした。築地跡地再開発計画も全く進展していない。
・東京五輪マラソン札幌実施は、IOCの要求に何の抵抗も示さず、突然札幌市を混乱させた。

まあ、こんなところです。
さて今回のコロナ騒動に際しての小池都知事の態度には、目に余るものがあります。
3月下旬、東京五輪の延期が決定するまで、五輪実現のために、PCR検査実施を極力抑え、
東京ではコロナ感染者がほとんどいないかのような見せかけを作っていました。
ところが五輪延期が決定するや否や、にわかにあたかも日本で突然パンデミックが始まったかのように記者会見を行い、オーバーシュート、ステイホーム、ロックダウンなどの得意の横文字で視聴者をはぐらかし、中央政府を突き上げて、「緊急事態」の雰囲気を作りだしました。
この早業はさすがです。
マスコミは連日感染者数を報告し、トップニュースは来る日も来る日もコロナばかり。
この都知事の変化(へんげ)ぶりが機縁の一つとなって、中央の専門家会議でほどなく全国一律接触8割制限という要請が出されました。
ところが、この8割制限というのは根拠薄弱であったことがいまでは常識となっています。

ここで、新型コロナについての基礎知識を復習しておきます。
①人から人への感染力がきわめて強い
②密室、密集、密接によって感染しやすい
③潜伏期が長い
④高齢者や基礎疾患のある人は重症化しやすい
⑤8割は軽症で回復している
⑥無症状感染者の数が多い
ここでは、④~⑥が大事です。
軽症者と無症状感染者がほとんどであるにもかかわらず、まるで世の中は火がついたように集団ヒステリーに襲われました。
マスコミは、感染者数(陽性者数)が増えた減ったと騒いでいますが、感染者数の変化は、検査件数に依存して変わります。
さらに、PCR検査は打率7割と言われていて、検査サンプルは皮膚の表面だけなので、陽性反応を示しても、ウイルスが内部に侵入していないことがあり、だから陽性になったり陰性になったりするのです。
こういう不完全な検査結果が全国に報道されて、国民は大騒ぎしてきたのです。
このほか、次のことを知っておく必要があるでしょう。

1.欧米の死者数と日本及び東南アジア諸国のそれとを比べると、2桁から3桁の違いがあり、これは生活習慣などでは説明できず、免疫機構の違いに未解明の何かが存在するとしか考えられない。
2.中南米など、死者が上昇している国もあるが、世界全体ではすでに終息に向かっている。
3.欧米では、外出制限を厳しく取っていたのに、死者数はうなぎ上りだったが、スウェーデンでは規制を厳しくしていなかったにもかかわらず、そのカーブの具合は、ほかの国と変わらなかった。
4.発症者から採ったウイルスのサンプルは、8日間以上は培養に耐えなかった。
5.台湾の研究で、100例の確定患者とその濃厚接触者2761人を調べたところ、後に発病したのはわずか22人、すべて確定者患者とは発症前もしくは発症後5日以内に接触した者で、発症後6日以降に接触した者には発病者はゼロだった。
6.2018年のインフルエンザ死者数は3000人以上だったが、この年に今回のような騒ぎには一切ならなかった。
7.普通の肺炎の死者は年間12万人で、これをこの4か月間に換算すると4万人が死んだ計算になるが、これも騒がれたことは一切ない。
8.第2波、第2波と騒がれているが、これには100年前のスペイン風邪の経験を今に引き移しているだけで、何の理論的根拠もない。スペイン風邪は、コロナとはまったく違う特性のウイルスである。

これらの事実は、コロナが感染力だけは猛烈でも、大した病気ではなく、毎年やってくるようなウイルス性の感染症に過ぎないことを示しています。

小池氏が感染者数と検査件数との関係や、死者、重症者が高齢者に特化していることを知らないはずはありません。
それなのに、都知事に再選されてからは頻繁に記者会見に顔を出し、やれ今日は感染者が200人を超えたの、数が更新されたの、20代、30代の感染者が多いのと、ひたすら都民(国民)を煽り続けていますね。
おまけに検査対象を新宿の風俗街やその周辺に特化して、感染者が出やすい地域を狙い撃ちしています。
そして新宿区内で感染者が出たら10万円支給するなどという珍奇な《支援策》を講じています(区長の決定ということになっていますが、知事が関与していないはずはありません)。
そのため金のない若者が陽性になることを覚悟のうえで、わざわざ検査を受けたりもするそうです。
さもありなん、それにしてもひどい施策ですね。
陽性者をお金で買って増やしているわけです。

最近特に、この煽りがひどくなっていますが、これはなぜだと思いますか。

その前に、次のグラフをご覧ください(都内の最新感染動向)


https://stopcovid19.metro.tokyo.lg.jp/

これは、東京都が自ら発表している、陽性者数と検査人数との比を表すグラフです。
横軸は月日、縦軸左目盛は人数、棒グラフの色分けは、下から、PCR検査陽性者数、抗原検査陽性者数(ほんのわずかですので見えにくいですね)、PCR検査陰性者数、抗原検査陰性者数です。
また折れ線グラフは、点線が検査人数(7日間移動平均)、実線が陽性率(右目盛り%)です。
このグラフで注目すべきは、4点あります。
一つは、五輪延期まではほとんど検査をやっていなかったこと、もう一つは、5月7日の緊急宣言延期以降、検査人数を急に増やしていること(といっても1000人前後でたいしたことはありません)、三つめは、都知事選の前後で、検査人数が急激に増え、ピーク時は4500人に達していること、そして最後に、これが最も重要なのですが、最近の陽性者数(感染者数)の検査人数に対する割合が5~6%に過ぎないことです。
ところが小池知事は、毎日の感染者数だけを発表して、マスコミもそれをいちいち大げさにニュースで伝えています。
しかもこの5~6%の感染者数のうち、ほとんどが軽症か無症状で済んでしまうだろうことは、コロナの場合、すでに世界的に認められているのです。
さらに言えば、この間、東京都の死亡者数の推移はどうなっているでしょうか。


https://toyokeizai.net/sp/visual/tko/covid19/?fbclid=IwAR2S54N_qvGv4pvErqYep9pud9caVBH44VsTj9dv0q5nXk8iq4ZnOyHd6xw

ピークは5月2日で15人、一番右は7月20日で1人です。
なぜ今日は死亡者はありませんでした、とか、今日は死亡者は1名、84歳(?)の男性でした、とか正直に言えないのでしょう。

さてみなさん、いかがですか。
これでも、第2波の危険が迫っているとか、緊急事態宣言が再び必要になるかもしれないとか、不要不急の外出は控えた方がいいとか、根拠を持って言えますか?
つまり小池知事は、日本人の生活の存亡(と言っても経済的な面でですが)がかかっている問題に関して、こういう隠蔽と欺瞞と煽動を平然とやりまくっているのです。
ついでですから、もう一つデータをお見せしましょう。
以下は、7月21日における各都道府県の感染者数の分布です(資料元は先と同じ)。



図の、グレーの県は、感染者数がゼロの県です。
これまで岩手県だけが感染者ゼロと言われてきたのに、ご覧のように、宮城県を除く東北全県、新潟、静岡、福井、鳥取、島根、山口、四国全県、大分、宮崎と、17県にもなっています。
「感染者が増えている」という印象だけを国民に植え付け、不安を増大させ、これからまだまだ第2波、第3波がやってきそうだと信じ込ませようとしている、小池都知事は、いったい何をやろうとしているのでしょうか。

国民の多くがひどい経済的な落ち込みで、これからどうやって生きていこうかと悩んでいる時に、さらに別種の不安をますます増大させる――このデマゴーグは、そこにつけ込んで政府を動揺させ、政府の経済回復方針を妨げようとしているのです。
もちろん、いま話題のGO TO トラベルなるアイデアなどは、ばかげ切ったものです。
こんなものは、経済回復に役立つわけがありません。
これはもともと、全国旅行業協会会長を務める二階自民党幹事長が、コロナが問題になり始めた初めに、対策の中に盛り込んでいた利権がらみのトンデモ案の一つです。
本当は、ようやく成立した第二次補正予算をさらに発展させて、もっともっと大規模な国債発行による粗利補償と、消費税ゼロを目指すのでなければ、予想される大恐慌に向き合えるはずがありません。
しかし、いま第二次補正予算を成立させた政権の足元はかなりぐらついています。
その安倍政権の緊急事態解除後の足元に噛みついて、あえて再びコロナ危機を煽ってその政府のコロナ対策方針を変更させることは、中央政界進出を狙う小池氏にとって、小さくはない賭けを意味しているでしょう。
もちろん、権力意識に取りつかれた彼女にとって、国民の経済危機など念頭にないことは明らかです。

ノンフィクション作家の窪田順正氏によれば、二階・石破・小池の三人は、もともと旧新進党時代のトリオとして親密な仲にあるそうです。
https://diamond.jp/articles/-/242608?page=5
安倍政権がガタガタになって自信を無くしている時、政府のコロナ対策にゆさぶりをかけ、二階氏を後見人として一番人気の石破氏を総裁に立てるたくらみではないかというのです。
考えられるシナリオの一つと言えそうですが、いずれにしても、小池百合子というこの全体主義者にとっては、国民も政府も不安と恐怖に攪乱されているいまこそ、自分の権力基盤を固めていく絶好の機会なのです。
初めに書いたように、今一番恐れなくてはならないのは、何度失敗しても恬として恥じないこの緑のタヌキなのです。
皆さん、簡単な統計のトリックに騙されないように、自分で資料を探しましょう。
すぐ見つかります。

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政府の赤字は国民の黒字 財務省を信じず、MMTを学ぼう 

2020年07月21日 22時51分06秒 | 経済


以下の文章は、産経WEBからの求めに応じて書かれたもので、MMTについての両論併記として掲載され、新聞紙上にも載るそうです。相手は財務省系。この期に及んで何を書くのか楽しみですが。

コロナ禍は人災である。ここでコロナ禍とは、疫病による感染者、重症者、死者の増大を意味するのではない。政府・自治体の自粛要請に国民の大多数が積極的に従ったことによる恐るべき経済的ダメージのことだ。
すでにこのダメージの結果は歴然と出ている。4月の鉱工業生産指数は前月比で9.1%落ち込んで、これは東日本大震災の時よりも悪くなっている。日銀短観は3月がマイナス8ポイントであったのに対し、6月ではマイナス34ポイント。1~6月の輸出は、前年同期比でマイナス15.4%、輸入はマイナス11.6%。
帝国データバンクによると、今年の倒産件数は1万件を超し、自主的な休廃業などは、2万5千件と言われている。8月に4~6月期のGDPが出るが、目もくらむような下落が予想される。そして忘れてはならないのは、昨年10月の消費税増税によって、すでにGDPがマイナス7.1%という驚くべき落ち込みを見せていることだ。
このまま行くと日本経済は大恐慌に突入することが確実なのだ。
これに対処する方法はあるのか。政府はコロナ対策として第2次補正予算を組み、ようやく32兆円の真水を注入することを決定したが、こんな程度で足りるはずがない。
自民党の安藤裕衆議院議員が会長を務める「日本の未来を考える勉強会」議員連盟では、国債100兆円の発行と、消費税をすべての名目で0%にすることを提唱している。来るべき恐慌への備えとしては、これは当然と言っていい最低限の提案だ。加えて25年も続いた長期デフレから脱却し、政府が目標としていたゆるやかなインフレ(2%)を達成するには、こうした措置をさらに継続させる必要があるだろう。

さてこうした一見大胆な提案がなされると、必ず出てくるのが次の二つの疑問である。
①すでに「国の借金」が1000兆円をはるかに超えているのに、そんなに財政出動を拡大させたら財政破綻するのではないか。
②消費税をゼロにして、税収減を何によって補うのか。大胆な財政出動の財源はどうするのか。
これらの疑問は、財務省が長年国民を騙してきたデマに発するものだ。このデマの浸透は徹底していて、一般国民は言うに及ばず、政治家、学者、マスコミがこぞって緊縮財政を支持する羽目になってしまった。ところが財務省自身のホームページには、なんと、国債の発行によって財政破綻することはあり得ないと書かれているのだ。

昨年、MMT(現代貨幣理論)が日本に〝上陸〟し、上記の疑問がすべて根拠のないものであることを証明してみせた。
まず「国の借金」と呼ばれるものの正体は、政府がこれまで市場に資金供給してきた額の履歴に過ぎない。つまり返す必要のないお金であって、それはそのまま民間の預金として計上される。帳簿上、赤字とされはするが、政府の赤字は民間の黒字なのだ。
そうは言っても負債は負債なのだから、期限が来たら返さざるを得ないだろう、将来世代にツケは残せないと普通の人はつい考えてしまう。誰もが知っているテレビの売れっ子で、評論家まがいの人々も同じ間違いを垂れ流して、国民の思い違いを絶えず助長している。しかし事実はそうではなく、期限が来たら、古い国債を新しい国債に取り換えるだけなのだ。
したがって、政府は今回のような緊急時に限らず、いつでも必要十分なだけ国債を発行することができ、税収に頼る必要などないのである。なぜそんなことができるかと言えば、政府には通貨発行権があるからだ。ただし、これはMMTがしつこく断っていることだが、国債発行にまったく制約がないのかと言えば、そうではなく、インフレ率がある水準を超えた場合(たとえば5%以上)には、発行を抑制する必要が出てくる。市場に貨幣があふれ、貨幣価値が下落し物価が高騰して国民生活が苦しくなるからだ。
しかし、もしこういう事態になったら、デフレ期に増税をするという愚か極まる政策(インフレ対策)を取ってきた政府にとって、物価高騰の抑制は得意中の得意なのだから、日銀と二人三脚で、増税をしたり、国債の売りオペによって市場の余剰貨幣を吸い上げたりすればよいわけだ。

ところで、「財源」の問題である。大多数の国民は、国の歳出は税収によって賄われていると思っているが、これは大きな誤解である。「社会保障の充実のために増税がどうしても必要だ」などと言われると、ただでさえここ25年間実質賃金の低下で苦しんできた国民も、さらなる徴税をしぶしぶ我慢してしまう。こういうバカな目にあわされるのは、税収が国の歳出を支えているという誤解から抜けきれないからだ。
すでに述べたように、インフレ率という制約以外に、国債発行額に上限はないのだ。現に今年度の予算(一般会計)のうち、税収(63兆円)の占める割合は、49.5%と、半分を割り込んでいる。おまけに特別会計予算もある。歳出合計は約250兆円で、これを加えて考えれば、税収から支出されているのは、約四分の一に過ぎない。
そして、こちらの方が大事なのだが、MMTでは、スペンディング・ファーストと言って、ある年の税収を実際に使う前に、財務省は短期証券のかたちで日銀からお金を「借り」、どんどん先に使っていることを指摘している。これもまたただの事実である。
税の機能は、国の歳出に充てるというよりも、「円」という通貨単位での納税を政府が認めることによって一国の経済活動を保証すること、および、景気の動向の調整のために増減税を行なうこと、そして所得の再分配、などである。
消費税をゼロにしても、政府は少しも困らない。その分だけ国債で補えばよい。現在のような緊急時こそこの措置がぜひ必要である。年収220万円の人は、年間200万円を消費し、20万円を消費税で取られるところを、消費税20万円も消費に回せるのだ。しかも政府に吸収されている全額が市場に出回り、その分だけ国民の経済活動は活発になる。

 MMTの基本は事実を述べているだけで難しくない。ぜひこの機会にマクロ経済の基本を学びましょう。


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コロナ全体主義をいつまで続ける気か

2020年07月09日 00時14分54秒 | 思想


去る6月25日、ダイヤモンド・オン・ラインに、窪田順生氏というノンフィクションライターの「コロナ禍でわかった、日本人が患う『管理されたい病』の重症度」という文章が載りました。
https://diamond.jp/articles/-/241302
この文章には、次のような3つのデータが紹介されています。
①《NHKの世論調査で、新型コロナなどの感染症の拡大を防ぐため、「政府や自治体が外出を禁止したり、休業を強制したりできるようにする法律の改正が必要だ」と考えている人が、62%もいることがわかった。「必要ではない」と答えた人は27%なので、ダブルスコア以上である。》
②《2013年、キーマンズネットがビジネスパーソン585人を対象に、プロジェクトを実行する際に「管理する側」と「管理される側」のどちらがいいかと質問をしたところ、「管理される側」が53%と上回った。》
③《2019年にパーソル総合研究所が、日本を含むアジア太平洋地域の14の国・地域における就業実態の調査をしたところ、日本で管理職になりたい人の割合は21.4%と、14の国・地域の中でダントツに低かった。》
窪田氏は、これらのデータを掲げた後、戦前・戦時中、普通の市民によって構成された膨大な「投書階級」なる存在が、いかに当時の「娯楽統制」に影響を与えたかについて、次のように述べています。
まず、言論統制される以前から、新聞やラジオというマスコミは自ら進んで戦争を煽っていた。軍の発表を盛りに盛って、「爆弾三勇士」などの戦争美談をふれ回った。「そうしろ」と命令されてわけではなく、愛国心を刺激するコンテンツが読者やリスナーに圧倒的にウケたからだ。そして、 この「愛国コンテンツ」を連日のように見せられた国民が、暴走を始める。「投書階級」のように、自分たちの価値観に合わないものを「社会にとって害だ」と排除し始める。たとえば、当時戦争に反対する「非国民」を一般市民が棍棒を持って追いかけ回して袋叩きにする、という事件が珍しくなかったが、それは軍部に命令されたわけではなく、市民たちが自発的に行ったことなのだ。
そのうえで窪田氏は、「令和の日本で木村花さんをSNSでネチネチとイジめた人々や、CMに不倫タレントが出ていると企業にクレームを入れるような人々とそれほど変わらないことを、80年以上前の日本人もやっていた」と語り、「これが、日本が全体主義へのめり込んでいったプロセスである。『陸軍のエリートが暴走した』『軍を抑えられなかった政治家が悪い』『マスコミが戦争を煽った』などといろいろ言われるが、やはり『全体』というだけあって、日本社会がおかしな方向に流れても誰も止められなかった最大の原因は『民意の暴走』にあるのだ」と結論づけています。

筆者はこの文章に触れて、わが意を得たりと思い、あるメディアに紹介しました。
それというのも、筆者はこの間ずっとコロナを巡る社会現象を、科学的データも含めて分析してきたのですが、少なくとも日本では、オーバーシュートだのロックダウンだのと大騒ぎするような実態はほとんど見られないにもかかわらず、日本国民全体がいっせいに過剰自粛に走り、陽性反応者などほとんど出ていない田舎町まで、ソーシャルディスタンスの名のもとに、マスク着用はおろか、アルコール消毒やフェイスシールドやビニールシートやアクリル板で溢れるようになった集団ヒステリー現象を、まさに全体主義の下地が露見した状態と指摘してきたからです。
https://blog.goo.ne.jp/kohamaitsuo/e/8b539fc184c8c79ea921ea0f03720352
(6月15日)
https://blog.goo.ne.jp/kohamaitsuo/e/d9ba7e74cb9e3435b0dbc223bffb8103
(5月28日)
https://blog.goo.ne.jp/kohamaitsuo/e/c4943a9102096047589a253502165ce5
(4月15日)
https://blog.goo.ne.jp/kohamaitsuo/e/2d8d910dcbbed2b60866d6903d153874
(3月28日)

上に挙げた現象だけで済めばまだ微笑ましいとも言えますが、それよりもはるかに深刻なのが、飲食業やデパート、小売店の一斉休業、コンサート、スポーツイベントなど文化企画の一斉中止、一般企業のテレワークや時限通勤の非能率、中小企業の倒産、航空、鉄道、タクシーなど公共交通機関の乗客激減など、日本経済に致命的な打撃を与えた事実です。
疫病としてのコロナは、日本のみならず、すでに世界的にも終息の傾向にあるのに、空気としてのコロナ全体主義はいまなお続いており、これがいつ終わるのか、見当もつきません。
経済的ダメージに至っては、これから倒産、廃業、失業の全体像が明らかになるにつれて、第二次世界恐慌への突入が現実化していくので、これを克服するのに何年かかるかわかりません。

ところで、筆者が窪田氏の記事を紹介した時、いくつかの批判を受けました。
一つは(批判Aとしましょう)、日本の庶民は昔から自分で判断して行動しており、政府が緊急事態宣言を出すはるか前から自粛していたのだから、なぜ「管理されたい病」というのかわからないというものでした。
しかしまず窪田氏は、データ①で外出禁止や休業強制を法律化した方がよいと答えた日本人が圧倒的に多かった事実を挙げています。
このデータが示すものが、「管理されたい病」と呼べるかどうかについては後述しますが、危機が来た時には、不安を鎮めてもらうために、厳重かつ律義に規則で固めた方がよいと多くの日本人が考えていることはたしかです。
政府・自治体のゆるゆる規制は、補償から逃げようとする動機があったとはいえ、生活の自由という観点からは悪いことだったでしょうか?
それを一般国民が、わざわざ否定するような選択をしているのです。
また、データ②は、サンプル数の少ない一調査ですから、たしかにこれだけをもって日本人は「管理されたい病」に罹っていると結論づけることはできないかもしれません。
むしろここから何か結論を引き出すとすれば、責任を負いたくないという傾向を表しているというべきでしょう。
データ③も同様で、管理職につきたくないというのは、重責から逃れて気楽な立場で仕事をしたいという傾向の現われでしょう。
さて、以上をより厳密に考えるなら、日本人は、①のように、ある決まったルールがあればそれに従うことに安住していられるし、自粛をもっと徹底できたのにと考えている反面、自分でルール作りに参加したりその責任を負ったりするのは嫌だと感じていることになります。
要するに総論賛成、各論反対というわけで、これは昔から主体的参加や目立つことを嫌がる日本人の傾向をよく表していると思います。
さて批判Aは、日本の庶民は昔から自分で判断して行動しており、政府が緊急事態宣言を出すはるか前から自粛していたとしていますが、昔から自分で判断して行動していたというのは、かなり疑わしい。
参勤交代で大名が通る時にいっせいに土下座する態度を、「自分で判断した行動」と呼べるかどうか。
福沢諭吉が馬に乗った馬子に出会った時、馬子があわてて馬から降りた。
これを見て福沢が「これからは堂々と乗ったらよい」と諭した話は有名です。
また商人は身分の低さを自ら身体化していて、お武家さんの前でもみ手をしながらぺこぺこと卑屈な態度で接し、実利をちゃっかりとる気風を持っていたこともよく知られています。
この気風は今でも残っていて、営業マンが顧客を落とすために、やたら過剰な敬語を使ったりするところに現れています。
庶民は権力の視線の及ばない領域を狡猾に心得ていて、そういうところでは「自分で判断して行動していた」と言えるだけでしょう。
批判Aは、庶民の「自分で判断して行動する」態度を、今回のコロナ騒動に当てはめていて、情報を得てからいち早くマスク着用や外出自粛を取った行動を肯定的にとらえているようです。
しかしマスク着用や外出自粛が、自主的な判断や行動としてそんなに主体的な意志を要するるものかどうか。
「雨が強くなってきたから、今日は外出を控えよう」といった、誰でもそうする程度のことなのではないですか。

窪田氏の記事のタイトルが「管理されたい病」となっているので、誤解を招きやすいですが、上で引用したように、彼は、むしろ一般市民の自主的な行動が全体主義の生みの親だということを、戦前・戦中の例を出しながら繰り返し強調しているのです。
そしてこれは、責任意識の欠落と主体的に決断の意思を示さないような上述の傾向と矛盾しません。

ただし、政治的な全体主義はむしろヨーロッパやロシアがご本家ですから、一般市民の自主的な「暴走」を日本人特有の傾向とすることはできないでしょう。
いずれにしても、批判Aは、窪田氏の記事をきちんと読んでいないか、読んでもその要点を無視しているのでしょう。

もう一つの批判(批判Bとしましょう)は、あのように自主的に素早く自粛したからこそ、欧米に比べて奇跡的に感染者数や死者数を抑制できたのだというのがあります。
これはまったくの間違いです。
上に挙げたブログURLでも何度も指摘していますが、欧米とアジア(日本だけでなく)とでは、死者数が2ケタ、3ケタ違います
この極端な違いは、生活習慣の違いや自粛の徹底などで説明できるものではなく、山中伸弥教授が「ファクターX」と呼んでいるように、何らかの疫学上の人種的相違、あるいはウイルスと接触した細胞との関係の変容によるものでしょう。
そして自粛や外出規制が被害を少なくしたのではないことは窪田氏も指摘していますし、この事実はもはや常識となっています。
https://news.yahoo.co.jp/articles/542fccde6866d9b910ccbb4ff4b94466c4930282?page=1
ただしこれは、今回の新型コロナウイルスの型については当てはまっても、それ以上のことは何も言えません。
今後の研究成果に期待するほかはありません。
批判Bは、今回のコロナの流行の世界的な傾向について、何も勉強していないのでしょう。

さらにもう一つの批判(批判Cとしましょう)は、やはり批判Aに通ずるもので、まだ政府・自治体が外出規制を出す4月前に、桜の花がほころぶころ、みんなの気が緩んで、感染者数が跳ね上がったという事実がある(つまり、外出自粛に効果があった証拠だと言いたいのでしょうか)というものです。
これも、きちんとデータを調べると、間違いであることがわかります(東洋経済新報社がPCR検査数、検査陽性者数、重症者数、死者数、退院者数、地域別感染者数、年齢別陽性者数など、多岐にわたって、コロナ関係の推移を追いかけている資料。いまも続けています)。
https://toyokeizai.net/sp/visual/tko/covid19/?fbclid=IwAR1K46rf5-f7gEulYku9DhisT4y8M_eWseRRz3IujXUuvGNwyWC8t-SvWII
これを見ると、3月中旬から下旬にかけて感染者数はわずかに増えていますが、跳ね上がるというほどでもありません。
また重症者数、死者数はまったく増えていません。
それが、緊急事態宣言が発出される4月7日前後から急速に増えているのです。
そして宣言の延期(5月7日)前にはいずれもピークアウトしています。
つまりこのことは、自主的な外出規制も、政府の宣言も、どちらもこれらの動きに関係がないことを示しているのです。
批判Cは、感染者数の増減をもって判断の根拠としていますが、そもそもこの判断が間違っています
PCR検査は、日本では実施数も日によって違い、実施地域もバラバラです。ある地域(たとえば東京)で(政治的な理由も絡んで)特定地区に集中的に検査数を増やせば、陽性者数が増えるのは理の当然です(それでも思惑通りには増えていないようですが)。
しかもこの検査は打率7割という低さです。
陽性と診断された人が再検査で陰性となることもあれば、逆もあります。
つまり、マスコミが報道している「陽性者数」の増減というのは、まったく客観性が担保できない数字なのです。
批判Cはマスコミの報道を鵜呑みにしていて、より信頼のおける死者数に言及していません。

筆者は、このたびのマスコミ報道を見ていて、どうして感染者数ばかりを強調するのか、視聴者はどうしてこの報道姿勢に疑問を持たないのか、不思議でなりませんでした。
つまりは、この数字だけでこの疫病がたいへんな病気なのだという印象を植え付けるためだとしか思えなかったのです。
あるいは、頭がそこまで働かなくて、無意識にやっていたのでしょうか。
そうだとすれば、バカとしか言いようがありません。
窪田氏の記事で最大の要点は、こうした全体主義的空気を作り上げるのに、たとえ無意識にもせよ、マスコミと一般国民の大多数とが一役も二役も買っていたという事実なのです。

こういう批判(これを批判Dとしましょう)もあります。
窪田氏の記事には、「日本人はお上の言うことに従う」というステロタイプな思い込みがあって、それが鼻につくというのです。
批判Dも、これによって、彼の記事を最後まで読んでいないことがわかります。
たしかに「管理されたい病」などとレッテルを貼れば、そういう印象を抱くのも無理はないとは言えるでしょう。
しかし彼が言いたいのは、むしろ逆で、大衆はある普遍的な不安や危機的な情報に煽動されると、そこで作られた正義とされるイデオロギーを「自主的に」選択して、それに従わない者を「社会全体にとって害になる」とばかり、容赦なく排除する行動(時には「暴走」)に走るものだという指摘なのです。
そのことを読みえていない批判Dも、窪田氏の記事をきちんと読んでいないと言えます。

ところで窪田氏が言っていることは、思想的にもたいへん重要な指摘なのです。
いったん暴走のエネルギーを持った大衆の情念は、「お上」の規制など平気で乗り越えてしまい、次々に異端を火あぶりにしていきます。
そこには経済的なゆとりを失った人々が不満のガス抜きのために多数参加しているでしょう。
そうして、そこに生じた混乱を一気にまとめ上げるべく、単純なスローガンを掲げたヒーローが登場します。
あるいは、その下に多くの小ヒーローが参集し、弱気な者たちに「正義」を押し付けてマウントするのです。
こうして「全体主義」が完成することは、歴史がさんざんに証明しています。

筆者はこのたびのコロナ騒動に接して、こうした全体主義の影を、国民大衆の「自主的な」姿勢そのものの中に垣間見たのです。
それにほとんど近いことを窪田氏が説いているのを見て、賛意を禁じ得ませんでした。
いま思うことは、何かある言説がまことしやかに流れたら、本当かどうかよく調べること、世の動きの大勢に対してたえず違和を抱く感性を失うべきでないこと、そして、いまだこの国に残り続けているヘンな心理的コロナ後遺症から早く国民が脱却してほしいということです。


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マスクを捨てよ、町へ出よう

2020年06月15日 20時48分52秒 | 思想

以下の文章は、月刊誌『正論』8月号に掲載予定の文章です。これまでこのブログで述べてきたことと重なるところが多いですが、コロナ問題に関する現時点での筆者の考えのまとめとして、ここに掲げることにしました。

:ようやく会えたな。4か月ぶりか。元気だったか。
:ああ。俺はどうせふだんから在宅が多いから、どうってことなかったけどな。
:しかしコロナにはまいったな。仕事に出ようにもうっかり出られやしない。夜は飲みにも行けない。「見渡せば 店も呑み屋も なかりけり 栄えし街の 春の夕暮れ」ってな。
:ハハ……だけどあれは過剰自粛もいいとこだよ。2月に小中、高等学校の休校を安倍首相が突然言い出して、3月に五輪の中止が決まったら、今度は都知事がそれまで五輪、五輪で走りまくってたくせに、突然態度をがらりと変えて、さあ、これからはコロナとばかり、オーバーシュートだ、パンデミックだ、ロックダウンだ、ステイホームだ、クラスターだと横文字を連発して騒ぎ出した。いつもの煙に巻く選挙対策さ。
:しかし、そうはいっても、あの感染力の凄さから言ったら、自粛はやむを得なかったんじゃないか。
:俺も最初はちょっとそう思った。だけど、この流行病の性格と、自粛による経済の大ダメージを調べていくうちに、これは政府や自治体はとんでもない大間違いをやらかしたなと確信するようになったよ。4月の緊急事態宣言、5月の宣言の延長、どれもこれも必要なかった。
:え! そこまで言うか。いったいどうしてかね。
:マスコミは全国の感染者数とPCR検査件数と死者数だけしか発表してなかったろ。それで、来る日も来る日もトップニュースがコロナ、コロナだ。だけど、感染者数や検査数の発表は流行の広がりを煽るだけで、疫学的にも社会的にもまったく意味がないんだ。感染者がどれくらいかなんて正確に把握できるわけがないし、PCR検査を受けたか受けないかも意味がない。地域の事情によって検査体制がばらばらだし、そもそもこの検査は確率7割。マスコミは、この病気がどんな病気かってことを正確に報じなかった。だからワクチンができてなくて治療法もわからないんで、パニックが一気に広がっちゃった。だけどよくよく調べてみると、この新型コロナは、感染力はすごいけど、大部分が無症状か軽症、しかも重症になるのは60代以上で基礎疾患がある人がほとんどなんだ。そうそう、ここに東洋経済新報社が出してるこういうグラフがある。



ちょうど緊急事態宣言が延長された5月7日のものだけど、40代はほとんど重症者がいないし、30代以下は限りなくゼロだ。子どもはもちろん一人も重症になってない。休校なんて必要なかったのさ。
:なるほど、それは俺もうすうす聞いてはいたけど、しかし知らぬ間に感染しててお年寄りにうつしちゃったらまずいだろう。
:それはそうだけどね。この病気はウイルスが起こしてるから、無症状者、軽症者は感染によって免疫抗体ができる、そういうメリットもあるわけさ。しかもおおむね症状は軽くて治ってしまう。それにグラフの80代以上の死者ってのも、多くは90代だそうだ。90代になったら何病だってたいてい死ぬだろ。俺は自分が90代んなったら死んでもいいと思うよ。君もそう思わんか。
:そりや、まあ……。100歳まで生きようとは思わんな。
:それにね、これも東洋経済のデータに日付を入れてみたものだけど、毎日の全国死者数。最高が34だ。
                                         

                 4/13      5/7     5/25     6/13

:あれ、4月13日以前と以後とで、まるで違うな。
:それは単にデータソースが変わっただけ。だから前半でも本当はもう少し死んでたのかもしれない。でも大した数じゃないだろうな。それはそうと、このグラフで大事な点は二つある。一つは、緊急事態宣言の延期の時点で、すでにピークアウトしていて、あとは、ご覧のようにどんどん死者が減っているってことだ。もう一つは、その数の少なさだよ、いま(6月15日)の時点で流行し出してから4か月半。一応公式発表を信じるとして、死者900人ちょっと。毎日7人くらい死ぬなんて、どんな病気だろうが事故だろうが当たり前だろ。ましてほとんどが持病持ちの高齢者だよ。政府、自治体、マスコミ、そろって他の病気や自殺や事故死と比べようともしないんだ。
:ほかの場合だとどれくらい死んでるのかね。
:まずインフルエンザ。2018年には3300人亡くなったから毎日9人死んでる。なのに、何の騒ぎにもならなかったろ。自殺者は毎年2万人超えてるから、毎日55人から60人。交通事故はずいぶん少なくなったけど、それでも4000人死んでるから、11人だな。それよりもね、これも大部分高齢者だろうけど、ふつうの肺炎で死ぬ人は、毎年12万人くらいいる。そうすると、新型コロナ肺炎の流行期間に毎日300人死んでる計算になる。さてどう思いますか。こんなにコロナ、コロナと大騒ぎする必要があったんだろうか。
:うーむ、なるほど。しかし、アメリカやヨーロッパの状況は相当ひどいだろう?
:そりゃね、あとでもう一つグラフ見てもらうけど、あれだけ死者が出れば、欧米でパニックになるのはある程度うなずける。でもね、そこにもあんなに規制を厳格にする必要があったのかっていう疑問が残る。ヨーロッパは中世のペストの記憶があるからな。そのせいで、パニックを起こしやすいんだろう。だけど、死亡者が圧倒的に低い日本まで、それに煽られることはなかったんだ。冷静に構えてりゃそのうちにはワクチンもできるだろう。それとさ、新型コロナウイルスは、研究用に培養しようとすると、8日間までは出来るけど9日以上は無理だそうだ。てことは、だいたい1週間くらいで感染力を失うんだよ。だから症状の改善した患者をいつまでも隔離したり自宅に謹慎させておくのは非合理で意味がないんだ。
:しかし、第2波がこれからくるっていうじゃないか。それに対する備えは……
:第2波、第2波って騒いでるけど、あれはどういう科学的根拠があって言ってるんだ?
:それは、たぶん100年前のスペイン風邪の時の経験からだろうな。あの時はたしか予想外で第2波(日本では第一回)が襲ってきて、死者が25万人出てる。その後の第3波でも13万人死んでるんだ。
:ふん。新聞やTVがしきりに煽ってるな。でもスペイン風邪と今回の新型コロナじゃ、ウイルスの型も違うし、当時の医療環境や衛生環境がいまとはまったく違うよ。スペイン風邪は若年成人の免疫システムを破壊するから、老人より若年成人の死者が圧倒的に多かったんだ。ちなみに2009年にスペイン風邪と同じ型のウイルスが来てるけど、ワクチンもできてるから、この年の死者はわずか600人だよ。つまりスペイン風邪は参考にならない。来る前からインフルエンザや新型ウイルスを過剰に恐れる必要はないんだよ。だいたい、これからも今回のコロナ以外に、違った型のウイルスが何度も襲ってくる可能性だってある。第2波だろうと第3波だろうとな。そのたびに緊急事態宣言出して経済をどん底に陥れるのか。
:しかし、何が来るかわからないんだったら、医療崩壊が起きないように、感染症対策や医療体制面だけは確実に整備しておく必要はあるんじゃないか。
:一般論としてはその通りさ、だから今回不備が露呈した部分を補填・拡充して教訓を活かせばいい。医療崩壊って言えばさ、今回のコロナで普通の医院、病院でも院内感染恐れて患者が来なくなっちゃって、がら空き、そっちの「医療崩壊」も深刻だったぞ。
:それは経済の話だな。その話はあとで聞くとして、さっき言ってた欧米のパニックを日本もまねる必要はなかったって話は?
:札幌医大で出してるこういう資料があるんだよ。世界各国100万人当たりのコロナ死者数の累計を毎日更新してるんだけど、これを見て気づくことがいくつかある(最終6月14日)。



:ああ、下にたくさん国名が書いてあるけど、これは1,2,3……15か国しかないね。
:うん。自由に選べるんだよ。全部入れるとごちゃごちゃになっちゃうから俺が勝手に大事だと思える国を選んだんだ。
:ははあ、もうだいたいが終息してきてるんだな。でも三つだけ上昇してるぞ。
:そう。ちょっとわかりにくいから、全部言っておこう。右端の上から順にベルギー、イタリア、フランス、スウェーデン、アメリカ、ブラジル、メキシコ、ドイツ、ロシア、フィリピン、インドネシア、日本、シンガポール、マレーシア、タイ。上昇してる三つは、ブラジル、メキシコ、ロシアだ。欧米とアジア諸国はほとんど水平になってるだろう。世界全体のもあるけど、これもほぼ水平に近づきつつある。
:アジアで中国や韓国やインドが抜かしてあるのはなぜ?
:それは、国情やカーブの仕方から見て、統計に信用が置けないから。インドは急上昇中だけど、ずいぶん後になってから突然登場してるんで、これもおかしい。日本も含めて他の国も疑う余地はあるけど、まあ、だいたい信用するしかないな。
:そうか。それでこの上昇中の三国はまずいんじゃないか。ここからまた世界に広がる可能性がある。
:さあ、どうだろうか。ロシアはもうすでにカーブが鈍ってきてるだろ。ブラジルとメキシコは、衛生環境の極めて悪い貧困地区で拡大してるんだよ。だからこれはコロナ問題に限定して考えるべきじゃなくて、貧困問題、政治問題としてとらえるべきだと思う。つまりそういう地区では、もともと食糧事情や居住環境や治安、麻薬禍など、解決すべき問題が山積してるはずなんだ。インドもたぶん同じだよ。
:なるほどね。ところで欧米と日本とでは死者数がまったく違うというのはいろいろなところで言われてたけど、それはなんでなんだろうな。やっぱり生活習慣の違いかな。
:その前に、このグラフの縦軸を見てくれないか。これは対数目盛なんだ。つまり、見た目よりもずっと差が大きいんだよ。具体的に言うと、最高はベルギーで約830、日本は約7、最低のタイは0.8という具合だ。2桁も3桁も違うことになる。大事なのは、欧米と日本だけに開きがあるんじゃなくて、東南アジア諸国も日本と同じか、それより低くなってる。これは生活習慣の違いなんかじゃ説明がつかない。結局、まだ定説はないけど、人種によって免疫学的な違いがあると考える以外ないんじゃないかな。
:うーん、そうか。そうすると、日本は、欧米に見習ってあわててオーバーシュートだのロックダウンだのと騒ぐ必要はなかったことになるな。
:そう。俺が言いたかったのはまさにそこさ。それに関連してもう一つ言いたかったのは、ヨーロッパじゃどの国も早くから厳しい隔離と外出規制を取っていただろ。それなのに、その時期には死者数はどこもうなぎ上りだ。ところがスウェーデン(上から4番目)だけは、高齢者以外にはそういう規制を敷かなかった。で、結果はご覧の通り、他国と同じカーブなんだよ。つまり、隔離や外出規制は意味がない証拠だ。だから、むしろ、外出規制なんかしない方がよかったんだ。マスクをして適切な距離を取っていれば飛沫が飛ぶなんてことはまず考えられないからな。
:日本じゃ8割おじさんてのが出てきてパッと8割外出規制が決まっちゃったな。
:あれも大いに問題があった。第一に8割という数字には論理的な根拠が乏しい。第二に、政府が自分たちでちゃんと調べないで、いわゆる「専門家」丸投げでさっさと政治決断してしまったこと、それから第三に、地域特性も無視して、一律8割というのはどう考えてもおかしい。
:そう言えば岩手県は最後まで感染者ゼロ、鹿児島、鳥取、徳島、秋田なんかはほとんどいなかったな。
:そう。大都市と農村と全然事情が違うのに一律はないだろう。それと言っておきたいのは、「専門家」依存のいいかげんな決定で、日本全国に絶大な力を及ぼしたんだから、その「専門家」はそれが経済にどういう影響を与えるかに関しても、自分たちなりの責任意識を持つべきだと思うんだ。同時に、政府のほうも、専門家会議の中に経済的悪影響のことをきちんと考えてる識者を初めから入れておくべきだったんだ。
:それはそれとして、俺が思ったのは、日本人てなんてまじめで従順なんだろうってことだな。君の言う通りだとすれば、これもちょっとまずいんじゃないの。もっと議論が起きてしかるべきだったろう。
:そうだな。それと臆病で神経質すぎるな。政府や都知事が問題にする前から、相当自粛が進んでたからな。お上の言うことそのまま信じないで、自分たちの頭でまずきちんと調べたり考えたりしてほしいよ。とにかく、経済の計り知れない損失のことを考えると、官民含めて今回の日本のコロナ対策は壮大な失敗だったよ。
:現状、経済的損失は、どれくらいに及んでるの。
:2020年1-3月期のGDPは前期比年率で3.4%減。個人消費や生産が急速に悪化してるね。だけど忘れちゃいけないのは、昨年10月の消費増税で7.1%減になった、そのうえでさらにこれだけ落ち込んだってことだよ。4-6月期は、コロナ禍で休業、倒産、廃業、解雇が続出してた時期にあたるから、この結果が出る8月には恐ろしい数字を見ることになるだろう。あと、このグラフを見てくれ。



4月の鉱工業生産指数は前月比で9.1%落ち込んで、これは東日本大震災の時よりも悪くなってる。また帝国データバンクによると、今年の倒産件数は一万件を超すそうだ。自主的な休廃業などは、二万五千件だって。6月からはこれまでより悪化するのは確実だからね。そうすると失業率も急上昇して、特に非正規労働者の生活はますます逼迫するだろう。ほとんど恐慌に突入だよ。第二次補正予算で何とか32兆円の真水にこぎつけたけど、こんなもんじゃとても足りないだろうね。TVなんかは飲食業や宿泊関連の落ち込みを強調してるけど、ふつうの企業や生産現場だって、みんな関連してるからね。政府や一部の新しがり屋はテレワークやオンラインの可能性とか、「新しい生活様式」とかV字回復とか白々しいことを言ってるけど、テレワークやオンラインで能率が上がるはずがない。子どもも友達に会えないし、勉強の遅れを取り戻さなくちゃならないし、かわいそうだよ。
:そういえば新幹線がガラガラだったってよく話題になったな。4月の時点でどの路線も9割近く利用客が減ってしまった。今日ここに来るときも、まだ電車はすいていて、ゆうゆう座れたぞ。
:そうそう。それも大問題だったな。首都圏の通勤路線も6割減だそうだ。鉄道会社も航空会社も、下手したら経営が危ない。「新しい生活様式」に変わることが大事なんじゃなくて、元の当たり前の日常生活にいかにして復帰するかが大切なことなんだ。もう一度言うけど、コロナ対策は壮大な失敗だった。マスクを捨てよ、街に出よう!


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安藤裕衆議院議員を次期自民党総裁に!

2020年06月10日 19時02分53秒 | 政治


先日、皆さんよくご存じの、池上彰という大ウソツキが、テレ朝の「ニュース、そうだったのか」で、コロナ給付金に関して、「国の借金が1000兆円を超えているんだから、当然増税になる。国民一人当たり10万円給付も、国民が前借しているんだから、いずれ返さなくてはいけない」と言っているのを聞いて、思わずのけぞりました。
「ふうん、そうなんだ」とか相槌を打ってる聞き手も、なんでこんなひどいウソに騙されるんでしょうね。

最近の池上は、どうも自分は間違ったことを言ってるんじゃないかという焦りが顔に出ていて、表情が引きつっています。
どこか体を悪くしているのでなければ、激やせもそのせいかも。

ところで、あいつは20年来同じこと言ってて、どうせバカだから相手にしなくていいよ、と突き放すのもけっこうですが、筆者が危惧するのは、次の点です。
ああいう地上波番組は視聴率も高いから、池上のような大ウソツキが啓蒙家ヅラしてのさばると、愚民がどんどん再生産されるんじゃないか。
もう少し詳しく言うと、あの番組が大衆に受ける秘密は、その形式にあると思います。
優しく(易しく)流暢な調子で、教師という立場から、生徒に質問をしながら「正解はこうです」と余裕たっぷりに説明していく。
生徒はほとんど痴呆状態に置かれて、先生の講釈を感心して聞くほかはない。
誰も突っ込みを入れないし(入れる能力もないし)、議論する余地もない。
この「実演による啓蒙」という演出形式においては、生徒は手品師に引っかかる観客のようなものです。
だから視聴者も素直に「ふーん、そうだったんだ」と受け入れてしまう。
学者が澄まして書いているバカ言説も問題ですが、こちらは読者も多くありません。
だから、池上方式のほうが、学者のバカ言説よりもよっぽど悪影響をまき散らしていると思います。
そもそもこういう番組を作っているプロデューサーは、何を考えてこんなインチキ番組を垂れ流しているのか。
大衆が視聴するTV媒体でこういうやり方を使って、ウソを流し続ける限り、「国の借金で財政破綻、だから増税して財政を健全化、給付金もみなさんの借金」というデタラメは、改まりそうもありません。
まずは池上を潰せ!

ところで、今を去ることわずか2か月半前、『オペレーションZ』という財務省よいしょ小説を書いた作家の真山仁と、財務省事務次官の岡本薫明とが、「日本の財政がわかってない方に教えたい真の姿」と題して、例の「国の借金1000兆円超が国家財政の破綻を招く」というトンデモ対談を平然と行っています。

ご覧になった方も多いことでしょう。
https://toyokeizai.net/articles/-/340525
日本の財政がわかっていないのは、お前たちだろ! と思わず怒鳴りつけたくなります。
真山は本当のバカなのでしょう。
しかし、岡本事務次官がわかっていないはずはないので、西田昌司参議院議員が国会で追及した時に、彼自身が「財政破綻はしません」と答えているのです。
https://www.youtube.com/watch?v=JlvJGc7ohzI&feature=youtu.be
このブログの読者ならとっくにご存知と思いますが、財務省のHPにもそう書いてありますしね。
だから、一般国民相手の場面では、岡本は平然とウソをついているわけです。
国民に平然とウソをつく高級官僚がうようよいるこの国、誰が考えても亡国と言わざるを得ないでしょう。

さて大衆啓蒙家気取りの池上彰、財務官僚トップの岡本薫明、財務省御用学者の小林慶一郎、土居丈朗、森信茂樹、佐藤主光、吉川洋、伊藤隆俊、伊藤元重の面々、朝日の原真人、日経の久保田啓介……。
この緊縮脳に侵された重症患者連中を徹底的に潰さない限り、日本経済に未来はありません。
どうすれば潰せるか。
こちらも執拗に言論と政治実践で対抗していく以外ないでしょう。

ところで、このたび、コロナ禍がもたらした大恐慌危機に際して、「日本の未来を考える勉強会」代表の安藤裕衆議院議員消費税ゼロ、百兆円の国債発行を提案しました。

彼を中心とする若手自民党議員の獅子奮迅の働きによって、この日本経済回復策に賛同する国会議員が80名を超えました。
その結果、まだまだ不十分とはいえ、岸田政調会長、西村経済再生担当大臣らを動かし、真水32兆円の財政出動にこぎつけました。
ことに予備費10兆円の確保は、予備費という名目では、金額的に言って空前の規模です。
もしこれを全額、コロナ禍(というより不必要だった過剰自粛)による民間企業の巨大な損失補填に充てられるなら、その効果はかなり大きいと言えるでしょう。
今回のこの動きは、いままで財務省の言うなりになって眠りこけていた大方の自民党議員の空気を一新するたいへんなことだったといっても過言ではありません。
コロナ禍を奇貨としたというべきでしょうか。

しかし、疫病としてのコロナが沈静しても、一度落ち込んだ経済を回復させるのは、並大抵のことではありません。
けっして忘れてはならないのは、コロナが来なくても、昨年10月の消費増税によってGDPが▲7.1%の落ち込みを見せたという事実、その前から20年以上もデフレから脱却できず、事態はますます悪化していたという事実です。
コロナ禍が去れば、それ以前は経済がまともに機能していたかのような錯覚に陥る可能性が十分にあります。
財務省はここぞとばかり、この錯覚を利用するでしょう。
7月に予定されている「骨太の方針」決定に、はたしてPB黒字化目標がまだ残るのか。
これが残ってしまうようなら、緊縮路線は何ら変わることなく、財務省はコロナ財出で使った分を税金で取り返そうとするでしょう。
今回のコロナ財出でも、消費税には指一本触れませんでした。
そうすると、気違いじみた池上の希望通りになってしまいます。
8月には4月―6月期のGDPが発表されます。
悲惨な数字が出ることは確定的です。
闘いはこれからなのです。
当然、第三次、第四次補正予算を組む方向へと邁進していかなくてはなりません。
この邁進の動力源に誰がなりうるか。
安藤氏とその賛同者以外にはいないでしょう。

山本太郎氏も、この間、日本の貧困化をもたらした勢力を告発するのによく貢献したと思います。

彼はMMTを中心とする積極財政論をきちんと理解していますし、どんな質問にも明快に答えられる優れた政治家です。
しかし野党的立場からの告発と勢力伸長にはどうしても限界があります。
やはり、圧倒的多数を誇る自民党議員に親しく接触することができる安藤氏のような人が、政権与党の内部で粘り強く説得を繰り返し、内部から変革していくのが、一番有利な方法と考えられます。

安倍政権の支持率もだいぶ落ちてきました。
いつとは言えませんが、そろそろ安倍首相の降板も近いでしょう。
しかし国民の意識としては、ほかにもっといい人がいないというのが本音でしょう。
筆者としては、このタイミングで、安藤議員に次期自民党総裁選に出馬していただくことを提案します。
ロートルひしめく党上層部に切り込みをかけても、すぐにはひっくり返らないかもしれません。
しかしこれによって、安藤グループ及びその潜在的な賛同者が、一気に表面化し、安藤氏はその存在感の大きさを示すことができます。
消費税ゼロ、国債100兆円を掲げる安藤氏に、自民党次期総裁の地位を! そして安藤総理大臣の実現を!


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社会批判小説ですがロマンスもありますよ。
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