内的自己対話-川の畔のささめごと

日々考えていることをフランスから発信しています。自分の研究生活に関わる話題が多いですが、時に日常生活雑記も含まれます。

パリ・ナンテール大学シンポジウム「ハイデガーの超克」第二日目

2023-12-01 23:59:59 | 哲学

 昨日の記事の末尾に記した予想とは違って、開始時は昨日よりやや少なめの聴衆だったが、徐々に増えていき、だいたい昨日と同程度となった。他方、今日も六つの発表があったが、昨日との非連続性は明白だった。それは最初にプログラムを見たときから予想できたことだった。
 それに、二番目の発表者である明治大学の合田正人教授の発表以外はすべてパリ・ナンテール大学の教員たち François THOMAS 准教授、Elie DURING 准教授、Christian SEBBAH 教授、Didier FRANCK 名誉教授、Jean-Michel SALANSKIS 名誉教授が発表者だったのだが、翻訳論を語ったトマ氏を除いて、それぞれがハイデガーをめぐって自説を滔々と繰り広げるかたちとなり、それらの間の違和あるいは対立も期せずして際立つ結果となった。それはフランスにおけるハイデガー受容あるいは批判(さらには拒絶)の多様な形を反映しており、それはそれで大変面白く、私自身は大いに学ぶところがあり、拝聴できてよかったと思っている。それらとは別に、ハイデガー論という枠を超えて、合田先生のリズム論はそれ自体が面白かった。
 しかし、最初の発表と合田先生の発表以外は、予め指定された発表時間を大幅に超えた発表が続き、質疑応答の時間はあまりなかったのは惜しまれる。というか、これは二日間を通じての感想でもあるのだが、質疑応答及び参加者間の議論がもっと活発になるように今後は工夫する必要があると思う。この意見はシンポジウムのオルガナイザーにも伝えておいた。
 パリ・ナンテール大学哲学部の学生たちも途中で出入りはあったが十数人は参加していたようだ。彼らも含めて、発言しやすい形にすることで、予期せぬ面白い展開になるかも知れない。
 私は演習や授業などで「つまらない質問というものはない」とよく言う。それは学生たちに質問を促すためでもあるが、実際、どんな質問からでも議論の展開は可能なのだから、こんな素朴な質問をして笑われないかなどと気後れすることはないのだ。そのような雰囲気の醸成は、質問を受ける側にそれなりの「構え」があってはじめて可能になることは言うまでもない。どんな質問でも受け止め、そこから論点を引出し、議論の展開の緒を聞き手に返し、そこからまた反応があり、他の参加者からもそれに対する発言が出るような方向にもっていく配慮が必要だ。司会進行役もその方向で協力するとき、実りある議論の場が成立する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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