第二日目は、遠隔発表が二つと会場での発表が五つ。昨日に比べると、会場も遠隔もやや参加者が少なく、質疑応答も昨日ほどの盛り上がりには欠けたが、発表そのものはそれぞれになかなかに興味深かった。全体として、今回のシンポジウムはテーマ設定が功を奏したと、自画自賛めくが、言ってよいのではないかと思う。主催者側に一応名を連ねた側としては、無事終えられたことにまずは安堵している。
発表や質疑応答の中にこれからさらに発展させるべきテーマ、或いはより掘り下げるべき問題も次から次へと出てきて、あらたなシンポジウムを企画するにはアイデアに事欠かない。研究のさらなる展開を望むという一言を閉会の辞として述べた。
開会プレゼンテーションから閉会の辞まで、二日間の発表と質疑応答はすべて録画されており、後日 YouTube で公開される予定である。
散会後、パリ市内へと向かう帰路を同じくする数名の参加者と電車の中で歓談する。技術的な故障でダイヤが乱れ、かつ金曜夕刻ということもあり、途中のどの駅でもホームに人が溢れていた。シャトレー・レ・アール駅で他線に乗り換える他の参加者たちと別れ、私はそこで地上に出て、小雨降る夕暮れ時のパリの街中を久しぶりにゆっくりと歩いた。
パリ近郊在住の友人から、コロナ禍でパリも変わったと聞いた。観光客が集まる地区への打撃は大きく、閉店に追い込まれた店も少なくないという。確かに、シャトレーからノートルダム大聖堂の近くを通り、サン・ミッシェル大通りを歩いていると、金曜夜の人出の多さとグラフィティに覆われたシャッターが降りている店の多さとのコントラストが、カルティエ・ラタンにかつて見たことのない陰影を織り成していた。
すでにツイッターとフェイスブックには「宣伝」をアップしてあることなのだが、この記事でも、岩波書店の『思想』12月号「追悼 ジャン=リュック・ナンシー」に寄稿した追悼文「ナンシー先生の想い出、そしてその哲学についての断片的覚書」のことに一言触れておきたい。その内容の半分以上はこのブログで折に触れて先生について書いた文章と重なるが、あらたに触れた話もある。先生への感謝の気持をこのように追悼文として発表する機会を恵まれたことを本当にありがたいことだと思っている。書店あるいは図書館などでお手にとって見ていただけると嬉しい。
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