内的自己対話-川の畔のささめごと

日々考えていることをフランスから発信しています。自分の研究生活に関わる話題が多いですが、時に日常生活雑記も含まれます。

小雨降るパリのノスタルジックでセンチメンタルな独り歩き

2021-11-27 23:59:59 | 雑感

 18時43分発の TGV でストラスブールに帰るまでの今日の日中、久しぶりにパリで過ごした。朝、ホテルの窓から空を見上げると、生憎、今にも雨が降り出しそうな曇天。天気予報でも日中は小雨。それでも、ホテルを10時前にチェックアウトし、一日パリを散歩することにした。
 散歩といっても、有名な観光地を見て回るのではなく、2006年から2014年までの8年間暮らした13区のアパートの辺りと当時よく利用した店や散歩した場所を見て回るのが中心だった。ノスタルジックな気分に浸りながらのかなりセンチメンタルな独り歩きである。
 パリ在住中に数百回通ったパリ市営プールは投宿先のホテルから徒歩数分のところにある。リセ・アンリ四世校の裏手に当たる。そのプールの入り口に立ったとき、当時の想い出が一気に蘇ってきて、ちょっとウルッとしてしまった。住んでいたアパートにはプールから徒歩十二、三分かかる。その道を歩いた。こんなにも距離があり、こんなにもいろいろな建物があったかと、驚いた。当時は毎朝のように通っていた道で建物にはあまり注意していなかったからだろう。
 住んでいたアパートがあるスクエアの前に立ったときは、ちょっとほんとうに「やばかった」。感極まってしまった。よく利用した近所のお店はどうなっているだろうと歩き回った。以前と変わらずに営業しているパン屋さんやカフェやワイン屋さんもあれば、所有者が変わって店構えもすっかり変わっているレストランもあった。服の仕立て直しやちょっとした直しを時々頼んでいた二畳ほどの広さの小さな仕立て直し屋さんのお店は健在だった。ベトナム人のマダムがいつものようにひとりで仕事をしているのが外から見える。扉を開けて「覚えていますか」と声を掛けたくなったが、やめた。「どうぞお元気で」とつぶやいて通り過ぎた。
 あちこち歩き回ってさすがに疲れた。雨脚も少し強くなってきた。ルーブル地下のショッピングモールで休憩した。三十分ほどして外に出た。雨は相変わらず。もう長時間歩く気にはなれなかったが、午前中にジベール・ジョゼフで買うのを迷った一冊を別の本屋で買うためにカルティエ・ラタンに戻った。買ったのは、Eugène MinkowskiVers une cosmologie (Éditions des compagnons d’humanité, coll. « Bibliothèque de l’existence », 2021) である。旧版は持っているのだが、この新版には Renaud Barbaras による百頁を超えるミンコフスキーのコスモロジーについての研究論文が巻末に付されており、これを読むために買った。
 夕方には、TGV の発車時刻にはまだ間があったが、ピラミッド駅からメトロ七番線で東駅に移動した。徒歩数分のサン・マルタン運河沿いを少し歩いたあとは、駅のすぐ脇のカフェ・バーで、宵闇迫る駅前を行き交う人たちをぼんやりと眺めながらワインを飲んで発車時刻を待った。
 合計18キロ以上歩き回って疲れているのに(いや、だからこそか)、ワインを飲みすぎたせいだろう、TGVの中ではずっと爆睡していた。目が覚めたのは、ストラスブールまでもう数分のところでだった。

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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