内的自己対話-川の畔のささめごと

日々考えていることをフランスから発信しています。自分の研究生活に関わる話題が多いですが、時に日常生活雑記も含まれます。

「ヨーロッパ哲学語彙辞典、あるいは翻訳不可能語辞典」

2019-11-23 23:59:59 | 哲学

 2004年に初版が出版された Vocabulaire européen des philosophies, sous la direction de Barbara Cassin, Seuil/Le Robert は、出版当初からその大胆な企画で注目を集めた。十数のヨーロッパ言語(ヘブライ語、ギリシア語、アラブ語、ラテン語、ドイツ語、英語、バスク語、スペイン語、フランス語、イタリア語、ノルウェー語、ポルトガル語、ロシア語、スウェーデン語、ウクライナ語)から選ばれた約4000の重要な哲学用語・哲学的表現について、バーバラ・カッサンの陣頭指揮に率いられた一五〇名近い各分野の一流の執筆陣によってフランス語で書かれた諸項目は、その途方もない情報量と重層的な構造と便利な相互参照事項によって、私たちを二千五百年の哲学史という、多様かつ複雑な植生の階層構造と歴史的地層から成る鬱蒼たる大森林の探索の旅へと誘ってやまない。しかも、執筆者たちは、いわゆる辞書的な中立的記述に留まることなく、斬新な切り口でヨーロッパ近代を脱中心化して哲学の諸問題を考え直すための視角を提示する。いわば経験豊かなガイドとして私たちの哲学的思考の案内役を務めてくれる(例えば、アラン・バディウ担当の項目「フランス語」を見られたし)。
 この辞典の改訂増補新版が先月刊行された。これに喝采を送らずにはいられない。もちろん直ぐに購入した。以来、私の一日は、この辞典の数頁を読む早朝の「勤行」から始まる。














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