内的自己対話-川の畔のささめごと

日々考えていることをフランスから発信しています。自分の研究生活に関わる話題が多いですが、時に日常生活雑記も含まれます。

書物への愛が身分制度の桎梏から解放し、近代への道を拓く ― 八戸藩の事例

2018-11-23 18:45:03 | 講義の余白から

 昨日、午前の講義の後、午後、一橋大学の若尾政希教授のご講演を聴き、その後夕食をご一緒する機会に恵まれた。
 思想史としての出版史について目覚ましいご研究を次々にご発表になられている教授のお話はいずれも大変興味深く、失礼も顧みず、矢継ぎ早にいくつもの質問を差し上げた。すると、たちどころにさらにこちらの問題意識を刺激するようなお話をしてくださった。
 ご講演の中で特に私が蒙を啓かれた思いをしたのは、八戸藩の事例であった。江戸時代、同藩では、身分の違いを超えて本の共有・貸し借りが行われたという。武士、百姓、商人たちが一種の読書サークルのようなものを形成し、そこでは、共通の本について、意見の交換も自由に行われた。
 このお話を聴いて、私は次のように考え、先生のご意見を伺った。
 書物への愛が、身分制度の桎梏から人々を解放し、自由と平等の一つの現実の形としての読書サークルを形成させ、それが近代的な民主主義的思想の社会的基盤を準備したと言えるのではないか。
 こう申し上げると、先生も大変興味を示してくださり、他藩でも俳諧の席においては身分の上下は括弧に入れての付き合いだったとお応えいただいた。
 私自身のようなど素人が文書読解に基づいた歴史研究に首を突っ込む気はさらさらないが、専門家の方々の研究成果から学び、そこから思想史に作業仮説として一視角を開こうと試みることは許されたし。













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