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「まぐれ」書感

2010年10月23日 08時32分18秒 | 社会
「まぐれ~投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか」(タレブ)読了。
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トレーダーとしての経験、見聞きしたところから
「儲けたのは実力、損したのは不運」と考える人間(トレーダー)の傾向を描く。
儲けたのも運であり、今後も儲け続けるとは限らない、と言い、
確率の適用方法などの誤り(あるいは嘘)を綴っていく。

原文が「話し言葉」を意識した独特の文体らしく、
翻訳もそれを生かそうとしているようだ。
トレーダーの日常生活など、話が少し回りくどい、と感じるところもあるが、
確かに語り口調っぽい。

読みづらいところ、言葉の意味がよく分からないところもあるが、
まあ楽しく読めるし、いろいろ考えさせられる本。

読んで感じたのは、人間は「期待値」で考える力が弱いのだな、ということ。
例えば、99%の確率で1万円得をして、残り1%で百万円損をするとすると、
期待値としては「-100円」になる。
計算問題として出題されると、おそらく解ける。
しかし現実には、ずっと1万円得し続けると
「これは損をしない取引だ」と帰納的に考えてしまう。
様々なバブルの崩壊は、
このような人間の思い込みが一つの原因になっているのだろう。

また、トレーディングの世界で他のトレーダーと競争している前提では、
他のトレーダーよりも儲けを大きくするため、
失敗した場合の損失を大きくする傾向が強くなるらしい。
先ほどの例との比較で考えると、
99%の確率で100万円得をして、残り1%で1億損をする方が、
客としては「100万円得をする方が、1万円得するより良い」と考えて
飛び付いてくるということなのだろう。
期待値としては-1万円になっているし、
損した場合の被害額は甚大なものになっているのだけど。

このように考えがちな人間の脳の構造などについても、少し触れている。
このあたりは、並行して読んでいる「行動経済学」が役に立った。

結論としては、
「帰納的に考えてリスクを切り捨てたり、勝手に因果関係を見出したりしがちな傾向に注意せよ」
というところか。
全てが分かってから行動する訳にはいかないので、このような思考は生きていく上で必要だが、
様々な失敗を招く原因でもある。
このあたりに目を向け、「分からないまま行動している」と謙虚に捉えるべきなのだろう。

あと、「論文ではないので、信憑性を上げるための参考文献などない」と
(若干露悪的に)言いつつ挙げられている参考文献が、
けっこう詳細で良い。
この中から、また何か読んでいこうかな。
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