内的自己対話-川の畔のささめごと

日々考えていることをフランスから発信しています。自分の研究生活に関わる話題が多いですが、時に日常生活雑記も含まれます。

すぐには読めないけれど気になる本を性懲りもなく買い続ける悪癖に効用がないわけではない

2021-07-10 10:39:57 | 読游摘録

 その本が属する分野、取り扱っているテーマ、視角の開き方、問題の設定の仕方、採用されている方法などに関心はあっても、実際にはそこまでは手が出せない、そもそも読む時間が取れないからと素通りしようとして、でも、やっぱり気になってしまい、ちょっと覗くだけでもいいからと、つい買ってしまう本のなんと多いことか。
 紙の本であれば、それらの本は積読ということになるが、ここ数年、紙の本に対する私的購入選定基準は相当に厳しくなり、その 嵩はかなり減少した。これには収納場所の限界という理由もある。ところが、電子書籍にはこの物理的スペースという問題が発生しない。それだけ購入を躊躇わせるハードルが下がる。特に、紙の本そのものへの所有欲は小さく、書かれてある内容に興味があり、それがわかればよいという場合、買わないように自分を説得するのに苦労する。そんな自己説得で時間を無駄にしているくらいなら、とっとと買っちまえ、という結果になる。
 買ったときにちょっと覗いただけだった本が何年も経ってから意外なところで役に立ったことも過去に何度もあったから、それらの本がけっして無駄になるわけではない。これは嘘でもないし、強弁でもない。でも、買ったことさえ忘れてしまうこともなくはなく、何年も経ってから、「あれっ、この本持ってたんだぁ」と苦笑することもある。そういうことが年々増えてきていることも認める。
 最近そんな買い方をした電子書籍の中に以下の三冊の講談社学術文庫が含まれている。五百旗頭真『日米戦争と戦後日本』、下斗米伸夫『日本冷戦史 1945-1956』、清宮四郎『憲法と国家の理論』(編・解説:樋口陽一)。いずれも優れた内容の本であることは確かで、じっくり読むべきなのだが、すぐには読めない、でも、およそ何が書いてあるかは覚えておこうと、昨日と今日、全体を走り読みし、ところどころ集中して読んだ。それだけでも私としては得るものがあった。