内的自己対話-川の畔のささめごと

日々考えていることをフランスから発信しています。自分の研究生活に関わる話題が多いですが、時に日常生活雑記も含まれます。

ニーチェ対パスカル ― 何を憎むべきなのか

2023-10-29 15:03:09 | 哲学

 ニーチェの『曙光』には、パスカルの「憎むべき〈私〉」(断章 S494、L597、B455)に反論している断章(§63)がある。
 他者が自分で自分のことを感じている通りに私たちは他者のことを感じるという仮説に立てば、そして、パスカルが言うように、自己自身が私にとって憎むべきものであるならば、私たちは他者をも憎まなくてはならないことになる。おそらくこれこそがパスカルが人間全体に感じていたことで、それはちょうど、ネロ帝政下で初期のキリスト教徒たちが懐いていた「人間という類への憎しみ」と同類だろうとニーチェは言う。
 ニーチェは、次第にこのような犠牲・献身・利他・同情を説く道徳に対して「エゴイズム」を復権させていく。このような自己を憎む思想こそ憎むべきだとニーチェは考える。自己否定には人類全体への蔑みが隠されていることを見抜く。
 『アンチクリスト』では、自分の理性の堕落は原罪に因るとするパスカルを批判する。パスカルの理性が倒錯しているとすれば、それは彼のキリスト教のせいだと断ずる(§5)。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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